連載コラム『いま届けたい難民映画祭2025』第5回
難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています。
今年で20回目を迎える難民映画祭。それは、「節目」であると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあります。
2025年11月6日(木)〜12月7日(日)開催の第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開。公開される9作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。
今回紹介するのは、ジュリー・デルピーが監督・出演し、難民を迎えることになったフランスの村の大騒動を描いた『バーバリアン狂騒曲』(2024)です。
ブルターニュ地方の小さな村パンポン。ロシアのウクライナ侵攻を受け、ウクライナの難民を受け入れるはずが、到着したのはシリアからやってきた一家でした。
難民との交流を通じて浮かび上がる、受容と偏見の物語をユーモラスに映し出します。
【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら
映画『バーバリアン狂騒曲』の作品情報

(C)Julien Panie
【日本上映】
2025年(フランス映画)
【原題】
Les Barbares
【監督・脚本】
ジュリー・デルピー
【キャスト】
ジュリー・デルピー、サンドリーヌ・キベルラン、ロラン・ラフィット、ジアド・バクリ、ジャン=シャルル・クリシェ、インディア・ヘア
【作品概要】
第20回難民映画祭の上映作品では唯一の劇映画『バーバリアン狂騒曲』は、クシシュトフ・キエシロフスキー監督の「トリコロール」3部作や「ビフォア」シリーズなどで知られるジュリー・デルピーが監督・脚本・出演を務めました。
キャストには『愛して飲んで歌って』(2015)のサンドリーヌ・キベルラン、『打ちて寄せる』(2025)のパレスチナ人俳優ジアド・バクリ、アラン・ギロティ監督作『ノーバディーズ・ヒーロー』(2025)のジャン=シャルル・クリシェなど。
※本作には一部、性的な場面が含まれます。
映画『バーバリアン狂騒曲』のあらすじ

(C)Julien Panie
ブルターニュ地方の小さな村パンポン。ロシアのウクライナ侵攻を受け、ウクライナからの難民受け入れを議会で決め、準備が進んでいました。
いよいよ受け入れ目前という時に、ウクライナ難民はヨーロッパ各国で受け入れが行われ、パンポンのような小さな村にやってくる家族はないと言うのです。
やって来ることになったのは、シリアからやってきたファイヤド一家でした。受け入れを進めてきたジョエルは、親友アンヌと共に準備を進めていますが、村民は「ウクライナではなくシリアから難民が来る」という事実に、無自覚な偏見を口にします。
一家のために用意された家には「野蛮人は帰れ」と落書きがされていました。馴染みもないフランスで、自分たちが村の皆から歓迎されているわけではないことに、ファイヤド一家は複雑な気持ちを抱いています。
ファイヤド一家を通して浮き彫りになる偏見や、交流することで互いを理解していく様子をユーモラスに描き出します。
映画『バーバリアン狂騒曲』の感想と評価

(C)Julien Panie
ジュリー・デルピーが監督・脚本・出演を務め、シリアからの難民を迎えることになったフランスの小さな村での大騒動を描いた『バーバリアン狂騒曲』(2024)。
第20回難民映画祭で上映される9作品のうち唯一の劇映画である本作ですが、前年の第19回難民映画祭でも『ピース・バイ・チョコレート』(2021)という劇映画が上映されました。ちなみに同作もシリアから逃れた一家と、移住先での交流を描いていました。
『バーバリアン狂騒曲』で印象的なのは、ちょっと不謹慎にも思えるユーモラスさと、住民らのゴタゴタも描いている点でしょう。
ジュリー・デルピー演じるジョエルは教師ですが、教師とは思えぬ暴言を言ったり、一家を追い出されないために嘘をついてしまったり、どこかダメな部分もある人物として描かれています。
しかし、ユーモラスさの中にもしっかりと偏見や理解する気もなく攻撃し、自分の優位性を保とうとする姿も描かれ、過激で排他的になってしまう昨今の風潮ともつながるところがあります。
話す言葉が違っても、生まれ育った文化が違っていても、皆同じ人間です。互いを理解し、共に生きていくことはできるのです。
ファイヤド一家に対し、偏見を抱き理解しようしない夫と違い、一家を理解しようとする妻の「無知でいたくない」という言葉も印象的でした。
相手のことを知らなければ、理解することもできません。「知ること」はそれだけで大きな一歩であることを改めて感じさせられます。
それは、この難民映画祭が20年にわたって続いてきた、続いてしまったことにもつながっています。
まとめ

(C)Julien Panie
第20回難民映画祭で上映される9作品のうち、唯一の劇映画である『バーバリアン狂騒曲』。
「難民をテーマとした映画」というと、どうしても「重い」という印象を抱いてしまう人もいるかもしれません。そのような中で、本作のようなコメディ映画は、観やすい映画であると同時にコメディ映画としても楽しめる映画になっています。
ジョエルが親友であるアンヌと喧嘩してしまったり、ガレットを初めて食べて思わずまずいと言ってしまったり……と思わずクスッと笑える場面が随所に散りばめられています。
また監督を務め、教師ジョエル役としても出演したジュリー・デルピーが、劇中で奔走する姿もキュートでユーモラスです。
原題『Les Barbares』は直訳すると「野蛮人たち」ですが、その「野蛮人」というのはファイヤド一家が生活する家に書かれた落書きにも書かれていました。
しかし、「野蛮人」は彼らではなく、偏見を露呈させるパンポン村の人々をさしていることにも本作の面白さがあります。
第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。
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