Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/01/18
Update

韓国映画『EXIT』ネタバレ感想と結末までのあらすじ解説。感動の家族愛と恋するサバイバルなボルダリングアクション!|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー7

  • Writer :
  • 咲田真菜

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第7回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画の数々を紹介する連載コラム第7回は、韓国のサバイバル・パニック映画『EXIT』。

韓国のある都市で突然蔓延した有毒ガス。迫りくるガスから逃れるために高層ビルの屋上へ登り、ビルからビルへと跳び、走る2人の男女の奮闘を描きます。

パニック映画のはずなのに、コメディー要素大、家族愛を描いてほっこりする場面もある『EXIT』をご紹介いたします。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『EXIT』の作品情報

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

【配信】
2019年韓国

【監督・脚本】
イ・サングン

【キャスト】
チョ・ジョンソク、ユナ(少女時代)、コ・ドゥシム、パク・インファン、キム・ジヨン

【作品概要】
突然蔓延し始めた有毒ガスから逃れるため、地上数百メートルの超高層ビルを登り続けることになるサバイバル・パニック映画。主人公の青年ヨンナム役にチョ・ジョンソク、ヨンナムが大学時代に所属していた山岳部の後輩・ウィジュ役に少女時代のユナが挑み、監督・脚本を本作が長編映画監督デビューとなった、イ・サングンが手掛けます。

映画『EXIT』のあらすじ

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

韓国のある都心部で、突如原因不明の有毒ガスが蔓延しはじめ、道行く人たちが次々に倒れ、パニックに陥っていきます。

そんな緊急事態になっているとも知らず、無職の青年ヨンナム(チョ・ジョンソク)は、母親の古希のお祝いをする会場で、そこで働く大学時代に想いを寄せていた山岳部の後輩ウィジュ(ユナ)との数年ぶりの再会に心を躍らせていました。

しかし、上昇してくる有毒ガスの危険が彼らにも徐々に迫り、ガスに触れてしまったヨンナムの姉・ジョンヒョン(キム・ジヨン)が瀕死の状態に。

なんとか両親・親戚たちとともに救助のヘリコプターで運ばれますが、重量オーバーでヘリコプターに乗れなかったヨンナムとウィジュは、ビルの屋上に取り残されてしまいます。

彼らの手元にあるのは、ロープ、チョーク、そして山岳部で鍛えた知恵と体力のみです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『EXIT』ネタバレ・結末の記載がございます。『EXIT』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク

取り残されたヨンナムとウィジュは、救助のヘリコプターに見つけてもらえるように、より高いビルへと移動します。有毒ガスは呼吸困難と皮膚へダメージを与えるものだと知った2人は、全身をビニールでグルグル巻きにし、ガスマスクをつけ、有毒ガスが蔓延する街の中へ駆け出します。

ガスマスクの効果はわずかな時間、それまでにビルのできるだけ高いところへ行かなければいけません。ヨンナムとウィジュは必死で走ります。

ようやくビルの屋上にたどり着き、屋上にあったたくさんのマネキンを並べ、空に向かって、救助をしてほしいと必死にアピールします。

救助のヘリコプターに見つけてもらった矢先、ウィジュが目の前のビルの学習塾に取り残されている子どもたちに気付きます。

「私たちが助かったら、あの子たちはどうなるの?」とヨンナムに語りかけ、ヨンナムとウィジュは断腸の思いで、救助のヘリコプターを子どもたちのほうへ向かわせます。

もはやこれまでと諦めかけた2人ですが、迫りくる有毒ガスから逃れるため、より高いビルへ登り、跳び、走り続けます。

そんな彼らを心配する救助された家族たち。中でも父親のジャンス(パク・インファン)は、「俺が息子を助けに行く」と避難所を飛び出していきます。そこでテレビ局からの依頼でドローンを飛ばしていた若者に息子を探してほしいと頼み込みます。

躊躇する若者たちですが、お金を渡され、あっさりジャンスの依頼を引き受けます。ヨンナムとウィジュを捉えたドローンは、彼らが有毒ガスから逃れようと懸命に走る姿をニュース番組で放送します。

