連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第270回
映画『おーい、応為』は、江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎の娘・お栄の物語。
映画『おーい、応為』は、2025年10月17日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー!
北斎の娘でありながら弟子でもあったお栄は、のちに雅号を葛飾応為とし、親ゆずりの豪胆さで、男社会を駆け抜けていきます。
監督・脚本を手がけるのは、『日日是好日』(2018)『星の子』(2020)『MOTHER マザー』(2020)『グッバイ・クルエル・ワールド』(2022)などで人間の奥行きを繊細に描いてきた大森立嗣。
主人公・葛飾応為を演じるのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)で脚光を浴びて以来、日本映画界を牽引し続ける長澤まさみ。本作は彼女の初の時代劇主演作です。
長澤まさみは、大森監督とは『MOTHER マザー』(2020)以来となる再タッグを組み、応為の父・葛飾北斎役の永瀬正敏とも、息のあった演技を披露しています。
映画『おーい、応為』の作品情報

(C)2025「おーい、応為」製作委員会
【日本公開】
2025年(日本映画)
【監督・脚本】
大森立嗣
【原作】
飯島虚心『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊)
杉浦日向子 『百日紅』(筑摩書房刊)より『木瓜』『野分』
【出演】
長澤まさみ、髙橋海人、永瀬正敏
【作品概要】
『おーい、応為』は、飯島虚心の 『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊)と杉浦日向子 の『百日紅』(筑摩書房刊)を原作に、『MOTHER マザー』(2020)『グッバイ・クルエル・ワールド』(2022)などの大森立嗣が監督・脚本を務めました。
北斎の娘であり、やがて類まれな絵の才能を開花させていく主人公・お栄(葛飾応為)を、長澤まさみ。北斎役を永瀬正敏、応為の良き理解者となる浮世絵師・渓斎英泉を「King & Prince」の髙橋海人が演じています。
映画『おーい、応為』のあらすじ

(C)2025「おーい、応為」製作委員会
浮世絵師・葛飾北斎の娘であるお栄は、ある絵師に嫁ぎますが、かっこばかりの夫の絵を見下したことで離縁されました。
他に行く所もないお栄は、北斎のもとに戻ります。「おまえのいるところはない」などと悪態をつく北斎ですが、お栄は構わず、狭い長屋の一室に散らばっている画材や製作途中の絵を押しのけて、さっさと居座ります。
こうして、お栄と北斎の父娘として、そして師弟としての生活が始まりました。
2人が暮らす貧乏長屋は画材や絵で散らかり放題。茶も入れられず針仕事もできないお栄ですが、絵の才能だけは父親譲りでした。
北斎からいつも「おーい!」「おーい!」と何かと呼ばれることから、「応為(おうい)」という雅号を授かったお栄は、一人の浮世絵師として、時代を駆け抜けて行きます。
美人画で名を馳せる絵師であり、お栄のよき理解者である善次郎との友情や、兄弟子の初五郎への淡い恋心、拾って「さくら」と名付けた愛犬との日常が繰り返され、嫁ぎ先を飛び出して20年余りがたちました。
北斎と応為は、長屋の火事と押し寄せる飢饉をきっかけに、北斎が描き続ける境地「富士」へと向かいますが……。
映画『おーい、応為』の感想と評価

(C)2025「おーい、応為」製作委員会
江戸時代の有名な浮世絵師葛飾北斎を扱った映画としては、『北斎漫画』(1981)や、『HOKUSAI』(2021)などが挙げられます。
どれも、葛飾北斎の凄まじい絵画への執念を描いていますが、影になり北斎を支えた娘・お栄もまた、重要人物として登場しています。
女性絵師として有名なお栄とは、どんな人物かと興味を持たれた方もいるでしょう。そんな方のためにか、本作『おーい、応為』は葛飾北斎ではなく、その娘であるお栄にスポットライトをあてた作品となっています。
嫁ぎ先から出戻ってきて30年近く。お栄は、父である北斎のもとで絵の修業をしながら、浮世絵一筋の頑固オヤジの身の回りの世話をしていました。北斎と派手な喧嘩をしながらも、娘らしく父に仕えたお栄……。
男勝りでなりふり構わず奔放に生きるお栄ですが、拾った子犬に愛情を注ぐ寂しさと優しさを持っています。だから、大げんかをしながらも父である北斎の世話が出来たのでしょう。
お栄は勝気で口は悪いけれど、自分の心にはとても素直です。自分の気持ちに正直に生き、生涯にわたり絵への情熱を燃やし続けた彼女の生き様は、女性とは思えない凄さがあります。
勇壮でかつコミカルなバックミュージックはお栄のイメージとよくあっていて、作品を盛り上げています。
長澤まさみは、30年後の年配のお栄も見事に演じ、お栄以上に老けていく北斎を体現した永瀬正敏にも、拍手を惜しみません。

(C)2025「おーい、応為」製作委員会
まとめ

(C)2025「おーい、応為」製作委員会
葛飾北斎の娘として知られる、お栄(=葛飾応為)の生涯を描いた作品『おーい、応為』をご紹介しました。
実在する人物ですが、謎に包まれた部分も多いお栄。ですが、親譲りの絵に対する才能と性別に捉われずに自分の気持ちに正直に生きる彼女の生き方に共感を覚えるところも多いことでしょう。
また、実在した人気絵師たちの物語ですから、本ポスターにも注目です。ここには、応為、北斎、善次郎が、各々の作品を背景に、筆を持った姿が映し出されています。
応為の背景は、《吉原格子先之図》。吉原=遊郭の光と闇を描いた作品です。北斎の背景は、《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》。善次郎(=渓斎英泉)の背景は、美人画を得意とした渓斎英泉の代表作で、吉原の遊女をモデルにした《鯉の滝登り裲襠の花魁》です。
浮世絵ファンを唸らせる贅沢なポスターも、楽しんでください。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




































