連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile084
新年も2週目となり、学生から会社員の方まで多くの人が新たな年の平日を過ごし始めていると思います。
2020年の新作映画の公開が続々と始まるタイミングで公開される『ペット・セメタリー』(2020)は1989年にも同タイトルで映像化された小説を再び映画化した注目の作品。
今回は2020年になっても映画ファンに驚きを与えてくれる小説家スティーヴン・キングに着目しながら『ペット・セメタリー』の注目点をご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『ペット・セメタリー』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
Pet Sematary
【監督】
ケビン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー
【キャスト】
ジェイソン・クラーク、エイミー・サイメッツ、ジョン・リスゴー、ジェテ・ローレンス、オバッサ・アーメド、アリッサ・レビン
映画『ペット・セメタリー』のあらすじ
医師のルイス(ジェイソン・クラーク)一家が越してきた田舎町の一軒家の裏には動物専用の墓地「ペット・セメタリー」がありました。
ある日、ルイス一家の飼い猫であるチャーチが車に撥ねられ死亡してしまいます。
娘のエリー(ジェテ・ローレンス)がチャーチ溺愛していたことを知った隣人のジャド(ジョン・リスゴー)は、チャーチの遺体を埋葬するために家族を森の奥へと案内しますが…。
禁断の森で描かれる罪と罰
スティーヴン・キングが1983年に発表した小説「ペット・セマタリー」を原作とした2回目の映画化となる本作は、1989年版と同原作をベースにしていますが展開に多くの差異があります。
差異となる部分の多くはキングがこの作品の込めた「罪と罰」のメッセージをより強調する効果を発揮しており、鑑賞後に深く考えさせられるホラー映画になっています。
美空ひばりの歌声が「AI美空ひばり」として蘇ったように、死者の復活は科学の進歩を前に既に夢物語を越え現実に近いものになっています。
しかし、果たしてその道が人が越えるべきでない領域に足を踏み入れる行為ではないのか、これからの時代に考える必要があると再び考えさせられる作品でした。
映画界に数多くの貢献を果たしたスティーヴン・キング
参考画像:『スタンド・バイ・ミー』
「モダンホラーの開拓者」とも呼ばれる小説界の鬼才スティーヴン・キング。
しかし、青春映画の金字塔ともなった映画の原作「The Body」(『スタンド・バイ・ミー』原作)や「グリーンマイル」、「刑務所のリタ・ヘイワース」(『ショーシャンクの空に』原作)など彼の才能は「ホラー」と言うジャンルだけに留まらず数多くの名作を執筆し、またその小説が数多くの名作映画を生み出してきました。
今回はSF恐怖映画コラムに相応しく、スティーヴン・キングの映画界への貢献を彼の十八番である「ホラー」と異色かつ大人気の設定を生み出した「SF」の2ジャンルに絞り、ご紹介していきます。
スティーヴン・キング原作の「ホラー」映画
参考動画:『ドクター・スリープ』特別映像
「スティーヴン・キングと言えばホラー」と言うイメージがあるように、彼の著作を原作とした映画は「ホラー」が圧倒的に多いと言えます。
2019年に続編『ドクター・スリープ』(2019)が公開された名作ホラー映画『シャイニング』(1980)や、イジメをきっかけに壮絶な悲劇が襲う『キャリー』(1976)のように「超常現象」や「オカルト」を題材とした名作ホラー映画にその名前を幾度となく見かけます。
ですが、スティーヴン・キングの実際の経験を基に執筆されたとされる過激なファンによる狂気を描いた『ミザリー』(1991)で顕著であるように、彼の得意分野は人間の「狂気」に対する「恐怖」を描くこと。
最新作『ペット・セメタリー』では、暴走を誘発する「ペット・セメタリー」を巡る人の「理性」に1989年版に比べ多く焦点が定まっており、スティーヴン・キングの描こうとしていた「恐怖」を引き出していると言えます。
スティーヴン・キング原作の「SF」映画
参考画像:『バトルランナー』
ホラーやヒューマンドラマに作品が偏りがちなスティーヴン・キングですが、実は「SF」と言うジャンルでも確かな実績を残しています。
その作品の多くが「苦難に立たされた主人公が生き残るために大きな存在と対峙する」と言う傾向が強く、映画映えする作品でもありました。
圧倒的な格差社会となった未来で、殺人TVショーに出演することとなった男の奮闘を描いた『バトルランナー』(1987)はアーノルド・シュワルツェネッガーを主演に迎え大幅な設定変更の末に公開、公開から30年が経った2017年にはこの作品の「テレビ文化」への批判が再び脚光を浴び話題となりました。
その他にも、特殊能力を持った少女と父親の逃避行を描いた『炎の少女チャーリー』(1984)や実はホラーでありSF映画でもある『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019)のように、絶望的な状況下でも今の状況と対峙する主人公に魅力を感じます。
そして2019年、スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した小説「死のロングウォーク」が、『ジェーン・ドウの解剖』(2017)のアンドレ・ウーヴレダル監督で映像化されることが決定。
「バトル・ロワイアル」や「リアル鬼ごっこ」など、日本で人気となった「デスゲーム系」小説の始祖とも言われる作品の映画化であり、今後の情報解禁に要注目です。
まとめ
2020年のホラー映画初めにぴったりとなる『ペット・セメタリー』は1月17日(金)より全国劇場でロードショー。
数多くの映画原作を執筆するスティーヴン・キングの作品としての力強さと強いメッセージを感じることの出来る本作をぜひ劇場でご覧になってください。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile085では、「SF映画おすすめ5選!60年代の名作傑作選【糸魚川悟セレクション】」と銘打ち60年代の名作SFをランキング形式でご紹介させていただきます。
1月15日(水)の掲載をお楽しみに!
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