連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第236回
『チャーリーとチョコレート工場』(2005)や『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)の監督も務めたティム・バートンの名作『シザーハンズ』(1990)。
純真無垢な心を持つ人造人間と女性の交流を描いたファンタジー映画を、イギリスバレエ界の鬼才マシュー・ボーンが舞台化したのが『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』です。
2005年の初演以来、18年にわたって世界中の観客の心を掴み絶賛を受けた『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』。このたび2024年3月にカーディフのウェールズ・ミレニアム・センターでライブ収録された同作が、日本のスクリーンに上陸しました。
『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』は2024年12月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次ロードショー。劇場公開に先駆けて本作をご紹介します。
CONTENTS
『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』の作品情報
【日本公開】
2024年(イギリス映画)
【原題】
Edward Scissorhands_Matthew Bourne’s dance version of Tim Burton’s classic
【考案・監督・振付】
マシュー・ボーン
【音楽・編曲】
テリー・デイヴィス
【オリジナル映画のテーマに基づく音楽】
ダニー・エルフマン
【オリジナル映画編曲】
20世紀スタジオ
【オリジナルストーリー・映画『シザーハンズ』監督】
ティム・バートン
【オリジナル脚本・ストーリー・共同脚色】
キャロライン・トンプソン
【映写】
ダンカン・マクリーン
【指揮者】
ブレット・モリス
【キャスト】
リアム・ムーア、アシュリー・ショー、ケリー・ビギン、ドミニク・ノース
【作品概要】
『マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエット』(2020)などを手がけたイギリスの現代的なダンス演出・振付家のマシュー・ボーンが、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)など、独特な世界観で映画ファンを魅了し続ける映画界の鬼才ティム・バートンとコラボして作り出した『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』。
ジョニー・デップの出世作でもあるティム・バートンの代表作『シザーハンズ』(1990)を、マシュー・ボーン率いるダンスカンパニー「ニュー・アドベンチャーズ」が鮮やかに蘇らせました。
本作は2024年3月にカーディフのウェールズ・ミレニアム・センターでライブ収録された作品です。
『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』のあらすじ
風変わりな発明家によってつくられた人造人間エドワード。
発明家が亡くなったため、エドワードは「両手がハサミ」という未完成な状態のまま、丘の上の城にひとり取り残されてしまいました。
ある日、エドワードは親切な女性キムと出会い、彼女の家族と一緒に暮らそうと誘われます。
人々はエドワードの奇妙な見た目に戸惑いながらも、彼の内面にある純粋さや優しさを見いだそうとします。
そんな毎日の中で、エドワードは自分の居場所を見つけることができるのでしょうか。
『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』の感想と評価
「ハサミの手」が招く数多のできごと
本作のオリジナルは、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)や『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)など、数々の名作を手がけたティム・バートン監督の代表作のひとつ『シザーハンズ』(1990)です。
人造人間のエドワードと女性の切なく甘い恋愛譚を、バレエ界の鬼才マシュー・ボーンがダンスバージョンの作品として見事に甦らせました。
巨大なハサミの手を持つエドワードがひとりで丘の上の城にいたところ、偶然知り合った女性キムから自分の家で一緒に住もうと誘われ、彼女の家に行きます。
奇妙な姿をしていても、エドワードの心は純粋無垢。手がハサミのために食事さえうまくできませんが、植木を様々な形に美しく整えたり、ペットの毛を刈ったり、女性たちの髪を独創的な感じにカットしたりと、自分でできることを発見して、周囲の人々を喜ばせます。
ですが、便利なハサミの手が人々に重宝がられる反面、人を抱きしめることができず、触れただけで怪我をする場合もあり、心優しいエドワードを悩ませます。
ハサミの手は、幸福を招くのでしょうか。それともやはり不幸を導いてくるのでしょうか。
映画とダンスバージョンではラストが違うのではないかと気になりながら、キャストのダイナミックなダンスから目が離せません。
ダンスバージョンの魅力
セリフが一切ないダンスバージョンの本作では、音楽に合わせたダンスとキャストの表現力でストーリーを紡ぎます。
エドワードが皆を喜ばせるシーンでは、心も踊るような軽快な音楽とともに、満面の笑みを浮かべた彼の楽し気な躍りが飛び出します。
ガシャガシャと音が出る、重たげなハサミの手を高く振り上げて軽やかに踊る様は、まるで翼が生えたかのようで、泣いたり笑ったり、普通の人と同じ生活を送れることにエドワードは喜びを見出していたのです。
マシュー・ボーンが手がけた本作は、笑いもあれば涙もあり、マシューマジックがたっぷり用意されています。主人公が奇異な姿をさらけ出しても少しも怖くなく、幻想的な世界へ引きずり込まれることは間違いありません。
また、本作の映画との大きな違いは、ラストに行われるカーテンコールではないでしょうか。
最終幕のあと、キャストがもう一度順番に舞台へ出て来て挨拶をします。キャスト陣が再び登場することで観客は大喜び。エドワードの悲しみや喜びを表情とダンスで見事に演じ切った主役のリアム・ムーアが最後に登場すると、観客がどよめき惜しみない拍手を贈ります。
音楽にのせてのダンス、そしてカーテンコールでの挨拶。ダンスバージョンだからこその醍醐味を堪能してください。
まとめ
ティム・バートンの代表作『シザーハンズ』(1990)を、イギリスバレエの鬼才マシュー・ボーンがダンスバージョンに仕上げた『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』。
ハサミの手を持つ人造人間のエドワードと人間の女性との哀しくも美しいラブストーリーをダンスで表現し、ダイナミックで華やかな舞台をそのまま映像化。観客をファンタジックな世界へ誘います。
ティム・バートンとマシュー・ボーンという贅沢な組み合わせで生まれた独創性あふれる作品を、ぜひ劇場でお楽しみください。
『エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン』は2024年12月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次ロードショー!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。