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Entry 2022/12/04
Update

『チャタレイ夫人の恋人』ネタバレ結末あらすじと感想考察の評価。おすすめ官能小説を原作にしたイギリスが舞台のラブロマンス|Netflix映画おすすめ125

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第125回

今回ご紹介するNetflix映画『チャタレイ夫人の恋人』は、過去に何度も映画化やドラマ化された、イギリスの小説家D・H・ローレンスの官能小説が原作です。

監督はフランスの映画女優でもあり、監督デビュー作『マスタング』(2019)が映画賞にノミネート、監督賞などを受賞した、ロール・ドゥ・クレルモン=トネールが務めます。

映画『チャタレイ夫人の恋人』はイギリス中部の広大なチャタレイ家の領地が舞台です。クリフォード・チャタレイ男爵は、第一次世界大戦のドイツ戦線で戦傷を負い復員します。

クリフォードは若くて無垢な心の持ち主コニーと結婚していましたが、下半身麻痺で男性としての機能を喪失し、気難しい性格になってしまいコニーを心身共に苦しめます。

やがてコニーは使用人(森番)のオリバー・メラーズに恋に落ち、2人は愛し合うようになるとコニーは初めて“性”に目覚め、身分を越えた“愛”を知ります。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『チャタレイ夫人の恋人』の作品情報

(C)2022 Netflix

【公開】
2022年(イギリス、アメリカ映画)

【原題】
Lady Chatterley’s Lover

【監督】
ロール・ドゥ・クレルモン=トネール

【原作】
D・H・ローレンス

【脚本】
デビッド・マギー

【キャスト】
エマ・コリン、ジャック・オコンネル、マシュー・ダケット、フェイ・マーセイ、エラ・ハント、ジョエリー・リチャードソン

【作品概要】
Netflixドラマシリーズ「ザ・クラウン」で、ダイアナ妃を演じ、ゴールデングローブ賞を受賞したエマ・コリンが、チャタレイ夫人役を演じ、大胆なヌードやSEXシーンに挑みました。

チャタレイ夫人が恋に落ちた森番のオリバー・メラーズ役には、『名もなき塀の中の王』(2015)、『不屈の男 アンブロークン』(2016)のジャック・オコンネルが演じます。