するとたちまち大きな反響となり、SNSで彼らを応援する声が集まります。同時にさまざまな箇所からドローンが集まってきて彼の居場所を救助ヘリコプターに知らせようと試みます。

最初にヨンナムとウィジュの姿を捉えたドローンが2人を手助けすることで、最大のピンチから脱出。彼らの姿を見逃しそうになった救助ヘリコプターに向けて、ヨンナムとウィジュは、避難する時に思わず手にした花火に火をつけることで、無事救出されました。

ヨンナムは避難所で無事に家族と再会。毎日公園の鉄棒で技を披露している無職の叔父を恥ずかしいとさえ思っていたジョンヒョンの息子は、ヨンナムを尊敬のまなざしで見つめ、固く抱き合いました。

スポンサーリンク

映画『EXIT』の感想と評価

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

見事なアクションを披露しながらも、泣き言を言うヒーロー

蔓延する有毒ガスで都市がパニックに陥る物語ということで、かっこいいヒーローとそれに寄り添うヒロインが奮闘する物語だと想像する人もいるでしょう。

本作で奮闘するのは、青年ヨンナム。特筆したいのは、決してかっこいいヒーローではないということです。3人の姉を持つヨンナムは、気は優しいけれどどこか頼りない青年。就職試験がうまくいかず、無職でパッとしない日々を送っています。

大学時代は山岳部に所属していたため、体力だけはありあまっているのか、毎日公園の鉄棒で技を披露して、井戸端会議をしているおばあちゃんたちに拍手をもらっています。

「夢中になって鉄棒をする不審な男」と子どもたちの間で有名になってしまい、そのことを恥ずかしいと思っている甥っ子に無視される始末です。

毎日のように実家に遊びに来る姉・ジョンヒョンには「何の役にも立たない山岳部なんかに夢中になるからいけないのよ」と罵られるなど、肩身の狭い毎日を過ごしていました。

こうした冴えない青年・ヨンナムの緩い毎日が物語の前半で描かれるので、「この映画は本当にパニック映画なのか?」と疑問に思ってしまいました。ところが途中から、手に汗を握る展開へと一気に加速していきます。

ガスを吸ってしまった姉・ジョンヒョンを背負い、ヨンナムはビルの屋上へ避難するよう両親、親戚を誘導し、救助ヘリコプターで全員を避難させることに成功します。

取り残された大学山岳部の後輩・ウィジュとともに、ビルを命綱なしでロッククライミングのごとく登ったり、屋根から屋根へ跳んだりする活躍を見せます。

しかし物語の前半で、頼りないヨンナムを印象づけられたため、「大丈夫か」とハラハラしてしまい、心臓がバクバクします。

しかも過酷な状況になればなるほど、ヨンナムは素の自分をさらけ出し、泣き言を言う場面もチラホラ。

大学時代に想いを寄せ、告白したものの振られてしまったウィジュに対し、かっこいいところを見せるチャンスなのに、うまく立ち回る器用さは、ヨンナムにないのです。

でもそこがこの作品の魅力の一つ。ヒーロー像とは程遠い「人間臭さ」を前面に出すヨンナムに、思わず「頑張れー!お前ならできる!」と声を掛けてしまう人もいることでしょう。

正義感に満ちたしっかり者・ウィジュ

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

ヨンナムと一緒に取り残されるウィジュは責任感が強く、心優しい女性です。上司にしつこく言い寄られたりするなど、悩みはありますが、副店長として仕事に邁進しています。

「僕の家族のせいで君を助けることができなかった」とわびるヨンナムに、「副店長だから、お客様の安全を第一に考えるのは当たり前」と言い切る姿は、とても立派です。

ヨンナムと2人、力を合わせて脱出を試みますが、ウィジュの頭の回転の早さや機転の利くところがあったからこそ、抜群のコンビネーションで危機に立ち向かえたといってよいでしょう。

