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映画『激怒』あらすじ感想と評価解説。最後まで見る者の目を釘付けにする“俳優・川瀬陽太”が全力で暴力刑事を演じる熱きバイオレンス・ムービー

  • Writer :
  • 谷川裕美子

激怒にかられて無謀な戦いに挑む刑事の物語

本作が長編監督デビューとなるアートディレクター、映画ライターの高橋ヨシキが企画・脚本・監督を務めたバイオレンス映画『激怒』が2022年8月26日(金)より新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開されます。

友人である高橋監督の熱い誘いのもと、多数の映画に出演してきた川瀬陽太が主演を務めます。


本作が映画デビューとなる彩木あやがヒロインを務めるほか、小林竜樹、奥野瑛太、水澤紳吾らが共演。

本来善であるはずの思想でも、暴走すると恐ろしい世界を生み出してしまう恐怖が激しい描写で描かれます。

激怒に振り回されて暴力をふるう刑事がいつの間にか清々しく思えてくるほど、なにが善でなにが悪なのか翻弄される作品です。

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映画『激怒』の作品情報


(C)映画「激怒」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督・脚本・企画】
高橋ヨシキ

【出演】
川瀬陽太、小林竜樹、奥野瑛太、彩木あや、水澤紳吾、⽊村知貴、安藤ヒロキオ、渋川清彦、井浦新

【作品概要】
アートディレクター、映画ライターの高橋ヨシキの長編デビュー作となるバイオレンス映画。

『ローリング』(2015)『横須賀綺譚』(2020)など数多くの映画に出演してきた川瀬陽太が主演を務めます。

横須賀綺譚』(2020)の小林竜樹、『太陽の子』(2021)の奥野瑛太ら、邦画界で活躍する注目の若手が共演するほか、本作で映画デビューを飾る彩木あやがヒロインのアンナを演じます。

『ローリング』(2015)『あのこは貴族』(2021)の渡邊琢磨と、三島賞作家で音楽家の中原昌也が担当したサウンドトラックも見どころです。

さらに実写版『キングダム』(2019)の藤原カクセイが特殊メイク・特殊造形を担当するなど、ユニークなスタッフが大勢参加しています。

映画『激怒』のあらすじ

行きつけの飲み屋にいた刑事の深間は、かわいがっている従業員のアンナの荷物を持ってやり、彼女がダンサーをつとめる店まで送り届けます。背中の刺青も露わにポールダンスする彼女に見入っていた深間は、急な呼び出しを受けて立てこもり事件の現場へと向かいました。

現場では、ゴミ屋敷を見かねた町内会の住人たちが無理やり住居侵入したことに逆上した男が、彼らを人質にして立てこもっていました。何も手出しできずにいる警官たちに構うことなく深間は住居に押し入り、立てこもり犯を殴りつけます。しかし、一緒にいた犯人の母親が誤って自分を包丁で刺して死んでしまいました。

一方、町内会長の桃山は警察署長を訪ね、署長が女性とわかると恫喝して公園の取締りを強要します。

アンナの店へと戻った深間は、彼女に絡んでいた男ふたりを思わず殴りつけ、その姿を動画に撮られたために窮地に陥ります。我慢して土下座する深間でしたが、途中で堪忍袋の緒が切れて男たちをぼこぼこに殴りつけ殺してしまいました。

深間は捕らえられ、暴力癖の治療のために海外へ送られます。

それから数年後。治療薬を持って帰国した深間は、町の様子が変わっていることに気づきます。町には自警団のポスターがあふれ、警察では元部下が署長となっていました。深間は準刑事扱いになり、拳銃も渡されませんでした。

自室でタバコを吸っていた深間は、部下から注意されてしまいます。検知器によって監視され、屋外のみでしか喫煙は認められない世になっていました。なじみの飲み屋もなくなっています。

「安心、安全なまち」と繰り返されるマイクの声。町内会の夜回りたちは取締りの名のもとに、ルール違反をする者たちにひどい暴力をふるっていました。あまりのひどい状況をみかねて思わず止めようとした深間を、町内会と連携している警察が押しとどめます。

