長浦京のハードボイルド小説『リボルバー・リリー』が映画化決定!
ハードボイルド作家の長浦京が描く、第19回大藪春彦賞受賞作『リボルバー・リリー』。2016年に出版され、華麗なるアクションが炸裂する本作が、2023年8月11日(金・祝)全国公開されます。
『孤狼の血』(2018)『孤狼の血 LEVEL2』(2021)の他、『犬鳴村』(2019)『樹海村』(2021)『牛首村』(2022)の「恐怖の村」シリーズも手がけた紀伊宗之がプロデューサーを務め、『リバーズエッジ』(2018)『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)の行定勲が監督を務めます。
小説『リボルバー・リリー』の舞台は、関東大震災後の東京。愛用のリボルバー(回転式拳銃)を携える美しき元諜報員・小曽根百合は旧知の人間の頼みで、消えた陸軍資金の鍵を握る少年・細見慎太を助けることになります。
追っ手は冷徹非情な軍隊あがりの猛者たち。果たして2人は、理不尽な軍部の追跡から逃げることができるのでしょうか。
ハラハラする2人の逃亡劇『リボルバー・リリー』をネタバレありでご紹介します。
CONTENTS
小説『リボルバー・リリー』の主な登場人物
【小曽根百合】
諜報員養成機関で訓練を受けた、冷徹非情な美しき殺し屋。
【細見慎太】
消えた陸軍資金の鍵を握る少年。
【細見欣也】
慎太の父。
【岩見良明】
百合に助けられた弁護士。
【国松】
慎太と仲の良い狼を飼っている老人。
【津山ヨーゼフ清親大尉】
百合と慎太をつけ狙う陸軍大尉。
小説『リボルバー・リリー』のあらすじとネタバレ
関東大震災で焼け野原になった東京の街で、2人の女性が陣痛の始まった妊婦の世話をしていました。そこへ、リヤカーを引いた妖しげな男たちが近づいてきます。
そのとき、女性の1人が立ち上がりました。美しい容姿からは考えられないほどの殺気がたちのぼり、華奢な手には不似合いな回転式拳銃・リボルバーが握られています。
彼女の名は小曽根百合。「リボルバー・リリー」と呼ばれる最強の殺し屋でした。彼女は男たちを追い払い、リヤカーを引かされていた弁護士の岩見良明(いわみよしあき)を助けました。
その頃、東京都から細見欣也とその家族が、名前を偽って秩父に引っ越してきました。父親の仕事の都合らしいのですが、慎太と恭太の兄弟は秩父になじめません。
父親はそのまま東京の仕事に戻ってしまい、家庭でも学校でも居場所のない息子たちはいつしか、狼と暮らす左手首から先のない「国松」という初老の男と仲良くなりました。国松と暮らしていた高齢の老狼が死んだときも、葬るのを手伝うほどでした。
やがて、父親を捜して追跡者が迫ってきました。こっそりと秩父に戻って来た父は慎太に書類を託し、恭太とともに逃げるように言いました。
驚く慎太たちですが、両親や家族が心配になり、家の床下に隠れていました。そして、追跡者によって家族全員が虐殺されたのを肌で感じます。
慎太たちは恐怖で震え、床下から這い出すとそのまま走って国松の家へ向かいました。慎太から事情を聞いた国松は、慎太たちが軍隊から追われる立場の男の息子たちだと知ります。
しかし国松は、老狼と過ごした余生に彼らが彩りを添えてくれてことに感謝し、2人を助けるためにある人物に彼らを託すことを決意。2人を逃した後、国松も追跡者に襲われて死にます。
国松からの慎太たちの身柄を託されたのは、「リボルバー・リリー」こと小曽根百合でした。百合は、過去に国松に借りがあったため、国松が命を懸けて守った2人を助けることを決意します。
百合が慎太たちから連絡を受け、熊谷駅まを迎えに行きます。しかし彼らが隠れていた工場は火災となり、恭太は焼死し慎太一人だけが生き残っていました。家族を皆殺しにされた慎太は、暗い眼で百合を見つめ、固く復讐を誓っています。
百合は慎太を連れて逃げますが、追手は次から次へと畳みかけるように2人を襲ってきました。
追っ手を差し向けているのは陸軍大佐・小沢と、「水野通商」という表の顔を持つ「水野組」4代目・水野寛蔵の亡き後を継いだ水野武統。そして現場で陣頭指揮を執っているのは、ドイツ人とのハーフである津山ヨーゼフ清親大尉でした。
百合の依頼を受けていた弁護士の岩見が調べてみると、細見欣也は莫大な財産を海外の口座に隠し持っているとのこと。陸軍はその金が目当てだったのです。
かつての仲間に裏切られ、逃げ込んだ小学校を燻り出された百合と慎太は、トラックを運転する痩せた青年にお金を渡して大宮まで運んでもらいました。
慎太が父から託された書類は、陸軍が所持する巨額の資金に関する書類でした。慎太の父は陸軍の資金をどこかに隠し、その秘密を記した書類を慎太に預けたのです。。
