Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

『セフレの品格 初恋/決意』あらすじ感想と評価解説。城定秀夫監督×青柳翔×行平あい佳で描く″割り切った大人の関係”|映画という星空を知るひとよ160

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第160回

レディースコミック史上最大級のヒット作、愛憎渦巻く男と女の世界を表した『セフレの品格』が実写化されます。

映画『セフレの品格』は、「初恋」「決意」の二部作。ジャンルを問わず話題作を多数手がけ、高い評価を得ている城定秀夫監督を迎え、行平あい佳、青柳翔のW主演で男と女の性の欲求を大胆かつリアルに描き出します。

一部の『セフレの品格 初恋』は2023年7月21日(金)、二部の『セフレの品格 決意』は2023年8月4日(金)と二部作連続公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『セフレの品格 初恋/決意』の作品情報


(C)2023日活

【日本公開】
2023年(日本映画)

【原作】
湊よりこ『セフレの品格』(双葉社 JOUR COMICS)

【監督・脚本・編集】
城定秀夫

【製作】
鳥羽乾二郎

【主題歌】
前野健太「ああ・・・」(romance records)

【出演】
行平あい佳、青柳 翔、片山萌美、新納慎也
《初恋》:川瀬陽太、こころ、伊藤克信、寺島まゆみ、田中美奈子
《決意》:髙石あかり、石橋侑大、大嶋宏成

【作品概要】
原作は、湊よりこ著作の『セフレの品格(プライド)』(紙版コミックスタイトルは「S-friends〜セフレの品格〜」)。

登場人物たちのリアルかつ複雑な感情のもつれ、性の欲求と嫉妬やトラブルを大胆に描いた原作を、起伏に富んだストーリー仕立てで、『性の劇薬』(2020)『アルプススタンドのはしの方』(2020)『銀平町シネマブルース』(2023)などの城定秀夫監督が映像化しました。

同窓会で再会し一晩を共にしてから始まった男女の心情・関係性の移り変わりを、「初恋」、「決意」と二部作に渡って描いています。

行平あい佳と青柳翔がメインキャストを演じ、「初恋」では片山萌美や新納慎也、「決意」では『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』(2023)の髙石あかりや『ケイコ 目を澄ませて』(2022)に出演した石橋侑大も共演。

映画『セフレの品格 初恋』のあらすじ


(C)2023日活

森村抄子(行平あい佳)は36歳のバツ2で、派遣社員として働きながら高校生の娘を育てているシングルマザー。

高校の同窓会で、初恋の相手で産婦人科医の北田一樹(青柳翔)と再会し、ホテルに誘われます。

数年ぶりのSEXの快感に、2人の関係を深めていきたくなる抄子でしたが、一樹にその気はなく、セフレになることを提案されます。

唐突な提案に驚く抄子は、セフレという関係を受け入れられずにいました。そんな折、抄子は同級生の新堂華江(片山萌美)が一樹とセフレであることを知ります。

悩む抄子は、さらに会社の上司・栗山(新納慎也)にも言い寄られます。一方の一樹も、割り切った関係を求めるようになったのには、人には言えない過去が関係していたのです。

映画『セフレの品格 決意』のあらすじ


(C)2023日活

一樹と定期的に会う関係となった抄子は、30代後半に差し掛かった自分の年齢が気になっています。

そんな中、とある事情から、一樹が17歳の少女・山田咲(髙石あかり)の面倒を見ることになりました。咲は、次第に一樹に惹かれ、抄子への嫉妬心を募らせます。

その想いが事件を引き起こし、それをきっかけに、一樹は抄子にセフレの関係を終わらせることを提案。

一樹も若い女の子が好きだったのか……と失望する抄子でしたが、自身も想いを寄せられていた23歳のボクサー・市原猛(石橋侑大)に惹かれていきます。

ですが、抄子は、純粋な猛のことを悪く思えないものの、どこかで一樹のことが忘れられないでいました。そんな折、突然咲が抄子の前に現れて……。

映画『セフレの品格 初恋/決意』の感想と評価


(C)2023日活

本作のタイトルは、「品格」と書いて「プライド」と読みます。セフレの主人公たちの恋愛感情や生き方にまで掘り下げて作られた作品でした。

一部の「初恋」では、抄子は初恋の相手である一樹と結ばれますが、恋人ではなく割り切った関係の「セフレ」を一樹から提案されます。

一樹への恋心抱く抄子ですが、セフレ関係でも一樹だからいいと思って、その関係を承諾します。そんな抄子の女心を知ってか知らずか、何人ものセフレと遊ぶ一樹。実は、一樹はそうならざるにはいられない、悲しい過去を持っていました

