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Entry 2020/09/13
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『ミッドナイトスワン』草彅剛の演技力解説。見どころはトランスジェンダー(性同一性障害)という役柄で“母性愛”を育む情況|映画という星空を知るひとよ22

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第22回

映画『ミッドナイトスワン』は主演に草彅剛を迎え、内田英治監督が手掛けた作品。トランスジェンダー・凪沙を演じる草彅剛にスポットライトを当てて解説していきます。

トランスジェンダーとして、日々身体と心の葛藤を抱え新宿を舞台に生きる凪沙が、親から愛を注がれずにいた少女を預かることになり、次第に2人の間にひとつの絆が生まれます。

共演には、オーディションで抜擢された期待の新人服部樹咲のほか、真飛聖、水川あさみや田口トモロヲなど、個性豊かな実力派俳優陣も揃っています。

映画『ミッドナイトスワン』は、2020年9月25日(金)よりロードショーです。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『ミッドナイトスワン』のあらすじ

(C)2020 Midnight Swan Film Partner

故郷・東広島を離れ、トランスジェンダーの悩みを抱えながらひたむきに生きる凪沙(草彅剛)。新宿のニューハーフショーのステージに立ち、酔客を相手に踊って接待をする毎日です。

ある日、田舎の母親から電話があり、育児放棄にあっていた親戚の中学3年生の少女・一果(服部樹咲)を短期間預かることになりました。

待ち合わせのJR新宿駅前に座り込んでいた一果に近づく背の高いトレンチコートの女・凪沙。長い髪でサングラスをかけ無遠慮に一果の顔を見て「似てるわね、お母さんに」とつぶやく凪沙と田舎で手渡された写真を、一果はじっと見比べます。

呆然とする一果に背を向けてさっさと速足で歩きだす凪沙。一果は急いで後を追います。

「何してるの。来るの? 来ないの?」。何度目かの声かけの後、凪沙は一果が手にしている写真に気が付き、取り上げると、一瞥して破ってしまいました。

「田舎に余計なこと言ったら、あんた殺すから」。写真には短髪のビジネススーツ姿の凪沙が写っていたのです。

凪沙のアパートについてからも、「どこでも空いているところで寝てね」「部屋は常にきれいにしておくこと」「風呂はあたしの後に入りなさい」などなど、凪沙は一果に同居のルールを話します。

けれども、一果は無言のまま。ただ黙って凪沙を見るだけでした。このようにして、最低限度の決まりを持って凪沙と一果の共同生活は始まりますが…。

凪沙役・草彅剛の演技

(C)2020 Midnight Swan Film Partner

茶髪でトレンチコートにハイヒールブーツ。サングラス姿もさまになる背の高いスレンダーな凪沙。

草彅剛が演じる凪沙は、自分は女性だという認識でいるのに、社会からはそうとは認めてもらえず、孤独な生活を強いられます。

仕事はニューハーフパブのダンサー兼接待です。ダンスの舞台衣装に身を包み、楽屋の鏡で丹念にメイクアップする凪沙。

美しく着飾っても、ニューハーフといわれ、差別をされることもあります。本来の自分の姿になれずに悶々とする凪沙を、自然体で演じている草彅剛に注目しました。

草彅剛は、1991年にCDデビューし、映画やテレビドラマにも出演するなど俳優としても幅広い活躍をしています。近年は西加奈子原作・鶴岡慧子監督の『まく子』や市井昌秀監督の『台風家族』(2019)にも出演。

出演作多数な中、特に2004年のドラマ『僕の彼女と彼女の生きる道』と2019年の映画『まく子』の父親役は、凪沙と比較すると面白いでしょう。

草彅剛が演じる役柄


(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)

『僕の彼女と彼女の生きる道』では、妻に出て行かれて7歳の娘の世話をする銀行員の役どころでした。草彅剛は、慣れない家事と娘の世話に奔放する父を熱演。

『まく子』では、女にだらしなく浮気者だけれど温かく息子を見守る父親を演じています。

草彅剛は2つの作品でタイプの違う父親の演技を披露しますが、「母親になりたい」と願うトランジェスター役は初めてでしょう。

草彅剛に演技指導をしようとしていた監督ですが、衣装を着たとたんに立ち振る舞いから凪沙になっていた草彅を見て、全て任せようと思ったそうです。

草彅剛が育んだ母性愛

(C)2020 Midnight Swan Film Partner

姪である一果への愛おしさが増すにつれ、湧き起こる彼女を応援したいと思う気持ち。これこそが我が子を慈しむ母性であり、凪沙もそれを感じて幸せな気持ちになります。

凪沙の一果を見つめる優しい目つきとはにかんだほほ笑みのシーンは、憧れの「母」に近づいたという喜びにあふれています。

草彅剛はごく自然に、この凪沙の芽生えたばかりの母性を表現しているのです。

母が我が子に夢を託すのは、自分でできない夢を子供に実現してもらおうという気持ちがあるともいえます。

凪沙の場合はまさにそうです。凪沙では絶対に出来ないであろう、“美しい世界への挑戦”……。

自分の夢を一果にかける凪沙。母性あふれる凪沙を熱演する草彅剛の演技は必見です。

まとめ

(C)2020 Midnight Swan Film Partner

草彅剛は、1991年にCDデビューし、2003年には塩田明彦監督の『黄泉がえり』、2006年には樋口真嗣監督の『日本沈没』などで映画出演を果たしています。

テレビドラマでも『僕の彼女と彼女の生きる道』(2004)、『任侠ヘルパー』(2009)などに出演。オフィシャルファンサイト『新しい地図』を立ち上げたり、舞台出演も多数な活躍ぶりをみせています。

そんな草彅剛が新境地ともいえるトランスジェンダー役に挑んだ『ミッドナイトスワン』。

バレエ曲『白鳥の湖』も作中で取り入れられ、オデット姫を連想させるストーリーに、草彅演じる主人公の苦悩が加わり、切なくほろ苦い母娘愛の作品となっています。

映画『ミッドナイトスワン』は、2020年9月25日(金)よりロードショーです。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら




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