Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2021/01/13
Update

映画『スワロウSwallow』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。ヘイリーベネット演じる“抑圧された女性の解放”を描く

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

ヘイリー・ベネット主演のスリラー映画『Swallow スワロウ』

一見完璧な生活を送っているかのように見える主婦・ハンターが“異物を飲み込む”ことで自分を取り戻していこうとする美しくもショッキングなスリラー映画『Swallow スワロウ』。

主演と製作総指揮をヘイリー・ベネットが務め、異物を飲み込み、精神が不安定なハンターを圧巻の演技で演じます。また印象的な色使いで無機質なハンターの日常、少しずつ常軌を逸脱していく危うげなハンターの様子を映し出します。

美しくもショッキングでありながら、一人の女性の置かれた状況とその闘いを浮き彫りにするスリラーの枠にとどまらない異色作です。

スポンサーリンク

映画『Swallow スワロウ』の作品情報


(C) 2019 by Swallow the Movie LLC. All rights reserved.

【日本公開】
2021年(アメリカ・フランス合作映画)

【原題】
Swallow

【監督・脚本】
カーロ・ミラベラ=デイビス

【キャスト】
ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザベス・マーベル、デビッド・ラッシュ、デニス・オヘア

【作品概要】
監督を務めるのは本作が初監督作となったカーロ・ミラベラ=デイビス。自身の祖母が強迫性障害により手洗いを繰り返すようになったというエピソードから本作を思いたったといます。

主演ハンター役には『ガール・オン・ザ・トレイン』(2016)、『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』(2020)のヘイリー・ベネット。夫のリッチー役には『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017)、『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015)のオースティン・ストウェルが務めます。

映画『Swallow スワロウ』あらすじとネタバレ


(C) 2019 by Swallow the Movie LLC. All rights reserved.

美しいニューヨーク郊外の邸宅に引っ越し、完璧な夫リッチー(オースティン・ストウェル)と共に新生活をスタートさせ、誰もが羨む生活を送っているかのように見えるハンター(ヘイリー・ベネット)。

新居の飾りつけをどうしようかと夫に相談しても君の好きなようにしたら良いと相手にしてもらえません。更に、食事を準備し、着飾って仕事から帰宅した夫を出迎えても食事中も携帯を手放さずハンターと話をしようともしません。

夫の望む完璧な妻であることに固執し、抑圧されたハンターの日常はあまりにも無機質で窮屈なものでした。夫の両親やその家族らの集まりでは将来有望な夫に期待をかけ、ハンターは幸せだと周りから言われます。

仕事の話など家族の参加できないハンターは窮屈さを感じています。そんな時、ハンターの目に止まったのはキラキラと輝く氷でした。無性に氷を口に入れたくなったハンターは衝動を抑えきれずコップから氷を取り出し口に入れます。

ある日、ハンターの妊娠がわかります。夫をはじめ、義父母は大いに喜びます。義母から、自分が妊娠した時に読んだ本を渡され、複雑な表情を浮かべるハンター。

妊娠後、いつものように家事を行っていたハンターは小物入れのなかに入っていたガラス玉が気になります。そして、手に取りおもむろに口の中に入れ、恍惚の表情を浮かべたかと思うと飲み込んでしまいます。

異物を飲み込むということに得もしれぬ快感を覚えたのです。

排泄物と共に出てきたガラス玉をハンターは取り出し、洗って保管します。痛みと共に不思議な快感を得たハンターは衝動を抑えきれず、画鋲を口に入れ飲み込んでしまい、激痛がハンターを襲います。

それでも衝動を抑えきれないハンターの行動は次第にエスカレートしていき、金属片や電池など危険物まで飲み込むようになり、義母からもらった本も破って食べてしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『Swallow スワロウ』ネタバレ・結末の記載がございます。『Swallow スワロウ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク

エスカレートし、様々な異物を飲み込んでしまう衝動を抑えきれないハンターは、とうとう産院の検診でお腹に異物が入っていることが発覚し、夫たちにバレてしまいます。急遽手術をし、お腹の中の異物を取り出されたハンター。

