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Entry 2022/02/23
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ネタバレ映画『牛首村』考察とラスト/エンドロール解説。最後の“同じ結末”が意味する恐怖の村シリーズが“三部作”である理由|のび編集長の映画よりおむすびが食べたい2

  • Writer :
  • 河合のび

連載コラム『のび編集長の映画よりおむすびが食べたい』第2回

「Cinemarche」編集長の河合のびが、映画・ドラマ・アニメ・小説・漫画などジャンルを超えて「自身が気になる作品/ぜひ紹介したい作品」を考察・解説する連載コラム『のび編集長の映画よりおむすびが食べたい』。

第2回で考察・解説するのは、『犬鳴村』『樹海村』に続く「恐怖の村」シリーズ第三作『牛首村』です。

北陸最恐の心霊スポット・坪野鉱泉を舞台に、「その恐ろしさゆえに誰もその内容を知らない」とされる伝説の怪談「牛の首」をめぐる恐怖譚を描いた『牛首村』。

本記事では、清水崇監督曰く「血筋の三部作」でもあるというシリーズ全三作を、各作品で描かれた「恐怖」に秘められた意味、そして『牛首村』のエンドロールならびにその物語の結末の内容から紐解いていきます。

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映画『牛首村』の作品情報


(C)2022「牛首村」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
清水崇

【脚本】
保坂大輔、清水崇

【出演】
Kōki,、萩原利久、高橋文哉、芋生悠、大谷凜香、莉子、松尾諭、堀内敬子、田中直樹、竜のり子、麿赤兒

【作品概要】
清水崇監督が手がけてきた「恐怖の村」シリーズの第三弾。富山県に実在する北陸最恐の心霊スポット・坪野鉱泉を舞台に、「その恐ろしさゆえに誰もその内容を知らない」とされる伝説の怪談「牛の首」をモチーフとした物語が描かれる。

主演は本作で映画初出演・初主演を果たしたKōki,。「牛首村」にまつわる呪いと恐怖に巻き込まれてゆく女子高生姉妹を一人二役にて演じた。

映画『牛首村』のあらすじ

奏音はある心霊動画に映った自分そっくりな女子高生を見て驚愕する。彼女が牛首マスクを無理やり被せられ、廃墟に閉じ込められたところで映像は途切れた。

「彼女は誰なのか?」妙な胸騒ぎと忍び寄る恐怖。

何者かに導かれるように、動画の撮影地・坪野鉱泉へと向かう。

妹の存在、双子、牛の首……「牛首村」と呼ばれるおぞましい場所の秘密と風習が狂気と恐怖となり、彼女にまとわりついていく……。

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映画『牛首村』の感想と評価


(C)2022「牛首村」製作委員会

「血筋の三部作」が意味するものは?

2020年の『犬鳴村』、2021年の『樹海村』、そして2022年の『牛首村』と続いてきた「恐怖の村」シリーズ。シリーズ全作を手がけてきた清水崇監督は、『牛首村』までの三作は「血筋の三部作」でもあると語っています。

村人たちの無念の記憶を知った子孫である者たちが、自身の血脈を受け入れその記憶を継承しようとする姿を描いた一作目『犬鳴村』。「指切り」という流血の行為によって村の結束と存続を試みようとした者たちと、約束によって運命に抗おうとするがいずれも哀しき末路をたどる親子と姉妹を描いた二作目『樹海村』。

そして親子とも姉妹とも異なる「双子」という血縁がもたらす、シンクロニシティとも表現される見えざる引力=「運命」と、映像として残り続ける記憶の恐怖をより掘り下げて描いた三作目『牛首村』。

村という限られた血族によって構成される共同体にまつわる怪談/都市伝説を題材とした以上、シリーズにおいては避けて通れないテーマでもあった「血筋」。『牛首村』を経てついに完成した「血筋の三部作」は、その三作を通じて何を描こうとしたのでしょうか。

各作品で描かれた「恐怖」に秘められた意味から、その真相を探っていきます。

記憶という映画/一卵性双生児という映像が結びつく時


(C)2020「犬鳴村」製作委員会

犬鳴村』作中では自身の出生に固執する主人公・奏に、村の悲劇を知る亡霊・成宮が犬鳴村の記録映像のフィルムを見せる場面があります。

成宮から聞かされた悲惨な出来事に困惑しスクリーンの前に立った奏は、自身の体に投写される映像を手で拭おうとしますが、成宮は「君は見なければいけない」「彼らから目をそらさないでくれ」と告げます。そしてスクリーン上の映像からは、犬鳴村の村人の亡霊たちが湧き出てくるのです。

映画が持つ「人々の記憶から忘れられてゆく『記憶』を残す」という機能と、それゆえに映画が持つ恐怖の本質を描いたこの場面。そして記憶と映画が結びつくことで生じる恐怖は、『牛首村』でも映画そのものではない別の「映像」を通じて描かれています。それが、本作にて描かれる「同じ姿形をした二人の人物の映像」としての双子なのです。


(C)2022「牛首村」製作委員会

「どっちが『あなた』で、どっちが『あの子』なの?」……一卵性双生児の人々と接する際に、誰もが常に心の内で秘めている小さな不安と恐怖は、ドッペルゲンガーやバイロケーションといった超常現象が持つ「自己はこの世界にひとりしか存在しない」という信仰を激しく動揺させる恐怖とつながっています。