クリフォード・チャタレイ役にマシュー・ダケット、姉のヒルダ役にフェイ・マーセル、ボルトン夫人役でジョエリー・リチャードソンが共演します。

映画『チャタレイ夫人の恋人』のあらすじとネタバレ

(C)2022 Netflix

芸術家の娘コンスタンス・リード(コニー)は、炭鉱の村を領地に持つ貴族のクリフォード・チャタレイの妻となります。

姉のヒルダはコニーの人を信じやすく、心を開きやすい性格を心配します。コニーにはかつてドイツ人兵士の恋人がいましたが、戦争によって別れた恋人は戦死しました。

コニーは心配するヒルダに、クリフォードの人柄について伝統を重んじながら、先進的な考え方を持っているところに惹かれたと話します。

チャタレイ夫人としてお披露目されたパーティーでは、早々に跡継ぎを期待されるコニーですが、クリフォードは2人の人生を最優先すると彼女にいいます。

しかし、第一次世界大戦で陸軍将校として、前線にいたクリフォードは結婚披露パーティーが終わり、コニーと一夜を共にしますが翌朝には戦地へと戻っていきました。

終戦を迎えクリフォードは帰還しますが、戦闘により下半身不随となっていました。チャタレイ夫妻はウォリックシャー州ラグビーの古城で暮らし始めます。

クリフォードの戦傷は重く、性交が不能となり跡継ぎが望めなくなっていました。それでも2人でよい人生を送ろうと誓いました。

城は老朽化が進み修復しないと暮らせない状態です。クリフォードはかつての使用人や子孫、復員してきた村人を雇います。

クリフォードは執筆していた短編小説を追記し、長編小説に仕上げるとコニーに話します。彼女は校正やタイピングなどの手伝いをして、彼の小説を出版させました。

こうして2人の新生活は平穏そうに流れますが、クリフォードは自分の身の回りの世話を、コニーにしか許さず、彼女の心身の負担が大きくなっていきました。

ある日、クリフォードはコニーに見せたい場所があると、車椅子で小高い丘の上へ向かいますが、悪路で上れなくなっていると、通りかかった森番のオリバーが手伝います。

クリフォードは石炭発掘のため切り開き、小さくなった森や自然を見せながら、村人や子孫のために残った自然は守りたいと語ります。

そして、子供を作る希望のないクリフォードは、コニーに他の男性との間に子供を作り、2人の子供として育て、跡継ぎにしたいと言い始めます。

相手となる男の条件としてあげたのは、世事に関して分別ができ、身を引ける人物であることでした。

コニーは跡継ぎを産むためだけの存在だと傷つき、クリフォードにチャタレイ家の存続のためなら、愛のない行為で子供を作るのが平気なのかと責めます。

以下、『チャタレイ夫人の恋人』ネタバレ・結末の記載がございます。『チャタレイ夫人の恋人』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2022 Netflix

ある朝、新聞にクリフォードが書いた小説の批評が掲載されました。彼の写真付きで大きく扱われましたが、その内容は新しさのない古臭い内容というものでした。

酷評されたクリフォードの創作意欲は削がれ、コニーへの干渉は酷くなっていきました。彼女は四六時中、彼の世話をするか側にいなければなりません。

ロンドンのヒルダに会いに行きたいと願い出ても、屋敷に呼べばいいとやんわりと却下します。息が詰まってきたコニーは、食欲もなくやつれていきました。

コニーは部屋に飾られた一族の写真や絵画を外し、調度品も床に並べて悲しみにくれました。

コニーからの連絡で屋敷に来たヒルダは、コニーは介護士ではないとクリフォードに講義します。そして昔、雇っていた乳母のボルトンを介護士として雇うよう言いました。

こうしてコニーの負担は軽くなり、散歩に出る時間が得られ、コニーはクリフォードから、今年の“キジ”のヒナがどのくらい孵化するか、森番に聞いてくるよう頼まれます。

コニーは森番として雇われた、オリバー・メラーズを訪ねました。家の前で体を洗うオリバーを見たコニーは、密かに胸躍らせました。

着替え中のオリバーは不意な領主夫人の来訪に驚きつつ、彼女を家の中に招き入れます。

彼の趣味で整えられた部屋を見たコニーは気に入り、特に“ジェイムズ・ジョイス”の本を見つけ、読書の趣味が合うと喜びます。

コニーはヒナの数だけ確認し家を出ると、辺りに咲く野花に目が止まり、感激しているとオリバーは「あなたの花です」と言い摘んで帰るよう勧めます。

コニーは花を摘むとその足で村祭りで出会った、教師をしているフリントの家に向かいました。フリントはオリバーのことをコニーに話します。

彼は子供のころから優秀で、軍人として陸軍中尉にまで上り詰めますが、中流階級に馴染めず退役していました。本来、森番で終わるような人でないはずと言います。

そして、彼には妻もいますが出兵中に浮気をして、その相手と家を出ているが軍人恩給を目当てに、今も離婚に応じていないと話します。

数日後、コニーが散策に出ると、どこからか木を叩くような音が聞こえ、音のする方へ行くと避難小屋でオリバーに会います。

オリバーはヒナのための小屋を作っていました。彼はコニーに小屋のストーブで、暖をとるよう勧め、彼女は居心地の良さから小屋を気に入り、オリバーのことも気になりました。

