Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/06/04
Update

映画『タイムガーディアンズ』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。異界の魔女と時をかける少女のファンタジーアドベンチャー|未体験ゾーンの映画たち2021見破録37

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第37回

世界各地の名だ見ぬファンタジー映画も紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第37回で紹介するのは『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』。

ユニークな怪奇・幻想文学を生んできた歴史を持つロシア。近年はこのジャンル作品を盛んに映像化しています。

SF・ホラー映画に限らず、ファンタジー映画やアドベンチャー映画も続々と誕生しており。今やロシアはファンタスティック映画大国と呼んで差し支えないでしょう。

今回紹介するのもそんな映画の一本。少女の迷い込んだ世界には何が潜んでいるのか、そして彼女は元の世界に戻ることができるのでしょうか…。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』の作品情報


(C)2020 SDF – KINO-ART LLC

【日本公開】
2021年(ロシア映画)

【原題】
Klucz czasu / The Time Guardians

【監督・脚本】
アレクセイ・テルノフ

【出演】
アーテム・トカチェンコ、リュボーフ・トルカリーナ、クセニア・アレクシーヴァ、パヴェル・トゥルビナー、マリーナ・カザンコヴァ

【作品概要】
ある作家夫婦の養女クスーシャは、”暗闇の街”と呼ばれる異世界に迷い込みます。奇妙な案内人パラモンの助けを借りて、彼女は元の世界に帰ることができるのか。独特の映像で描いたダーク・ファンタジー映画。

ドキュメンタリー映画などのプロデューサーとして活躍してきたアレクセイ・テルノフが、自ら創造したファンタジー世界を監督として映画化された作品です。

主人公の少女を映画初主演のクセニア・アレクシーヴァ、彼女を導く男を『魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち』(2019)など、「魔界探偵ゴーゴリ」3部作に出演のアーテム・トカチェンコが演じました。

『インターセプター』(2009)のリュボーフ・トルカリーナ、『エイリアンVSエクソシスト』(2011)のマリーナ・カザンコヴァらが共演した作品です。

映画『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』のあらすじとネタバレ


(C)2020 SDF – KINO-ART LLC

現在のサンクトペテルブルクを、少女を連れ案内する男。日の光を浴びた街の歴史ある建物にはグリフィンやスフィンクス、そして獅子などの像が付いていました。

男は作家で、物語をタイプライターで執筆中です。…昔、海に流れ込むネヴァ川の側に街が建設されました。街の塔には大きな時計が取り付けられ、正午に大砲の音で街の住民に時を知らせる役割を果たします。

街にイングリットという女の子が誕生します。美しく成長した彼女は、ペッコという若い男と出会います。彼は時計を操作する鍵を持つ大時計の番人、”タイム・ガーディアン”でした。

イングリットとペッコは愛し合って結婚しますが、幸せな日々は長く続きません。生まれたばかりの赤子が亡くなり、イングリットの心は壊れます。

哀しみに打ちひしがれたペッコは、時計の鍵を持ったまま街から姿を消します。大時計は時を刻むことを止め、街は暗闇に包まれました。

イングリットは魔女になり我が子の姿を求め、闇に包まれた街の通りをさまよいます。

止まった大時計を再び動かし、”暗闇の街”に時の流れを与えられるのは、”タイム・ガーディアン”の後継者だけでした…。

この物語の作者で、冒頭に登場した男は作家のアンドレイ(パヴェル・トゥルビナー)で、妻オルガ(マリーナ・カザンコヴァ)との間には子供がいません。

2人は養女にしようと希望し孤児院からクスーシャ(クセニア・アレクシーヴァ)を預かります。彼女と共にアンドレイはサンクトペテルブルクの街を巡っていたのです。

クスーシャは夢の中で女に出会います。彼女はその女を母と呼んで追いますが、扉から現れた無数の手に捕まれました。

目覚めた彼女の前には養母となるオルガがいます。オルガにやさしく声をかけられ、再び眠りにつくクスーシャ。

クスーシャは扉から姿を現す不気味な女の絵を何枚も描いていました。夫婦は孤児院から引き取った彼女が心に傷を負っているのではと心配します。

アパートに夫婦の養女候補として現れたクスーシャを、隣室の老婆は不審げに見つめていました。

翌朝、停まった自宅の振り子時計を鍵で操作しようとしたアンドレイに、イレーナ(リュボーフ・トルカリーナ)から電話がかかってきました。学校でいじめられていたクスーシャについて、孤児院の代表者イレーナが話したいと連絡してきたのです。

