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Entry 2023/12/02
Update

【ネタバレ】渇きと偽り|あらすじ感想と結末の評価解説。同名小説を映画化したオーストラリアのクライムサスペンス

  • Writer :
  • 秋國まゆ

ジェイン・ハーパーの世界的ベストセラー小説を映画化!

ロバート・コノリーが脚本・製作・監督を務めた、2020年製作のオーストラリアのクライムサスペンス映画『渇きと偽り』。

オーストラリア・メルボルンの連邦警察官アーロンは、旧友ルークの葬儀に参加するため、20年ぶりに帰郷。ルークは自身の妻子を殺害後、自殺したのです。

アーロンの故郷は長い間干ばつに襲われており、ルークが起こした事件の背景にもそうした土地の事情がありました。

しかし町に留まって捜査を行うにつれて、未解決事件となっている過去の事件とも向き合うこととなったアーロンは、2つの殺人事件が繋がっているのではないかと疑い始めます。

映画『渇きと偽り』のネタバレあらすじと作品の魅力ご紹介いたします。

映画『渇きと偽り』の作品情報


(C)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia

【公開】
2020年(オーストラリア映画)

【原作】
ジェイン・ハーパー『渇きと偽り』

【監督】
ロバート・コノリー

【キャスト】
エリック・バナ、ジュネビーブ・オライリー、キーア・オドネル、ジョン・ポルソン、ジョー・クローチェック、クロード・スコット=ミッチェル、サム・コーレット、ベベ・ベッテンコート、マーティン・ディングル・ウォール、ブルース・スペンス、ジュリア・ブレイク、マット・ネイブル、ウィリアム・ザッパ、ジェームズ・フレッシュヴィル、ミランダ・タプセル、レニー・リム、ジェレミー・リンジー・テイラー、ダニエル・フレデリクセン、エディ・バルー

【作品概要】
『DOWN UNDER BOYS』(2000)や『ファイナル・アワーズ』(2013)を手がけたロバート・コノリーが脚本・製作・監督を務めた、オーストラリアのクライムサスペンス作品。

主演は『トロイ』(2004)や『ミュンヘン』(2006)『NY心霊捜査官』(2014)などのエリック・バナ。

オーストラリア人作家ジェイン・ハーパーの世界的ベストセラーにして、彼のデビュー作小説『渇きと偽り』に惚れ込んだバナは自らプロデューサーも務め、本作で約13年ぶりに母国オーストラリアの映画に主演しました。

映画『渇きと偽り』のあらすじとネタバレ


(C)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia

オーストラリア・メルボルンの連邦警察官アーロン・フォークは、旧友ルークの葬式に参列するため、20年ぶりに帰郷しました。

2019年2月26日。ルークは妻のカレンと息子のビリーを殺害後、自らも命を絶ったのです。

アーロンの故郷であるオーストラリアの小さな町キエワラは324日間雨が降っておらず、長らく干ばつに襲われていました。ルークが起こした事件の背景にもそうした土地の事情があり、両親から農場を任されていた彼もいわばその犠牲者だと思われていました。

アーロンは彼の両親に再捜査を頼まれ、しばらく町に留まることにしました。

翌日。アーロンは第一発見者である町の巡査部長グレッグ・レイコーと共に現場検証や、ルークとカレンの関係者への事情聴取を行いました。

干ばつにより干上がった湖で自殺したルークの遺体のそばにあった散弾と、ルークの自宅にあった銃の弾が違うものであったこと。ルークとカレンの夫婦仲が悪かったこと。ルークは事件前に町の消防士ジェイミー・サリバンに頼まれて、彼の畑を荒らすウサギを撃ちに行っていたこと。

ルークとジェイミーと同じ、湖周辺の土地の所有者である農家のマル・ディーコンの甥グラントと、ジェイミーのアリバイが嘘だったことが聴取により判明しました。

ジェイミーはルークと飲みに行ってから帰宅し、一緒に住んでいる祖母とずっと紅茶を飲んでいたと言っていましたが、実は外出していたのです。

グラントは「カレンとは何の関係もない」と言っていました。

しかしアーロンがルークの母バーブから頼まれ、町のキエワラ図書館に本を返しに行った時、その本には、カレンが死ぬ1週間前の2月19日に発行されたキエワラ図書館のレシートが挟まっていました。そしてレシートの裏には「グラント?」とカレンの筆跡で文字が記されていました。

そのレシートの他に「ペンバリー持株会社、低所得被害者に返金」という見出しで書かれた、アーロンが解決した事件の新聞記事が挟まっていましたが、アーロンとカレンは全く面識がありません。