夫は激怒し、何を考えているのか、そういう精神疾患等があるなら結婚する前に言ってくれとハンターを責めます。ハンターは初めてのことで自分が分からないと困惑しています。

夫と義父母は「私はもう大丈夫」というハンターを押し切り、精神科医に通うことを薦め、看護士にハンターを監視させます。更に窮屈さをました日常生活にハンターは徐々に壊れていきます。

ある日のカウンセラーのことでした。ハンターは突然自身の過去の話を子供のような無邪気さで話し始めたのです。

ハンターの話によると、ハンターの母親は若い頃に強かんされ、その時に出来た子供がハンターだというのです。その後、強かん
した男は逮捕されたといいます。

母親をはじめ、育ての父親や父親違いの姉妹とも仲がよく何も問題ないというハンターでしたが、カウンセラーはハンターの育ちが異物を飲み込む行為と関わりがあるのではないかと考え、ハンターの夫に電話します。

ハンターは夫に知られたことに気づき戸惑い、看護士の目を盗んでまたしても危険なものを飲み込んでしまいます。途中で引っ掛かり呼吸困難になっていたところを看護士が見つけ病院に搬送されます。

退院し、自宅に戻ってきたハンターに夫と義父母は出産するまで、施設に入ることを強く薦め、入らないのなら離婚だと突き詰めます。観念したハンターでしたが、抑圧された彼女を不憫に思っていた看護士の助けもありハンターは家を抜け出します。

逃げられたことを知った夫は怒り狂います。何も出来ないハンターに全て与えたというのに恩を仇で返すのかと怒る夫にもう戻らないことを告げ、ハンターはモーテルに逃げ込みます。

呆然とモーテルの中でポケットに詰め込んだ土を食べ、眠りにつきます。行くあてのないハンターは実家に電話をしますが、母親に妹の子供が来ていて泊まる場所はないと言われてしまいます。

そして向かったのは、何と母親を強かんした、ハンターの実の父親の家でした。

過去を捨て去り、幸せな家庭を築いていた父親は戸惑い何をしにきたと告げます。ハンターは男を責めると同時に自分自身が抱いていた恐怖やトラウマ、罪悪感と向き合おうとします。

男の家をあとにしたハンターは病院に向い、その後ショッピングモールで食事をし、薬を飲み、トイレに向かいます。トイレから出てきたのは心なしかスッキリした顔のハンターでした。

スポンサーリンク

映画『Swallow スワロウ』感想と評価


(C) 2019 by Swallow the Movie LLC. All rights reserved.

夫のために家を綺麗にし、料理を作り、美しく着飾るだけのハンターは妻というより、夫のアクセサリーのような存在です。

義母がハンターに、リッチーの好みはロングよ、髪を伸ばしたらという言葉や、あなたは幸せなの?それとも幸せなふりをしているだけなの、といった言葉が突き刺さります。

成功者である夫とその両親は、容姿が綺麗で自分たちにとって都合のいい完璧な妻を求めます。

もちろんハンターも精一杯完璧な妻を演じようとします。夫の気に入らない部屋の飾りつけをしないように、夫に愛される妻でいつづけようと着飾ったりします。

そう努力する一方で、夫とその両親の会話にも入れない、ハンター自身には何一つ興味を示さない、そんな孤独に襲われ心を蝕んでいきます。無機質なハンターの日常を美しく冷たい新居や色彩が更に際立たせ、その中に潜む不穏を演出します

何かに導かれるようにガラス玉を手に取り、口に含んだハンターの表情は恍惚としていて美しく、あまりの美しさに恐怖を覚えるほどです。

カウンセラーに異物を口に入れた時の気分を聞かれたハンターは口に含んだ時の感触が好きだと言います。金属などのひんやりした感触が特に好きだと。ハンターは異物を飲み込むことで完璧な妻であろうとするプレッシャーや、不安から解放され安心を得ようとしていたのかもしれません。

ハンターが壊れてしまった原因、抱えているものに気づかないどころか、寄り添い向かい合おうともせず、もともと彼女一人の原因としか見ない夫とその両親。更にプレッシャーがかかりハンターの病状は悪化していきます。