面会を約束したアンドレイはクスーシャに話しかけます。彼が執筆中の物語に登場する、大時計のある塔について尋ねたクスーシャ。

アンドレイは物語の中で大時計が止まると、時の流れが逆行し街の住人は魂を失った化け物になったと説明します。

私とクスーシャがある日突然、”暗闇の街”に迷い込む。街の時を正しく動かすために、”タイム・ガーディアン”として大時計を動かすことになる、と話したアンドレイ。

その大時計の鍵がこれだと言い、彼は紐の付いた振り子時計の鍵をクスーシャに見せ、彼女の首にかけました。

アンドレイとオルガはクスーシャを連れ孤児院を訪れます。クスーシャを外に出し夫婦と話すイレーナ。

孤児院の子供たちはクスーシャが、養父母候補の家庭になじめず戻されたと思っていました。孤児院にはそんな経験をした子供たちが大勢いたのです。

彼女が部屋に戻るとオルガの姿は無く、アンドレイとイレーナが密着して親し気に話しています。自分の書いた作品に、作家であるアンドレイの意見を求め、会話に夢中でクスーシャを邪魔者のように扱うイレーナ。

クスーシャは良くない雰囲気を感じました。アンドレイが執筆中の小説について聞きたいと耳元でささやくイレーナは、まるで彼を操ろうとしているように見えました。

その夜のサンクトペテルブルクは雷雨に見舞われます。執筆の手を休めたアンドレイはクスーシャに話しかけ、執筆中の小説に登場する”暗闇の街”に邪悪な魔女がいると語ります。

街の塔の大時計を動かし、”暗闇の街”を魔女から解放するのが”タイム・ガーディアン”、時計の鍵を持つクスーシャの使命だと言い聞かせます。クスーシャが興味を持った執筆中の小説を話題にして、彼女と親しくなろうとするアンドレイ。

夫がイレーナと何か関係があると察したのか、オルガは不安に襲われます。仕事で外出すると言い家を出た夫の車を、オルガはクスーシャを連れ追います。

クスーシャを乗せたオルガの車は、雨の降る夜の街を夫のタクシーを追い走ります。サンクトペテルブルクの塔の大時計は時を刻んでいました。

看板に気をとられたオルガは事故を起こします。病院に運びこまれた事故の負傷者に、医師が声をかけていました…。

…事故の後、クスーシャは警察で事情を聞かれます。両親について聞かれても説明できません。なぜか隣に座っていた隣室の老婆は、一緒に事故にあったオルガは彼女の母ではないと警官に話します。

クスーシャは保護者はいないと判断され、暗闇の中パトカーに乗せられ孤児院に戻されます。

やはり帰ってきたと孤児院の子供たちや職員がクスーシャに語りかけます。彼女はアンドレイとオルガの所へ帰りたいと言いますが、元の部屋に押し込められるクスーシャ。

ベットの上で休んでいたクスーシャは、部屋に男がいると気付き悲鳴を上げます。その声に驚いた男も悲鳴を上げました。

奇妙な男はパラモン(アーテム・トカチェンコ)と名乗ります。彼女に母親はいるかと尋ねたパラモンですが、孤児院の職員が現れると姿を隠します。

職員はクスーシャに孤児院から逃げないよう言い残して去りました。またパラモンが現れます。今度は彼女の父親について尋ねられ、アンドレイとオルガが私の親だと説明するクスーシャ。

