Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2024/11/27
Update

『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』あらすじ感想と評価レビュー。名作映画を基にマシュー・ボーンが描く“ハサミの手を持つ男”のラブストーリー|映画という星空を知るひとよ236

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第236回

チャーリーとチョコレート工場』(2005)や『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)の監督も務めたティム・バートンの名作『シザーハンズ』(1990)。

純真無垢な心を持つ人造人間と女性の交流を描いたファンタジー映画を、イギリスバレエ界の鬼才マシュー・ボーンが舞台化したのが『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』です。

2005年の初演以来、18年にわたって世界中の観客の心を掴み絶賛を受けた『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』。このたび2024年3月にカーディフのウェールズ・ミレニアム・センターでライブ収録された同作が、日本のスクリーンに上陸しました。

『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』は2024年12月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次ロードショー。劇場公開に先駆けて本作をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』の作品情報


(C)2024 Trafalgar Releasing. ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2024年(イギリス映画)

【原題】
Edward Scissorhands_Matthew Bourne’s dance version of Tim Burton’s classic

【考案・監督・振付】
マシュー・ボーン

【音楽・編曲】
テリー・デイヴィス

【オリジナル映画のテーマに基づく音楽】
ダニー・エルフマン

【オリジナル映画編曲】
20世紀スタジオ

【オリジナルストーリー・映画『シザーハンズ』監督】
ティム・バートン

【オリジナル脚本・ストーリー・共同脚色】
キャロライン・トンプソン

【映写】
ダンカン・マクリーン

【指揮者】
ブレット・モリス

【キャスト】
リアム・ムーア、アシュリー・ショー、ケリー・ビギン、ドミニク・ノース

【作品概要】
マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエット』(2020)などを手がけたイギリスの現代的なダンス演出・振付家のマシュー・ボーンが、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)など、独特な世界観で映画ファンを魅了し続ける映画界の鬼才ティム・バートンとコラボして作り出した『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』。

ジョニー・デップの出世作でもあるティム・バートンの代表作『シザーハンズ』(1990)を、マシュー・ボーン率いるダンスカンパニー「ニュー・アドベンチャーズ」が鮮やかに蘇らせました。

本作は2024年3月にカーディフのウェールズ・ミレニアム・センターでライブ収録された作品です。

『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』のあらすじ


(C)2024 Trafalgar Releasing. ALL RIGHTS RESERVED./Photo by Kaasam Aziz

風変わりな発明家によってつくられた人造人間エドワード。

発明家が亡くなったため、エドワードは「両手がハサミ」という未完成な状態のまま、丘の上の城にひとり取り残されてしまいました。

ある日、エドワードは親切な女性キムと出会い、彼女の家族と一緒に暮らそうと誘われます。

人々はエドワードの奇妙な見た目に戸惑いながらも、彼の内面にある純粋さや優しさを見いだそうとします。

そんな毎日の中で、エドワードは自分の居場所を見つけることができるのでしょうか。

『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』の感想と評価


(C)2024 Trafalgar Releasing. ALL RIGHTS RESERVED./Photo by Kaasam Aziz

「ハサミの手」が招く数多のできごと

本作のオリジナルは、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)や『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)など、数々の名作を手がけたティム・バートン監督の代表作のひとつ『シザーハンズ』(1990)です。

人造人間のエドワードと女性の切なく甘い恋愛譚を、バレエ界の鬼才マシュー・ボーンがダンスバージョンの作品として見事に甦らせました

巨大なハサミの手を持つエドワードがひとりで丘の上の城にいたところ、偶然知り合った女性キムから自分の家で一緒に住もうと誘われ、彼女の家に行きます。

奇妙な姿をしていても、エドワードの心は純粋無垢。手がハサミのために食事さえうまくできませんが、植木を様々な形に美しく整えたり、ペットの毛を刈ったり、女性たちの髪を独創的な感じにカットしたりと、自分でできることを発見して、周囲の人々を喜ばせます。