唯一そんなハンターの心に気づき、寄り添おうとしたのは看護士でした。夫に自分の過去が知られ戸惑いベッドの下に潜り込んだハンターの肩を撫で、ここは安全だから大丈夫だとハンターをなだめます。

ハンターを蝕んでいるのは現在置かれている状況だけではありませんでした。それがハンター自身の口から明らかになった、ハンターは母親がレイプされ出来た子であるという事実です。

ハンターは本人も気づかぬうちに自分の出自から罪悪感のようなものを抱き、人に嫌われないために人を喜ばせよう、求められる人になろうとし続けていたのかもしれません。

後半ハンターは母親をレイプした男の家に向かいます。そして、ハンターは男とは違うと、はっきり言うように男に告げるのです。

それは自分自身に言い聞かせても拭えなかったハンターが自分自身に植え付けていた潜在的な罪悪感からの解放だったのかもしれません。

ハンターは最後、お腹の子供を堕ろし、生まれ持って抱えていた罪悪感、そして完璧な妻としての抑圧から解放されたのです。

異物を飲み込むと言うショッキングなスリラーでありながら、その奥にあるのは抑圧された女性の解放です。

本人も気づかぬうちに刷り込まれた“完璧な妻”という虚像。求められた姿でいないと捨てられてしまうかもしれないという不安。そういった虚像に固執し、知らないうちに精神を蝕んでしまうハンターの姿は他人事ではないかもしれません。

まとめ

異物を飲み込むことで抑圧され、求められる“完璧な妻”であろうとする不安などから解放され安心を得ようとする女性を描いた映画『Swallow スワロウ』。

抑圧された女性が解放されていくというシリアスなテーマながらどこか美しく恐ろしいスリラーに仕上がっています。そんな本作を印象的に魅せるのは何と言ってもハンター演じるヘイリー・ベネットの美しく危なげな演技でしょう。

異物を飲み込んだハンターの恍惚の表情、私は大丈夫と言いながら危なげな様子は見るものを惹きつけるでしょう。

関連記事

サスペンス映画

映画『シャドウ・イン・クラウド』あらすじ感想と評価解説。クロエ・グレース・モレッツ最新作は“グレムリンとの爆撃機の戦い”というサスペンスアクション!

映画『シャドウ・イン・クラウド』は2022年4月1日(金)新宿ピカデリー他全国順次ロードショー。 『キックアス』のクロエ・グレース・モレッツが、2500メートル上空の爆撃機でグレムリンと格闘するサスペ …

サスペンス映画

映画『追跡者』ネタバレあらすじ結末との感想評価。キャストのトミーリージョーンズが逃げた事件の犯人を追う!

サスペンス映画『追跡者』は『逃亡者』のスピンオフ作品! スチュアート・ベアードが監督を務めた、1998年製作のアメリカのサスペンス映画『追跡者』。 ニューヨークで起きた殺人事件の犯人として緊急逮捕され …

サスペンス映画

映画『鳩の撃退法』キャスト藤原竜也。津田伸一という天才作家が3つの意味深な鍵を握る

映画『鳩の撃退法』は、2021年8月27日(金)全国公開予定 直木賞作家佐藤正午の小説『鳩の撃退法』が映画化され、2021年8月27日(金)より公開予定です。 映画『鳩の撃退法』は、藤原竜也、土屋太鳳 …

サスペンス映画

『マスカレードホテル』あらすじと内容解説。原作者と映画監督のプロフィール紹介も

映画『マスカレード・ホテル』は、1月18日(金)より全国ロードショー! 東野圭吾の人気作品群「マスカレード」シリーズ。累計310万部を売り上げるこのシリーズの第一作『マスカレード・ホテル』がついに実写 …

サスペンス映画

映画『スリービルボード』ネタバレ感想考察とあらすじ結末解説。真犯人は誰?ラスト“その後の選択”を観る者に託した意味とは

三枚の広告看板(ビルボード)が、人々の憎悪を剥き出しにした…… 憎しみの連鎖とその顛末を描いた衝撃作。 辱められたのち焼き殺された娘。犯人を捕まえられない警察への不信から「三枚の広告看板」を立てた母親 …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学