その頃アンドレイは仕事を終えました。妻オルガの懸念と異なり彼は仕事相手を訪れただけでした。タクシーに乗ったアンドレイは、交通事故発生のニュースを聞きます。

パラモンから”暗闇の街”について君の父親が何か知ってるか聞かれ、それは父が書いた小説に登場する世界だと教えるクスーシャ。

その物語では、私が”タイム・ガーディアン”だと聞き、驚きの声を上げたパラモン。この世界は”暗闇の街”だというのです。

彼女は事故に遭遇した結果、時の止まった魔女が支配する”暗闇の街”、闇に包まれたサンクトペテルブルクのパラレルワールドに迷い込んだのでしょうか。

アンドレイから鍵を預かったクスーシャは、正午の大砲が鳴るまでに時計を動かせば、街は闇から解放されるとパラモンに教えました。

奇妙な男パラモンは、”暗闇の街”を魔女の支配から解放して時の流れを戻そうとしていました。”タイム・ガーディアン”が現れたと喜んだパラモンは、時計塔への案内を買って出ます。

案内人のパラモンは部屋の窓を粉々に割り、彼女を抱いて飛び降ります。クスーシャは悲鳴を上げますが、2人は無事ゴミ箱に着地しました。

パラモンは闇の世界の住人、吸血鬼から逃れながら”暗闇の街”の時計塔に行くには、オートバイが必要と言います。その為には怪しげな吸血鬼がたむろする酒場で、賭け事に興じる彼らに勝たねばなりません。

クスーシャを賭けの対象にして、酒場のカードゲームに参加するパラモン。カードさばきとイカサマで勝利しました。

こうしてバイクを手に入れ、そのサイドカーにクスーシャを乗せパラモンは闇の中を走り出します。ところが吸血鬼たちはパラモンに騙されたと気付きます。

怒った吸血鬼たちは檻を積んだトラックに乗り、パラモンのサイドカーを追います。もはやこれまで、という時にトラックはエンストを起こして止まり、吸血鬼から逃れたパラモンとクスーシャ。

林の中の道を走り抜けたサイドカーは街に到着します。パイクから降りたパラモンは、クスーシャを連れ建物に入りました。

そこは暗闇に包まれた、アンドレイとオルガ夫婦のアパートです。好物なのか紅茶キノコを探し出すパラモンの行動に、クスーシャは戸惑います。

吸血鬼たちはトラックがパラモンの細工でエンストしたと気付きます。”暗闇の街”へと走り出すトラック。

クスーシャはアンドレイの部屋で執筆ノート、彼が記した小説に登場する時計に関するメモを目にします。それを読み知識を得ようとするパラモン。

アパートの窓ガラスが割られます。吸血鬼たちが来たと警戒するパラモンとクスーシャ。その頃現実世界では、アンドレイがアパートに到着していました。

部屋に入ろうとしたアンドレイは、隣室の老婆から自分が出た後、妻オルガがクスーシャを連れて外出したと知らされます。

アパートを逃れたパラモンとクスーシャは、屋根伝いに逃亡していました。現実世界ではアンドレイが妻とクスーシャの行方を探しています。

パラモンは邪悪な魔女が、アンドレイを”タイム・ガーディアン”と知って、時間の罠に捕らえたとクスーシャに告げます。大時計を動かし”暗闇の街”を解放するのは、もはや僕と”タイム・ガーディアン”の娘である君にしか出来ないと言うパラモン。

自分は幼く無理だと告げたクスーシャを、パラモンは子供のようにあざけります。彼はアンドレイのメモを読みますが理解できず、クスーシャが替わって読みました。

…不幸に襲われたイングリットは魔女になり、時計は止まり街は暗闇に包まれます。”暗闇の街”の橋の向こうにある時計塔の大時計を、0時を告げる大砲が鳴る前に動かすと、街は闇から解放されます…。

