Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』ネタバレあらすじ感想と結末の考察解説。キャスト再集結でテレビシリーズの8年後を描き出す|邦画特撮大全103

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第103章

今回の邦画特撮大全はVシネクスト『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏(トリオ)』(2022)を紹介します。

2022年1月28日(金)より期間限定上映中の『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』は、令和ライダー第2弾『仮面ライダーセイバー』(2020~2021)のスピンオフ作品。

テレビシリーズから8年後の世界を描いています。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

映画『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』の作品情報


(C)2022 石森プロ・ADK EM・バンダイ・東映ビデオ・東映 (C)2020 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
石ノ森章太郎

【監督】
上堀内佳寿也

【脚本】
福田卓郎

【キャスト】
内藤秀一郎、山口貴也、川津明日香、青木瞭、生島勇輝、富樫慧士、岡宏明、市川知宏、アンジェラ芽衣、庄野崎謙、飛鳥凛、嶺岸煌桜、長谷部瞳、木村了、橋本さとし、知念里奈

【作品概要】
令和ライダー第2弾『仮面ライダーセイバー』(2020年)のスピンオフ作品。内藤秀一郎、山口貴也らテレビシリーズのメインキャストたちが再結集しました。

ゲストキャストは劇団☆新感線の元メンバーでドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』のナレーションとしても知られる橋本さとし。

仮面ライダーW』(2009~2010)で園咲若菜/クレイドールドーパントを演じた飛鳥凛、『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』(2016)にゲスト出演した木村了の3人。

脚本は「仮面ライダーセイバー」テレビシリーズのメインライターである福田卓郎。監督はセイバーテレビシリーズにも参加し『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019)のメイン監督を務めた新鋭・上堀内佳寿也。

映画『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』のあらすじとネタバレ


(C)2022 石森プロ・ADK EM・バンダイ・東映ビデオ・東映 (C)2020 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

小説家で書店の店主でもある神山飛羽真/仮面ライダーセイバーは、“ソードオブロゴス”という組織に属する剣士=仮面ライダーたちと共に、世界の均衡を守るため脅威と戦っていました。

ある時、飛羽真が経営する「ファンタジック本屋かみやま」が原因不明の火災で焼失。その時なぜかその現場に陸という少年がいました。

8年後、飛羽真は幼馴染・間宮の協力を受け、新しい書店を経営。陸を引き取り息子として育てますが、いまだに会話もなく「お父さん」と呼ばれたこともありません。陸はかつての剣士たちの戦いで両親を失っていたのです。

一方、新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズは、飛羽真の担当編集者・須藤芽依と交際は続いているものの、まだ結婚には至っていませんでした。

翻訳家として活動している冨加宮賢人/仮面ライダーエスパーダは、婚約者である立花結菜との生活が順調で結婚を間近に控えていました。

そんな中、聖剣の持ち主たちが相次いで消える怪事件が連続して発生。さらに人々の記憶から剣士たちの存在も消えていきます。

事件の究明に動く倫太郎でしたが、彼の前には無銘剣虚無を手にした仮面ライダーファルシオン アメイジングセイレーンが現れました。

ファルシオンの正体は、篠崎真二郎という男で、自らを倫太郎の実の父親だと名乗ります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』ネタバレ・結末の記載がございます。『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022 石森プロ・ADK EM・バンダイ・東映ビデオ・東映 (C)2020 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

真二郎の目的は、記憶を改ざんする“アメイジングセイレーンワンダーライドブック”の力を使って、剣士たちの戦いで犠牲になった人々の無念を晴らすため、剣士たちの存在を世界から消すことでした。

倫太郎もその力によって、かつての仲間たちの記憶を失っていきます。

一方、賢人も仮面ライダーファルシオンに襲撃されます。賢人は無銘剣虚無を奪い、ファルシオンの腕に一撃を加え辛くも危機を脱します。

しかし家に帰ると結菜の腕には自分がファルシオンに負わせたのと同じ傷がありました。結菜は剣士たちの戦いで婚約者を失い、その復讐を果たすため賢人に近づいたのです。

一方、飛羽真は学校から帰ってこない陸を探す中、仮面ライダーファルシオンに襲撃されます。飛羽真は8年前のトラウマから陸が火と剣士を怖がるため、火炎剣烈火を封じて生身でファルシオンに挑み、深手の傷を負ってしまいました。

