映画『小説の神様 君としか描けない物語』は2020年10月2日(金)より全国ロードショー。
2020年版「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」「2019ベストブック」の3冠を受賞し、さらに本屋大賞にノミネートされた気鋭作家・相沢沙呼による小説『小説の神様』。
小説『小説の神様』を、「HiGH&LOW」シリーズを手掛ける久保茂昭監督が、佐藤大樹と橋本環奈を主演に映画化したのが『小説の神様 君としか描けない物語』です。
高校生小説家のふたりがコンビを組んで共同執筆をしていくさまを描いた青春ストーリーの本作ですが、橋本環奈演じるヒロインの「謎」も、物語の主軸となっています。
本記事ではヒロイン小余綾詩凪(こゆるぎ しいな)の謎を解き明かしていきましょう。
CONTENTS
映画『小説の神様 君としか描けない物語』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本映画)
【原作】
相沢沙呼『小説の神様』(講談社タイガ刊)
【監督】
久保茂昭
【キャスト】
佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)、橋本環奈、佐藤流司、柴田杏花、莉子、坂口涼太郎、山本未來、片岡愛之助、和久井映見
【作品概要】
相沢沙呼による小説『小説の神様』を、佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)と橋本環奈のダブル主演で映画化。
監督は「HiGH&LOW」シリーズの久保茂昭が務めました。
映画『小説の神様 君としか描けない物語』のあらすじ
高校2年生でありながらプロの小説家である千谷一也は、学校では小説家「千谷一夜」だということを隠して、ひっそりと暮らしています。
学校で彼の正体を知っているのは、親友の九ノ里だけ。
一也は小説家としてはスランプ状態で、中学でデビューして以降は本も売れず、ネットでも酷評されて自信を失っていました。
ですが、彼には書かなければならない理由があります。
幼少の頃、彼の父は小説家として活動していました。ですが、いくら書いても売れず、母が働いて家計を支えていました。
そんな父でしたが心臓病で亡くなり、妹の雛子も心臓病で入院。少しでも母と雛子の助けになりたいと考えた一也には、売れる小説を書く必要があったんです。
ある日、文芸部に所属する彼は、部長の九ノ里の頼みで、同じクラスの転校生・小余綾詩凪を文芸部に勧誘することに。
ですが、声のかけ方が分からず、「小説は好きですか?」と聞いてしまい、恥ずかしさのあまり教室を駆け出してしまいました。
一也は、妹の雛子のお見舞い前に立ち寄った本屋で、同じく高校生小説家「不動詩凪」の平積みされた文庫本を目にします。自分の小説はひとつも置いていません。「不動詩凪」が大好きだという雛子に、彼女の本を買ってプレゼントします。
廃部寸前の文芸部に、入部希望の1年生・成瀬が訪れます。たまたま一也が「千谷一夜」だと知ってしまった成瀬は、一也の小説の大ファンでした。
小説への熱い思いを吐露する成瀬に、自信のなさと苛立ちから当たってしまう一也。
そこへ訪れた詩凪が、一也の頬をはたき、「信じてないの?小説の神様を」と問いかけます。
後日、担当編集者の河埜に呼び出された一也は、「不動詩凪」との共作を提案されます。「不動詩凪」は構想を文章にしてくれる作家を探していて、確かな文章力を持った一也となら良いコンビになると考えたんです。
逡巡する一也でしたが、「話題性があるから売れる」という河埜の言葉を受け快諾。姿を現した「不動詩凪」の正体は、小余綾詩凪でした。
詩凪の口から新作の構想を聞いた一也の世界は一変。豊かなイメージに満たされます。
その日から、彼らふたりの執筆作業が始まりました。しかし、売れることだけを考えた一也の文章はとても陳腐で、詩凪は激昂。
なぜそんなに売れたいのかという理由をわかってもらおうと、一也は詩凪を妹の雛子の病室へ案内します。「不動詩凪」の文庫本にサインをねだる雛子に、詩凪は黙って微笑み…。
小余綾詩凪=不動詩凪
売れっ子高校生小説家の不動詩凪(ふどう しいな)は、もう1人の主人公・一也とは正反対の作家です。
不動詩凪が出す本は平積みにされ、飛ぶように売れ、温かな優しい世界観で多くの読者の心を掴んでいます。ショートカットの髪型に、眼鏡をかけた、知的で麗しいビジュアルも、本に興味のなかった層を振り向かせました。
売れない作家である一也にとって、その存在は大きな劣等感となっています。
一也も不動詩凪も、本名を隠して執筆活動をしていたため、共作をする段になってはじめて、お互いがクラスメイトであったことに気づきました。
不動詩凪の本名は、小余綾詩凪(こゆるぎ しいな)。一也の高校に転入してきたばかりの女の子でした。
その快活な性格と美しい容姿、文武両道の才能から、早くもクラスメイトの中心的人物になっていた詩凪。
ショートカットのウィッグと伊達眼鏡で変装していたため、一也は詩凪の正体に気がつかなかったんです。
他のクラスメイトの前では、人当たりが良く振る舞っていた詩凪ですが、一也には厳しい態度で接し、暴力もふるうほど。
しかし、彼の小説家としての才能は認めており、真っ直ぐな励ましの言葉もかけてくれます。
詩凪の謎とは?
