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『フランケンシュタイン対地底怪獣』『サンダ対ガイラ』映画解説。進撃の巨人に影響を与えた特撮作品|邦画特撮大全47

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第47章

2019年現在、NHKにてアニメ版が放送中で、2015年に樋口真嗣監督によって実写映画化もされた人気漫画『進撃の巨人』。

そのイメージベースとなった作品が、今回特集する『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966)です。

『進撃の巨人』の原作者・諌山創のみならず、クエンティン・タランティーノ監督、俳優ブラッド・ピット、『MEG ザ・モンスター』(2018)のジョン・タートルトーブ監督など、国内外の数多くの作り手たちに影響を与えた作品です。

今回の邦画特撮大全は『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』と『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』を特集します。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

映画『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』の作品概要

【公開】
1965年8月8日(日本・アメリカ合作映画)

【監督】
本多猪四郎

【特技監督】
円谷英二

【脚本】
馬淵薫

【音楽】
伊福部昭

【キャスト】
ニック・アダムス、水野久美、高島忠夫、土屋嘉男、中村伸郎、田崎潤、藤田進、志村喬、納谷悟朗、熊倉一雄

【作品概要】
東宝とベネディクト・プロの合作映画。

出演者はハリウッドから招聘したニック・アダムスのほか、水野久美、高島忠夫、土屋嘉男ら東宝特撮映画の常連俳優が出演。また出番はわずかですが、志村喬と中村伸郎という2人の名優も出演しています。

『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』あらすじ

不死の兵隊を作るため、第二次世界大戦末期にドイツから広島に持ち込まれた“フランケンシュタインの心臓”。しかし時は1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下されました。

終戦から15年後。広島国際放射線医学研究所に勤めるボーエン博士と助手の季子は、犬を殺して食べる浮浪児の話を聞きます。

2人は偶然この浮浪児を発見し、そのまま保護しました。しかし、彼は驚異的な生命力を持つフランケンシュタインだったのです。

“フランケンシュタインの怪物”と怪獣のベストマッチ

兎の死骸や倉庫の中を這いまわる手首など、東宝怪獣映画の中でも怪奇性の強い作品が本作『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』です。

題名にもあるように、メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン──あるいは現代のプロメテウス』と、同作の映像化作品が発想のベースにあります。

本作に登場するフランケンシュタインは、誕生経緯が原典とは違うため縫い目やボルトこそありませんが、四角い頭部など全体的なデザインは有名なボリス・カーロフが演じた姿にそっくりです。しかし見た目だけ似せても、“孤独なモンスター”という要素が中心に来なければ、フランケンシュタインの物語にはなりません。

原典の「フランケンシュタイン」に登場する怪物は醜悪な姿のため、人間社会から拒絶されてしまう存在です。本作に登場する“フランケンシュタイン”も原典の「フランケンシュタイン」の怪物を踏襲した存在になっています。彼はその姿から原典同様に人々から迫害されてしまいます。しかし、彼は家畜などを襲って食べたりはしますが、心は少年のままで基本的に人間へ危害を加えることはありません。

本作のクライマックスは、巨大化したフランケンシュタインと人間を襲って喰らう地底怪獣バラゴンとの戦いです。「巨人と巨大怪獣の戦い」という構図は、本作公開の翌年に放送が開始された『ウルトラマン』(1966)の原型ではないでしょうか。フランケンシュタインがバラゴンを振り回す格闘スタイルは、ウルトラマンでも見られます。

映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』の作品概要

【公開】
1966年7月31日(日本・アメリカ合作映画)

【監督】
本多猪四郎

【特技監督】
円谷英二

【脚本】
馬淵薫、本多猪四郎

【音楽】
伊福部昭

【キャスト】
ラス・タンブリン、水野久美、佐原健二、田崎潤、田島義文、中村伸郎、睦五朗

【作品概要】
東宝とベネディクト・プロの合作映画。『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』の姉妹篇で、直接的な続篇ではないものの後日談という体裁で製作されました。

出演は『ウエスト・サイド物語』(1961)のラス・タンブリン(声は睦五朗が吹替)。

また、前作『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』に出演した水野久美、佐原健二、田崎潤たちが別の役で登場します。しかし、水野久美が演じるアケミは役名こそ違いますが、前作で演じた戸上季子と物語上の役割は同じです。

『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』のあらすじ

海上にて、漁船が大ダコに襲われます。さらに巨大なフランケンシュタインの怪獣“ガイラ”も海から現れ、漁船を襲います。

唯一生存した乗組員は、怪物が人間を捕食したと証言。

マスコミは5年前に脱走した人造人間の仕業ではと、京都生物化学研究室に押し寄せます。スチュワート博士と助手のアケミはこの疑惑を否定しました。

再び現れた怪獣は羽田空港を奇襲し、人間を捕食します。自衛隊は怪獣に対し新兵器“メーサー殺獣光線車”と高圧電流の二段構えの作戦を展開。怪獣を追い詰めますがその時、もう1体の怪獣“サンダ”が姿を現したのです……。

『進撃の巨人』のイメージベース

『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』の姉妹篇が、本作『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』です。

劇中では2体の怪獣を“フランケンシュタイン”と呼称していますが、「フランケンシュタイン――あるいは現代のプロメテウス」に登場する怪物に名前はなく、フランケンシュタインは怪物を作った科学者本人の名前です。そのため本作の英題は“The War of TheGargantuas”で、フランケンシュタインではなくガルガンチュアと呼ばれています。

サンダとガイラの造形も毛むくじゃらで、前作に登場したフランケンシュタインより怪獣らしさを強調したデザインとなっています。この2体をデザインしたのは『ウルトラマン』のデザインで知られる成田亨です。

人気漫画『進撃の巨人』の原作者・諌山創は本作から影響を受けたとインタビューで述べています。小学校低学年の時に本作を鑑賞しトラウマとなり、『進撃の巨人』を執筆する際のイメージソースになったと言います。また樋口真嗣監督も実写版『進撃の巨人』を制作する際、本作を参考にしたそうです。

たしかにガイラが羽田空港を襲い人間を鷲掴みにし捕食する様は、『進撃の巨人』の巨人たちに非常に似ています。また人間の味方であるサンダと人間を喰らうガイラの2体の怪獣がぶつかり合う展開も、『進撃の巨人』の巨人化したエレンと巨人との戦いを想起させます。また実写版『進撃の巨人』の後編で巨人化したエレンとシキシマの戦闘場面もサンダとガイラを彷彿とさせます。

また、東宝怪獣映画でお馴染みの兵器“メーサー殺獣光線車”が初登場したのも本作です。初稿段階ではメーサー車の登場はなく、第3稿から追加された要素です。本編中盤でガイラ撃退に出動した自衛隊が使用し映画を盛り上げています。

まとめ

発想元である小説「フランケンシュタイン」が持つテーマと、怪獣映画を巧みに融合させた『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』。前作以上に怪獣らしさを追求した『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』。

この2作はゴジラシリーズとはまた違う空気を持った映画で、カルト的な人気を誇る作品です。『ウルトラマン』や『進撃の巨人』など後続作品との影響関係からも、単なるカルト映画として扱うことは出来ないでしょう。

次回の邦画特撮大全は…

次回の邦画特撮大全は、『ゴジラVSキングギドラ』(1991)を特集します。

お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

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