Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アクション映画

Entry 2020/01/29
Update

香港映画『プロジェクト・グーテンベルク』感想とレビュー評価。贋札王ユンファ×クォックの演技力が光るクライムアクション

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』は2020年2月7日(金)よりロードショー。

“亜州影帝(アジア映画界の帝王)”チョウ・ユンファが完全復活、アーロン・クォックとの強力タッグで魅せる予測不能のクライムアクションサスペンス

“画家”と呼ばれる謎の男が率いる偽札組織にスカウトされた“贋作の名人”をめぐり、“画家”の正体に迫っていく人たちの姿を描いた『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』。

作品は「インファナル・アフェア」シリーズなどの脚本を担当してきたフェリックス・チョンが監督、脚本を務めます。

また謎めいた男“画家”役を、香港ノワールの傑作『男たちの挽歌』などで香港映画界を代表する国民的俳優となったチョウ・ユンファが演じます。

そして“画家”に認められた天才贋作家・レイを“香港四大天王”の一人として活躍し『コールド・ウォー/二つの正義』など演技派俳優としても高い評価を得るアーロン・クォックが担当と、二大スターが火花を散らし作品を盛り上げています。

さらにレイにとって“運命の女”であるユンには『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』で役所広司と共演したチャン・ジンチューが出演しています。

映画『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』の作品情報


(C) 2018 Bona Entertainment Company Limited

【日本公開】
2020年(香港・中国合作映画)

【原題】
無雙

【英題】
Project Gutenberg

【監督・共同脚本】
フェリックス・チョン

【キャスト】
チョウ・ユンファ、アーロン・クォック、チャン・ジンチュー

【作品概要】
『男たちの挽歌』(1986)のチョウ・ユンファと『風雲 ストームライダーズ』(19998)のアーロン・クォックがダブル主演を務め、第38回香港電影金像獎で作品賞、監督賞など最多7部門を受賞したクライムアクション。「インファナル・アフェア」シリーズの脚本家フェリックス・チョンが監督を務め、偽札造りの達人が犯罪の連鎖に巻き込まれていく姿を、予測不能な展開と迫力のアクションで描きます。

2018年・第31回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門では、『プロジェクト・グーテンベルク』のタイトルで上映されました。

映画『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』のあらすじ


(C) 2018 Bona Entertainment Company Limited

物語は偽造画家として警察に逮捕された画家レイが、逮捕先のタイから香港に護送されるものの、そこで高名な美術家ユン・マンによって保釈されるところから始まります。

レイが偽造画家となった経緯は、1990年代のカナダにさかのぼります。貧しい画家であったレイは恋人との将来に希望を託しますが、なかなか認められず、いっこうに暮らしは楽になりません。

そんな時、こっそりと絵画の偽造に手を染めだしたレイは「画家」と名乗る謎の男に腕を認められ、彼が運営する偽札組織で働くことになります。

やがて米ドル紙幣の偽札発見テクノロジーの進化をあざ笑うように、彼の偽札造りは世界を席巻していきますが…。

映画『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』の感想と評価


(C) 2018 Bona Entertainment Company Limited

「うだつの上がらない一人の人間が、物語が進むたびに実はとんでもない驚愕の事実を持っていた」。

こうしたミステリーの作風は近年多くの作品で見られるところですが、その成功への課題は、いかにオリジナリティを見せるかという点と同じくらいに物語のバランス、整合性をきっちりと構築してくことにあります。

その点で本作の監督・脚本を担当したフェリックス・チャンは日本の松本清張、横溝正史といった本格的なミステリーの王道的な作家からの影響を自ら認めるほどにミステリーに精通しており、物語の筋やオリジナリティ、意外性の構築に関しては徹底したこだわりを見せ、途中で違和感を覚えるような妥協点を一切許さない緻密な作りで、かつ緊張感あふれる物語の世界観を構築しています。

そしてこの物語の成功のカギを握るのがアーロン・クォックの存在感です。

彼の役柄は序盤と終盤で見せる人物性格は全く違ったものとなります。特にレイと画家の真実が物語の進行の中で徐々に明らかにされていく上で、レイ自身の性格も物語の位置づけとしては変わっていくわけですが、複雑な展開、構成だけに感情表現の誤りは致命的であります。