また、ルークが起こした殺人事件の再捜査を行うにあたり、アーロンは過去の未解決事件と向き合うことに。それは数十年前に起きた、アーロンとルークの女友だちであったエリナー・ディーコン(愛称エリー)が川で溺れ死んだ事件のことです。

事件当時、アーロンたちはウサギを撃ちに行ったと証言しましたが、ルークの父ジェリー・ハドラーはルークが川から戻ってきたのを見ていたため、嘘だとすぐにバレました。

アーロンたち3人の友人であり、ルークの元恋人グレッチェンは、エリーが父親のマルを憎むほど家で色々とあり、助けを必要としていたことを知っていました。

エリーの母が出ていった時に介入していればと思うも、他の町民は見て見ぬふり。そんな街に居心地の悪さと、彼女への罪悪感を感じました。

そんな時、グレッチェンはアーロンからの手紙を見つけ、これ幸いと彼に罪を押しつけました。そのせいでアーロンは今も昔も、マルとグラントたち一部の町民から煙たがられているのです。

ルークが自殺した湖は、よくアーロンたち仲良し4人組が遊んでいた場所。そこではアーロンたちが川で遊んだり、釣りをしたり、アーロンがエリーと岩場の陰でキスをしたり。いつもふざけているアーロンとルークにうんざりしたエリーが怒って帰ってしまったりと、色々な思い出が詰まった場所でした。

その後、町の警察署に戻ったアーロンたちは、グラントとジェイミーの嘘を暴くべく、町の監視カメラの映像を全てチェックしました。学校に設置された監視カメラの映像には、事件の2時間前、カレンがビリーと赤ん坊を連れて学校から出てきた姿が映っていました。

カレンはどこか悩んでいる様子で、車をすぐ発進しませんでした。カレンの車が学校の駐車場から出てから2時間後、事件の連絡を受けた校長のスコット・ホイットラムが学校から出てきました。

アーロンはグレッグの案内で、ルークが自殺した現場で発見された彼の車を見に行きました。その時ふと、過去の光景がアーロンの脳裏をよぎります。

エリーが怒って帰ってしまった日の翌日、下校しようとした彼女をルークが引き止めました。力になると言ってくれたルークをエリーは拒絶し、廊下で言い合う2人を、アーロンとグレッチェンはそれぞれ離れた場所から見ていました。

エリーが1人になった時、アーロンは荷物を運ぶのを手伝ってほしいと声をかけました。エリーはそれを断るも、アーロンに今度は自分からキスをしました。そして帰ろうとするエリーに、アーロンは「川で待ってる」と咄嗟に書いたメモを渡しました。

それを、まだ廊下にいたルークが見ていました。

以下、『渇きと偽り』ネタバレ・結末の記載がございます。『渇きと偽り』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia

アーロンたちが町に出たその時、路肩に停めていたアーロンの車の上に子牛の死体が置かれていることに気づきます。さらに町中の建物の窓ガラスや壁に、「人殺し」と書かれた文字とアーロンとエリーの写真が載ったビラが所狭しと貼られていたのです。

アーロンはすぐにグラントの仕業だと気づき、彼を問い詰めようとします。そんな彼をグレッグと、ビラを剝がしていたホイットラムが必死に止めました。

アーロンはホイットラムの好意に甘え、彼の自宅前で血まみれになった車を洗いました。洗車後、2人がリビングで酒を飲んでいると、ホイットラムの妻サンドラがやってきて、彼女の携帯に残された留守電メッセージを再生しました。

「悪いけど、ビリーを行かせるのやめるわ」「具合が悪いんだって。今日はこのまま帰る」「直前でごめんね、サンドラ。じゃあまたね」

カレンはあの時、サンドラのところに息子を連れていくか悩んでいたのです。ですが直前にドタキャンされ、その後に予定を立てていたこともあり、サンドラは怒って折り返しの電話はしませんでした。

その後、ホイットラムはアーロン親子が映っている写真を彼に見せました。またサンドラに聞こえないようにこっそりと、ホイットラムはこの町に引っ越してきた理由を明かします。

実はホイットラムたちがメルボルンに住んでいた時、妻と娘が外出中にナイフを持った強盗が家に入ってきて、金庫に入っていたサンドラの宝石を全部盗んでいったというのです。しかし強盗を働いたジャンキー2人は捕まらず、それ以来サンドラは精神的に不安定となってしまいました。

