映画『星の子』は2020年10月9日(金)よりロードショー
『星の子』は、天才子役からひとりの女優として開花しつつある芦田愛菜の6年ぶりの実写主演作品です。
新興宗教にはまる両親に愛情たっぷりに育てられた、ちひろ。一目ぼれしたイケメン先生に宗教の儀式をする両親の姿を見られ、やがて、彼女の心を揺さぶる大きな事件が起こります。
監督は『日日是好日』『MOTHERマザー』を手掛けた大森立嗣で、今村夏子の同題小説を自らが脚色しています。
共演者として、ちひろの両親役に、原田知世と永瀬正敏がいます。ほかに、黒木華、高良健吾など。
映画『星の子』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【原作】
今村夏子
【脚本・監督】
大森立嗣
【キャスト】
芦田愛菜、永瀬正敏、原田知世、岡田将生、大友康平、高良健吾、黒木華、蒔田彩珠、粟野咲莉、新音、見上愛、赤澤巴菜乃、田村飛呂人、大谷麻衣、池谷のぶえ、池内万作、宇野祥平
【作品概要】
映画『星の子』は、芦田愛菜の6年ぶりの実写主演作品。撮影時自身と同じ15歳の少女・ちひろを演じています。
両親が新興宗教にはまっていて、生活の総てに影響を及ぼすなか、ちひろはその環境を受け入れて生活をしています。しかし、新任のイケメン教師が赴任してきたことでちひろの心は大きく揺さぶられて……。
不遇な環境を生き抜くヒロインの健気で涙ぐましい姿を描き出します。
映画『星の子』のあらすじとネタバレ
林ちひろは高校受験を控えた中学3年生。両親と5歳年上の姉の4人家族ですが、普通の家庭とは少し様子が違っています。
もともと未熟児として生まれて病弱だったちひろのために、両親はあらゆる療法を試しました。
しかし何をやってもちひろの健康回復に効果はなく、そんな時に『金星のめぐみ』という “水”の存在を知ります。
特別な生命力を宿したというその水で体を洗うと、ちひろの病状はみるみる改善していきました。
それを機に、両親は謎の“あやしい宗教”に心酔し、自分たちもその水を浸したタオルを頭にのせて暮らすようになりました。
転居するたびにちひろの家は狭くなり、宗教の祭壇やグッズで溢れかえっていきますが、愛情をたっぷりと注いで育ててくれた両親のことがちひろは大好きでした。
中学校には、親友のなべちゃんと、彼女のことが大好きな新村くんという友だちもいて、学校生活はそれなりに充実しています。
けれども、新しく赴任してきた数学教師の南に恋をしたことで、ちひろの日常に変化が訪れました。
数学の授業は先生を観察し、今では自由帳として使っている、ちひろの病状を記した母親の10年日記に先生の似顔絵をスケッチします。
ちひろが小学校5年の時(4年前)家庭の変化を嫌い、家出した姉のまーちゃんが久しぶりに帰宅し、その夜、ちひろはまーちゃんのある秘密を共有します。
しかし、翌朝には「もう帰りません」とメモを残して、まーちゃんは今度こそ本当に家を出て行ってしまいました。
ある冬の日の放課後、事件は起きます。
卒業文集製作委員のなべちゃんを手伝っていたちひろたちは、南先生に車で送ってもらうことに。
夢にまで見た憧れの先生との時間、ちひろにとって最高に幸せの時間のはずでしたが、自宅近くの公園にいたのは、緑のジャージで頭にタオルをのせ、水を掛け合う両親の姿。
南はそんな両親の姿を見て「不審者がいる。完全に狂ってるな」と言い放ちました。その言葉を聞いたちひろはたまらず、その場から走り去ります。
これまでと同じように、ちひろは大好きな両親のことを信じていけるのでしょうか。きな臭い噂が絶えない宗教団体の幹部、海路と昇子は、迷えるちひろを優しく見守ります。
けれども、「あなたがここにいるのは自分の意思とは関係ないのよ」と語り掛けられたちひろの心の揺らぎは増していきます。
映画『星の子』の感想と評価
子役の時からハードな内容の作品に多数出演してきた芦田愛菜。
彼女の6年ぶりの実写主演映画にあたる『星の子』も、決して軽いエンターテインメント作品ではなく、新興と家族愛、そして初恋というものが絡み合う物語になっています。
登場する子供たちが総じて、大人びているのに対して、彼らを囲む大人たちが逆に表面だけを取り繕い、些細なことで感情を爆発させてしまう姿は対照的で、なんとも言えないおかしさを醸し出します。
大人たちはそれぞれ信条があるようですが、それは些細なことですぐにメッキがはがれてしまうのです。
それを見ている子供たちの方が冷静な目線で、言葉を発します。
映画『星の子』は逆転した大人の目線が醸し出す不思議なおかしさを感じさせました。
と同時に、もしかしたら自分の行動や言動も、他所から見ればとても奇異なものに映っているのかもしれないということ、そしてそれはどうしようもない部分があることを教えてくれます。
また、ちひろの思いが高まった時に、いきなりアニメーションが挿入されるのも意外性がありますが、心象風景の描写の仕方としてはなかなか効果的で、映画の中の緩急を見事につけています。
まとめ
本格的に制服姿をスクリーンで披露した芦田愛菜。これまでのキャリアからも、いわゆるコミック原作の学園モノとは違って、社会派の作品を選んできました。
大森立嗣監督のキャリアを見返すと、真木よう子の『さよなら渓谷』(2013)、黒木華、樹木希林、多部未華子の『日日是好日』(2018)、長澤まさみの『MOTHERマザー』など、女性が強い印象を残す作品があります。
本作もまた芦田愛菜という特別なキャリアを築いている女優を得たことで、ヒロインが輝く作品となっています。
芦田愛菜自身も流石の存在感を見せていて、永瀬正敏、原田知世、岡田将生、黒木華、高良健吾と主演級俳優が並ぶ共演陣に埋没することなくしっかりと主演女優として作品を背負っています。
物語の立ち位置としては、受け身のキャラクターなのですが、映画の中では主演として作品を牽引しています。
複雑なキャラクターですが、ちゃんと役を把握してることは見ているだけでしっかりと伝わってきます。“頭でっかち”になっている印象がないのは、やはり芦田愛菜の一味違うキャラを感じます。
芦田愛菜は現在、学業との両立のために俳優業に関しては限定的になっているとのことですが、子役から“一人の若手女優”という立ち位置に変わった中で、これからも多くの作品でその演技を見せて欲しいところです。