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【ネタバレ】バイオレンスアクション|実写あらすじ感想と結末評価解説。橋本環奈が殺し屋映画で魅せる王道×斬新アクション

  • Writer :
  • 糸魚川悟

簿記の勉強に励む専門学生の正体は「殺し屋」!

2016年に小学館による漫画配信サイト『やわらかスピリッツ』で連載が始まり、翌年の「このマンガがすごい!WEB」大賞で1位を受賞した漫画『バイオレンスアクション』。

原作の沢田新と作画の浅井蓮次によって連載された同作は、勉学や学生生活に勤しむ専門学生のケイがあくまでもバイトとして「殺し屋」の活動を行っていく、ゆるくも残酷な漫画表現の数々が話題となりました。

今回はそんなゆるふわ殺し屋アクションを橋本環奈主演で実写映像化した映画『バイオレンスアクション』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『バイオレンスアクション』の作品情報


(C)浅井蓮次・沢田新・小学館/「バイオレンスアクション」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
瑠東東一郎

【脚本】
江良至、瑠東東一郎

【キャスト】
橋本環奈、杉野遥亮、鈴鹿央士、馬場ふみか、森崎ウィン、大東駿介、太田夢莉、佐藤二朗、城田優、高橋克典、岡村隆史

【作品概要】
沢田新と浅井蓮次による同名漫画を『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』(2019)や『極主夫道 ザ・シネマ』(2022)を手掛けた瑠東東一郎が映像化した作品。

実写版「銀魂」シリーズでヒロインの神楽を演じた橋本環奈が主演を務め、『羊とオオカミの恋と殺人』(2019)の杉野遥亮や『蜜蜂と遠雷』(2019)の鈴鹿央士と森崎ウィンらが共演として本作に参加しました。

映画『バイオレンスアクション』のあらすじとネタバレ


(C)浅井蓮次・沢田新・小学館/「バイオレンスアクション」製作委員会

アイドルがヤクザに拉致され、困り果てたマネージャーはデリヘル「ぷるるん天然娘特急便」に電話をかけます。

ピンク髪の女学生のケイは、アイドルが捕まっているラブホテルへデリヘル嬢として侵入すると、驚異的な身体能力でヤクザたちを全員殺害し、アイドルをマネージャーのもとへと送り届けました。

「ぷるるん天然娘特急便」は殺し屋組織の仮の姿であり、運転手のヅラさんは合流地点でケイを回収。

ヅラさんは殺し屋となった少女たちの精神面を心配しケイに積極的に話しかけますが、ケイは「小さくても希望があるうちは大丈夫」と彼女自身の希望である日商簿記2級の合格に向けて勉強を続けます。

専門学校に通うケイは、学校から殺し屋のアジトである会員制のラーメン屋への移動のためにバスに乗り込みますが定期が見つからず、見ず知らずのスーツ姿の男性テラノが代わりに運賃を払ってくれました。

テラノに運賃を返そうとするケイですが30円足らず、テラノは「次に会った時に返してもらう」と言いました。

ケイはラーメン屋につくと、ケイのことが好きな男子学生の渡辺が彼女をつけており殺しの現場を目撃してしまいますが、渡辺がバイトとして働きたいと宣言すると組織の上司である店長やヅラさんが了承。

その頃、関東最大のヤクザ「伝馬組」では三代目組長の立件が確定し、判決が下るまでの間に四代目組長を決定するという宣言がされます。

四代目候補である木下は、部下のアヤベに命じて組織の金を秘密裏に3億円ほど横領しており、隠蔽と四代目組長への就任のため同じく四代目候補とされる国津の殺害を画策します。

木下は国津とその部下たちの殺害を「ぷるるん天然娘特急便」に依頼し、店長は現場にケイとスナイパーのだりあを派遣。

2人は国津たちの皆殺しに成功しますが、木下の部下の殺し屋である金子がだりあの両親を殺害した殺し屋であることが分かります。

国津の殺害犯がケイたちであることを知った三代目は伝馬組最強の殺し屋みちたかくんに2人を連れてくるように命じ、みちたかくんはケイとだりあを1人で追い詰める戦闘能力を披露しますが、ケイの機転によって2人は逃げ延びました。

みちたかくんとの戦闘でだりあが負傷し、彼女を極道専門の病院に連れて行ったケイは病院でテラノと再会します。

テラノは伝馬組の金庫番であり、過去に三代目に育てられたクラと共に四代目候補とも言われていましたが、木下の策略によってクラが重傷を負ったことでその夢が絶たれていました。

ある日、クラは自身の存在がテラノをヤクザに縛り付けていると考え、テラノのいない隙に自殺してしまいます。

クラの死によって全てを失ったテラノは、予め嗅ぎつけていたアヤベの金庫から伝馬組の10億円と、木下が横領した3億円を奪って逃走しました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『バイオレンスアクション』のネタバレ・結末の記載がございます。『バイオレンスアクション』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)浅井蓮次・沢田新・小学館/「バイオレンスアクション」製作委員会

テラノが金で雇った兵隊を殺害し、テラノを木下へと引き渡す依頼が入り、ケイは単身で兵隊を壊滅させテラノを追い詰めます。

しかし、ヅラさんたちがテラノの殺害を再考することになり、決定が下るまでの間にケイは資格勉強を開始。呆気に取られたテラノは金庫番としての知識でケイに勉強を教えると、やがて彼女はテラノを「先生」と呼び慕うようになります。

