Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2020/05/02
Update

実話映画『オフィシャル・シークレット』あらすじと感想レビュー。キーラナイトレイの代表作に相応しい“英米政府を揺るがせた告発事件”

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『オフィシャル・シークレット』は2020年8月28日(金)より全国ロードショー!

イラク戦争勃発の引き金にまつわる疑惑の中で、人々を救うべく立ち上がった一人の女性がいました…

イラク戦争開戦のきっかけをめぐり、違法行為を知った一人の女性が立ち上がったさまを描いたサスペンス『オフィシャル・シークレット』。

『ツォツィ』『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』などを手掛けたギャヴィン・フッド監督が作品を手掛けます。

またキャストにはキーラ・ナイトレイを中心にマット・スミス、マシュー・グード、レイフ・ファインズらが名を連ねています。

スポンサーリンク

映画『オフィシャル・シークレット』の作品情報


Photo by: Nick Wall (C) Official Secrets Holdings, LLC

【日本公開】
2020年(イギリス映画)

【原題】
OFFICIAL SECRETS

【監督・脚本・製作総指揮】
ギャヴィン・フッド

【脚本】
サラ・バーンスタイン、グレゴリー・バーンスタイン

【キャスト】
キーラ・ナイトレイ、マット・スミス、マシュー・グード、リス・エヴァンス、アダム・バクリ、レイフ・ファインズ、コンリース・ヒル、インディラ・ヴァルマ、ジェレミー・ノーサム、ジョン・ヘファーナン、マイアンナ・バーリング、ハティ・モラハン

【作品概要】
イラク戦争をめぐるアメリカの違法工作活動を知ったイギリス諜報(ちょうほう)機関所属の女性が、その告発に乗り出す実話の事件「キャサリン・ガン事件」をもとに映画化したサスペンス。作品を手掛けたのは『ツォツィ』『エンダーのゲーム 』『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』などを手掛けたギャヴィン・フッド監督。

ヒロインのキャサリン・ガン役には『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などのキーラ・ナイトレイ、事件を暴露する記者マーティン・ブライト役にドラマシリーズ「ドクター・フー」などのマット・スミスのほか、マシュー・グード、レイフ・ファインズらが出演しています。

映画『オフィシャル・シークレット』のあらすじ


Photo by: Nick Wall (C) Official Secrets Holdings, LLC

2003年、イラク戦争開戦の気運が高まる中でイギリスの諜報機関であるGCHQ(政府通信本部)で働くキャサリン・ガンは、ある日アメリカの諜報機関NSA(国家安全保障局)からの一斉メールを受け取りました。

それはイラクへの攻撃を推し進めるための証拠取得を目的にした、違法な盗聴の要請。その依頼に危機を感じた彼女は告発を決意し、古い同僚を頼ってその内容をリークします。

そしてその告発はイギリスのオブザーバー紙の記者マーティン・ブライトによって記事になり、世論に大きな物議を醸します。

しかしその内容をエセ記事だと告発を妨害するものがあらわれ、GCHQ内部では、執拗な告発者探しが始まったのだが…。

スポンサーリンク

映画『オフィシャル・シークレット』の感想と評価

実話の衝撃性から見えてくる平和への願い


Photo by: Nick Wall (C) Official Secrets Holdings, LLC

実話をもとに描いた作品だけに、世界的な緊張が高まる現在の空気感につながる雰囲気も感じられる、非常にショッキングな作品。

この作風からはギャヴィン・フッド監督がこのような世界の動き、特にイギリスという国を舞台とした事件に敏感であることがわかります。

フッド監督は2015年に『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』を発表。そして本作を手掛けるに至りました。前作と本作は、第三世界との関係とその間で起きた事件に対しての経緯を描いた物語で、第三主義的な存在に対する資本主義国の在り方を問う辛辣なテーマが描かれている点で共通した内容が描かれています。


Photo by: Nick Wall (C) Official Secrets Holdings, LLC

一方、前作品がその第三社会での行動に対しての議論に注視していたのに対し、本作の物語では対照的に行動を起こす本人を中心とした物語の展開となっています。

全く違う視点での作品でありますが、多角的な視点でつながりの感じられるテーマを取り上げたことでギャヴィン監督自身の関心、思想を作品の中で明確に提示しています。

そして本作で強く提示されているのは「正義とは争いの中に存在しない。人を救うことが正義」という根本であります。キャサリン・ガン事件の真相として、この映画のポイントでもあるイラク戦争勃発の正当性については、実際のところ現在も結論付けられていません。