慎太は百合にさえ、この書類のありかを明かしません。やっきとなった軍人たちは、百合と慎太をどこまでも追いかけて書類を取り戻すつもりでした。
百合と慎太は追っ手から逃れるため、逃避行を続行。しかしその途中で、陸軍が雇った諜報員・南始の策略に陥り、慎太は隠し持っていた書類を奪い取られてしまいました。
その後、百合と慎太はなんとか玉の井に到着しましたが、そこへヤクザたちが2人を狙ってきます。銃撃戦をくぐり抜け、百合たちは彼女の古巣である銘酒屋「ランブル-Rumble-」に転がりこみます。
小説『リボルバー・リリー』の感想と評価
焼け野原の東京で、怪しげな男たちにリボルバーを突きつけるひとりの美しい諜報員。長浦京の『リボルバー・リリー』は、衝撃的な場面から始まります。
生活苦から実親に諜報員養成所へと売られた少女・百合は、やがて世界中を震撼させる殺し屋となりました。自身の波乱万丈な半生はさておき、恩義のある国松から訳あり少年の保護を頼まれた百合は、「自分自身のための任務」とも思い彼を助けます。
諜報員養成所で培った百合のリボルバーの腕前と格闘の強さ、そして緊急時における的確な判断力は、軍隊で鍛えた男たちでもかないません。
陸軍という大組織と立ち向かう百合と慎太。小説とはいえ、凄まじく寸断なく描かれる銃撃の様相に圧倒されます。
また、百合たちが軍部に追われる理由には、軍部と日本政府のきな臭い裏事情がありました。新時代を担う少年である慎太と百合が、理不尽と不平等がまん延する現実社会の象徴を打ち破っていく様のなんと爽快なこと!
この小説の背景には、日本が軍国主義へ向かっていく時代があります。それに反するように、運命共同体となった女性諜報員と少年の間に生まれる確かな絆からは、人間として何が一番大切かと思い知らされます。
映画『リボルバー・リリー』の見どころ
凄腕美女の諜報員が軍部から追われる少年を助けるハードボイルド小説『リボルバー・リリー』。
主人公と軍部の激しい銃撃戦とストーリーの面白さで映像化希望の声も多かったのですが、ついに2023年に映画化が決定しました。
映画では、『孤狼の血』(2018)『孤狼の血 LEVEL2』(2021)などのアクション映画のプロデユースを務めた紀伊宗之がプロデューサーとなり、『リバーズエッジ』(2018)『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)などで知られる行定勲が監督を務めます。
かつてない壮大なスケールで、骨太のエンターテイメント・アクション超大作に挑む2人に期待も高まります。
見どころは、もちろんリボルバーを乱射する小曾根百合のアクションシーンです。
舞台は復興で活気づく東京や関東近郊の逃避先。最大のクライマックスである、“百合と慎太VS帝国陸軍1000人”の壮絶な6日間のバトルがどう描かれるのかと興味津々!
主人公である小曽根百合役の綾瀬はるかの、キレッキレッのアクションにも期待が高まります。
そして、女性組織員のアクションが映える映画といえば、過去にも多数あることに気が付きます。
1980年のアメリカ映画『グロリア』や1990年のフランス映画『ニキータ』、2023年公開の韓国映画『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』などなど。
アクションあり腐敗した巨大組織への挑戦ありで、子連れの女諜報員が命をかけて少年を護る『リボルバー・リリー』。
ストーリーが特に本作とよく似ているのは『グロリア』で、本作が和製『グロリア』と評判になるのかどうかが、とても楽しみです。
映画『リボルバー・リリー』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【原作】
長浦京:『リボルバー・リリー』(講談社文庫)
【監督】
行定勲
【企画プロデュース】
紀伊宗之
【キャスト】
綾瀬はるか、長谷川博己、羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也、ジェシー(SixTONES)、豊川悦司、阿部サダヲ、石橋蓮司、佐藤二朗、板尾創路、吹越満、内田朝陽、野村萬斎、橋爪功
まとめ
2023年8月11日(金・祝)公開のアクション映画『リボルバー・リリー』の原作小説を、ネタバレあらすじありでご紹介しました。
かつて凄腕の諜報員としてその名をはせた小曾根百合こと「リボルバー・リリー」。少年・慎太を恩義を受けた人から依頼されたとはいえ、いつしか本気で彼を護るようになります。そこにあるのは損得の感情ではなく、‟護るべき価値がある絆”でした。
胸のすくような激しいアクションと百合と慎太の固く結ばれた絆を、小説でも実写でもお楽しみください。
映画『リボルバー・リリー』は2023年8月11日(金・祝)に公開です。