二部の「決意」になりますと、セフレ関係にある抄子と一樹にそれぞれライバルが現れます。抄子を一途に思う純粋なボクサー猛と、一樹に助けられる17歳の少女咲です。

咲は複雑な家庭事情で育った少女でした。優しい一樹は咲のことも考えて、セフレ関係の終結を告げたのです。

二部に渡って描かれる抄子と一樹の喜怒哀楽あふれる毎日は、普通の恋人たちのそれと同じようなものなのですが、セフレという大人の関係が物語を複雑にしていきます。

セフレから恋人になるのか、逆に赤の他人になるのか。最初から最後まで気になるところでしょう。

主役のセフレたちは行平あい佳と青柳翔が好演。割り切った関係とはいえ、魅かれあっている2人の常に揺れ動く恋心を感情豊かに演じ切りました

熱演する芸達者な共演者の中でも注目は、薄幸の美少女咲を演じる髙石あかりです。舞台『鬼滅の刃』の竈門禰豆子に抜擢された彼女は、本作でももろいガラスのような少女の心情をよく表現しています

ともすれば快楽を求めて楽しむだけになりがちな物語を、城定秀夫監督は、ポイントを大人の男女の関係とし、その裏に隠された人間模様に焦点を当てました。ちょっとミステリアスな作品が完成したと言えます。

まとめ


(C)2023日活

湊よりこ原作の大ヒットレディースコミックシリーズ『セフレの品格』が、幅広いジャンルの作品を手がけた城定秀夫監督によって、映画化されました。

恋愛感情を導入せず割り切った男と女の関係のセフレ。同窓会で再会した抄子と一樹がセフレになるところから物語は始まります。

複雑にからまる恋愛感情を心の奥に秘め、人には言えない過去を抱えた大人の男と女のもつれ合い。本作は、単なるセフレの現状物語で終わらず、その関係の背後に広がるさまざまな人生模様も含めて描いた大人のラブストーリーと言えます。

『セフレの品格 初恋』は2023年7月21日(金)、『セフレの品格 決意』は2023年8月4日(金)と2部作連続公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。





関連記事

連載コラム

アニメ映画『ザ・タワー』あらすじと感想レビュー。難民問題を鋭く描きグランプリと観客賞をW受賞|2019SKIPシティ映画祭14

レバノンの難民キャンプに暮らす少女と曽祖父の強い絆 埼玉県川口市にて、映画産業の変革の中で新たに生み出されたビジネスチャンスを掴んでいく若い才能の発掘と育成”を目指し誕生したSKIPシティ国際Dシネマ …

連載コラム

映画『彼女』ネタバレあらすじと感想評価。ラスト結末でキャスト水原希子とさとうほなみの恋愛逃避行は⁉︎|Netflix映画おすすめ30

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第30回 日本発のNetflix映画、2021年第一弾として配信された廣木隆一監督作品『彼女』が2021年4月15日からNetflixで配信 …

連載コラム

『毒舌弁護人 正義への戦い』あらすじ感想と評価解説。香港の国民的コメディアンで俳優ダヨ・ウォンによる“法廷ドラマ”|映画という星空を知るひとよ171

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第171回 映画『毒舌弁護人〜正義への戦い〜』は2023年10月20日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー! 本作は、香港で大ヒットを飛ばした法廷劇 …

連載コラム

映画『ゴジラ対メカゴジラ(1974)』感想と評価。人気怪獣と“爆発の中野”の誕生!|邦画特撮大全26

連載コラム「邦画特撮大全」第26章 今回取り上げる作品は『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)です。 ゴジラ誕生20周年記念作品として本作は製作されました。本作は人気怪獣メカゴジラが初登場した映画です。 …

連載コラム

アニメ2020年映画ランキングベスト5|劇場版に心をグッとつかまれた!《シネマダイバー:さくらきょうこ選》

2020年の映画おすすめランキングベスト5 選者:シネマダイバーさくらきょうこ 新型コロナウィルス感染症対策として自粛生活を余儀なくされ、自宅で過ごすことの多かった2020年前半。 映画を劇場の大きな …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学