陸はいなくなった愛犬ラッキーを探していたのです。飛羽真は陸がラッキーにしか心を開いておらず、いまだに自分を父親として認めてくれていないと感じていました。

陸にはラッキーが必要と思う飛羽真は手負いの身でラッキーを探そうとしますが、間宮は「いま陸が父親である飛羽真を失ったらどう思うのか」と飛羽真を止めます。

倫太郎と賢人はそれぞれファルシオンと対決する覚悟を決めました。真二郎は倫太郎にかつての戦いで犠牲になった人々の姿を見せますが、倫太郎はその人々を背負うことを決め仮面ライダーファルシオンを撃破。

戦いが終わり倫太郎は真二郎と親子の対面をようやく果たしますが、契約によって真二郎は無銘剣虚無に貫かれ絶命……。

賢人は結菜の変身する仮面ライダーファルシオンと結婚式場で対峙。結菜を救いたいという賢人の一心が“アラビア-ナナイトワンダーライドブック”を生み出し、仮面ライダーエスパーダアラビア-ナナイトに変身!! ファルシオンを討ち果たします。

最初は復讐という目的のため賢人に近づいた結菜でしたが、共に暮らす内に結菜にとって賢人は大切な存在となっていました。それは賢人も同じです。

賢人は結菜に生きてもらいたいと自分の存在を消してもいいと言いますが、結菜はそれを拒み絶命……。

ラッキーを探しに家を出た陸を追う飛羽真。行き着いたのは飛羽真と陸が初めて出会った場所、かつて「ファンタジック本屋かみやま」のあった場所でした。そして仮面ライダーファルシオンが現れ飛羽真を襲います。

ファルシオンの正体は間宮でした。間宮は剣士たちの戦いで父親と記憶を失った男で、飛羽真の幼馴染ではなかったのです。

アメイジングセイレーンワンダーライドブックを使い、8年の月日をかけて人々の記憶から剣士たちの存在を消し、飛羽真の記憶を改ざんして近づき復讐の時を狙っていました。真二郎と結菜に契約を持ち掛けたのも間宮です。

間宮は自分が味わったように、飛羽真の大切な人を目の前で奪おうと陸に刃を向けます。その時、陸はやっと飛羽真を「お父さん」と呼び火炎剣烈火を手に取りファルシオンの刃を受けます。

この陸の行動のショックで間宮は記憶を取り戻しました。陸と間宮は本来同じ存在で、無銘剣虚無に触れたことで分裂した人格だったのです。

そして8年間ともに過ごしたことにより、陸にとっても間宮にとっても飛羽真は大切な存在となっていたのです。

間宮は8年前、無銘剣虚無を手に取った過去を変え、これまでの8年間をなかったことにします。剣士たちの存在は世界に戻り、そして死んだ真二郎も結菜も倫太郎たちと戦うことも死ぬこともなくなりました。

展望台にたたずむ飛羽真の元に、芽依が持ち込まれた原稿を持ってきました。その原稿には“間宮陸”という執筆者の名前がありました。

映画『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』の感想と評価


(C)2022 石森プロ・ADK EM・バンダイ・東映ビデオ・東映 (C)2020 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

本作『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』のキャッチコピーは「正義は罪なのか。」です。

テレビシリーズから8年後、世界に平和が訪れ新たな生活を始めた仮面ライダーたちを襲った新たな脅威は、タイトルの「深罪」が指すように正義を信じて戦ったはずの彼らに課せられた罪です。

テレビシリーズで彼らが戦う中で画面には映らない多くの犠牲がありました。通常のヒーローもの、勧善懲悪の物語であれば、最後の敵を倒し世界が平和になって終わりです。

本作では物語の裏側にいたはずの多くの犠牲者の存在にスポットを当て、神山飛羽真/仮面ライダーセイバー、新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズ、冨加宮賢人/仮面ライダーエスパーダの3人が課せられた罪をどのように贖うか並行して描かれていきます。

