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Entry 2019/10/16
Update

映画『パペット・マスター(2019)』感想評価と考察。人形ホラーシリーズの魅力|SF恐怖映画という名の観覧車71

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile071

10月11日(金)より、ついにヒューマントラストシネマ渋谷にて上映が始まった「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション 2019」。

すでに上映が予定されている作品群の中から『WELCOME TO JAPAN 日の丸ランチボックス』(2019)、『血を吸う粘土 派生』(2019)、『スクールズ・アウト』(2019)の3作を当コラムではご紹介させていただきました。

どの作品も独特すぎる魅力を持つ作品ですが、今回のコラムでは更に独特であり世界各地にファンから根強い人気を持つシリーズの最新作『パペット・マスター』(2019)をご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『パペット・マスター』の作品情報


(C)2018 Cinestate Puppet Master, LLC

【日本公開】
2019年(イギリス・アメリカ合作映画)

【原題】
Puppet Master: The Littlest Reich

【監督】
トミー・ビクルンド、ソニー・ラグーナ

【キャスト】
トーマス・レノン、ジェニー・ペリサー、ネルソン・フランクリン、シャーリン・イー、マイケル・パレ、アレックス・ベー、スキータ・ジェンキンズ、バーバラ・クランプトン、ウド・キア

映画『パペット・マスター』のあらすじ


(C)2018 Cinestate Puppet Master, LLC

1989年、ポストヴィルで連続殺人に関与していたと見られるアンドレ・トゥーロンが警察官によって射殺されます。

30年後、妻との離婚を機に故郷に戻った漫画家のエドガーは事故で亡くなった弟の遺品からアンドレ・トゥーロンが製作した人形を発見。

アンドレ・トゥーロンに関する品がオークションに出品されると聞いたエドガーは、友人と彼女を連れポストヴィルへと向かいますが…。

「パペット・マスター」シリーズとは


(C)2018 Cinestate Puppet Master, LLC

1989年に公開されたホラー映画『パペット・マスター』(1989)。

派手なゴア描写とシュールな笑いが人気となった本作は主にアメリカを中心にカルト的人気を誇ることになり、これまでに11作も製作されるほどに長い長い歴史を持つ長寿シリーズ。

そして、12作目となる本作は血まみれ残虐スプラッター映画『悪霊のはらわた』(2012)を手掛けたトミー・ビクルンドとソニー・ラグーナが製作し、今までのシリーズの見どころをきっちりと受け継いだ作品となっていました。

本作の特徴かつ魅力的な部分は、12作目にしてシリーズファンへのサービスをしっかりと作品に取り入れつつも、「シリーズ自体が所見の人」向けにも作られているという部分にあります。

パペットの製作者であり、危険な思想をパペットに吹き込んだシリーズのキーキャラとも言えるアンドレ・トゥーロンのオリジンを劇中で丁寧に説明してくれるため、本作が初めてと言う方にも安心の物語設計。

それでいて、シリーズ人気ナンバーワンであるパペット「ブレイド」は得意の刃物で次々と虐殺を繰り返すファンにとってのサービスシーンも健在。

驚くほどの血のりが使われている、残虐非道なゴアエンターテイメントシリーズに興味がある方はぜひ本作から入ってみてください。

人形が人を襲う!類似作品との違いを検証


(C)2018 Cinestate Puppet Master, LLC

「動く人形が人を襲う」と言ったプロット自体は映画界では珍しいものではなく、類似作品も多く存在します。

例えば、シリーズを1からリブートした映画が今年公開された「チャイルド・プレイ」シリーズは、このジャンルの中では最も有名であると言えます。

他にもギズモでお馴染みの「グレムリン」シリーズを製作したジョー・ダンテが手掛けた『スモール・ソルジャーズ』(1998)も「動く人形が人を襲う」映画として印象が深い作品。

片や大人気のホラーシリーズ、片や子ども向けのドタバタ映画が並び立つ中、「パペット・マスター」シリーズは全く違った方向性によって他作品との分離を行っていました。

「パペット・マスター」にしかない魅力とは


(C)2018 Cinestate Puppet Master, LLC

「チャイルド・プレイ」シリーズはユニバーサル・スタジオ・ジャパンでもハロウィン毎にアトラクションが用意されるほど知名度の高いホラー映画シリーズです。

最新作がR15のレイティングを受けたとはいえ、作中の殺人シーンもグロテスクなものが苦手な人は観ない方が良いものの、見慣れた人には「普通」程度に収まっていました。

しかし、「パペット・マスター」は「グロテスク」さこそがシリーズの売りであるため、本作でもグロテスクさは今までのシリーズを更新するほどに大量投入。

人の首が落ちるのは当たり前、炎上から落下死まで、多岐に及ぶ方法で人形による虐殺行為が繰り広げられます。

『スモール・ソルジャーズ』とはもちろん、子ども用の人形が見ていない間に動くホラーがメインである「チャイルド・プレイ」とも違う、過激すぎるゴア描写が他にはない特徴として本作の魅力となっていました。

まとめ


(C)2018 Cinestate Puppet Master, LLC

本作ではどこまでも恐ろしく見えるアンドレ・トゥーロンの殺人人形たち。

しかし、シリーズの他作品を観ることでどこか愛おしくも感じてしまう個性豊かなパペットが魅力的でもある「パペット・マスター」の世界。

このシリーズへの入門としてもピッタリである最新作『パペット・マスター』を劇場でご覧になってみてはいかがでしょうか。

東京・名古屋・大阪の三都市で開催される「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション 2019」にぜひとも足を運んでみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile072も「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション 2019」の上映作品から1作を選びご紹介させていただきます。

10月23日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら





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