パラモンは記された橋が、ネヴァ川の跳ね橋だと気付きます。同じころ現実世界では、アンドレイがイレーナと会っていました。

イレーナもオルガの行方は知りません。君の作品について会話したことが、妻に誤解を与えたかもしれないと言ったアンドレイは、警察に捜索を依頼しようとします。

彼に怪しげな酒を勧めるイレーナ。彼女の目は妖しく光ります。眠らせたアンドレイを車に乗せ、夜のサンクトペテルブルクを走るイレーナ。

“暗闇の街”の同じ場所を、パラモンとクスーシャは歩いていました。怪しげな生き物が空を飛ぶ世界を2人は進みます。クスーシャを外で待たせ、パラモンはミミズを買うと言い店に入ります。

現実世界ではイレーナが自宅にアンドレイを招いていました。今夜は彼にここで過ごさせようとするイレーナは、さらに酒を勧めます。”暗闇の街”ではパラモンが、カウンターで紅茶を飲みつつ店の主人と話していました。

店の主人から時計塔に向かう橋の情報を聞くパラモン。外で待っていたクスーシャは、吸血鬼のトラックが来たと気付きます。

店内のパラモンの様子を見ようと窓から覗いたクスーシャは、物音を立て吸血鬼に気付かれます。彼らに追われ店に逃げたクスーシャ。

闇の世界の住人である店の主人は、彼女を捕え怪しいものが入った大釜に入れました。大釜はグルグル回転し、クスーシャは悲鳴を上げました。

同じ頃現実世界では、医師たちが容態の安定しない患者を救おうと手を尽くしていました。ベットの上の患者は、あの交通事故の被害者でしょうか…。

以下、『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』のネタバレ・結末の記載がございます。『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク


(C)2020 SDF – KINO-ART LLC

現実世界の患者の容態が安定した時、”暗闇の街”では料理にされかけたクスーシャが、パラモンに助け出されていました。

主人を気絶させたパラモンは、スープでベトベトのクスーシャに派手に水をかけ、汚れを洗い流し大笑いします。

同じ頃、現実世界のアンドレイはイレーナの家でシャワーを浴びていました。自分を誘惑するイレーナに、何か狂気じみたものを感じた時、彼のスマホに連絡が入りました。

妻オルガの車が事故を起こしたと知り、イレーナの家を出たアンドレイ。彼が負傷者が収容された病院に到着すると、看護士から重体の患者と10分だけ面会を許されます

“暗闇の街”を進むパラモンとクスーシャ。パラモンは川で釣りをしていた住人に会うと、店で手に入れた釣り餌の虫を渡します。引き換えに釣り上げた小魚を手に入れ、それをクスーシャのポケットにしまうパラモン。

そこに吸血鬼のトラックが現れ、パラモンとクスーシャは慌てて逃げ出します。

現実世界では負傷者のベットの横で、アンドレイが呆然としていました。そこに電話がかかって来ます。私の所に戻れと告げるイレーナ。

“タイム・ガーディアン”は私の元に戻れ、その子はやがて死ぬと叫ぶイレーナ。その言動は自分が執筆中の小説に登場する、魔女イングリットのようだとアンドレイは気付きました。

イレーナはイングリット、”暗闇の街”を支配する邪悪な魔女に姿を変え窓から飛び降ります。魔女は現実世界から”暗闇の街”に移動したのでしょうか。

“暗闇の街”ではパラモンが、先程の魚を建物の外に取り付けられた猫の像に与えます。クスーシャは呆れますが、猫の像は魚に反応して動きました。

自作の小説と、身の回りに起きた出来事の奇妙な一致に気付いたアンドレイは、面会の許された時間に構わずベットの側で、ノートに物語の続きを書き始めます。

パラモンとクスーシャは”暗闇の街”を走る路面電車に飛び乗ります。これで橋の向こうの時計塔に着くと告げたパラモン。

しかし吸血鬼たちの乗るトラックが追ってきます。パラモンたちは電車から降りて逃れることもできません。

病室の扉を塞ぎ、立てこもったアンドレイに看護師は警察を呼ぶと警告します。小説の中の登場人物を救うにはどうすべきか、動き出した猫を使おうと思いつくアンドレイ。

路面電車の前を猫が横切りました。電車は急停車しましたが、パラモンとクスーシャは吸血鬼に囚われ、トラックに積んだ檻に閉じ込められました。

トラックは”暗闇の街”を走ります。パラモンは檻の扉をこじ開け、彼女を川に投げ込んで逃がします。ネヴァ川に沈むクスーシャを、現実世界でアンドレイが書き足した人魚が現れ救います。