そうした人間の自己存在を揺るがす恐怖は、忘れようとしても消えることのない記憶という映画がもたらす恐怖と結びつくことによって、「自己存在の揺らぎに対する恐怖と、その恐怖に気づいてしまった記憶は、決して忘れることも消えることもない」という新たな形の恐怖を生み出す。その恐怖を描いたのが、音たちが『牛首村』終盤にて奏過去の村で目撃した、双子の村人たちの光景なのです。

村という「ハコ」=「映画館」


(C)2021「樹海村」製作委員会

「恐怖の村」シリーズ三作では理由や経緯は違えども、主人公たちがある出来事や行為を通じて今はなき村へと転移し、かつて村で起こった悲劇/惨劇の記憶を擬似的に再体験させられるという展開が常に描かれてきました。

ある一つの空間内に閉じ込められ、忘れようとしても消えることのない記憶を体験させられる……それは、映画を観るために作られた空間としての「映画館」そのものといえます。

「恐怖の村」シリーズにおける村は、映画館でもあった。そう捉えられる理由の一つに、『樹海村』に登場した恐るべき呪具「コトリバコ」が挙げられます。

コトリバコに接した登場人物たちの大半が次々と村の記憶に飲み込まれ、指切りをはじめとする流血の行為を通じて村で起きた出来事を再体験させられる。それはまさに、観る者の人生を狂わせることもある、映画の鑑賞体験がもたらす恐ろしさを端的に描いているといえます。

そして、映画館は時に「箱(ハコ)」と表現されることからも、『樹海村』におけるコトリバコという呪具は映画館を象徴するアーティファクトであり、コトリバコをめぐる『樹海村』の物語は映画館をめぐる物語であったとも捉えられるのです。

『牛首村』がラストに示した「繰り返されるもの」


(C)2022「牛首村」製作委員会

犬鳴村』『樹海村』に続き、そのエンドロールはやはり「呪いは決して絶えない」という観る者に不安を残す結末で締めくくられた『牛首村』。

異なる描かれ方ながらも、一作目・二作目と同じその結末についてはネット上でも「最早、蛇足なのでは?」という感想も見受けられました。

ここで重要なのは、「恐怖の村」シリーズ三作にはアキナというパラレルキャラ(ある特定の世界=基底世界に存在する対象の、並行世界線上の同一存在にして正確には別個体にあたる対象。例:『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』の別世界のピーター・パーカーたちなど)が常に登場し、三作の物語世界は同一の世界ではなく「呪いが存在する世界」という並行世界としてつながっている可能性が高い点。

何より、シリーズを手がけてきた清水崇監督がこれまでの三作を「血筋の三部作」でもあると語っているという点です。


(C)2022「牛首村」製作委員会

どんな並行世界線上でも、どんな物語でも、どんな選択でも、最後には必ずたどり着く「呪いは決して絶えない」という結末。それはマンネリ化という言葉だけでは片付けられない「繰り返される結末」であり、シリーズ三作で繰り返された同じ結末は「二度あることは三度ある」という今日まで伝わることわざを準えているようにもとれます。

また「呪いは決して絶えない」という言葉の中にある「呪い」は、「血筋」や「過ち」と変えても差し支えのないものであることは、シリーズの各作品の物語をふまえれば明らかです。

『牛首村』によって、シリーズで三度繰り返されることとなった同じ結末。それらは絶えることのない呪いのみならず、人類が存在し続ける限り続く血筋、ひいては人類史が存在し続ける限り続く過ちをも示唆しているのです。

まとめ/あまりにも業が深い呪具・映画

人類史の最小単位としての「村」にまつわる怪談/都市伝説を通じて伝えられる、人類の繰り返される血脈と過ちとしての「呪い」の物語を描いた「血筋の三部作」。

そしてその三作にて常に、先述の「映画」というメディアが持つ恐怖も同時に描かれてきたのは、19世紀末に誕生して以来、記憶も血筋も過ちも呪いも何もかも、その機械で作られた眼で一切のためらいもなく記録し、多くの人間にそれらを拡散し続けてきた者こそが「映画」であるからといえます。

どんな悲劇もどんな惨劇も、映画は映画として閉じ込めてしまう。そして「ハコ」の中に入った人間だけが、閉じ込められた過去の悲劇/惨劇を目の当たりにする……。

あまりにも業が深い、近代社会が生み出した呪具・映画。清水崇監督が語った『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』の「血筋の三部作」とは、同時に呪具としての映画を描いた三部作でもあったのです。

そして、2022年2月3日の東映・2022年ラインナップ発表会にて発表された、東映の新たなホラー映画シリーズの始動。これまでの「恐怖の村」シリーズとは異なるものになるという新シリーズにて、清水崇監督はどれほど業の深い映画を魅せてくれるのでしょうか。

次回の『のび編集長の映画よりおむすびが食べたい』も、ぜひ読んでいただけますと幸いです。

連載コラム『のび編集長の映画よりおむすびが食べたい』記事一覧はこちら





編集長:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、2020年6月に映画情報Webサイト「Cinemarche」編集長へ就任。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける。

2021年にはポッドキャスト番組「こんじゅりのシネマストリーマー」にサブMCとして出演(@youzo_kawai)。


photo by 田中舘裕介

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