深間は必死で怒りを抑えて、自警団に頭を下げますが…。

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映画『激怒』の感想と評価

善意という名の悪魔

名バイプレーヤーの川瀬陽太が主演を務めるバイオレンス映画『激怒』。怒りにかられては相手を殴り倒してしまう悪癖を持つ主人公の刑事・深間を演じ切っています。

たびたび不祥事を重ねる暴力刑事である一方で、不良少年たちの面倒をみたり、行きつけの店で気の置けない仲間と飲んだりする人情家の一面を持つ深間。特にポールダンサーのアンナをとてもかわいがっています。彼女のセクシーなダンスに見入る深間の目には性的なものはなく、純粋な父性を感じさせます。

アンナを傷つける相手を決して許すことができず、彼女に絡んだ男たちを殴り殺してしまう深間。立てこもり犯も殴りつけるなど、病的なまでに暴力衝動を抑えられない彼は、海外での長い治療生活を強いられることとなりました。

帰国した深間を襲ったのは善意という名の悪魔たちでした。数年たった日本では、他人に迷惑をかける不良因子を決して許さないという自警団がルールを守らない者たちを排斥していきます。それはひどい暴力を良しとするとんでもない集団でした。

安全安心な世にしようと呼び掛けるポスターやマイクの声。それらは悪夢のように不気味な世を生み出していき、はじかれた者たちはスラム化した地域へと流れていきます。

根底にあるのは、迷惑をかける輩は厳罰を受けて当然という極端な価値観、そして、自分以外の者を蔑視する驕り高ぶった思想でした。

現実の日本社会で起こっている現象をデフォルメ化したかのような世界です。コロナの自粛警察やネットの炎上など、悪い者ならどんなに叩いても許されるという危険思想の延長上であるかのように感じる方はきっと多いのではないでしょうか。

まったくのフィクションだといいきれないリアルさに、この作品の凄みが現れています。

役者たちの熱量高い演技

激怒にかられると自分をコントロールできず、相手が死ぬまで殴り続けてしまう暴力刑事・深間を演じるのは、数えきれないほど多くの作品に出演するベテラン俳優の川瀬陽太です。

狂気のシーンの恐ろしいまでの緊迫感と、ヒロインのアンナや不良少年たちを保護者のようにみつめる時の温かみあるくだけた空気感の対比が、川瀬ならではの味わい深い演技によって際立っています。

友人である高橋ヨシキ監督の依頼で主演を務めた川瀬がキャスティングをすべて委ねられ、メジャー俳優から自主やピンク映画を主としている俳優までバラエティ豊かな顔ぶれを集めました。25年映画の世界に携わる中で出会った多くの俳優や監督に出演を願った結果の布陣だと語っています。

ヒロインのアンナ役を演じる彩木あやは本作が映画初出演。燃え上がる炎のような激しい光をたたえた大きな瞳に思わず魅入られます。実力派ダンサーでもある彩木の魅せるポールダンスも必見です。

深間に常にくっついて監視している若手刑事をNHK朝ドラ『エール』での好演が光った奥野瑛太がややとぼけた味わいで演じ、緊張感あふれる展開の中で緩衝材のような役割を果たしています。彼の存在が、自警団という組織の不気味さと権力の強さを浮き彫りにする演出は見事です。

署長にまで上り詰めたいけ好かない後輩を、独特の雰囲気を持つ小林竜樹が嫌味たっぷりに演じています。

川瀬の人脈により、馴染みの居酒屋の店主役をドラマ『私の家政夫ナギサさん』の演技派・水澤紳吾が演じるほか、井浦新、渋川清彦ら人気俳優も顔を揃えています。

まとめ

ベテラン実力派の川瀬陽太が友人である高橋ヨシキ監督のラブコールにこたえ、渾身の力で演じ切った衝撃のバイオレンス映画『激怒』。

暴力衝動を抑えられない男の悲哀とともに、善意の名のもとにふるわれる恐ろしい暴力を通して現代の根深い社会問題にも切り込んでいきます

海外で精神治療を受けた主人公が帰ってきたのは、町内会・自警団という善意の皮をかぶった暴力組織が異端分子をたたきのめすことを是とする恐ろしい日本でした。

善と悪の境目をいつの間にか見失い、容赦なく相手を殴りつける主人公の深間だけが次第にまともに思えてきてしまう摩訶不思議な作品です。

主演の川瀬陽太の人脈によって集った個性派キャストによる衝撃作『激怒』は、2022年8月26日(金)より新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開予定です。





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