そして、息抜きに時々使いたいから、合鍵がほしいとオリバーにいい帰宅します。

クリフォードの興味はコニーには理解できず、ボルトンがその相手をするため、コニーとクリフォードの距離は徐々に離れ始めます。

館の中で居場所のないコニーの不満は、心だけではなく身体にもありました。ある日、散歩の途中で雨が降り小屋へ行くと、オリバーが鍵を持ってやってきます。

こうしてコニーに隠れ家ができキジの様子を見たり、ヒルダへの手紙を書き、読書をするために小屋へ来るようになります。

しかし、雨の日が続き散歩ができなくなったり、クリフォードが興味を持った人物との夜会など、退屈な時間も増えていきました。

クリフォードが小説の次に手を出したのが、領地の炭鉱です。電気が石炭に取って代わり、炭鉱事業は衰退しており、人件費の削減を余儀なくされています。

責任者のリンリー氏は炭鉱の近代化に、投資すれば黒字に転じて事業も安定すると、クリフォードに訴えかけました。

コニーは鉱員達の生活が困窮すると、クリフォードに意見しますが、“ただの物乞い”でいかにも女の発想だと一蹴します。

クリフォードのことを現代的な思考だと思っていたコニーの心が、彼から離れていった瞬間でした。彼女は夜会を中座し散歩に出かけます。

彼女が向かったのは隠れ家の小屋です。キジの卵からヒナが孵っていました。コニーはオリバーに触ってもいいか聞き、掴もうとしますがうまくいきません。

みかねたオリバーが一羽拾うと、コニーの手のひらに持たせ、優しく包み込むよういいます。コニーはヒナが“震えている”と言うと、オリバーはコニーもだと言います。

そして、少し休んでいくよう勧めるとコニーは、たまらずオリバーに抱きつきます。彼は戸惑いつつも、コニーの辛い立場を察しました。

コニーはオリバーに性的な慰めを求め、彼は本能に逆らえず彼女の気持ちに応えました。

この日以来、コニーは頻繁にオリバーと密会を重ね、彼の人間的な生き方に感化されていき、心と体を解放させた快楽に溺れていきました。

やがてコニーの脳裏にクリフォードが提案した、跡継ぎ作りのことを思い出し、フリントやボルトンに、クリフォードの身体に回復の兆しが出てきて、子供も望めそうだと言います。

そして、使用人の間や領地の借主達の間にも、その噂が瞬く間に広がり、クリフォードの耳にも入りますが、彼女が跡継ぎ作りに賛成したのだと思い、噂を否定しませんでした。

同時にコニーは自分の体に変化が出てきたことに気がつき、父親が計画したベニス旅行に行かせてほしいと、クリフォードに“あの件”はすぐに済むと言います。

ある日、エンジン付きの車椅子が、ぬかるみにはまっているところをオリバーに助けられます。しかし、クリフォードの労働階級のオリバーへの態度は、辛辣なものでした。

コニーは領主であろうと人間として、最低限の優しさがないクリフォードを軽蔑し嫌悪し、気持ちは完全に離れてしまいました。

彼女はオリバーにクリフォードと離婚をし、彼と暮らしたいと言います。彼は離婚すればコニーは何もかもを失い何も残らず、オリバーもまだ離婚には至ってないことを示唆します。