父と映っている写真を見て、アーロンはエリーが死んだ日のことを思い出します。

結局あの後、アーロンは川でエリーを待っていましたが、彼女は現れず……帰宅したアーロンは、父から川で10代の子の遺体が見つかったと知らされます。

アーロンは慌てて家を飛び出し、川へ向かいました。ちょうど川から引き揚げられていた遺体がエリーだと見て分かり、アーロンは悲しみのあまり叫びそうだった口を手で覆いました。

その日の夜。ルークが酷く慌てた様子でアーロンの部屋を訪ねてきました。アーロンがエリーを川に呼び出した手紙が見つかって、彼がエリーを殺したという噂が流れていると言うのです。

ルークはアーロンを助けるために、自分と放牧地でウサギを2匹撃ってたと証言するように言いました。

アーロンは家に駆けつけた警察官に、ルークが作ったアリバイを話しました。しかしアーロンたちのアリバイを信じていないグラントは、仲間たちとともに深夜に彼の家を襲撃。先ほどのように子牛の死体を置いていったのです。

アーロン親子は町民たちの嫌がらせに耐えかね、エリーの葬式の前に町を出ることに。マルとグラントは彼らの車を尾行しました。

それに気づいたアーロンの父親は車を止め、マルと激しく口論しました。マルたちの車を追い払った後、車に戻ったアーロンの父親は本当のことを言えと息子にいいました。ですが最後まで自分を庇ってくれた父に、アーロンは本当のことを言えませんでした。

町の監視カメラをチェックしたアーロンは、事件当日、ジェイミーが薬局の前を車で通る姿を目撃しました。

アーロンがその薬局まで行くと、グラントとその仲間が乗った3台の車が猛スピードでその横を通過。危うく轢かれかけたアーロンは、グラントの後を追って町のパブへ行くと、彼はパブにいたジェイミーに殴りかかっていました。

アーロンは仲裁に入り、2人の喧嘩に巻き込まれたホイットラムを救出。グラントに話を聞きます。するとパブの店員が「自分がカレンたちを殺した犯人だと疑われたのは、土地を買うという噂をジェイミーが流したから」と、グラントがジェイミーを襲った理由を話してくれました。

それを聞いたアーロンは「疑われるのがそんなに嫌なら、カレンがお前の名前をなぜ書いたのか説明すればいい」と言うも、グラントに「知るかよ」と言われてしまいました。

アーロンはとりあえず、重傷を負ったジェイミーを薬局へ連れていきました。ジェイミーの治療後、アーロンは薬局の店員ドクに、事件当日に彼の車がここを通った映像があると話した上で真実を話すようにいいます。

ドクの話によると事件当日、彼は午後4時まで医院を開けていました。するとジェイミーから連絡があり、ドクは彼を薬局に呼びました。そしていつものようにビールを飲みながら話をして、ベッドに行きました。

ジェイミーはこの事実を隠すために、アーロンたちに嘘をついて捜査を妨害したのです。

翌日。アーロンはルークたちの墓参りをしに行きました。そして、葬式にも出ず埋葬することもできなかったエリーの墓も見ました。アーロンがエリーの墓に触れたその時、マルが現れました。マルは毎週、愛娘の墓を掃除しに来ていたのです。

マルはアーロンに、彼の父親が「捜査が終わるまで手を出すなと町民に言ってくれ」と頼みにきたことを明かしました。

場面転換、現在。アーロンはグレッチェンに会いに行きました。グレッチェンの自宅から、カレンの筆跡がある学校用の資金の申請書が見つかりました。書類仕事が苦手な彼女は、同僚だったカレンに代筆してもらっていたといいます。

友達の家にお泊り会をする息子のラキーを見送った後、グレッチェンはアーロンを家にあげ、2人でアルバムを見ました。アルバムの中にあるエリーと、グレッチェンにキスをされているルークの写真を見た2人は、惹かれ合うようにキスをしました。

その時、家が恋しくなったラキーから電話がかかってきました。グレッチェンは席を外し、息子とママ友のアンドレアと電話で話をしました。その間、アルバムを1人眺めていたアーロンは、2010年4月24日に生まれたラキーを抱っこするルークの写真に目を留めました。

アーロンは電話を終えて戻ってきたグレッチェンに、ルークと不倫していたのかと問い詰めます。グレッチェンはこれを否定するものの、ラギーの父親が誰なのかも答えようとしません。

