Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2022/01/08
Update

Netflix映画『マザー/アンドロイド』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の評価解説。SFポスト・アポカリプスとして荒廃した世界で“家族になる”までを描く|Netflix映画おすすめ81

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第81回

未知の生物による襲撃や自然現象によって崩壊していく世界を描いた映画ジャンル「ポスト・アポカリプス」。

このジャンルを描いた作品の多くは事態の打開を画策したり、安全地帯への到達を目的とした人間を主題とした作品が殆どです。

そんな中、アメリカで制作された『マザー/アンドロイド』(2022)は「ポスト・アポカリプス」でありながら独特な題材を描いていました。

今回は危険に満ちた世界で家族になろうとする2人にフォーカスを置いた『マザー/アンドロイド』を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『マザー/アンドロイド』の作品情報


Netflix『マザー/アンドロイド』

【配信】
2021年

【原題】
Mother/Android

【監督】
マットソン・トムリン

【脚本】
マットソン・トムリン

【キャスト】
クロエ・グレース・モレッツ、アルジー・スミス、ラウル・カスティーリョ

【作品概要】
『プロジェクト・パワー』(2020)で脚本を務めたマットソン・トムリンが自身の書いた脚本を監督として映画化した作品。

映画『キックアス』(2010)への出演以降、活躍を続けるクロエ・グレース・モレッツが主演を務めた本作は本国では映像配信サービス「Hulu」が配信権を取得しましたが、日本では配信権を「Netflix」が取得し独占配信作となりました。

映画『マザー/アンドロイド』のあらすじとネタバレ


Netflix『マザー/アンドロイド』

巨大企業のラスター社によるアンドロイドや自動運転車が普及する近未来。

ジョージアはボーイフレンドのサムとの子供を妊娠します。

友人たちとのパーティの最中、ノイズがスマホから鳴り響くとアンドロイドが人間を襲い始め街はパニックとなりました。

数ヶ月後、ジョージアとサムはアンドロイドが徘徊する街を避け、森をキャンプしながら安全地帯を探していました。

森の中にある軍人の管理するキャンプ地に受け入れられた2人は、アンドロイドが反乱した日にスマホから鳴り響いた音は電子機器を封じるEMP(電磁パルス)であり、既にEMPを使い尽くしたニューヨークは壊滅していることを知ります。

妊娠発覚から9ヶ月が経ち、既に出産予定日を過ぎているジョージアは安全とされる韓国へと向かう船が出ているボストンへ向かうための道を軍人に尋ねますが、ボストンも既に陥落間近と言う答えのみが返ってきます。

ジョージアはキャンプの医師からボストンへ向かう兵士用の車に妊婦であるジョージアを乗せることはできると聞きますが、父親であるサムを乗せることはできないと言われます。

ジョージアは1人でボストンに行くことを拒否し、サムは兵士の1人に掛け合います。

酒に酔う兵士は自分と素手の喧嘩で勝つことが出来たら車に乗せると言う条件を提示しサムはその条件を受け入れます。

翌日、サムは喧嘩に勝利はしましたが相手の兵士が大きく負傷したことでキャンプを守る兵士を束ねる隊長は激怒。

サムとジョージアは約束を反故にされただけでなくキャンプ地を追い出され、2人で危険な道を歩きボストンへ向かうこととなります。

ボストンへの道は「無人地帯」と呼ばれており、人が居ないだけでなくアンドロイドが多数徘徊している危険区域でした。

無人地帯に突入する前に人のいない家屋を見つけたジョージアは出産をここで行い、遠回りでニューハンプシャーを目指すことを提案します。

しかし、サムは子供がいつ産まれるか分からず、生まれたばかりの子を抱えての隠密行動は不可能であると言い、民家のバイクを使って無人地帯を突っ切る提案をし、2人はバイクで無人地帯へと入りました。

森を走る中で2人は多数のアンドロイドとドローンからの追跡を受けます。

逃げきれないことを確信するサムは自身が囮となり、ジョージアに歩いて逃げるように言います。

ジョージアは1人逃げる中でAIプログラマーのアーサーに保護され彼のアジトであるトラックに匿われます。

アーサーはジョージアのボストン行きを護衛すると言い、彼の開発したアンドロイドの視覚情報を遮断するマントを彼女に貸し与えます。

サムを助けることを譲らないジョージアを森の中にあるアンドロイドの拠点に案内したアーサーは、アンドロイドが生存者を監禁し人間を誘き出すための餌にしていることを教え、サム用のマントをジョージアに渡しました。

拠点に侵入したジョージアはサムを見つけ救出しますが、他の生存者に叫ばれたことでアンドロイドたちに発見されてしまいます。

高い戦闘能力を持つアーサーが駆けつけ追いかけて来たアンドロイドを殲滅したことで窮地を脱した2人でしたが、タイミング悪くその場でジョージアの破水が始まってしまいます。

アーサーはサムとジョージアをトラックに乗せ、どこかへと車を走らせました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『マザー/アンドロイド』のネタバレ・結末の記載がございます。『マザー/アンドロイド』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

