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『500ページの夢の束』感想と評価。ウェンディとスタートレックの関係性とは

  • Writer :
  • 名保田奈緒子

映画『500ページの夢の束』は、9月7日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

天才人気子役から大人の女優になったダコタ・ファニングと、『JUNO/ジュノ』や『マイレージ、マイライフ』のプロデューサーが贈る、人生をあきらめないあなたを応援する映画が、今、話題になっています。

ダコタ・ファニング演じるウェンディを待ち受ける旅の行方と、彼女が書いた“オリジナルの『スター・トレック』脚本”に込めた想いとは?

映画『500ページの夢の束』の作品情報


(C)2016 PSB Film LLC

【公開】
2018年(アメリカ映画)

【原題】
PLEASE STAND BY

【監督】
ベン・リューイン

【キャスト】
ダコタ・ファニング、トニ・コレット、アリス・イヴ

【作品概要】
『セッションズ』で知られるベン・リューイン監督が、スタート・レック好きのウェンディ役に、『I am Sam アイ・アム・サム』などの子役時代を経て活躍する女優ダコタ・ファニング迎え、人生をあきらめないためのハートフル・ストーリー。

共演に『リトル・ミス・サンシャイン』のトニ・コレット、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のアリス・イヴが脇を固めます。

映画『500ページの夢の束』のあらすじ


(C)2016 PSB Film LLC

ウェンディの大好きなものは、不滅のSFドラマとして知られる『スター・トレック』。

彼女は好き過ぎ、その知識なら誰にも負けないことを自負しています。

そんなウェンディの趣味といえば、自分なりにカーク船長やスポックが活躍する『スター・トレック』の脚本を書くことでした。

しかし、自閉症を抱える彼女は、ある理由があることから、唯一の肉親である姉と離れて暮らしていました。

ある日、ウェンディにとって最も良い知らせが舞い込みます。

それは大好きな『スター・トレック』脚本コンテストが開催されることを知ったのです。

ウェンディは渾身の作品を書き上げましたが、もう、郵送では締切に間に合わないと気付きます。

そこで脚本コンテストの開かれるハリウッドまで、愛犬ピートとともに数百キロの旅に出ることを決意します。

ウェンディは書き上げた500ページにも及ぶ脚本と、胸に秘めた“ある願い”を携えて…。

映画『500ページの夢の束』の感想と評価


(C)2016 PSB Film LLC

見どころ1:ウェンディの個性を引き立てる衣装と内装

独特の日課を持つウェンディ。彼女の服装へのこだわりは、曜日毎に異なるセーターの色

月曜日はオレンジ、火曜日はラベンダー、水曜日は青、…。

ウェンディの服をみたら今日が何曜日だか、自然とわかっていまいます。

ざっくりとした手編みのセーターは、ウェンディの個性を引き立てています。

編み物という規則的な運針が、ウェンディの心を落ち着かせる効果があるのかも。

映画の中には、時折無心に編み物をするウェンディの姿が映ります。

そして愛犬ピートもウェンディお手製の手編みの衣装を着ていますその柄はもちろん、リュックと同じ。例の……

小柄なピートがウェンディとお揃いののリュックを背負って歩いているよう。二人ともとってもキュートなのです。

彼女の部屋にも注目です。落ち着いた色調は、まるで宇宙空間を彷彿とさせます。

見どころ2:『スター・トレック』の配役と重ね合わせると??

参考映像:『スター・トレック(宇宙大作戦)』

この作品と『スター・トレック』の配役を重ね合わせると、物語の隠されたメッセージが見えてきます

『スター・トレック』に登場する宇宙船USSエンタープライズの乗組員、カーク船長は、行動力と決断力に優れた指揮官です。

副長のスポックは、バルカン人と地球人とも間に生まれ、論理と理性で感情を制御しているため、人の気持ちを理解できません

そして、人情味溢れるドクターマッコイ

カーク船長、スポック、マッコイ。この3人が、今回の物語の設定と関連づけられます。

そう、物語の主人公ウェンディは、バルカン人の血を持つスポックと同じ。障がいを持つウェンディは、どうしても人の目を見ることや、心を理解したり、空気を読むことが苦手

でもそのスポックこと「ウェンディ」を暖かく見守るのが、「カーク船長」、「マッコイ」とその「娘」なのです

まとめ


(C)2016 PSB Film LLC

ウェンディは、脚本を書くことを通じて、自身の持つ“障がい”を自らの手で乗り越えようとしていきます

その道のりは決してやさしいものではありません。

障がいを抱える人が直面する問題を、監督は厳しい視点で描いていきます

でもふとした出会いによって、「人間の繋がりもまだまだ捨てたもんじゃないな」と思わせてくれます。

勇気を出して、前に向かって行くこと。『Please Stand By(原題:そのまま待機)』を飛び越えて進むウェンディに、いつの間にか私たちも勇気をもらっているのです。

映画『500ページの夢の束』は、9月7日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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