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Entry 2021/04/27
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映画『葵ちゃんはやらせてくれない』感想評価と解説。松嵜翔平×小槙まこで描いたタイムループな大人のラブストーリー|銀幕の月光遊戯 76

  • Writer :
  • 西川ちょり

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第76回

『れいこいるか』『こえをきかせて』など、幅広いジャンルの映画作品で知られるいまおかしんじが監督を務めた映画『葵ちゃんはやらせてくれない』は、大人の男女に向けた刺激的なラブストーリーを発信するキングレコードの映画レーベル「エロティカ クイーン」の一作として製作されました。

映画監督志望の青年・信吾の前に幽霊となって現れたのは自殺した大学時代の先輩川下。「学生時代に戻って葵ちゃんとセックスしたい」という川下に連れられてドアをくぐったらそこは懐かしい映研の部室。タイムスリップしたふたりは川下の願いを叶えるべく奔走しますが……。

おかしくもちょっと切ないタイムスリップ・ラブストーリー『葵ちゃんはやらせてくれない』は、2021年5月15日(土)より名古屋シネマスコーレにて先行公開、6月11日(金)よりシネマート新宿にて1週間限定上映、大阪シアターセブンでも順次上映。

【連載コラム】『銀幕の月光遊戯』一覧はこちら

映画『葵ちゃんはやらせてくれない』の作品情報


(C)2021キングレコード

【公開】
2021年公開(日本映画)

【監督】
いまおかしんじ

【脚本】
佐藤稔、いまおかしんじ

【キャスト】
小槙まこ、松嵜翔平、森岡龍、佐倉絆、三嶋悠莉、増田朋弥、田中爽一郎、三上寛

【作品概要】
大人の男女に向けた刺激的なラブストーリーを発信するキングレコードの映画レーベル「エロティカ クイーン」の一作。

れいこいるか』『こえをきかせて』(2019)のいまおかしんじが監督を務め、新進女優の小槙まこが葵ちゃんを演じています。

映画『葵ちゃんはやらせてくれない』のあらすじ


(C)2021キングレコード

映画監督志望の男・信吾の前に、大学の映画研究部の先輩だった川下さんが突然現れ、信吾は悲鳴をあげました。なぜなら彼は一年前に自殺して亡くなっていたからです。目の前にいるのは川下さんの幽霊でした。

川下さんは、片思いをしていた大学時代の後輩・葵ちゃんとセックスがしたいがために戻ってきたと語りました。川下に連れられてドアを開けると、そこは懐かしい映研の部室でした。彼らはタイムスリップしたのです。

彼らは自主映画を撮っている最中で、撮影の現場に行ってみると、懐かしい大学時代の葵ちゃんの姿がありました。

果たして川下さんは過去をやり直し、念願の葵ちゃんとやることができるのでしょうか!?

映画『葵ちゃんはやらせてくれない』の感想と評価


(C)2021キングレコード

唯一のチャンスだった学生時代のあの日に戻って、好きだった葵ちゃんとセックスしたいという邪な望みを持ち、過去にタイムスリップする川下さん。

その川下さんに連れられて過去に戻ってきた信吾は、ちゃっかり、昔の恋人とベッドインしてよろしくやっているというのに、川下さんの方は、なかなか思惑通りには進みません。

あと一歩というところまで漕ぎ着けるのですが、肝心な時に邪魔が入ってしまうのです。そんなわけで川下さんは何度もタイムスリップする羽目に。

のほほ~んとしたSFチックの艶笑コメディーという趣ですが、川下さんが信吾の前に現れるのは、毎年一回、川下さんの命日であることが悲哀を感じさせます。

まだ社会に揉まれておらず、好きなことに一生懸命だった学生時代へのノスタルジックな想いが漂う中、あの時、ああしていれば、その後の人生も少しは変わったのかもしれないという切実な後悔の念が、スラップスティックな展開の中に溢れ出します。

さらに、タイムスリップした信吾は、かつての映研仲間たちを見て、「お前たち、まだ知らないんだな。福島で原発事故が起こるんだ」と話し始め川下さんに静止されます。これが数度繰り返されています。

それ自体は何気ないシーンなのですが、映画の重要なキーワードとして読み取ることも可能でしょう。震災の前と後で、世の中の何かが決定的に変わってしまったという気持ちが吐露されていると解釈するのは深読み過ぎるでしょうか。

映画のスタイルはあくまでもコメディーであり、タッチも軽やかですが、世の中がどんどん生き辛い社会へと変容していく中、人生に翻弄されつつも、懸命にもがいている人々の姿が映し出されています。

そこには亡くなってしまった人への追悼と、挫折を経験しながらも夢みることを諦めない信吾や葵ちゃんといった、懲りない愛すべき人々に対するエールがたっぷり込められているのです。

まとめ


(C)2021キングレコード

ヒロインの葵ちゃんを演じるのは、映画「HERO~2020~」やテレビドラマ、舞台、CMなどで活躍する新鋭女優・小槙まこです。あどけない表情とフレッシュで初々しい姿が眩しく、「憧れの女の子」にふさわしい存在感を見せています。

しかし、ただのマドンナ的存在にとどまらず、歌手になりたいという夢を諦めずにいるひとりの女性として、溌溂とした姿を見せてくれます。

俳優、モデル、監督など多岐に渡り活躍し、Netflixのリアリティ番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」にも出演し話題を呼んだ松㟢翔平が、山あり 谷ありの人生を過ごしている信吾をひょうひょうと演じています。

どてっとしたパジャマ姿の幽霊の川下さんを演じているのは森岡龍。いつものハンサムぶりを抑えての哀愁溢れる演技に注目です。

そんな個性的な俳優たちと共に、特筆すべきなのは、葵ちゃんが歌う「川下さんはやってくる」や、映研のメンバーが製作しているゾンビ映画の主題歌「ゾンビバンド」という劇中歌です。

どちらもいまおかしんじ作詞、宇波拓作曲の、メロディアスかつ哀愁溢れた楽曲で、耳に心地よく、すっと心の中に入ってきます。

ミュージシャンの三上寛も出演しており、まるでちょっとしたミュージカルのような、あるいは、「歌謡青春もの」のような気分を味わうことができるでしょう。

『葵ちゃんはやらせてくれない』は、2021年5月15日(土)より名古屋シネマスコーレにて先行公開、6月11日(金)よりシネマート新宿にて1週間限定上映、大阪シアターセブンでも順次上映です。

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