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Entry 2022/08/20
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『ミューズは溺れない』あらすじ感想と評価解説。上原実矩x若杉凩が存在意義を追い求めながら輝きを放つ高校生を爽快に演じる

  • Writer :
  • 谷川裕美子

TAMA NEW WAVEと田辺・弁慶映画祭をダブル受賞した青春映画の秀作

インディーズ映画界の登竜門とされる第22回TAMA NEW WAVEと第15回田辺・弁慶映画祭の双方でグランプリに輝いた青春映画『ミューズは溺れない』が、2022年9月30日から10月6日までテアトル新宿での『田辺・弁慶映画祭セレクション2022』内にて上映されます。

大九明子監督などのもとで助監督を務めながら中・短編を製作してきた淺雄望が監督を務めます。

葛藤を抱えながらも前へと進もうと奮闘する高校生のひと夏がみずみずしく描かれます。

『この街と私』(2022)で主演を務めた上原実矩、『ジオラマボーイ・パノラマガール』(2020)の若杉凪が出演。上原はTAMA NEW WAVEでベスト女優賞、若杉は田辺・弁慶映画祭で俳優賞をそれぞれ受賞しています。

共演は森田想、川瀬陽太ほか。

映画『ミューズは溺れない』の作品情報


(C)カブフィルム

【公開】
2021年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
淺雄望

【出演】
上原実矩、若杉凩、森田想、川瀬陽太、広澤草、新海ひろ子、那須愛美、桐島コルグ、佐久間祥朗、奥田智美、菊池正和、河野孝則

【作品概要】
大九明子監督などのもとで助監督を務めながら中・短編を製作してきた淺雄望監督作。

インディーズ映画界の登竜門とされる第22回TAMA NEW WAVEと第15回田辺・弁慶映画祭の双方でグランプリを獲得しました。

アイデンティティのゆらぎや創作をめぐるもがきなど、葛藤を抱えながらも前進しようとする高校生がみずみずしく描かれます。

主人公の朔子役を主演作『この街と私』(2022)で注目された上原実矩、西原役を『ジオラマボーイ・パノラマガール』(2020)などで活躍する若杉凪が演じます。上原はTAMA NEW WAVEでベスト女優賞を、若杉は田辺・弁慶映画祭で俳優賞をそれぞれ受賞しました。

共演は『わたし達はおとな』(2022)の森田想、『激怒』(2022)の川瀬陽太。

映画『ミューズは溺れない』のあらすじ


(C)カブフィルム

漁港でスケッチしてい美術部のた朔子(さくこ)は、ふざけていた友人に押されて海に落ちてしまいます。

その様子を見ていた美術部員女子の西原(さいばら)が溺れる朔子の絵を描いてコンクールで審査員特別賞を受賞し、学校にその絵が飾られました。

みんなにからかわれた朔子が、恋愛絡みで親友の栄美とも気まずくなったまま帰宅すると、妊娠中の義母に迎えられます。新居に引っ越すことになっている朔子家族は部屋の片づけを始めます。帰宅した父と母の仲睦まじい姿に気を遣う朔子。

朔子は顧問の田口に部活をやめることを伝えますが、何か作品を完成させてからやめるようにとアドバイスされました。その様子を見ていた西原は、朔子に絵のモデルになってほしいと頼みます。

朔子はモデルを断り、自宅で船をモチーフにした造形物を作り始めました。

インタビュー取材を受けることになった西原は、自作をまた朔子をモデルに描くと宣言します。

朔子がモデルを引き受けたことに驚く栄美は、西原が朔子を好きなのではないかと考え、西原をよく見ている朔子の気持ちも同じなのではないかと疑います。

笑ってごまかそうとする朔子に、考えていることわからないと責める栄美。通りかかった西原は、本人にしかわからないことは誰でもあると言って去って行きます。

モデルとして座った朔子は、西原のまっすぐで射すくめるような瞳に圧倒されます。

どうして自分をモデルに選んだのかと朔子は西原に聞きますが…。

映画『ミューズは溺れない』の感想と評価


(C)カブフィルム

上原実矩と若杉凩のまっすぐな瞳

不確かなアイデンティティや、自分の才能への不安、そして夢と現実の狭間で揺れ動く高校生の心を丁寧に掬い取った『ミューズは溺れない』。インディーズ界の登竜門と第22回TAMA NEW WAVEと第15回田辺・弁慶映画祭の双方でグランプリを獲得した秀作です。

監督は、大九明子監督などのもとで助監督を務め、製作を続けてきた淺雄望です。本作に寄せて「映画に救われ生き延びてきました。本作を通して誰かが少しでも息がしやすくなれば、それ以上に嬉しいことはありません。」とコメントしています。

本作のメッセージはこの言葉に凝縮されています。生きづらさを抱える高校生の少女たちが、笑顔で未来をみつめられるようになる爽快な青春物語です。

主人公の朔子は美術部員ですが、進路に悩む中、自分の才能を信じられず部活をやめようと考えます。父と妊娠中の義母と暮らす彼女は、家の中で自分の居場所がなくなっていく不安を抱えていました。

同じ美術部員の西原はコンクールに入賞する実力者です。誰とも深く関わろうとしない彼女は、人を見下していると周囲から批判されながら孤立しています。

輝きと苦みの混在する青春期真っただ中にいるふたりは、作品を生み出すことで自分の存在意義を追い求めようとしていました。ふたつの魂はやがてぶつかり合い、化学反応を起こしていきます。 

創作するふたりの瞳は輝いています。モノ作りの楽しさのすばらしさが描かれると共に、自身の才能への失望や、芸術に生きる難しさへの悲憤が交錯します。

主演の上原実矩と若杉凩の痛いほどまっすぐな瞳がとにかく素晴らしく、思わず魅了されます。

特に上原の鬱屈を抱えた表情は凄みがあり、なにかの衝撃を受ければ破裂しそうな青春期特有の緊張感を醸し出しています。

上原はTAMA NEW WAVEでベスト女優賞を、若杉は田辺・弁慶映画祭で俳優賞をそれぞれ受賞する快挙を成し遂げました。ふたりの演技派若手女優の演技に注目です。

まとめ


(C)カブフィルム

ふたりの少女たちの創作の喜びと苦しみ、そこで自身のアイデンティティをつかみとろうと必死にもがくさまを丁寧に映し出す『ミューズは溺れない』。

自分の存在意義を求めて、周囲に対してつっぱらずにいられない高校生たち。生きづらさを抱えてうまく息を吸えないでいる彼らが、未来を明るくみつめられるようになっていくさまが爽快に描かれます。

鬱屈した世界と、弾ける爆発力を持ち合わせる青春期のきらめきがまぶしい一作です。

青春映画『ミューズは溺れない』は2022年9月30日から10月6日までテアトル新宿での『田辺・弁慶映画祭セレクション2022』内にて上映です。







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