真の黒幕・古賀勝利が再会した“革命”とは?
1975年に公開された高倉健主演の名作パニック・サスペンス映画を、『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督が現代に置き換えて新たに映画化した『新幹線大爆破』(2025)。
本作の主人公となる新幹線車掌・高市和也役の草彅剛をはじめ、錚々たるキャスト陣が出演。JR東日本の特別協力のもと、実際の新幹線車両や施設を使用した撮影が実現した作品です。
本記事では映画『新幹線大爆破』(2025)の新幹線爆破テロの犯人・柚月の協力者であり、同事件の“真犯人”にして黒幕というべき存在・古賀勝利を、映画本編のネタバレ言及を交えながら考察・解説。
「柚月への同情」「柚月の父・勉への復讐」という理由の先にある、自身の父・古賀勝と柚月に共通する“革命”の姿を探っていきます。
CONTENTS
映画『新幹線大爆破』(2025)の作品情報

Netflixで2025年4月23日より世界独占配信
【配信】
2025年(日本映画)
【原作】
東映映画『新幹線大爆破』(1975)
【原作映画・監督】
佐藤純彌
【原作映画・脚本】
小野竜之助、佐藤純彌
【監督】
樋口真嗣
【脚本】
中川和博、大庭功睦
【キャスト】
草彅剛、細田佳央太、のん、要潤、尾野真千子、豊嶋花、黒田大輔、松尾諭、大後寿々花、大原優乃、大場泰正、岩谷健司、田村健太郎、今野浩喜、西野恵未、前田愛、中島瑠菜、屋敷紘子、高柳良一、森達也、田中要次、尾上松也、六平直政、ピエール瀧、坂東彌十郎、斎藤工
【作品概要】
高倉健主演の名作パニック・サスペンス映画『新幹線大爆破』(1975)の『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督によるリブート作品。
本作の主人公となる新幹線車掌・高市和也を草彅剛が演じ、細田佳央太、のん、尾野真千子、要潤、豊嶋花、斎藤工ら豪華キャストが集結。JR東日本の特別協力のもと、実際の新幹線車両や施設を使用した撮影が実現した。
映画『新幹線大爆破』(2025)のあらすじ

Netflixで2025年4月23日より世界独占配信
新青森駅から東京駅へ向けて、定刻通りに出発した新幹線「はやぶさ60号」。
しかしJR東日本新幹線総合指令所に、1本の電話が入る。それは「はやぶさ60号に爆弾が仕掛けられ、新幹線の速度が時速100kmを下回ると即座に爆発する」という緊急事態の報せだった。
犯人は、爆弾を解除する代わりに身代金として1000億円を要求。
限られた時間の中、様々な窮地と混乱に直面するはやぶさ60号。同車両の車掌・高市をはじめ、爆破を回避すべく奮闘する鉄道人たちのギリギリの攻防が繰り広げられていく……。
映画『新幹線大爆破』(2025)の感想と評価

Netflixで2025年4月23日より世界独占配信
古賀勝の息子・勝利が協力した“真の理由”
ネット上では「リメイク作品」として検索されていることが多いものの、実際には「1975年公開の映画『新幹線大爆破』の続編というべきリブート作品」にあたるNetflix映画『新幹線大爆破』(2025)。
2025年版の映画作中で発生した、新幹線「はやぶさ9号」での爆弾テロ事件。1975年版で描かれた新幹線爆弾テロ事件「ひかり109号事件(109号事案)」の犯行内容に酷似した同事件の犯人は、修学旅行生として乗車していた高校生・柚月でした。
しかし「柚月の単独犯による犯行は困難」という可能性を経て、柚月の犯行の背後には、爆弾製造を担った発破技士・古賀勝利がいることが判明。さらに勝利は「ひかり109号事件」の犯人の一人・古賀勝の実子だと明かされるという思いがけない展開が待ち受けていました。
柚月を長年苦しめていた彼女の父・勉が「自身の父・勝の爆弾での自決後、自決を隠蔽しようとした上層部に“テロリストを射殺した英雄”に仕立て上げられた元警察官」であるのを知った上で、柚月の犯行に協力した勝利。
事件を捜査していた警視庁警部補・捜査一課特殊犯捜査係の川越は「自決したはずの父親の死を汚した」勉への復讐のために柚月を利用したのではと推理しますが、勝利は「下劣なヤツ」と軽蔑の言葉を発しはするものの、あくまでも柚月にとって新幹線が父親への憎しみの象徴だったこと、だからこそ新幹線を狙ったことを語り、復讐という文字を口にはしませんでした。
勝利が柚月の新幹線爆弾テロに協力した理由。そこには柚月の境遇への同情、父・勝の死を侮辱した勉への復讐とは異なる、勝利自身にしか理解できない「父・勝と柚月の“共通の意志”」が秘められているのではないでしょうか。
革命の“絶望と希望”を生きた父・勝