そういった部分を映像の中で一切生じさせず演じきったところにクォック自身の演技に対する執着、そして妥協のないチャン監督の的確な演出指導がうかがえます。

またこの作品の大きな見どころであるチョウ・ユンファの存在感も見逃せません。

彼の存在感はクォックの演じる役柄に対して直接対峙する局面、および内面的にそのキャラクターが一致する面と、クォックの役柄に対して非常に複雑に絡むのですが、さすがユンファといえるゆるぎない存在感を示し、物語の重要な礎として物語の中に立っています

逆にいえばユンファの存在があるからこそクォックが自らの役柄を全うできたという点は、この作品の強みといえるでしょう。

ユンファとクォックの共演は今作で三度目となります。作品では物語では「さすがこの二人が出演した作品だけのことはある」と思わせる作品として仕上がっており、二人のファンはもちろん、緊張感抜群のアクション、そして最後の最後まで驚愕の大どんでん返しミステリーのファンにも十分アピールできる作品となっています。

まとめ


(C) 2018 Bona Entertainment Company Limited

本作はチョウ・ユンファとアーロン・クォックというツートップの共演という部分が見どころとして多く上げられがちです。

もちろん役者としてのそれぞれの実力もさることながら、本作は2018年の香港映画で興行収入第二位、中国大陸で公開された香港映画としては史上第一位となるメガヒットを記録という高評価を得たのは、作品の緻密な構成、演出があってのことに他なりません。

逆にいえば彼らのようなトップスターが立ち、輝かせるにふさわしい作品、それだけの質、レベルを狙ったものとして仕上がっている、ともいえるでしょう。

ちなみに、時期的に発表が近いクォックの出演作として、2019年に東京国際映画祭で上映された『ファストフード店の住人たち』があります。

演技に関して本作ではどちらかというと緻密さを求めているのに対し、『ファストフード店の住人たち』では、もっとラフな感じで自然に体の中からにじみ出てくる感性を求めているようにも感じられます。機会があれば二作品を見比べてみるのも面白いでしょう。

映画『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』は2020年2月7日(金)より公開されます!





関連記事

アクション映画

【ネタバレ】エクスペンダブルズ2|あらすじ結末の感想と評価解説。続編は“死も恐れぬ”豪華な顔ぶれの傭兵団の新たな激闘が始まる!

大ヒット戦争アクション映画『エクスペンダブルズ』の続編! サイモン・ウェストが監督を務めた、2012年製作のアメリカのPG12指定の戦争アクション映画『エクスペンダブルズ2』。 命知らずなエリート傭兵 …

アクション映画

映画『アウトロー』ネタバレ結末あらすじと感想解説。トム・クルーズが一匹狼のハードボイルドアクションに挑む!

全米ベストセラー小説『アウトロー』を実写映画化! クリストファー・マッカリーが脚本・監督を務めた、2012年製作のアメリカのハードボイルドアクション映画『アウトロー』。 「その男、行き着く先に事件あり …

アクション映画

映画『ジェミニマン』あらすじネタバレと感想。SFアクションを最新技術を駆使した圧巻の映像美で魅せる

4K3Dハイフレームレートの最新技術によって撮影されたウィル・スミスvsウィル・スミスを描く アン・リー監督の『ジェミニマン』は、2019年10月25日全国公開! 2005年公開の『ブロークバック・マ …

アクション映画

『アイス・ロード』ネタバレあらすじ感想と結末ラストの評価解説。リーアム・ニーソン主演で描くレスキューアクション!

腕利きのトラックドライバーたちが死のロードを走りきるレスキューアクション! ジョナサン・ヘンズリーが脚本・監督を務めた、2021年製作のアメリカのレスキューアクション映画『アイス・ロード』。 カナダ北 …

アクション映画

【ネタバレ】007ノー・タイム・トゥ・ダイ|映画感想とストーリー結末考察。ボンドガールとダニエルクレイグが最後に示す“新時代のボンド”

細菌兵器を使用した恐るべき計画の阻止に挑む、6代目ジェームズ・ボンド最後の戦い アクションスパイ映画の金字塔「007」シリーズ。 25作目となる映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、2006年の …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学