Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2019/01/14
Update

映画『沈黙の終焉』ネタバレ感想。シリーズ最新作でスティーブン・セガールは死ぬのか!?|未体験ゾーンの映画たち2019見破録8

  • Writer :
  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第8回

ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の「未体験ゾーンの映画たち2019」で、58本の映画がまとめて上映されています。

日本公開が見送られていた傑作や怪作映画をスクリーンで鑑賞できる、すっかりお馴染みになった劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち」

今回はスティーブン・セガール主演の沈黙シリーズ最新作『沈黙の終焉』です。

“史上最強のオヤジ”であるセガールが自ら処刑人チームを結成、東南アジアを舞台に悪の組織と対決する!

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

映画『沈黙の終焉』の作品情報


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
2019年(イギリス・ハンガリー・フィリピン合作映画)

【原題】
General Commander

【監督】
フィリップ・マルチネス、ロス・W・クラークソン

【キャスト】

スティーブン・セガール、ミーガン・ブラウン、バイロン・ギブソン、エドアルド・コスタ、エルデトゥヤ・バツク

【作品概要】
CIAのベテラン捜査官ジェイクは、殺された部下の仇を果たすため辞表を提出します。

新たな処刑人チームを結成したジェイクは、闇の臓器売買組織と最後の死闘を繰り広げるという、“沈黙シリーズ”でお馴染みのアクション俳優・スティーブン・セガール主演作品です。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『沈黙の終焉』のあらすじとネタバレ


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

多くの患者が臓器移植を待つ現在。闇市場では100万ドルで取引される心臓もあるという…。

CIAのタイ・バンコク支部の一室で、査問を受けるジェイク・アレクサンダー(スティーブン・セガール)。彼はCIAのベテラン捜査官で、アメリカを愛し任務に身を捧げてきました。

