Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2021/04/08
Update

映画『ジェントルメン』感想評価と内容レビュー解説。どんでん返しサスペンスで悪党たちの騙し合いを描く

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『ジェントルメン』は2021年5月7日(金)より全国ロードショー。

裏社会の大物として知られるミッキーが引退宣言をした事で、彼が所有する4億ポンド(約500億円)の大麻事業を巡り、悪党たちの騙し合いが始まるクライムサスペンス映画『ジェントルメン』

映画『ジェントルメン』は、2021年5月7日(金)より全国ロードショーとなります。

1998年に『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で、衝撃的な長編映画デビューを果たしたガイ・リッチーが、自身のルーツともいえるロンドンのクライム・ワールドに、20年ぶりに挑んだ本作の魅力をご紹介します。

映画『ジェントルメン』の作品情報


(C)2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

【日本公開】
2021年公開(イギリス・アメリカ合作映画)

【原題】
The Gentlemen

【監督・脚本・原案・製作】
ガイ・リッチー

【キャスト】
マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、ジェレミー・ストロング、コリン・ファレル、エディ・マーサン、ヒュー・グラント

【作品概要】
4億ポンド(約500億円)の大麻事業を巡る、悪党の華麗な騙し合いを描いた、クライムサスペンス。

アラジン』(2019年)や「シャーロック・ホームズ」シリーズで、今や世界的なヒットメーカとなったガイ・リッチーが、20年ぶりに原点回帰とも呼べる作品に挑み、悪党たちの駆け引きをスリリングに描いています。

大麻で財産を築き上げた、裏社会の大物ミッキーを『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013年)でアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演男優賞をダブル受賞するなど、実力派として知られるマシュー・マコノヒー。

チャーリー・ハナムは『キング・アーサー』(2017年)で主演を務めており、『ジェントルメン』で再びガイ・リッチー作品に参加。

重要なキャラクターとなるレイを演じています。

レイに脅しをかける私立探偵のフレッチャーを、ヒュー・グラントが演じる他、コリン・ファレルやエディ・マーサン、ジェレミー・ストロング、ミシェル・ドッカリー、ヘンリー・ゴールディングなど、豪華な俳優陣が出演しています。

映画『ジェントルメン』のあらすじ


(C)2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

長年に渡り、地下で大麻を栽培し、一代で富豪となった裏社会の大物、ミッキー。

そのミッキーが、ユダヤ人富豪のマシューに「大麻ビジネスを4億ポンド(約500億円)で売り、自分は足を洗う」と提案したことから、裏社会に「ミッキー引退宣言」の噂が飛び交います。

年間栽培量50トン、売り上げ2億、収入1億ポンドの巨大な大麻ビジネスを、裏社会の住人は我が物にしようと、狙いを定めます。

世代交代を目論むチャイニーズ・マフィアの若頭ドライ・アイは、引退するミッキーの縄張りを買い叩こうと交渉しますが、ミッキーに軽くあしらわれ、恥をかかされます。

その夜、極秘だったはずのミッキーの大麻農場が、覆面マスクの4人組に襲撃されます。

「トドラーズ」と名乗る4人組は、大麻農場襲撃の様子を、YouTubeにアップし、ミッキーの怒りを買います。

そんな「トドラーズ」に心当たりのある人物が1人。

スラムの不良たちの、指導と更生を目的としたジムを営む「コーチ」と呼ばれる男でした。

コーチは「トドラーズ」が自分のジムの生徒である可能性を考え、罪滅ぼしの為にミッキーの右腕であるレイに近付きます。

大麻農場襲撃の収集を任されていたレイですが、頭の痛い問題がもう1つ。

ミッキーに恨みを持つ、ゴシップ紙の編集長、ビッグ・デイヴに雇われた私立探偵のフレッチャーが、レイに近付いて来たのです。

何やら大きな情報を掴んだ様子のフレッチャーは「このことが公になれば、あんたらの組織は崩壊する」と、レイに2000万ポンドを要求してきました。

さらに、ミッキーが大麻ビジネスを売却しようと考えていた相手のマシューも、実に狡猾な男で、何やら思惑を張り巡らせています。

総額4億ポンドの大麻ビジネスを巡り、悪党たちが入り乱れる抗争が開始されます。

この闘いを制して、最後に笑うのは誰なのでしょうか?

映画『ジェントルメン』感想と評価


(C)2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

ディズニー・アニメの実写版『アラジン』(2019年)やロバート・ダウニーJrの代表作としても知られる「シャーロック・ホームズ」シリーズで、名実共に一流となった監督、ガイ・リッチー

そのガイ・リッチーが、注目を集めたキッカケは、1998年に長編監督デビューを果たした『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』でした。

ロンドンの不良たちとギャングの抗争を、ユーモアたっぷりに描いた『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』は高く評価され、2000年には、ブラッド・ピットやジェイソン・ステイサム、ベニチオ・デル・トロという豪華出演者で『スナッチ』を監督し、大ヒットさせます。

そして20年ぶりに、ガイ・リッチーが原点回帰とも言える、ロンドンのクライム・ワールドに挑んだのが本作『ジェントルメン』です

個性豊かな悪党達の群像劇


(C)2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

ガイ・リッチーのクライムサスペンスは、個性的すぎる登場人物の群像劇であることが特徴です。

『ジェントルメン』では、表向きは紳士的な富豪でありながら、裏では地下で栽培した大麻を流し、大儲けしているミッキーを始め、狡猾なユダヤ人大富豪のマシューや、血気盛んなチャイニーズマフィアのドライ・アイなど、個性的な人物が登場し、全員が大物の悪党です。