この作品は、そんな点よりむしろ国際関係という世界の出来事に対して、ひとりの一般人が社会的地位を失うというリスクを負いながら正義を貫く姿を描いていることが、本作の重要なポイントとなります。


Photo by: Nick Wall (C) Official Secrets Holdings, LLC

キャサリンの行動がなければ、果たして世界はどうなっていたのか。結果的にイラク戦争は起きてしまいましたが「キャサリン・ガン事件」が世界で大きな物議を醸したように、彼女の行動は非常に大事な行為でありました。

そしてそのストーリーを、キーラ・ナイトレイが見事に演じきりました。あくまで普通の女性に見せるために、ナイトレイはキャサリンを司法に追われ不安にまみれた女性として演じました。

もし毅然とした勇敢な女性のイメージであると、この作品のメッセージ自体が異なるものになってしまい、そこで、ナイトレイの描いたこのイメージにより、物語のメッセージ性は一段と高まっていまるのです。

また大学では法律と経済の学位をとり、弁護士事務所で働いた経験もあるフッド監督だけに、細かい法規などの裏付けと物語の流れのよさもスムーズであり、法廷サスペンスの難しさを実感することなくストレートに映画の主題を感じ取ることができるが本作の魅力です。

まとめ


Photo by: Nick Wall (C) Official Secrets Holdings, LLC

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』では、とある爆弾テロ犯人への攻撃に際して第三世界の人間を巻き込む確率をめぐって物語が展開し、結果的に犯人への攻撃は実行され現地の一般人が巻き込まれるという悲惨な結果で物語が幕を閉じます。

そのエンディングでは、犯人攻撃に巻き込まれた一人の少女が病院に連れ込まれ、治療の甲斐なく亡くなります。この作品では少女が死んだかどうかを明確にしないまま映画を終わらせる、という流れでも物語は成立したかのように見えます。

しかしそこを敢えてこの終わり方にしたのは、物語が物事の真偽を問うものでありながら、その裏でフッド監督の信念を明確に示しているようであります。

本作『オフィシャル・シークレット』のエンディングも、フィクション的な要素を感じさせながらもそういった意思を演出に込め、作品の存在価値を高めるものとなっており、歴史上の一つの事件を一般の人にも遠い存在ではないものとしています。

映画『オフィシャル・シークレット』は2020年8月28日(金)より全国公開されます!

関連記事

サスペンス映画

平山夢明『ダイナー』小説ネタバレあらすじ。映画化Dinerのキャスト予想は?

2019年7月5日(金)公開、蜷川実花監督・藤原竜也主演の映画『Diner ダイナー』 映画『Diner ダイナー』の原作は平山夢明の小説『ダイナー』です。 文庫にして500ページを超える、凄惨でブラ …

サスペンス映画

映画『鵞鳥湖の夜』ネタバレ結末の解説と内容考察。ラストの心象がシスターフッドという意外性も相まって忘れがたい秀作

『鵞鳥湖の夜』は2020年9月25日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほかにて公開! 『薄氷の殺人』(2014)でベルリン国際映画祭金熊賞、銀熊賞(男優賞)をダブル受賞した中 …

サスペンス映画

映画『スプリット』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

女子高生3人vs “23+1人”の攻防?! M・ナイト・シャマラン史上最も衝撃的なラストが待ち受ける『スプリット』をご紹介します。 スポンサーリンク CONTENTS映画『スプリット』の作品情報映画『 …

サスペンス映画

映画『マザーレス・ブルックリン』あらすじネタバレと感想。エドワードノートンが原作の設定を1950年代に置き換えて描いたノワール

恩人はなぜ殺されたのか? 真相を追う探偵の前に現れた巨大な敵とは!? エドワード・ノートンが監督・製作・脚本・主演を務めた映画『マザーレス・ブルックリン』。 フルース・ウィリス、ウィレム・デフォー、ア …

サスペンス映画

映画『ホムンクルス』ネタバレ感想と評価レビュー。カルト的な漫画原作を実写化に挑んだ清水崇監督の代表作!

山本英夫の同名漫画を綾野剛主演で清水崇監督が実写映画化『ホムンクルス』。 記憶と感情を失った男が「ホムンクルス」と呼ばれる存在が見えるようになり、自身の過去と対峙する事になるサイコミステリー『ホムンク …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学