水面に上がった彼女を脱出したパラモンが救いました。クスーシャを仲間のドクター・ペルの家に連れていくパラモン。

薬剤師として長年、様々な薬を調合するペルがクスーシャを助けていた頃、”暗闇の街”を目指し魔女イングリットは車を走らせていました。

ペルは魔女に関する噂話を聞かせます。”タイム・ガーディアン”のクスーシャが時を動かしてくれると、パラモンはペルに告げます。母親はどこにいるとペルに聞かれ、私を孤児院から救った母は病院にいると告げるクスーシャ。

魔女は全ての運河を封鎖していましたが、ペルはボートで案内してくれました。そして秘密の通路を開ける暗号を教えるペル。それは現実世界でアンドレイが書き加えたものでした。

着飾った闇の世界の住人が集った、高級レストランに入るパラモンとクスーシャ。そこは時がゆっくり流れていましたが、アンドレイが描写し始めると勢いよく時が流れ始めます。

レストランのショーが終わると、ステージに邪悪な魔女イングリットが姿を現しました。魔女はパラモンを軽くあしらい、クスーシャを捕らえました。

魔女にあなたは誰からも愛されていない、それは皆があなたを怖がり過ぎてるからだと告げるクスーシャ。

真実を聞かされた魔女は動きを止めます。その隙に逃げ出すパラモンとクスーシャ。魔女は直ぐに動きを取り戻し、誰もが怖がる叫び声を上げました。

パラモンがボートを操ろうとした時、レストランに閉じ込めた闇の世界の住人たが、扉をこじ開けようとしています。

現実世界ではアンドレイが閉じこもった病室に入ろうと、職員たちが扉を開けようと試みていました。

“暗闇の街”のレストランの扉が開いた瞬間、パラモンはボートのエンジンをかけました。邪悪な魔女の叫びが響く中、ボートで運河を逃げるパラモンとクスーシャ。

魔女イングリットもモーターボートで後を追って来ます。パラモンたちは運河を閉じようとする柵をくぐり抜けますが、魔女のボートは柵にぶつかり大破します。

ボートを降り、建物の中に階段を駆け上がるパラモンとクスーシャ。その後をイングリットが追ってきます。ここが秘密の通路のある場所でした。

階段を上りきると、壁に通路を開く秘密の暗号を書くクスーシャ。それはペルから教えられ、現実世界でアンドレアが急いで記したものでした。光を放つ壁をクスーシャたちが通り抜けると、魔女の前で壁は閉じます。