ジェイクは辞職をほのめかし、CIAのジェシカ(ミーガン・ブラウン)に激しく抗議して、任務の続行を主張します。

その2週間前のカンボジアのプノンペン。夜の街で赤いドレスの女を監視するジェイクが率いる監視チームがいました。

華やかなクラブに入った女は、声をかけてきた男をホテルへと誘いますが、この男ザックもジェイクのチームの一員で、囮として女に接近しました。

そんなザックをチームメンバーは、全てを監視しながら援護しています。

ホテルの一室で女は酒に薬を盛り、ザックを眠らせるとメールを送りました。

それを合図に現れた一団の男たちは臓器密売組織のメンバーで、このような手口を使い、闇ルートの非人道的に臓器を手に入れていました。

ジェイクは今回の囮捜査で、組織の首謀者オルテッセイ(エドアルド・コスタ)の逮捕を狙っていました。

ザックの身体から臓器が奪われようとした時、ジェイクのチームは部屋に突入と、一味の車をバイクで追う者に別れ動き出します。

車は横転し爆破され、部屋にいた男たちを次々と倒しますが、援護していたザックは人質に取られてしまいます。

武器を捨てろと説得するジェイクたちですが、犯人は抵抗を見せたことで、盾にされたザックは死亡。

こうして囮捜査は失敗に終わり、CIAからジェイクは作戦の責任を取らされてしまいます。

チームに所属する他の5人もジェシカの査問を受け、CIAはジェイクのチームの解散を決定します。

一方、マルタにいる組織のボスであるオルテッセイは、証拠を隠滅しようと、プノンペン警察の協力者の元に手下を送り、逮捕されたドレスの女を自死させます。

このような組織の暗躍が続いてもCIAの方針は変わらず、チームのメンバー全員に帰国が命じられます。

しかしチームの面々はこの地で任務を継続し、ザックの仇を討つことを望んでいました。そんなメンバーに対しジェイクは、時間の猶予を求めます。

亡くなったザックと付き合っていた暗殺のエキスパートのソニアを、凄腕のハッカーであるローゼンが慰めます。

スパイで女バイカーのマリアは、苦しい胸の内を教会の神父に打ち明けました。

ジェイクの片腕で、射撃の名手でもあるベントン(バイロン・ギブソン)は、ジェイク同様CIAの命令に激しく反発。

そのベントンと、元海兵隊員で格闘の達人のハリスンは、命令には逆らえないと対立します。

その間にジェイクは香港で、大富豪の女ソコロフと接触。彼女の協力でCIAを離れ、独立した新たなチームの設立を計画します。

組織のボスであるオルテッセイは、今回の囮捜査を誰が実行したのかを調べるため、自らプノンペンに現れます。

事態が動く中、CIAのニューヨーク支局にはジェイクの動きを快く思わぬ人物がいました。

単独で行動中のジェイクに暗殺者が襲い掛かりますが、彼は返り討ちにします。

暗殺者を送り込んだCIA内部の人物に対し、ジェイクは今後手を出すなと警告します。

アメリカに帰国するCIAの飛行機に、チームの者は誰一人乗りませんでした。

CIAを離れた5人は、ジェイクと合流するためにフィリピンのマニラに到着。

ここでソロコフを加えた、ジェイクをリーダーとする新たなチームが結成されました。こうして悪と闘う処刑人チーム“ジェネラル・コマンダー”が誕生します。


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

以下、『沈黙の終焉』ネタバレ・結末の記載がございます。『沈黙の終焉』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
誕生した“ジェネラル・コマンダー”は、闇取引に使われる仮想通化の動きを調査し、臓器密売組織に迫ります。

そして仲介人に接触、ボスが現れる状況で直接対決する事を計画します。

そんな中、故郷フィリピンの地に戻ったマリアは、ひさしぶりに両親と神父をしている兄と、ひと時を過ごします。

マリアの生き方を案じた母は、穏やかな生活を送るよう説得しますが、彼女は家族を残し立ち去ります。

一方で衛星からも組織を犯罪行動の動きを追う“ジェネラル・コマンダー”。ソニアを依頼者に偽装して、囮の臓器取引を計画します。

メンバーの協力でソニアと仲介者は密売組織と接触に成功、ついに取引にこぎつけました。

“ジェネラル・コマンダー”の監視の下、囮の取引作戦が開始されます。

取引の場で生きた人体から臓器を取り出そうとするオルテッセイ。しかしその直前、集結したチームのメンバーが突入。

激しい銃撃戦が繰り広げられ、密売組織の部下たちは次々射殺され倒れますが、オルテッセイはソニアを人質に逃亡を図ります。

ザックを失った時と同じ状況に、ジェイクは射撃の命令を躊躇してしまいます。その間にオルテッセイは車に乗り込み逃げ去ります。

ソニアは脱出に成功、追跡するマリアの銃撃で車は横転。ついにジェイクたちは敵を追い詰めます。

突然、機関銃を装備したヘリコプターが飛来すると、街中でチームメンバーに銃弾の雨を降らせます。

この危機に射撃の名手ベントンは、取り出したロケット砲を発射、命中しヘリは爆発し墜落。

ジェイクとオルテッセイは大型のナイフを手に直接対決、そしてオルテッセイはジェイクの手で倒されます。

こうして最初の任務を完了させた“ジェネラル・コマンダー”。ジェイクは自分の隠れ家に向かいます。

そこにはジェイクを温かく迎え入れる女(エルデトゥヤ・バツク)の姿がありました。

しかしそこにCIA内部でジェイクを狙った人物によって、無人機が向かっていました。

無人機の攻撃を受けたジェイク。爆発が起こる中、果たして彼の運命は…。

映画『沈黙の終焉』の感想と評価


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

セガール主演の「沈黙」シリーズとは

アクション俳優のスティーブン・セガールと言えば、「沈黙」シリーズが有名ですが、これはあくまでも日本だけの総称されたシリーズ名です。

まったく個別の異なったセガールが主演した作品を、日本公開に合わせて、“沈黙シリーズ”と名付けた一連の作品群をこのように呼びます。

1993年日本公開の『沈黙の戦艦』のヒットにあやかり、1994年のセガール主演の別の映画に『沈黙の要塞』の邦題をつけたのが始まりです。

なお『沈黙の戦艦』の正当な続編映画には、“沈黙”が付けられず『暴走特急』の邦題で封切られたのも有名な楽屋ネタとしてご愛敬

このようにセガール主演映画の邦題として使用された“沈黙”というタイトル冠は、今や配給会社の垣根を越えて使われています。

ほかにもセガール主演のテレビドラマ『TRUE JUSTICE』『S・セガール劇場』の名で放送、このシリーズの各エピソードの邦題にも“沈黙”が使用されてもいます。

今や日本には、とんでもない数の「沈黙」シリーズ作品が存在しています。

正しくは『沈黙の“General Commander”』

前述のテレビドラマ『TRUE JUSTICE』の作品は、映画「沈黙」シリーズとして、日本で一部劇場公開されています。

テレビ作品として制作されたテレフィーチャーが劇場公開されることは、昔からよくありました

かつてアメリカではTVM(テレビ映画)の名で製作され、本国ではテレビ放送扱いですが、海外マーケットでは映画として売り込める作品の制作が盛んに行われた時期がありました。

1971年に制作されたスティーブン・スピルバーク監督のテレビ映画『激突!』は、その代表作として有名です。

また現在、NetflixやAmazonのようなネット動画配信サイトが独自に映画製作のコンテンツに乗り出したことで、映画界以外の映像制作した劇場公開もますます増えてくることでしょう。

