連載コラム「邦画特撮大全」第107章
今回の邦画特撮大全は、Vシネクスト『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』を紹介します。
2022年3月12日(土)から期間限定上映されている『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』。
放送から10周年を迎えた『仮面ライダーオーズ』(2011~2012)の復活作品です。2021年11月5日、東京国際映画祭で『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』が上映された際に仮面ライダーオーズの復活、つまり本作『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』の製作が発表されました。
10年の時を経て描かれた仮面ライダーオーズの「欲望」とは、一体どんな内容だったのか見て行きましょう。
CONTENTS
『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【原作】
石ノ森章太郎
【監督】
田﨑竜太
【脚本】
毛利亘宏
【キャスト】
渡部秀、三浦涼介、高田里穂、岩永洋昭、君嶋麻耶、有末麻祐子、ヤマダユウスケ、橋本汰斗、松本博之、矢作穂香、甲斐まり恵、ゆかな、谷昌樹、日野聡、中田譲治、宇梶剛士
【作品概要】
平成仮面ライダー第12作目『仮面ライダーオーズ』の10周年記念作品。渡部秀、三浦涼介らテレビシリーズのオリジナルキャストが再結集。
脚本は映画『スーパーヒーロー戦記』(2021)の毛利亘宏。『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2016)でメインライターを務めた毛利ですが、実は「仮面ライダーオーズ」のテレビシリーズが彼の東映特撮初参加作品だったのです。
監督は同じく映画『スーパーヒーロー戦記』(2021)の田﨑竜太。「仮面ライダーオーズ」テレビシリーズでは1話・2話、最終回などの重要エピソードを数多く演出しています。
『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』のあらすじとネタバレ
火野映司/仮面ライダーオーズたちとメダルの怪人・グリードの戦いから時を経て、2021年。
800年前メダルを創り出し、グリードを生んだ古代オーズが復活し、現代の人間社会を蹂躙していました。生き残った人類はレジスタンスとして古代オーズと戦っています。
映司の相棒だった鳥のグリード・アンクはコアメダルが割れたこと(テレビシリーズ最終回)によって、消滅していました。しかしアンクを呼ぶ声が聞こえます。その声の主は映司――。
右腕だけ復活したアンクが見たのは、泉比奈とその兄・泉信吾、伊達明と後藤慎太郎らかつて共に戦った人間たちがレジスタンスとしてグリードたちと戦う姿でした。
信吾は戦いの中で爆発に巻き込まれ命の危機に瀕しますが、アンクが信吾に憑依してその危機を脱します。
そして、肉体を手に入れたアンクの前に映司が姿を現し、かつての相棒が10年ぶりに再会しました。
『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』の感想と評価
テレビシリーズ終了から10年の時を経て、製作された『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』。
この項では作品の核心部分に触れているため、まだ作品を鑑賞していない方、まだ作品の内容を知りたくない方は、ここから先をお読みになるのを推奨しません。
東映の特撮ヒーローの10周年記念作品は『忍風戦隊ハリケンジャー 10 YEARS AFTER』(2013)に端を発しているように、これまでスーパー戦隊シリーズで4作品製作されていますが、仮面ライダーシリーズで10周年記念に新作が作られるのは本作が初です。
スーパー戦隊と仮面ライダー、それぞれのシリーズの色の違いから、本作『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』は、スーパー戦隊シリーズの10周年記念作品のようにテレビシリーズのキャストが再会する「ファンサービス」色の強い物ではなく、シリーズの「完結編」を選択したのです。
そのためファンにとって本作が「賛否両論」となるのは製作側も覚悟の上だったのではないかと思います。
一方で仮面ライダーオーズ、仮面ライダーバースの新フォーム、オリジナルの新ライダーの登場などファンサービスも盛り込まれています。
『仮面ライダーオーズ』の続編を作るにあたって起点になるのは、やはり「アンクの復活」です。
『仮面ライダーオーズ』とは火野映司/仮面ライダーオーズとアンクの歪なバディという関係性、テレビシリーズ最終回でアンクのメダルは割れ消滅しているという結末から続きを作るのであれば「どうアンクを復活させるのか」に尽きてきます。
実際テレビシリーズ終了後に製作された『仮面ライダー×仮面ライダーフォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGAMAX』(2011)、『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINALビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』(2017)では、アンク復活にかなり説得力のある理由づけがなされていました。
この2作品と本作の一番の違いは「視点」です。前2作では火野映司の視点に立ってアンク復活が描かれていました。
本作ではアンクの視点で物語が描かれ、彼が復活したのは映司が死の間際に願った最大の「欲望」だと理由が明かされます。
上記の『仮面ライダー×仮面ライダーフォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGAMAX』(2011)を見ればわかるように、テレビシリーズ後の映司はアンクの復活と再会を強く願って行動しているためこの理由づけ自体には納得です。
またアンク視点で物語が描かれていくのも新鮮で、本作を踏まえた上でアンク視点に沿って『仮面ライダー×仮面ライダーフォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGAMAX』(2011)を改めて鑑賞すると未来から来たアンクの台詞に色々な意味合いが見えてきます。
本作において好印象だったのが、やはりキャストの再結集です。10年の時を経てもテレビシリーズのイメージを損なっていない上に、ひと昔という年月を経て各キャラクターの成長や変化を内包した好演が見られます。
特に火野映司役の渡部秀は本物の火野映司、ゴーダが装った映司、ゴーダが憑依した映司、アンクが憑依した映司と実質1人4役でした。
本作の映司の初登場シーンはゴーダが装った映司、つまり映司であって映司でないキャラクターであり、観客に懐かしさと同時に違和感を覚えさせるという卓抜した演技力を見せてくれました。
まとめ
10年の時を経て製作された新作『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』。
仮面ライダーシリーズ屈指の人気作『仮面ライダーオーズ』の続編という、キャストとスタッフ、そしてファンの強大な「欲望」は10年の時を経て結実した作品です。
Vシネクスト『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』は2022年3月12日からの期間限定上映です。「欲望」がどうのように結実したのか、未見の方は劇場で確認しましょう。