現実世界で原稿を焼くアンドレア。この箇所を焼失させることで、彼は魔女に先を進めなくしようと試みていました。

壁の先には地下水道のような空間が広がっていました。そこを進むクスーシャは、今まで名乗らなかったのにパラモンが自分の名を知っていると気付きます。

人は皆が時計、自分自身の時間を持っている。しかしいつか止まると語るパラモン。

しかし時計を巻き動かすことが出来れば、その人の時間は動きだす。そのチャンスは全ての人にある訳ではない。パラモンは真剣な表情でクスーシャに語りかけました。

自分はそのチャンスを生かせず、”暗闇の街”に囚われたと告げたパラモン。意味を理解したクスーシャは、私も死ぬのかと尋ねます。

それを聞くと大声で君は愚かだ、時を知らせる大砲が鳴る前に使命をやり遂げろと叫んだパラモン。

2人は地下水道から地上に出ました。しかし時計塔への道にかかる跳ね橋は上がり、渡ることが出来ません。

彼女を案内してきたパラモンは、申し訳ないと謝って座り込みます。クスーシャは孤児院で多くの人がしたように、パラモンも自分を見捨てるのかと責めました。

しかしパラモンは頭を抱え座り込んだままです。今まで案内人として話し行動したことは、全て嘘だったのかとパラモンを責めるクスーシャ。私は疲れた、眠りたいと叫びます。

君は正しいと言って、パラモンは少女を抱きしめます。”暗闇の街”に戻ろう、諦めても誰も君を責めないとつぶやくパラモン。

しかしそうすれば将来、なぜこの時の小さなチャンスに賭けなかったのか、どうして時計に鍵を使わなかったのか後悔する日が来る、とパラモンは言葉を続けました。

するとネヴァ川に軍艦がやって来ました。最後のチャンスにかけ、傾斜した跳ね橋を上るパラモンとクスーシャ。トラックに乗って魔女イングリットが現れます。

魔女はトラックの檻に入れた何人もの吸血鬼を放ちます。膨大な数の吸血鬼は、イングリットの指示に従い追ってきました。

跳ね橋を上る吸血鬼たちから逃れ、一番上に登り切ったクスーシャは、軍艦がこちらに向かって来ていると気付きます。

一緒に跳ね橋から軍艦に跳び移ろうと叫ぶクスーシャ。怖がるパラモンを彼女は励まします。彼女が心に勇気をもった結果か、背後の吸血鬼の群れは塵となって消えました。

跳ね橋から軍艦のマストに飛び移り、張り線(ワイヤー)を伝い甲板に降り立ったクスーシャ。

跳ね橋に残ったパラモンに、なぜ邪魔をすると叫び魔女イングリットが掴みかかります。クスーシャは軍艦の反対側の舷側まで走り、向こう側に飛び移ります。

パラモンはイングリットと争いながらも、跳ね橋の上からクスーシャに時計の鍵を投げました。クスーシャはそれを受け取り、パラモンは邪悪な魔女と共にネヴァ川に落下しました。

小鳥に案内され時計塔の中に入るクスーシャ。そこは魔女になる前のイングリットが、大時計の番人と暮らした部屋でしょうか。

少女は小鳥の導きで部屋に入り、その部屋の振り子時計に鍵をさして回します。しかし怪しげな緑の煙がクスーシャを包みます。

現実世界では、病院のベットに横たわるクスーシャの生命反応が消えようとしていました。事故で瀕死の重傷を負ったのはクスーシャで、今までアンドレイは彼女の傍らで小説の続きを書いていたのです。

モニターで生命の危機に気付き、部屋から出て医師を呼ぶアンドレイ。その同じ病院の廊下に、ストレッチャーを押して走るパラモンが現れます。

ストレッチャーの上には、”暗闇の街”のクスーシャが乗せられていました。少女に大時計を動かせるのは君しかいない、と叫ぶパラモン。

時が逆転し、今まで彼女が体験した出来事が現れては消えました。アンドレイから”タイム・ガーディアン”だと告げられた事を思い出したクスーシャは、振り子時計に差した鍵を回します。

時計は動き出し0時を指しました。時を告げる大砲が鳴ったのは、”暗闇の街”から闇が消え去り、明るくなったパラレルワールドのサンクトペテルブルクでしょうか。

現実世界では病院のベットで、クスーシャが意識を取り戻します。少女をアンドレイと、事故で軽傷を負ったオルガが抱きしめます。2人をパパとママと呼び、笑顔で悪い夢を見たと教えるクスーシャ。

クスーシャの手にはアンドレイから渡され、”暗闇の街”でパラモンから託された時計の鍵が握られていました。病室に迷い込んだ小鳥は、彼女を”暗闇の街”で導いた小鳥でしょうか。

サンクトペテルブルクの人々は、今日も正午になると時計塔の大時計を見上げます。アンドレイが記した小説「The Time Guardians」は出版され、書店に並んでいました。