2人は駆け落ちも辞さない想いを確認し、自然のまま抱き合いました。ところが帰りの遅いコニーを捜すよう、クリフォードはボルトンにいいます。

そして、森の小道でほとんど衣服を身に着けていない姿で、オリバーとキスをしているところを見られてしまい、ボルトンは嘆いてしまいます。

しかし、ボルトンを探しに出させた行為は、コニーにクリフォードに対する拒否反応を強くさせ、彼を無視するようになりました。

ヒルダが荷造りの手伝いに館を訪ねます。ヒルダはコニーからの手紙で、好意をもった男性がいることを直感し、彼女に誰なのか聞きます。

コニーはヒルダにオリバーのことを話しますが、彼女は身分の違う相手に愕然とし、コニーに幻滅すら感じます。

コニーの一番の理解者だったヒルダですら、2人の関係と未来に希望はないと反対しますが、コニーは出発の前夜は彼と過ごすと告げました。

ヒルダはコニーをオリバーの家に送り彼と対面しますが、何もかもを失う妹を幸せにできる、心の準備と計画はあるのか聞き、ないのなら身を引くよう告げて出ていきます。

早朝、オリバーの家にバーサに命令されたネッドが、恩給をせびりにやってきます。オリバーは彼を追い払い、コニーのいた証拠を隠しました。

しかし、オリバーの留守中にネッドは家に忍び込み、暖炉に焼け残ったシルクの肌着や、家具の下に隠したコニーの本を見つけてしまいます。

コニーはヒルダにオリバーの子供を妊娠したことを話します。そして、それとなく父親に他の男性に好意をもったらと相談すると、ヴェニスに行って考えようと諭されました。

オリバーがコニーと通じていたことは、領地中に伝わりクリフォードの耳にも入ります。彼はクリフォードに呼ばれ、森番を解雇され領地から立ち退くよう告げられます。

ボルトンはとっさにコニーに連絡をします。旅先から戻った彼女はフリントを頼りますが、コニーの行為に反発し遠ざけます。

小屋に向かい荷造りするオリバーと会いますが、村人が早く出ていくよう抗議しに押し寄せ、コニーにどこにいても探し出すと約束し別れました。

コニーはクリフォードに離婚を申し出ますが、彼は断固として受け入れませんでした。彼女は別居するため出ていきます。

ボルトンは心配してコニーに声をかけます。コニーは彼女にオリバーの行先を友人達に聞いてほしいと託します。

口実がないと聞くことができないと言うと、コニーは「愛のため」と答えました。ボルトンは何度もうなずき、“紳士(オリバー)との再会を祈る”と見送りました。

ボルトンは使用人仲間に、オリバーの情報があったら教えてほしいと告げます。何もかもを捨て出ていったコニーの“愛のため”だと話すと、使用人たちの心も動かされます。

ヴェニスでは気の晴れないコニーに、厳しい現実が待ち受けていました。上流階級の集う街では、コニーは噂され知人も彼女を避けるようになりました。

そんなある日、ヒルダが手紙を持って読書するコニーのところに来ます。オリバーからの手紙です。ヒルダは車のキーをコニーに渡すと、彼女は彼の元へ向かいました。

彼は友人の伝手でスコットランドの農場で働いていました。炭鉱で働いていた抗夫がパブで、“貴婦人が使用人との恋を隠さなかった”と話していたと言います。

“その男を愛していたから”という物語には続きがあるだろうと、オリバーは愛する女性と子供を迎える前に、生きる意味を考えたと綴りました。

そして、2人の間にある小さな炎を絶やさぬことが、生きる意味になったと締めくくると、オリバーは訪ねてきたコニーを抱きしめます。

映画『チャタレイ夫人の恋人』の感想と評価

(C)2022 Netflix

1928年に発表された小説「チャタレイ夫人の恋人」は、D・H・ローレンスの故郷における、炭鉱の悲惨な状況を鑑み執筆が開始され、当初は階級問題が主題とされる内容でしたが、改稿を重ねる間に、性的な描写が主体の小説として完成します。

結果、有害図書として議論も多くなされ、検閲などで性的描写が削除されたり、発禁や絶版にまで追い込まれた小説でした。

日本でも1935年に伊藤整が翻訳し出版されますが、第二次大戦下では検閲で発禁となり、修正版として出版されます。

しかし、1950年には再び無修正の完訳版を刊行し、ベストセラーとなりますが、わいせつ文書として押収され、起訴され最高裁までの裁判となりました(チャタレー事件)

このように物議の多かった小説「チャタレイ夫人の恋人」ですが、多数の映画化やドラマ化された魅力はどこにあったのでしょうか?

“D・H・ローレンス”の半生を描いたのか?