ですが、便利なハサミの手が人々に重宝がられる反面、人を抱きしめることができず、触れただけで怪我をする場合もあり、心優しいエドワードを悩ませます。

ハサミの手は、幸福を招くのでしょうか。それともやはり不幸を導いてくるのでしょうか

映画とダンスバージョンではラストが違うのではないかと気になりながら、キャストのダイナミックなダンスから目が離せません。

ダンスバージョンの魅力


(C)2024 Trafalgar Releasing. ALL RIGHTS RESERVED./Photo by Kaasam Aziz

セリフが一切ないダンスバージョンの本作では、音楽に合わせたダンスとキャストの表現力でストーリーを紡ぎます

エドワードが皆を喜ばせるシーンでは、心も踊るような軽快な音楽とともに、満面の笑みを浮かべた彼の楽し気な躍りが飛び出します。

ガシャガシャと音が出る、重たげなハサミの手を高く振り上げて軽やかに踊る様は、まるで翼が生えたかのようで、泣いたり笑ったり、普通の人と同じ生活を送れることにエドワードは喜びを見出していたのです。

マシュー・ボーンが手がけた本作は、笑いもあれば涙もあり、マシューマジックがたっぷり用意されています。主人公が奇異な姿をさらけ出しても少しも怖くなく、幻想的な世界へ引きずり込まれることは間違いありません。

また、本作の映画との大きな違いは、ラストに行われるカーテンコールではないでしょうか。

最終幕のあと、キャストがもう一度順番に舞台へ出て来て挨拶をします。キャスト陣が再び登場することで観客は大喜び。エドワードの悲しみや喜びを表情とダンスで見事に演じ切った主役のリアム・ムーアが最後に登場すると、観客がどよめき惜しみない拍手を贈ります。

音楽にのせてのダンス、そしてカーテンコールでの挨拶。ダンスバージョンだからこその醍醐味を堪能してください。

まとめ


(C)2024 Trafalgar Releasing. ALL RIGHTS RESERVED./Photo by Johan Persson

ティム・バートンの代表作『シザーハンズ』(1990)を、イギリスバレエの鬼才マシュー・ボーンがダンスバージョンに仕上げた『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』。

ハサミの手を持つ人造人間のエドワードと人間の女性との哀しくも美しいラブストーリーをダンスで表現し、ダイナミックで華やかな舞台をそのまま映像化。観客をファンタジックな世界へ誘います

ティム・バートンとマシュー・ボーンという贅沢な組み合わせで生まれた独創性あふれる作品を、ぜひ劇場でお楽しみください。

『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』は2024年12月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次ロードショー!

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



関連記事

連載コラム

映画『ブレイブ群青戦記』ネタバレ感想評価とラスト結末。三浦春馬×新田真剣佑が漫画原作の歴史SFアクションを熱演|映画という星空を知るひとよ55

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第55回 映画『ブレイブ-群青戦記-』は、『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で、‟部活×青春×歴史”作品として人気を博した笠原真樹原作の『群青戦記 グンジョーセン …

連載コラム

映画『クレイジーズ42日後』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。リメイク版で刷新したゾンビ化現象を描いたパンデミック・ムービー|未体験ゾーンの映画たち2021見破録26

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第26回 世界の様々な国の、まだ見ぬホラー映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第26回で紹介するのは『クレイジーズ 42日後』。 …

連載コラム

『イン・ビトゥイーン』ネタバレあらすじと結末の感想評価。マーク・クラインが手がけた青春ロマンス|Netflix映画おすすめ95

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第95回 映画『イン・ビトゥイーン』は、交通事故にあったティーンエイジャーの男女が、現実と死後の世界の“境”で、想いを確かめ合うラブストーリ …

連載コラム

フランス映画『ジェシカ』ネタバレ感想とレビュー評価。戦う女性がテロのはびこる世に美しく降臨|未体験ゾーンの映画たち2020見破録25

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第25回 様々なジャンルの映画を集めた劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」は、今年もヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて実 …

連載コラム

『仮面ライダーBLACK SUN』内容解説考察。白石和彌監督が手掛けるアウトロー的ヒーロー誕生!【邦画特撮大全96】

連載コラム「邦画特撮大全」第96章 今回の邦画特撮大全は、『仮面ライダーBLACK SUN』を紹介します。 石森プロ・ADK EM・東映 2021年4月の「仮面ライダー」生誕50周年企画発表会見にて、 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学