Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/01/08
Update

『ペットセメタリー』と映画化したスティーヴン・キング作品を紹介|SF恐怖映画という名の観覧車84

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile084

新年も2週目となり、学生から会社員の方まで多くの人が新たな年の平日を過ごし始めていると思います。

2020年の新作映画の公開が続々と始まるタイミングで公開される『ペット・セメタリー』(2020)は1989年にも同タイトルで映像化された小説を再び映画化した注目の作品。

今回は2020年になっても映画ファンに驚きを与えてくれる小説家スティーヴン・キングに着目しながら『ペット・セメタリー』の注目点をご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『ペット・セメタリー』の作品情報


(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
Pet Sematary

【監督】
ケビン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー

【キャスト】
ジェイソン・クラーク、エイミー・サイメッツ、ジョン・リスゴー、ジェテ・ローレンス、オバッサ・アーメド、アリッサ・レビン

映画『ペット・セメタリー』のあらすじ


(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

医師のルイス(ジェイソン・クラーク)一家が越してきた田舎町の一軒家の裏には動物専用の墓地「ペット・セメタリー」がありました。

ある日、ルイス一家の飼い猫であるチャーチが車に撥ねられ死亡してしまいます。

娘のエリー(ジェテ・ローレンス)がチャーチ溺愛していたことを知った隣人のジャド(ジョン・リスゴー)は、チャーチの遺体を埋葬するために家族を森の奥へと案内しますが…。

禁断の森で描かれる罪と罰


(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

スティーヴン・キングが1983年に発表した小説「ペット・セマタリー」を原作とした2回目の映画化となる本作は、1989年版と同原作をベースにしていますが展開に多くの差異があります。

差異となる部分の多くはキングがこの作品の込めた「罪と罰」のメッセージをより強調する効果を発揮しており、鑑賞後に深く考えさせられるホラー映画になっています。

美空ひばりの歌声が「AI美空ひばり」として蘇ったように、死者の復活は科学の進歩を前に既に夢物語を越え現実に近いものになっています。

しかし、果たしてその道が人が越えるべきでない領域に足を踏み入れる行為ではないのか、これからの時代に考える必要があると再び考えさせられる作品でした。

映画界に数多くの貢献を果たしたスティーヴン・キング

参考画像:『スタンド・バイ・ミー』


(C)1986 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

「モダンホラーの開拓者」とも呼ばれる小説界の鬼才スティーヴン・キング。

しかし、青春映画の金字塔ともなった映画の原作「The Body」(『スタンド・バイ・ミー』原作)や「グリーンマイル」、「刑務所のリタ・ヘイワース」(『ショーシャンクの空に』原作)など彼の才能は「ホラー」と言うジャンルだけに留まらず数多くの名作を執筆し、またその小説が数多くの名作映画を生み出してきました。

今回はSF恐怖映画コラムに相応しく、スティーヴン・キングの映画界への貢献を彼の十八番である「ホラー」と異色かつ大人気の設定を生み出した「SF」の2ジャンルに絞り、ご紹介していきます。

スティーヴン・キング原作の「ホラー」映画

参考動画:『ドクター・スリープ』特別映像

「スティーヴン・キングと言えばホラー」と言うイメージがあるように、彼の著作を原作とした映画は「ホラー」が圧倒的に多いと言えます。

2019年に続編『ドクター・スリープ』(2019)が公開された名作ホラー映画『シャイニング』(1980)や、イジメをきっかけに壮絶な悲劇が襲う『キャリー』(1976)のように「超常現象」や「オカルト」を題材とした名作ホラー映画にその名前を幾度となく見かけます。

ですが、スティーヴン・キングの実際の経験を基に執筆されたとされる過激なファンによる狂気を描いた『ミザリー』(1991)で顕著であるように、彼の得意分野は人間の「狂気」に対する「恐怖」を描くこと。