『沈黙の終焉』も実はドラマシリーズ、『General Commander』として製作された作品。そのように理解をすると、本作の奇妙な展開にも納得がいくのではないでしょうか。

B級アクション映画製作の背景


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

沈黙の終焉』は東南アジアを舞台に、世界のマーケットを意識して作られた英語映画です。

製作国にハンガリーが入っていますが、最近は東欧からの資金で作られる娯楽映画も増えています。

東欧の出資者を納得させる為に、国政的知名度のあるスターを起用した、世界マーケットで売れるアクション作品を制作するというビジネスモデルが定着しているのです。

本作の主演俳優セガールに限らず、ジャン=クロード・ヴァン・ダムやドルフ・ラングレンの作品にも、こういった背景で生まれた理由が存在しています。

さらに本作にはビデオバブル期に、世界に向けて多くのB級アクション映画を送り出したフィリピンも参加しています。

こういった背景を持つ『沈黙の終焉』が、アクションや美女を配してド派手な爆発が起こり、そして唐突に武装へリが乱入する作品になった理由もお判りいただけるでしょう。


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

娯楽要素を詰め込んだテレビドラマシリーズへの導入


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

本作はCIA捜査官セガールが、組織を離れて自分のチームを結成するまでが今回の物語

今後、活躍するチームのメンバーの背景を紹介し、派手なアクションで視聴者の関心を惹きつける

メンバーはアクションをこなせる女優が参加、見る者を飽きさせません。

しかしテレビ放送を意識しているのか、お色気やバイオレンス描写は、ほどほどの範囲に収められています。

そして将来関わってくるであろう、まだ謎に包まれた人物も登場。これは単独の映画として観ると、説明不足で少々困惑で回収不足担っています。

作品資料に一部混乱があったりするのも、映画資料とドラマシリーズ資料の混在に起因しているようです。

さて、『General Commander』が順調に映像製作が実行され続けば、セガールのチームはアジア各国を舞台に大活躍する予定

なかには、日本が舞台になるエピソードも企画されているとか⁈ 

今後の展開に期待しつつ、無邪気にセガールの主演の「沈黙」シリーズのアクションを楽しんでくださいね

まとめ


(C)2018 GC ENTERTAINMENT, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

本作の劇場公開用のチラシには、大きく「セガール引退」の文字がありますが、劇中でCIAは引退しましたから、まあ「嘘」ではないでしょう。

しかし、そのほかにも「セガール死す!?」との文字もありますが…、あくまで次回作へ続く「to be continued」という振りでの生死不明状態ということですから、セガールファンの皆さん、どうぞご安心して鑑賞下さいね。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…



(C)HaZ VFX Ltd, 2017

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は未知の地球外生命体と人類の遭遇を描いたSF映画『ファースト・コンタクト』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』感想考察と評価解説。“世界で一番”有名な若き環境活動家の素顔を活写|だからドキュメンタリー映画は面白い63

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第63回 今回取り上げるのは、2021年10月22日(金)より、新宿ピカデリーほかにて全国順次公開の『グレタ ひとりぼっちの挑戦』。 傷つくことを恐れず …

連載コラム

映画『神と共に 第二章:因と縁』感想評価と考察。続編は新展開を迎える壮大なスケール|SF恐怖映画という名の観覧車55

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile055 profile050でご紹介させていただいた死後の世界を題材とした映画『神と共に 第一章:罪と罰』(2019)。 死後の世界をド迫力の世 …

連載コラム

映画『透明花火』あらすじ感想と評価解説。野本梢監督が描く“不器用な人々”の群像劇と花火大会|インディーズ映画発見伝18

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第18回 日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い秀作を、Cinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見 …

連載コラム

平成ゴジラシリーズの巨大ロボット考察と比較解説!歴代防衛組織と主戦力を徹底解剖|邦画特撮大全77

連載コラム「邦画特撮大全」第77章 今回の邦画特撮大全は平成ゴジラシリーズに登場した巨大ロボットを紹介します。 現在放送中のウルトラシリーズ最新作『ウルトラマンZ』(2020)にはセブンガーやウィンダ …

連載コラム

『誰がための日々(一念無明)』感想と考察。ウォン・ジョン作品を香港映画史から読み解く | アジアン電影影戯1

激動の香港映画史を俯瞰する映画『誰がための日々』 連載コラム「アジアン電影影戯」を担当する映画評論家の加賀谷健です。 第1回では、“新香港ニューシネマ”の呼び声が高い新星ウォン・ジョン監督の『誰がため …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学