そこに木下の部下が現れ、ケイはテラノを引き渡そうとしテラノは自身の運命を受けれ入れようとしますが、ケイが木下の部下に身体を触られている様子を見て憤慨。ケイに木下の排除を依頼します。

ケイは依頼を引き受けると木下の部下を排除し、2人を回収しに来たヅラさんと渡辺の乗る車に乗り逃走します。死ぬつもりだったと言うテラノに、ケイは「小さな希望を持つこと」が生きる糧になると言うと、ケイはクラの行きたがっていたニューヨークでチーズケーキを食べたいと言います。

車での逃走を続けていると、そこにみちたかくんが現れます。

みちたかくんからテラノを逃がすため、ヅラさんと渡辺、そしてケイが奮戦しますが、ケイは釘打ち機で腹部に釘を打たれ失神。

追い詰められたテラノでしたが、そこにテラノに金を燃やされ憤慨する木下が配下を連れ現れ、配下にテラノとみちたかくんの殺害を命じます。

みちたかくんが木下の配下との戦闘に気を取られている間に逃げるテラノは金子に捕捉されますが、金子を恨むだりあが金子を殺害。テラノを連れて店長との合流地点であるダムへと急ぎます。

しかし、その場に木下の配下たちを殺害し終えたみちたかくんが現れ、だりあを圧倒すると、目を覚まし駆けつけたケイと再び戦闘となります。

みちたかくんの行動パターンを把握したケイは、みちたかくんをナイフで大量に切りつけると水の中へと叩き落としました。

テラノを連れてダムへと向かうケイたちでしたが、そこには先回りした木下が待ち構えており、全員を殺害しようとします。

テラノは金の在り処を教えると言い油断させると身体に仕込んでいた小型の爆薬を木下に持たせ、もみ合う2人はダムに落ちていきながら爆発。

単なる依頼のひとつであったと強がるケイは、ヅラさんから30円を借りるとダムへと投げ込み「やっと返せた」と言いました。

全てを裏で画策していたアヤベは木下とみちたかくんと言う伝馬組にとって危険な存在が消えたと三代目に報告すると、三代目は「育てて奪うのが極道」と言い去っていきます。

ラーメン屋にはボロボロのみちたかくんが現れ、店長の作る不味いラーメンを食べると「上手い」と言い放ち、また来ると告げ店を出ていきました。

日商簿記試験の日、ケイのもとに差出人不明のメッセージが届きます。

そこにはニューヨークの街並みを映した写真とチーズケーキの横に30円が添えられた写真が添付されており、「小さな希望」を思い出しケイは嬉しそうに微笑みました。

映画『バイオレンスアクション』の感想と評価


(C)浅井蓮次・沢田新・小学館/「バイオレンスアクション」製作委員会

殺し屋の仕事をポップに描く「お仕事」ムービー

依頼を受けて人を殺害する「殺し屋」という闇の職業。言うまでもなく違法な職業ではあるのですが、映画の世界では『レオン』(1994)や『ジョン・ウィック』(2015)のように危うさを持ちながらも儚げであり魅力的に映ります。

そんな世界中の映画ファンから愛される「殺し屋」映画の中でも、日本で人気を集め始めた意外なジャンルが「日常系」です。

「殺し屋」が殺しを封じられる様を描いた『ザ・ファブル』(2019)や、女子高生の殺し屋の「カタギの就職活動」を描いた『ベイビーわるきゅーれ』(2021)は、日本の映画ファンから高い評価を受けています。

同名漫画を映像化した『バイオレンスアクション』も、専門学生のケイがヤクザの抗争の仕事に巻き込まれながらも、仲間とともにどこかゆるめな雰囲気で切り抜けていく様子が描かれている、ある意味での「日常系」作品。

主人公のケイや彼女の運転手兼上司であるヅラさんと同級生の渡辺との掛け合いが「殺し」という仕事とは場違いなほどに軽く、そこに日常を感じさせながらも「殺し屋」としての仕事もしっかりとこなす異色な「お仕事ムービー」です。

王道と斬新が合わさった異色のアクション


(C)浅井蓮次・沢田新・小学館/「バイオレンスアクション」製作委員会

本作に登場するケイやみちたかくんといった殺し屋たちは、一般人を遥かに超越した身体能力と戦闘技術を持っています。

そのためアクションシーンは高速移動によって銃弾を避けたり、打撃で相手が吹き飛んだりと「マトリックス」シリーズのような非現実的な演出が散りばめられています。

しかし、その一方で『ボーン・アイデンティティー』(2003)以降にメジャーとなったカット割りを増やすことによってスピート感を作り出す、リアルな格闘戦を描く際によく用いられる手法が本作にも採用されていました。

CGやワイヤーを使わない殺陣と、両者を採用した超人的な殺陣を交互に目まぐるしく変化させる異色の手法で、本作は異次元のアクションシーンができあがっています。

まとめ


(C)浅井蓮次・沢田新・小学館/「バイオレンスアクション」製作委員会

原作の1エピソードを大きく改変・脚色し、極道社会の血を血で洗う跡目争いとケイの人生観を同時に描いた『バイオレンスアクション』。

城田優が演じた独自のルールを持ち、目をつけた相手を永遠と追い回す殺し屋のみちたかくんや、森崎ウィンの演じた命を奪うことに良心の呵責を欠片も見せない金子など、血なまぐさい登場人物も全員魅力な本作。

暴力的であるけれどどこかポップでゆるい、異色すぎるバイオレンスなアクションを楽しむことのできる作品です。


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