最新作『ペット・セメタリー』では、暴走を誘発する「ペット・セメタリー」を巡る人の「理性」に1989年版に比べ多く焦点が定まっており、スティーヴン・キングの描こうとしていた「恐怖」を引き出していると言えます。

スティーヴン・キング原作の「SF」映画

参考画像:『バトルランナー』


™ & Copyright © 2018 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved

ホラーやヒューマンドラマに作品が偏りがちなスティーヴン・キングですが、実は「SF」と言うジャンルでも確かな実績を残しています。

その作品の多くが「苦難に立たされた主人公が生き残るために大きな存在と対峙する」と言う傾向が強く、映画映えする作品でもありました。

圧倒的な格差社会となった未来で、殺人TVショーに出演することとなった男の奮闘を描いた『バトルランナー』(1987)はアーノルド・シュワルツェネッガーを主演に迎え大幅な設定変更の末に公開、公開から30年が経った2017年にはこの作品の「テレビ文化」への批判が再び脚光を浴び話題となりました。

その他にも、特殊能力を持った少女と父親の逃避行を描いた『炎の少女チャーリー』(1984)や実はホラーでありSF映画でもある『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019)のように、絶望的な状況下でも今の状況と対峙する主人公に魅力を感じます。

そして2019年、スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した小説「死のロングウォーク」が、『ジェーン・ドウの解剖』(2017)のアンドレ・ウーヴレダル監督で映像化されることが決定。

「バトル・ロワイアル」や「リアル鬼ごっこ」など、日本で人気となった「デスゲーム系」小説の始祖とも言われる作品の映画化であり、今後の情報解禁に要注目です。

まとめ


(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

2020年のホラー映画初めにぴったりとなる『ペット・セメタリー』は1月17日(金)より全国劇場でロードショー。

数多くの映画原作を執筆するスティーヴン・キングの作品としての力強さと強いメッセージを感じることの出来る本作をぜひ劇場でご覧になってください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile085では、「SF映画おすすめ5選!60年代の名作傑作選【糸魚川悟セレクション】」と銘打ち60年代の名作SFをランキング形式でご紹介させていただきます。

1月15日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら






関連記事

連載コラム

高校球児にこそ観てほしい野球映画。そこで知る再起の姿勢とは|映画道シカミミ見聞録8

連作コラム「映画道シカミミ見聞録」第8回 (C)Disney こんにちは、森田です。 夏の甲子園がはじまり、全国の若き高校球児たちが頂点を目指して白球を追いかけています。 その姿は野球に縁のない人々の …

連載コラム

映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』感想と評価。タイジ役の太賀とその原作者本人とは|銀幕の月光遊戯8

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第8回 こんにちは、西川ちょりです。 今回取り上げる作品は、2018年11月16日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、イオンシネマほかにて全国公開の映画『母さんがど …

連載コラム

映画『エイリアン2』ネタバレあらすじと結末までの感想解説。クイーンを登場させ“強くなる女性”をテーマにしたジェームズキャメロンの演出|SFホラーの伝説エイリアン・シリーズを探る 第2回

連載コラム「SFホラーの伝説『エイリアン』を探る」第2回 人間が倒すことがてきなかった完全生物“エイリアン”が、今度は集団でやってくる!?悪夢のモンスターホラーをスケールアップして描き、シリーズの存在 …

連載コラム

映画大地と白い雲(チャクトゥとサルラ)|あらすじと感想レビュー。内モンゴル自治区の今を活写した普遍性【TIFF2019リポート19】

第32回東京国際映画祭・コンペティション部門『チャクトゥとサルラ』 2019年にて32回目を迎える東京国際映画祭。令和初となる本映画祭が2019年10月28日(月)に開会され、11月5日(火)までの1 …

連載コラム

『記憶屋』ネタバレありで映画と原作の違いを考察。ラストで犯人キャストが取った行動とは⁈|永遠の未完成これ完成である6

連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第6回 映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。 今回、紹介する作品は、映画『記憶屋 あなたを忘れない』です。 織守きょう …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学