気を失っていたジョージアが目を覚ますと、そこはボストンの病棟でした。

ジョージアは無事に男児を出産しており、隣で治療を受けるサムは森(フォレスト)で生まれた子供にフォースと名づけました。

ボストンへはアーサーが連れて来てくれた事が分かりますが、当のアーサーは気を失っており、さらにサムはアンドロイドによる襲撃で脚を失っていました。

その後、ジョージアはボストンの兵士にここまでの経緯を質問されます。

彼女は全てのことを正直に話し、兵士は彼女の答えに概ね納得しますが、ただ一点「視覚情報を遮断する技術」は存在しないと言います。

ジョージアはこの一件がアンドロイドであるアーサーがボストンに侵入するための罠であることに勘付きますが、既にアーサーは医師を殺害し逃走しており、直後にアーサーが引き入れたアンドロイドたちによる襲撃が始まります。

ボストンは戦火に包まれ多くの人間が死亡しますが、アーサーを含めたアンドロイドに追われたジョージアは高圧電流を使いアンドロイドを倒しました。

船の発着場に着き、韓国の船を見つけたジョージアとサムは駆け寄りますが、韓国の兵士は食糧難もあり子供であるフォースしか受け入れられないと言います。

産んだばかりのフォースと別れることにジョージアは狼狽えますが、負傷し自身の命が長くないことを悟るサムはフォースを生かすため韓国の船に乗せることを勧めます。

ジョージアは兵士のソアンにフォースを託すと、フォースが韓国の地で元気に育つことを夢見て祈りながら出航する船を見つめました。

サムの最期を看取ったジョージアは彼との思い出を全て焼きますが、サムとフォースと3人で撮った1枚の写真だけは焼くことが出来ずにリュックへとしまいます。

ボストンの街は兵士によってアンドロイドは制圧され、歩く兵士にポートランドに出来る新しい基地に来るかと問われたジョージアは承諾し車両に乗り込みました。

映画『マザー/アンドロイド』の感想と評価


Netflix映画『マザー/アンドロイド』

「親」として「家族」を守る2人の道程

アンドロイドが暴走した日に妊娠が発覚したジョージアとそのボーイフレンドのサム。

「親」となることが決まった日から死と隣り合わせの日々を過ごすことになった2人は、「親」として強くあるためにお互いを守ることを誓い行動します。

その行動が結果として2人を追い詰めることになったとしても、家族を守るためにがむしゃらに進む2人にフォーカスを当てた本作は「ポスト・アポカリプス」を背景としながらも人間ドラマを主題としています。

命をかける選択を繰り返し、その度に他者を守る選択の辛さを痛感させられる作品でした。

残虐なアンドロイドが恐怖を引き出す

本作に登場する人類を脅かす存在「アンドロイド」は、一貫して人間の殺害のみを考えて行動しています。

その行動はより効率良く人類を削減するために最適化されており、慈悲もなく襲い来るアンドロイドは恐怖の存在として完成されています。

アンドロイドがなぜ人間を襲うのかと言う行動理念は語られることがなく、淡々とその行動だけを描いた本作はSFホラー映画としても充分な魅力を感じました。

まとめ


Netflix映画『マザー/アンドロイド』

子役時代から活躍し、20代の半ばに差し掛かった俳優クロエ・グレース・モレッツ。

自身が親になることに困惑しつつも、家族を守るために奮闘することを決意し始める感情の変化を描いた彼女の見事な演技にも注目の映画『マザー/アンドロイド』。

ただただ人を殺戮するために行動するアンドロイドの恐怖は『ターミネーター』(1985)を彷彿とさせるものがあり、無機物が見せる恐怖の新たな描き方を見せてくれます。

ヒューマンドラマとしても、そしてSF映画としても見どころたっぷりの本作をぜひ「Netflix」でご覧になってください。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『JOURNEY』あらすじ感想と考察評価考察。王道哲学SFを60分へ凝縮した“短くも長い旅”の物語|2022SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集10

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022・国内コンペティション長編部門 SKIPシティアワード受賞作『JOURNEY』! 肉体から意識を解放することが可能となった近未来で、生きることの意味という普遍的 …

連載コラム

映画『人生、ただいま修行中』感想とレビュー評価。ニコラ・フィリベールが看護師の卵に密着|だからドキュメンタリー映画は面白い29

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第29回 “誰かのために働くこと”を選び、学んでいく看護師の卵たちに密着。 今回取り上げるのは、2019年11月1日(金)より新宿武蔵野館ほかで全国順次 …

連載コラム

映画『セカイイチオイシイ水~マロンパティの涙』あらすじと感想レビュー。少女アミーという存在|銀幕の月光遊戯 44

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第44回 映画『セカイイチオイシイ水~マロンパティの涙~』が現在ユーロスペース、全国イオンシネマ他にて絶賛公開中! 9年もの歳月を経て完成した「フィリピン水道建設プロジェク …

連載コラム

映画『悪人伝』ネタバレと内容解説。マドンソク演じるヤクザと暴力刑事の異色コンビで描く人間としての秩序|サスペンスの神様の鼓動36

サスペンスの神様の鼓動36 こんにちは「Cinemarche」のシネマダイバー、金田まこちゃです。 このコラムでは、毎回サスペンス映画を1本取り上げて、作品の面白さや手法について考察していきます。 今 …

連載コラム

映画『シングル・オール・ザ・ウェイ』ネタバレあらすじ感想と結末評価。LGBTQをラブコメディとしてマイケル・メイヤー監督が描く|Netflix映画おすすめ75

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第75回 2021年12月2日(木)にNetflixで配信され、マイケル・メイヤーが監督を務めた、2021年製作のアメリカのLGBTQを題材 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学