媒体がVシネマという点、登場人物たちが8年の月日を経て成長しそれぞれ「家族」がいる点などから、本作『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』は全体的にシリアスでテレビシリーズ時にあったようなコミカルな描写はほぼありません。

物語構造も前述したように3人の仮面ライダーの行動を同時並行して描くという複雑なもので、流血などの過激な描写もいとわず挿入されています。

アクションシーンとエンディングテーマを除けば劇中音楽もほぼ皆無でした。ロケーションもテレビシリーズでは使用されていない場所が選ばれています。

冒頭は手振れカメラによる主観ショットいわゆるPOVで描写され作品のサスペンスを高めていました。

冨加宮賢人/仮面ライダーエスパーダのアクションシーンでは、賢人の目の下に血が涙のように流れています。

仮面ライダーは“同族殺し”というモチーフから、目の下に“涙ライン”という意匠が盛り込まれていますが、この描写は「仮面の下で涙を流している」という仮面ライダーの基本精神をまさに反映しているものです。

昨年2021年は仮面ライダー誕生50周年、スーパー戦隊45作品というアニバーサリーが重なったことから、クロスオーバー作品『スーパーヒーロー戦記』が製作されました。

例年夏に公開される仮面ライダー単体の劇場版長編は製作されず、本作『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』がセイバー初の長編作品となりました。

そのためなのか、演出面でも物語面でもテレビシリーズでは出来ないであろう試みが多数取り入れられている野心的な作品に仕上がっています。

まとめ


(C)2022 石森プロ・ADK EM・バンダイ・東映ビデオ・東映 (C)2020 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

セイバー初の長編作品となった『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏(トリオ)』。

ハードな演出とシリアスな物語から、テレビシリーズでは出来ないことをしようとするスタッフの気合いがひしひし感じられる作品となっていました。

テレビシリーズから8年後、父親になった飛羽真らお馴染みの登場人物たちの成長した姿も見どころです。また出番の少なかった剣士たちの8年間に何があったか想像するのも楽しみのひとつです。

『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』は2022年1月28日(金)により期間限定上映。DVD・ブルーレイは2022年5月11日(水)発売予定です。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら



関連記事

連載コラム

遊郭編 最終話ネタバレ|童磨役声優は宮野真守!感想と考察解説×原作登場シーン比較で分かる“完璧な掴み”【鬼滅の刃全集中の考察33】

連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第33回 大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。 2021年12月5日より放送 …

連載コラム

映画『ようこそ、革命シネマへ』あらすじと感想レビュー。劇場復興を通して表現の自由が奪われた政権下の人々に笑顔を取り戻す|映画という星空を知るひとよ1

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第1回 第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門でドキュメンタリー賞と、観客賞を受賞した、スハイブ・ガスメルバリ監督の映画『ようこそ、革命シネマへ』をご紹介いたし …

連載コラム

『ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち』あらすじ感想評価レビュー。瓦礫の街で生き抜く子どもたちの叫び|いま届けたい難民映画祭2024・4

連載コラム『いま届けたい難民映画祭2024』第4回 難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1 …

連載コラム

『彼女が好きなものは』あらすじ感想と評価解説。小説を原作にセクシュアルマイノリティの青春模様を描く|TIFF2021リポート2

『彼女が好きなものは』は東京国際映画祭2021Nippon Cinema Nowにて上映、12月3日(金)全国ロードショー! 2021年、舞台を日比谷・有楽町・銀座地区に移し実施された東京国際映画祭。 …

連載コラム

映画『血を吸うカメラ』ネタバレあらすじと感想評価。マイケルパウエルとヒッチコック「サイコ」の比較解説|奇想天外映画祭アンダーグラウンドコレクション2020【第2回】

2020年8月、映画史に残る怪作・珍作・迷作・凡作・奇作を集めて実施された「奇想天外映画祭 アンダーグラウンドコレクション 2020」。 そこで紹介された作品にイギリス映画の古典的名作を数多く監督した …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学