ギャップすらも可愛らしいと思わせてしまう、ヒロインの詩凪。
しかし、彼女の秘密は、「小余綾詩凪=不動詩凪」だけではありません。彼女の謎の言動をご紹介していきましょう。
謎その①プロットを口頭で伝える
文章力は確かだけれど、新作のアイデアが思いつかない一也。そんな彼に、編集者は、「物語は作れるのに、語るべき言葉を欲しいている小説家がいる」と、詩凪を紹介し、共作することを勧めます。
詩凪はノートを持っていたものの、それは開かず、頭の中に全て詰まっているというプロットを、口頭で伝え始めます。
人気作家である彼女が、売れない作家である一也に書いてもらう理由とはなんなんでしょうか。
謎その②メールはいつも短文
いつも捲し立てるように早口で饒舌な詩凪。
ことに、一也が小説に対してネガティブな発言をすると、彼女の言葉の勢いは止まらなくなり、完膚なきまでに一也を叩きのめします。
そんな詩凪ですが、メールでのやりとりはいつもあっさりと用件だけ。
時間と場所しか書かれていないこともあり、一也が「これはここに来いってことか?」と首を傾げるほど。
メール不精?それとも機械オンチなのか?謎は深まりますね。
謎その③だれかの気配を気にする
いつも明るいエネルギーを発する詩凪ですが、1人になると何かに怯えた表情を見せる箇所があります。
一也とカフェで夕方まで打ち合わせをし、周囲はすっかり暗くなってしまいました。
そこで全く気の回らない一也は先に帰宅。ひとり残された詩凪は、暗い道の先を見つめ、瞳を曇らせます。
また、別の日。文芸部メンバーでテニス部の取材をした帰り道、まだ明るいというのに、背後を気にして息を荒げ、動けなくなってしまった詩凪。
この時は一也が異変に気づき、詩凪と同じバスに乗って帰ることにしました。ですが詩凪は気丈に振る舞い、一也に真実を打ち明けることはありませんでした。
謎その④新作が発売されない
年に2冊というハイペースで新刊を出していた人気作家「不動詩凪」。ですが、ある時期から新作が出なくなっていました。
それでも書店ではコーナーが設けられ、一也の妹・雛子をはじめとした多くのファンの心を掴んでいます。
雛子にサインを求められた詩凪の手が震えていたことも、彼女が書かなくなってしまった理由と関係がありそうです。
詩凪の謎の真相
深まる詩凪の謎。ここまで観客は、一也同様に、彼女については推測するしかできません。
ストーリーの終盤になって、その謎が明かされます。そこには残酷で悲しい過去があったんです。
「詩」について自分の考えを記述する授業中、プリントに書き込もうとした詩凪の手が震え、呼吸が荒くなり、ついには気を失ってしまう事件が起こりました。
運ばれた保健室のベッドで、詩凪は自分のことを一也に打ち明けます。
詩凪には尊敬する先輩作家がいました。先輩作家が描いてきたのは、人間愛や優しさ。
ですが詩凪の作品は、その先輩作家の小説の盗作だと、インターネットで叩かれてしまったのです。
詩凪にはそんなつもりはありませんでしたが、心ない暴言は吐き続けられました。行為はエスカレートし、家や高校まで割り出され、実際に後までつけられて嫌がらせを受け続けてしまいます。
転校してきたのも、嫌がらせから逃げるためでした。
さらに詩凪を打ちのめしたのは、嫌がらせをした犯人が、先輩作家のファンたちだったという事実。
先輩作家が描き続けているテーマとはかけ離れたファンの言動に、詩凪は「小説の力=小説の神様」を信じられなくなってしまったんです。
それが原因で、自分の考えを書こうとするとパニック症状を起こすようになり、小説も書くことができなくなりました。
プロットを口頭で話していたのも、メールが短文だったのも、その症状を起こさないようにするためだったんですね。
まとめ
実写化にあたり無理な戯画化をすることなく、ひとりひとりのキャラクターを真摯に描いた本作。
複雑な過去と、ギャップのある性格の詩凪を、橋本環奈が見事に成立させました。
自室や部屋着のオシャレさ、落ち込んでいるのに瞬時に着替えて外出するなど、ツッコミどころもありますが、橋本環奈の美しさが、何もかも飲み込んでいきます。
特に、物語の構想を少しでも早く伝えたくて、土砂降りの中でも一也のことを待っている時のキラキラと輝く瞳に惹き込まれました。
原作はシリーズ続編『小説の神様 あなたを読む物語』も出ていますから、映画もぜひ同じキャストで続きを描いて欲しいものです。
映画『小説の神様 君としか描けない物語』は2020年10月2日(金)より全国ロードショー。