怪我から回復したクスーシャは、郊外の家に移ったアンドレイとオルガ夫婦の正式な養女になっていました。彼女は家にある宗教画に書かれた、ラテン語の意味をオルガに尋ねます。

文章の一部が隠れた言葉は、「出口(死あるいは転機)は自ら選べ」とも解釈できます。オルガはその意味を「あなたの選択こそが出口」だと教えました。

配達夫が現れ、クスーシャに籠を渡します。籠には子猫が入っていました。両親に子猫の名を聞かれ、「パラモン」だと教えるクスーシャ。

彼女の新しい生活が始まりました。しかし家族のスマホには邪悪な魔女のこの世界での姿である、イレーナからメッセージが入っているようです…。

スポンサーリンク

映画『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』の感想と評価


(C)2020 SDF – KINO-ART LLC

読んでいる、読み聞かされた物語の世界に現実世界の主人公がのめり込み、やがてその世界入る…というのは児童文学を映像化した作品お決まりのパターンといえるしょう。

『白雪姫』(1937)などディズニーアニメ映画初期作品はオープニングで本を開き、これからおとぎの世界をご覧頂きます、という演出がお約束です。

読み聞かされた物語が映画となるパターンの名作は『プリンセス・ブライド・ストーリー』(1987)。このスタイルをパロディ化した『デッドプール2のおとぎばなし』(2018)という異色作もありました。

読んでいる本の世界に主人公が入り込む、代表作にして名作が『ネバーエンディング・ストーリー』(1984)。現実世界に飛び出し、いじめっ子に一泡吹かせる爽快なラストを迎えます。

このラストを巡り、原作者ミヒャエル・エンデとトラブルになります。原作では現実世界に帰還した少年は、本の中の空想世界(?)の体験を通じ、成長を遂げていたという結末です。勝手に改変した、映画化に際しての契約に基づく改変だと、裁判騒ぎになりました。

紹介した『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』を振り返ると、物語の中の異世界と現実世界が様々な形で絡み合う作品だと理解できるでしょう。

そして小説も現在進行形で執筆中という設定です。過去の児童文学ファンタジー映画の名作を踏まえつつ、新たなパターンを創作した作品と言えるでしょう。

舞台はサンクトペテルブルク


(C)2020 SDF – KINO-ART LLC

本作は児童文学やおとぎ話を映像化した作品ではありません。長らくプロデューサーとして活躍してきた、アレクセイ・テルノフが創作した物語を自ら監督しました。

舞台は現実世界も”暗闇の街”もサンクトペテルブルク。かつてロシア帝国の首都でソ連時代はレニングラードと呼ばれ、第二次世界大戦の激戦地です。ソ連崩壊後の現在は首都機能の一部が復帰し、かつての存在感を取り戻しつつある大都市です。

映画の冒頭で誕生から街の歴史を紹介しています。この大都市が魔女に支配されると、邪悪な魔物の住む街になります。劇中ではこの住人をヴァンパイア、と呼びますがお馴染みの吸血行為は見せません。

彼らの姿は怪物というより、19世紀後半~20世紀初頭のヨーロッパ各国の大都市のスラム街の住人、犯罪者のイメージで語られる人々の姿そのものです。

ドストエフスキーの小説「罪と罰」は、1866年に連載を開始されましたが、主人公ラスコーリニコフはサンクトペテルブルクに住み、ここで金貸しの老婆を殺害します。

本作の印象的シーンに、運河を軍艦が航行するシーンがあります。この軍艦の姿は、19世紀末~第一次世界大戦期の巡洋艦といったところでしょうか。

本作の”暗闇の街”は幻想世界というより、ロシア帝国時代の暗黒街を抱えたサンクトペテルブルクをベースにした世界、と見るべきでしょう。

孤児の少女を取り巻く世界の寓話


(C)2020 SDF – KINO-ART LLC

本作のメインストーリーは、生死の境をさまよう孤児の少女が見た幻想の世界であり、彼女はパラモンの導きで旅することになります。

この世界を支配する魔女は孤児院の管理者であり、彼女の養父母の家庭を壊そうとする存在です。魔女は現実世界でも幻想世界でも、少女の未来を脅かす存在として君臨しています。