怒ったグレッチェンに家を追い出され、宿泊先のパプ付きホテルに戻ってきたアーロンは、自分の帰りを待っていたグレッグに呼び止められました。

グレッグは険しい顔つきで「解決した事件を非番警官が探っていると本署で噂になっている」と言い、アーロンが再捜査する目的は何かと尋ねます。アーロンは「エリーが死んだ事件と今回の事件は関係がある。その容疑者を捜しているから少し時間をくれ」と答えました。

しかしグレッグには信じてもらえず「新人だからと言って君を頼ったのが大間違いだった」「このままじゃ町で働けないから、もう帰ってくれ」と言われてしまいました。

翌朝。アーロンはグレッチェンの家の鍵が開いていることをいいことに、家に忍び込み、彼女が寝ている隙に昨日見た申請書を持ち出します。

申請書の中身を確認した結果、カレンがレシートの裏に書いたのはグラントの名前ではなく、クロスリー教育信託に申請していた「補助金(グラント)」のことだったことが判明。

カレンはグラントではなく、学校教育の補助金で悩んでいたのです。アーロンはすぐにこのことをグレッグに知らせに行きました。

アーロンは、補助金で悩んでいたカレンが「何か」を見つけルークに話し、彼が新聞記事を見せて自分への相談を勧めたのだろうと推理。そして問題の「何か」は、ホイットラムが毎晩パブに通うほどスロットにはまっていたことであり、カレンは彼にそれを問い質したのだと考えます。

監視カメラの映像にホイットラムの車や、彼が車を運転している姿が映っていないのは、彼が自転車で通勤しているためでした。


(C)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia

アーロンたちはパトカーに乗り、学校へと急行。その道中、クロスリー教育信託に連絡して確認し、すでに申請書は承認され7万ドルの補助金が送金されていることを知ります。つまりホイットラムは、スロットのために7万ドルを横領し、その事実を隠すために3人を殺したということです。

アーロンたちが学校に到着する前に、クロスリー教育信託から連絡があったと女性教師から知らせを受けたホイットラムは、授業中の娘を置いて倉庫へと逃走。

アーロンたちは、ホイットラムの娘がいる教室の窓から彼の姿を確認。急いで追いかけるも倉庫の中に彼の姿はなく、代わりにレミントンの銃を見つけました。

学校近くの森に逃げ込んだホイットラムは、もう逃げられないと悟ってか、追いかけてきたアーロンたちの前にガソリンタンクを持って現れます。

そして持っていたライターに火をつけ、自分の足元にガソリンを垂らしました。焼身自殺を図るホイットラムに、アーロンたちは必死に説得しました。

するとホイットラムは「全部家族のためにやった。ここに逃げてきたが、借金の取り立てに見つかってしまった」と犯行の動機を語り始めます。

「奴らは私に釘打ち機を持たせ、これで娘を撃つと脅してきた。さらに肉切り包丁で喉を切り裂くと……仕方なかった」「ビリーはいないはずだった」

そう涙ながらに語ったホイットラムは、頭からガソリンを被り、焼身自殺を図りました。それを止めようと駆け寄るアーロンたちの姿を見ながら、ホイットラムはルークたちを殺害したことを思い出します。

事件当日。ホイットラムは自転車が故障して立ち往生したフリをして、ルークの車を止め、自転車を車の荷台に積み込んだ彼を背後から襲撃。さらに湖へと逃げる彼をレミントンの銃を持って追いかけ、自殺を装って射殺しました。

そしてルークを殺した銃を持って、ホイットラムは彼の自宅を襲撃。玄関先でカレンを射殺し、それを目撃したビリーを口封じのためにやむを得ず殺しました。ですがホイットラムは一瞥しただけで、母と兄を殺され泣き叫ぶ赤ん坊を殺しはしませんでした。

その後、アーロンは両腕に、グレッグは全身に酷い火傷を負い、病院に搬送されました。

意識を取り戻したアーロンは、グレッグの妊娠中の妻リタから、ホイットラムは見分けがつかないほどの火傷を負ったものの生きており、メルボルンの病院にいることを教えてもらいました。

後日。退院してホテルを出たアーロンに、グレッチェンはずっと言えなかったことがあると言いました。

実は事件当日、グレッチェンは川に向かうエリーの姿を目撃していたのです。しかしグレッチェンはエリーに声をかけず、一緒にいたルークとそのまま帰りました。だからルークも自分も嘘をついたのだと言い、グレッチェンはアーロンにキスをして立ち去りました。

