連載コラム『光の国からシンは来る?』第16回
1966年に放送され、2021年現在まで人々に愛され続けてきた特撮テレビドラマ『空想特撮シリーズ ウルトラマン』(以下『ウルトラマン』)を基に描いた「空想特撮映画」こと『シン・ウルトラマン』。
2022年5月13日に劇場公開を迎えた本作ですが、ついに同年の11月18日、Amazon Prime Videoでの独占配信を迎えました。
今回は、「シン」シリーズではなく、「シン・ウルトラ」シリーズとしての映画『シン・ウルトラマン』の続編の可能性についてピックアップ。
本作の設定・デザイン資料集『シン・ウルトラマン デザインワークス』にてその可能性が示唆された続編とは一体どのような内容なのかを、『シン・ウルトラマン』の企画経緯ともに解説していきます。
CONTENTS
映画『シン・ウルトラマン』の作品情報
【日本公開】
2022年(日本映画)
【監督】
樋口真嗣
【脚本・総監修】
庵野秀明
【製作】
塚越隆行、市川南
【音楽】
鷺巣詩郎
【キャスト】
斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、西島秀俊、山本耕史、岩松了、長塚圭史、嶋田久作、益岡徹、山崎一、和田聰宏
映画『シン・ウルトラマン』続編の可能性を解説!
『シン・ウルトラマン デザインワークス』
元々は“三部作”だった『シン・ウルトラマン』
「シン」シリーズ作品の一本としての新たな映画ではなく、「シン・ウルトラ」シリーズとしての続編は作られる可能性はあるのか。
その回答となり得るであろう製作陣による言葉は、『シン・ウルトラマン』が公開を迎えた2022年5月13日と同日より、劇場での先行販売が開始された本作の設定・デザイン資料集『シン・ウルトラマン デザインワークス』から見つけることができます。
同書籍に収録されている、映画の企画・総監修を務めた庵野秀明による手記。『シン・ウルトラマン』の企画経緯やその開発過程にまつわる説明から始まるその文中では、「本作は元々“三部作”として企画されていた」という事実が明らかになります。
2012年11月17日公開の『ヱヴァンゲリヲン劇場版:Q』を経た2013年、庵野秀明は「帰ってきたウルトラマンプロットメモ」を記録しています。
「ウルトラ」シリーズのうち、最も熱中していたのは『帰ってきたウルトラマン』(1971〜1972)であったで知られている庵野秀明。それは、『シン・ウルトラマン』とともに2022年11月18日よりAmazon Prime Videoにて配信された『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(1983)も物語っています。しかし同企画の開発はある程度まで進んだものの、残念ながら断念されることに。
『シン・ウルトラマン』の企画そのものの始まりは、2017年8月に円谷プロダクションの社長へ就任した、本作の製作・企画に携わった塚越隆行から「2020年に向けた、三本連作の作品を考えてほしい」「できればウルトラマンを題材に、企画と監督をやってほしい」と庵野秀明が依頼されたこと。
当時は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の最中であったものの、塚越隆行の熱意の後押しと「ウルトラマンに関わる最後のチャンス」と感じた庵野秀明。2013年の「帰ってきたウルトラマンプロットメモ」を分解・再構成。
前日譚・後日談をそれぞれ新たに考えた三部作の企画メモと、第一作にあたる『シン・ウルトラマン(仮題)』、第二作にあたる『続・シン・ウルトラマン(仮題)』の作品別の企画メモをもとに、2018年に塚越隆行との最初の打ち合わせが行われたのです。
庵野秀明にとっての「自分の好きなウルトラマン」
第一作『シン・ウルトラマン(仮題)』、第二作『続・シン・ウルトラマン(仮題)』に加え、第三作には『シン・ウルトラセブン(仮題)』という名も書面には記されていた、庵野秀明が作成した「ウルトラ」シリーズのリブート三部作の企画メモ。
第二作・第三作ともに、一体どのような作品となるのか。その全貌は誰もが気になる疑問ではありますが、『シン・ウルトラマン デザインワークス』の庵野秀明による手記には、「『シン・ウルトラマン』の作り終えた時点での、続編の具体的な製作状況」への答えも記されています。
『帰ってきたウルトラマン』のリブート作品となるであろう第二作『続・シン・ウルトラマン(仮題)』が最初に描きたかった映像でもあるため、続編を作りたいという想いを語る庵野秀明。その一方で、『シン・ウルトラマン』以上にその製作費が莫大となる可能性を言及しています。
『シン・ウルトラマン』は2022年5月に劇場公開を迎えたのち、6月の時点で興行収入は40億円を突破。同年11月18日からはAmazon Prime Videoでの独占配信を皮切りに、映画の主戦場はネット配信へと河岸を変えつつありますが、果たして本作は続編の可能性が芽生える結果へとたどり着けるでしょうか。
しかしながら、「最初に描きたかった映像」と語る庵野秀明による『帰ってきたウルトラマン』のリブート作品……「シン・ウルトラ」シリーズの第二作『続・シン・ウルトラマン(仮題)』の存在を示された上で、それを忘れられる「ウルトラ」シリーズファンはいないはずです。
『シン・ウルトラマン』であれほどの愛が詰め込まれていて、自分たちに「ウルトラマンとは?」と再考するヒントを映し出してくれたのに、庵野秀明にとっての「自分の好きなウルトラマン」である『帰ってきたウルトラマン』のリブート作品を観られないのか?
それを惜しむ人々が存在する限り、「シン・ウルトラ」シリーズ三部作の可能性は決して失われないはずです。
まとめ/目覚め、はじまるラストシーン
『シン・ウルトラマン』のラスト。ゾーフィによってリピアと体を分離された神永は、禍特対の面々に囲まれながら目を覚まします。
「別れ」と「目覚め」を描いたその光景は、『ウルトラマン』の最終回「さらばウルトラマン」のラストのように、ウルトラマンとの出会いと別れを経た人々が「人間の可能性」を自覚し、それを信じる=真に目覚める様を象徴した場面といえます。
そして自身の意識を取り戻した神永にとっては、ウルトラマンと別れ目を覚ましたその瞬間こそが、ウルトラマンと出会い、別れた人間の世界の「はじまり」といえるでしょう。
そのラストシーンにて人間、そして世界の「目覚め」を描いた『シン・ウルトラマン』。本作もまた、「シン・ウルトラ」シリーズの「はじまり」の作品となることを期待するばかりです。