と解釈すればオーソドックスな物語になるはずが、魔女は養父が執筆中の小説の登場人物と、ユニークな設定を与えたと言えるでしょう。

過去の児童文学ファンタジー映画より凝った展開が、同時に今一つ判りにくい物語になった原因とも言えます。見終わってから解釈するならまだしも、映画鑑賞中の観客には謎を抱えた状態が続いてしまいます。

ラストは続編への布石?なのか判りませんが、ここは現実世界と幻想世界の関連を明確にする、魔女の正体と二つの世界への説明があった方が鑑賞後にスッキリした印象を与えたはず、と指摘させてもらいます。

まとめ


(C)2020 SDF – KINO-ART LLC

サンクトペテルブルクを舞台に孤児の少女を取り巻く世界を、現実と幻想を交えてユニークに描いた『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』。

おとぎ話を越えた複雑なストーリーが魅力です。しかし全ての謎を解かずに迎えたラストが、観客に余韻より疑問を与えた感は否めません。

しかし、かつて存在した大都市の暗黒街、切り裂きジャックを描いた『フロム・ヘル』(2001)や『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(2007)、共にジョニー・デップ主演作ですが、本作がそんな舞台を背景に構築した幻想世界と知ると、別の興味も湧くでしょう。

そう考えると、本作に一番近い世界観を持つ作品は、ロンドンの貧民街で苦難を経て幸せを掴む少年を描いたチャールズ・ディケンズの小説で、ロマン・ポランスキーも映画化した『オリバー・ツイスト』(2005)かもしれません。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」は…


(C)2018 Brobond Entertainment, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

次回第38回は、TV放送時「サメ台風」とも呼ばれた『シャークネード』。正しくは「サメ竜巻」…。ならば次に登場するディザスター・パニックホラー映画はこれだ!誰もが呆れる映画『ゾンビ津波』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら





関連記事

連載コラム

映画『息子のままで、女子になる』感想評価とレビュー。サリー楓に密着したLGBTドキュメンタリーは“You decide.”の言葉が意味を解く|映画という星空を知るひとよ65

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第65回 新世代のトランスジェンダーのアイコンとして注目されるサリー楓。男性として生まれた楓が、“女性”として踏み出した瞬間を追ったドキュメンタリー映画『息子の …

連載コラム

映画『ハッピー・オールド・イヤー』あらすじと感想レビュー。断捨離を通してモノに宿った思い出と家族の人生が浮ぶ|OAFF大阪アジアン映画祭2020見聞録2

第15回大阪アジアン映画祭上映作品『ハッピー・オールド・イヤー』 毎年3月に開催される大阪アジアン映画祭も今年で15回目。2020年3月06日(金)から3月15日(日)までの10日間にわたってアジア全 …

連載コラム

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】11

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】(2020年9月下旬掲載) 【細野辰興の連載小説】『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の一覧はこちら スポンサー …

連載コラム

清原惟映画『ひとつのバガテル』あらすじと感想レビュー。武蔵野美術大学の卒業制作という“衝撃あるいは事件”|ちば映画祭2019初期衝動ピーナッツ便り3

第10回ちば映画祭「清原惟監督特集」 2018年に東京藝術大学大学院の修了制作として手がけた初長編作品『わたしたちの家』が劇場公開され、鮮烈な映像感覚が大きな注目を集めている清原惟(きよはらゆい)監督 …

連載コラム

マトリックスやスターウォーズに登場する救世主たち。SF映画のキリスト教的要素を考察|SF恐怖映画という名の観覧車24

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile024 ハロウィン、クリスマス、初詣と宗教的風習を日本独自の文化に改変し取り入れる日本ですが、そのイベントの「宗教的背景」を気にする人は中々いま …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
映画『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)より全国公開
映画『写真の女』
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学