原作者D・H・ローレンスは炭鉱夫の父と教員の母の間に生まれています。彼の多くの小説には炭鉱の村や、風光明媚な田園地帯の風景が描写されています。

その風光明媚な景色が、上流階級が進める鉱業の機械化で失われる事への危惧と、鉱員の仕事が奪われ、貧困層が加速することへの抗議を表したのでしょう。

しかし重要視していたテーマも、漠然とした自然の美しい姿と、近代化が進む工業との対比では、インパクトが薄かったのだと推測します。

例えば作中でクリフォードの書いた小説が酷評されますが、ローレンスのことだとしたら、身分違いの恋愛をセンセーショナルに加筆させたとも言えます。

卑猥とみられる描写は注目を集め、階級を越えた“愛”があれば、自然と近代工業の調和も可能だと、主張したかったのかと想像させます。

小説「チャタレイ夫人の恋人」はローレンス最後の長編小説です。ゆえに彼の生きてきた半生と照らし合わせると、類似している点が多くありました

ローレンスは労働階級の出身でありながら、成績優秀だったため奨学金で高校に進学し、小学校で代用教員をしながら、大学で教員資格を取得しました。

彼のこうした姿は成績優秀で軍の中で高い階級まで昇り詰めていた、オリバー・メラーズと重なります。

オリバーは作中、戦争で肺を患ったと語りますが、ローレンスもまた肺炎を何度か発症しています。それは炭鉱の村で育ったことも、要因としてあったのかもしれません。

虚弱なローレンスは執筆で成功しながらも、大学の恩師アーネスト・ウィークリーに就職相談をし、その際に出会った彼の妻フリーダと、恋に落ち駆け落ちをしています。

コニーのモデル“フリーダ・ローレンス”

(C)2022 Netflix

フリーダはドイツ貴族の生まれです。コニーのようにローレンスに恋をしたフリーダは、身分や社会的地位を捨て彼と駆け落ちし、階級社会や世間からの嫌がらせにあっています。

2人はミュンヘンに逃げ、イギリス国内やヨーロッパを転々とし、ニューメキシコ州タオス近くの“キオワ牧場”に定住します。

これらの経験がこの小説には落とし込まれており、貴族として生まれた彼女の不自由さと、労働階級の家で生まれ育った彼の境遇を重ね合わせています。

フリーダはイギリスの劇作家ジョン・ハートが書いた戯曲が唯一、ローレンスに読まれ承認された作品だとしています。

Netflix映画『チャタレイ夫人の恋人』がこのジョン・ハートの戯曲に近いものかどうか、原作に忠実なのかは定かではありません

D・Hローレンスや妻のフリーダ亡き今、この小説を大胆な演出で映画化した意義を考えた時、どう捉えるべきなのでしょう?

権力によって破壊されている平和や家族の営みは、国や国益を越えた勇気ある人間愛で、取り戻す時だと、捉えることもできるでしょう

まとめ

(C)2022 Netflix

映画『チャタレイ夫人の恋人』は、心に“愛のない”人間からは、何も守り切ることはできないというメッセージを感じました

伝統や格式を重んじ、人の心を尊ばない“階級社会”は、自然を奪い人々の暮らしを困窮させ、“不満”という負の連鎖しか生まないと訴えます。

コニーは芸術家の娘で中流階級でしたが、先進的な思考のクリフォードに見初められ、貴族の一員となります。

しかし、戦争のせいでクリフォードの先進的な思考は、思わぬ方向へ向かったと考えざるを得ません。身体的な自由を奪われた苦悩は、精神的な歪みを生んだといえるでしょう。

妻のコニーがボルトン夫人の力を得ながら、クリフォードを支え続けていれば、古式ゆかしい伝統を守りつつ、鉱業の近代化によって村人の生活は改善したでしょう。

しかし、若いコニーにとってオリバーの存在は、逃げ道ができたといえ、夫妻は互いに思いやることができずに、我を通す結果になりました。

クリフォードは領主として村人から、尊敬と忠心を得られたでしょうか? 逆にコニーは“愛する”ことだけで、スコットランドでの過酷な生活を耐え抜けたのでしょうか?

イギリス社会の進化を映画『チャタレイ夫人の恋人』に例えるならば、小説「チャタレイ夫人の恋人」の完訳が、紆余曲折の末に文学として認められたように、“階級制度”は根強く残るものの、努力が報われる7階級制度に改正されました

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