Netflixで2025年4月23日より世界独占配信
1975年版作中にて、新幹線爆弾テロ「ひかり109号事件」の犯行グループの一人として登場した勝利の父・古賀勝。
学生運動に身を投じるも、参加していた過激派グループでの内ゲバによって誰が敵か味方なのかも分からなくなるほどの人間不信に陥り、運動から離脱した“敗北した革命戦士”として描写されています。
「世界を変革できる」という革命の夢の敗北は勝の心に深い傷として刻まれていることは、自身が警察に撃たれ重傷を負い、犯行グループの仲間・大城浩も命を落とした際に計画を断念しようとした犯行グループのリーダー・沖田哲男にぶつけた言葉からもうかがえます。
「俺たちは元々見苦しい、みっともない、どうしようもない生き物だったからこそ、この仕事を始めたんじゃないのか」……その言葉からは、かつて同志であったはずの者同士が殺し合う内ゲバと経験した中で勝が痛感した“人間の本性”も垣間見えます。
一方で、勝は「計画が成功したら何がしたいか」と問われた際に「革命が成功した国に行ってみたい」「もう一度人間への信頼を取り戻せるかもしれない」と答えた点からも、その心中は“絶望”だけではなかったことも想像できます。
父・勝と同じ“革命”を目指す少女

Netflixで2025年4月23日より世界独占配信
本当に苦しんでいるはずの人間が、自身の現実を嘘を吐いてひた隠しにする。そして、周囲の人間たちも苦しんでいる人間の現実を気づかぬフリという嘘でさらに覆い隠す。そんな《嘘の日常》を徹底的に破壊し、誰もが隠蔽してきた《リアルな現実》を暴露する……。
それが、警察上層部の欺瞞の隠蔽により“英雄”へ仕立て上げられ「自分は本当に“英雄”なのだ」という妄想に取り憑かれた父・勉に肉体的・精神的暴力を振るわれ続け、高校の担任・市川にも見てみぬフリをされた柚月の、「父親への復讐」とは別に存在した犯行動機でした。
「『苦しんでいる人々がいる』という現実を欺瞞のもとに隠蔽し、さも平穏な日常があるかのように振る舞う世界の破壊」……少女・柚月のテロリズムを聞かされた時、勝利の脳裏は「革命」という2文字が浮かび上がったのではないでしょうか。
「革命の敗北」という絶望を経験し、あたかも戦争などなかったかのように振る舞う高度経済成長期の日本社会の象徴・新幹線を標的としたテロによって、再び革命への希望が芽生えたものの、最後には自爆を遂げた父・勝。
彼が希望を託した犯行グループのリーダー・沖田も、最後には空港で狙撃隊に撃たれ、父が願った「欺瞞に満ちた戦後日本社会に対する革命の“再挑戦”」は“敗北”に至ったことは、勝利もマスコミ報道を通じて必ず知っているはずです。
革命に殉じた父・勝の死と、死後の革命の敗北。勝利は父の死を「名誉ある死」と認識しながらも、父の念願であった革命自体は敗北に至ったという事実を心に引きずりながら、現在まで生きてきたのかもしれません。
その中で、「革命」という言葉など歴史の教科書でしか知らないのではという年齢の少女にも関わらず、父が目指していた革命を起こそうとしている柚月と出会えた。父が目指していた“革命”と再会できた……。
その時点で勝利は、柚月のテロリズムに協力しない理由は皆無だったでしょう。
まとめ/“生きながらえてしまった”男の人生

Netflixで2025年4月23日より世界独占配信
「同じ革命の道に至った柚月の犯行に協力するほどに、父・勝が目指そうとしていた革命を肯定していた」「発破技士として、父・勝と同じく爆弾製造の技術も有していた」「それなのになぜ、父・勝が目指していた革命を、勝利は自分自身で起こそうと行動しなかったのか」……。
父の革命の中での殉死に敬意を払いながらも、父が亡くなった年齢をとうに過ぎ、老境と呼ばれるまでの年齢まで生きてしまった勝利の心情は、果たしてどのようなものだったのでしょうか。
父・勝の死後、勝利はどのように成長し「父の死は警察官による射殺ではなく、爆弾による自決だった」という世界が隠蔽しようとした真実を知ったのか。「ひかり109号事件の犯人の息子」「爆弾魔の息子」と謗られた経験も、決して一度や二度ではないであろう彼が、なぜ父・勝の死を誇りに感じるようになったのか……。
父を尊敬しながらも、“生きながらえてしまった”男の人生とは。
登場シーン自体はわずかながらも、勝利を演じたピエール滝の一見すると朗らかな、しかし同時に悲哀や後悔も滲み出ている絶妙そのものというべき表情も相まって、数多の想像が生まれ膨らむはずです。
編集長:河合のびプロフィール
1995年生まれ、静岡県出身。2019年に日本映画大学を卒業。映画評を寄稿する一方、映画配給レーベル「Cinemago」宣伝担当として、『ザ・エクソシズム』『Kfc』のキャッチコピー作成なども行う他、『獄舎Z』『トレジャー・アイランド』の字幕監修を手がける。2025年公開のタン・チュイムイ監督・主演作『野蛮人入侵(原題)』では、日本公開版タイトル『私は何度も私になる』を命名した(@youzo_kawai)。

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