しっかり者のウィジュですが、ヨンナムと離れ離れになった瞬間、取り乱しながら戻ってきたヨンナムをなじるところは、可愛らしい一面を魅せています。

無事に救出され、先に救助ヘリコプターで脱出していた上司をビンタするところは、胸がスカッとします。

パニック映画なのに、家族愛でほっこり

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

ヨンナムとウィジュが命がけで有毒ガスから逃れようとする姿を描く一方で、家族愛をあますところなく描いているのも本作の魅力です。

ヨンナムの母親の古希のお祝いの場面では、親戚一同が集まってとても盛り上がるのですが、「年上を敬う」という韓国ならではの文化が色濃くでているシーンでもあり、興味深く観ることができます。

そして家族全員が団結して救助ヘリコプターを呼ぶところも、緊迫感・悲壮感というよりは、どこか微笑ましさがあり、思わずほっこりしてしまいます。

息子のために無茶を承知で避難所を飛び出す父・ジャンス、息子の無事を必死で祈る母・ヒョノク(コ・ドゥシム)、瀕死の状態で病院に運ばれた姉は「山岳部なんて役に立たない」と弟に向かって言ってしまったことを後悔するかのように、弟の帰りを待ち続けます。

物語の最後、ヨンナムと無事に再会した父・ジャンスが、「ありがとうございました」と丁寧に頭を下げるシーンに、胸が熱くなります。

まとめ

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED

2020年に大ヒットした『愛の不時着』。ヒョンビンが演じるジョンヒョクの部下で、韓流ドラマ好きのジュモクを演じたユ・スビンがヨンナムの親戚の一人として登場しています。

また、『キム秘書はいったい、なぜ』で、パク・ソジュン演じるヨンジュンの親友・ユシクを演じたカン・ギヨンが、ウィジュにしつこく言い寄る嫌味な上司として登場します。

大ヒットドラマでいい味を出していた俳優を別の作品で観て「あっ!」と思うのも楽しみの一つです。

この作品は、ところどころ笑いが散りばめられているのも魅力です。ヨンナムを演じるチョ・ジョンソクはもちろんのこと、ウィジュ役のユナもコメディエンヌぶりを発揮しているので、注目してみてください。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら



関連記事

連載コラム

映画『ギャング・イン・ニューヨーク』ネタバレ感想と評価。ジョン・ゴッディの実録映画化に家族たちも協力|未体験ゾーンの映画たち2019見破録37

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第37回 今年もヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回はNYに君臨した、伝説のギャングの半生 …

連載コラム

映画『おろかもの』あらすじと感想。芳賀俊×鈴木俊ふたりの監督が描く“おろかもの”ゆえにたどり着く感動|2019SKIPシティ映画祭12

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019エントリー・芳賀俊監督×鈴木祥監督作品『おろかもの』が7月16・20日に上映 埼玉県川口市にて、映画産業の変革の中で新たに生み出されたビジネスチャンスを掴んでい …

連載コラム

映画『ピークレスキュー』あらすじネタバレと感想。最強の特殊部隊がテロ相手に立ち向かう姿を描く|未体験ゾーンの映画たち2020見破録36

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第36回 「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第36回で紹介するのは、テロ組織と闘う特殊部隊の活躍を描いた映画『ピーク・レスキュー』。 欧米の映 …

連載コラム

タイ映画『ホームステイ』感想レビューと評価。BNK48チャープランの初演技と“誰にでもある青春”の思い出|蟹江まりの映画ともしび研究部2

連載コラム「蟹江まりの映画ともしび研究部」第2回 こんにちは、蟹江まりです。 連載コラム「蟹江まりの映画ともしび研究部」の第2回目に取り上げるのは、2019日10月5日に公開された『ホームステイ ボク …

連載コラム

アニメ映画『ザ・タワー』あらすじと感想レビュー。難民問題を鋭く描きグランプリと観客賞をW受賞|2019SKIPシティ映画祭14

レバノンの難民キャンプに暮らす少女と曽祖父の強い絆 埼玉県川口市にて、映画産業の変革の中で新たに生み出されたビジネスチャンスを掴んでいく若い才能の発掘と育成”を目指し誕生したSKIPシティ国際Dシネマ …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
映画『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)より全国公開
映画『写真の女』
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学