退院後、アーロンは湖の岩場に向かい、エリーに別れを告げました。その時、岩の隙間にエリーのリュックがあるのを見つけました。中にはエリーがよく被っていた帽子と服と財布、仲良し4人組が映った写真を挟んだ日記が入っていました。

「あいつに初めて母の名で呼ばれ、“私の名前はエリーよ”と叫ぼうとした」「しかしあいつは私から名前を奪い、拳で強烈な一撃を食らわせた」「何も感じなかった。血の味もせず動けず、泣くこともできない」「気温4度で体が凍える」

「母もあいつを憎み、家から逃げ出した」「母は“迎えにくる”と私に言っていたが、それは嘘だった。今度は私が逃げ出す番だ」

「“あの女を見つけたら殺す。お前も逃げたら殺す”と言われた」「殺してみるがいい。その時私はとっくのとうに町を出て、別の名前ではるか彼方の別の家にいる」

「さよなら、エリー・ディーコン。新たな人生の時だ」

エリーはリュックを岩の隙間に隠してから、アーロンが待つ川へ向かいました。しかしアーロンに声をかけず、ただじっと彼を見つめ、川を離れました。

しかし岩までの道中、エリーが逃げ出したことを知ったマルと遭遇してしまいます。マルは溺死に見せかけて、娘を殺していた……真実を知ったアーロンは、彼女の遺品であるリュックを背負い、その場から静かに立ち去りました。

映画『渇きと偽り』の感想と評価


(C)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia

過去の事件の殺人犯ではないかと疑われ、帰郷した今も昔もグラントたち町民から迫害されている主人公アーロン。彼は友人ルークが起こしたとされる事件の真相を知るべく、たとえ誰に何と言われようと、ひどい嫌がらせを受けても自分を奮い立たせ、事件の再捜査を行いました。

アーロンの視点で、彼とともに謎解きをしていくのはサスペンス映画ならではの醍醐味を味わえてとても面白いです。

しかもグラントの容疑が晴れないまま迎えた物語の後半、容疑者候補が次々と登場。なんと、作中でアーロンに味方してくれていたグレッチェンとホイットラムが容疑者候補に挙がったのです。

グレッチェンは作中、ルークと不倫関係にあったと明言していません。ですがアーロンとの別れ際、「私は彼の一番になれなかった」と話しています。

結局グレッチェンは犯人ではありませんでしたが、友人を2人も亡くしたアーロンにとって、ずっと嘘をついていた彼女を疑うことは精神的にくるものがあったのではないかと考えると胸が苦しいです。

そして事件の真犯人であったホイットラム。ルークとカレンを殺したのは自分が借金のために横領したことを知ったからでしたが、自分の学校の生徒であったビリーを殺すつもりはありませんでした。

しかもホイットラムも娘を持つ父親でもあったため、ビリーを手にかけたことを最後までとても後悔していました。

そのホイットラムを捕まえる前に、彼がアーロンたちの目の前で焼身自殺をしようとした場面も、彼の回想によって明らかとなった事件の真相もとても衝撃的な展開でした。

まとめ


(C)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia

好きな人と大事な友を亡くした連邦警察官が、彼らの死の真相を暴くため、数十年も隔てた2つの事件を捜査していく、オーストラリアのクライムサスペンス作品でした。

物語の終盤、アーロンとともに捜査していたグレッグが噂を聞いて言い合いになった時は、もうアーロンの味方は誰もいなくなってしまったのかとハラハラします。

ですがアーロンが事件の真犯人がホイットラムであると突き止めたことで、アーロンとグレッグのコンビが復活。2人で事件を無事解決し、アーロンが町民からもう白い目で見られることはないのだと視聴者も喜ばしい結末を迎えることができました。

ところが、アーロンは最後の最後で、当時好き合っていたエリーの衝撃的な死の真相を知り、あまりの悲しみと怒りに襲われる羽目に………。

エリーの遺品である彼女の日記に、父親から虐待を受けていたこと、母親も自分も殺すと言ってきた父親から逃げて新しい人生を始めようと決心したこと、本当はエリーも川に向かっていたことが記されていたのです。

エリーがマルに見つかって殺されてしまったのは、彼女は日記が入ったリュックを隠した岩までの道中に起きたことなので、おそらく物語の最後に描かれたマルの回想ではないかと考えられます。

アーロンは、エリーが無事に逃げ延びることができず死んでしまったことから、マルに殺されたのだと悟ったのでしょう。

原作小説に惚れ込んだエリック・バナがその小説の主人公を熱演する、ハラハラドキドキのクライムサスペンス映画が観たい人にとてもオススメな作品です。

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