ただ、全員が大物の悪党となると「感情移入しにくいのでは?」と感じる人もいるでしょう。

ですが、ガイ・リッチーのクライムサスペンスは、物語を動かすのは常に、悪党の勢力争いに巻き込まれた人達なのです

『ジェントルメン』では、物語の中心にいるのは、ミッキーの忠実な右腕であるレイです。

レイは、ミッキーの周囲で起きる様々なトラブルを秘密裏に処理していますが、一筋縄ではいかないことばかりです。

それでも、ミッキーの期待に応えるべく奮闘するレイの姿に、共感する方も多いのではないでしょうか?

ただでさえ苦労の多いレイに「組織を壊すぐらいのヤバい情報」を持ったフレッチャーが、脅しに現れたことで、物語はこの2人のスリリングな駆け引きを中心に展開されます。

さらに、裏社会の抗争に巻き込まれた一般人として、不良青年達を更生させるジムを経営する、コーチという男も登場します。

コーチは、自分の生徒がミッキーの農場を荒らした責任を取り、レイに協力することになりますが、コーチを演じるコリン・ファレルが、常に思い悩んでいるような、情けない表情で終始演じており、かなり面白いキャラクターになっています

大物から小悪党、さらに一般人まで巻き込んだ、思惑が絡む群像劇、それが、ガイ・リッチーのクライムサスペンスの魅力です。

繋がれていく細かいエピソード


(C)2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

ガイ・リッチーのクライムサスペンスは、個性豊かな登場人物が魅力なのですが、ストーリー展開も独特です。

特徴として、一見すると何の関係も無いエピソードが、どんどん繋がっていき、最後に大きな物語として完成されるという点です。

この作風は、長編デビュー作の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で、すでに完成されていました。

『ジェントルメン』では、レイの組織の重大な情報を掴んだ、フレッチャーの語り口を通して、作品の序盤から、登場人物が次から次へと現れ、目まぐるしく細かいエピソードが展開されていきます

さらに、ガイ・リッチー作品ではお馴染みの手法で、いきなり映像が巻き戻されて、時間軸が遡ったり、一見すると、関係の無い場面が突然挟まれたりする為、混乱する人も出て来ると思います。

ですが、それらはラストで巻き起こる、どんでん返しの伏線だったりするので、作中の情報を取りこぼさないように注視して下さい。

ラストに巻き起こるどんでん返し


(C)2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

『ジェントルメン』では、細かなエピソードが繋がれていき、ラストに向けて大きな物語へと完成されていきます。

そしてラストでは、ガイ・リッチーのクライムサスペンスの見せ場とも言える、とてつもない、どんでん返しが巻き起こります。

これまで、作中で映し出された何気ない場面が、大きな意味を持ったりと、伏線の回収が見事なのですが、それ以上に、目まぐるしく変わる主導権争いが、本作最大の魅力です。

作中に幾多にも張り巡らされた、悪党の罠と裏切りの末、最後に勝利するのは誰なのでしょうか?

まとめ


(C)2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

ガイ・リッチーが原点回帰とも言える、クライムサスペンスに挑んだ映画『ジェントルメン』。

タイトルにもなっている『ジェントルメン』ですが、ガイ・リッチーは「気取った雰囲気を醸し出す、上流階級の人間たち」のことだと語っています。

本作では、ミッキーやマシュー、そしてチャイニーズマフィアのボスである、ジョージ卿を指しています。

彼等は、裏社会でのし上がってきた、いわゆる汚れた人間達ですが、成功し年齢を重ねることで、高級志向に目覚め紳士的な振る舞いをするようになるという、正反対の価値観が交わった人間達です。

また、時代の流れに伴い、絶対的な権力者であるはずのミッキー達は、簡単に身動きが取れなくなってきています。

それは、インターネットが普及したことで、秘密裏に動いた犯罪も、簡単に暴露されてしまう世の中になったからです

もし、20年前であれば、ミッキーの組織を脅しに来たフレッチャーは、簡単に消されていますし、ミッキーの麻薬農園を荒らした「トドラーズ」はすぐに捕まり、脅しをかけられていたでしょう。

『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』の世界であれば、主役は「トドラーズ」側です。

しかし、インターネットで簡単に情報が拡散されてしまう時代になったことで、表向きは紳士的に振る舞いたいミッキー達は、簡単に手出しが出来なくなりました

その時代の空気を反映させた作品が『ジェントルメン』であり、本作はただの原点回帰ではなく、ガイ・リッチーのクライムサスペンスの進化系と言えます

ただ、前述したように「個性的な登場人物」「繋がれていく細かいエピソード」「ラストのどんでん返し」など、お馴染みの手法に加え、ユーモラスな作風は健在ですので、時代を反映させた、新たなガイ・リッチーの世界を、楽しんでみてはいかがでしょうか?

映画『ジェントルメン』は、2021年5月7日(金)より全国ロードショーです。




関連記事

サスペンス映画

映画『十二人の死にたい子どもたち』12番ユキ役は竹内愛紗。演技力とプロフィール紹介

『天地明察』で知られるベストセラー作家の冲方丁(うぶかた・とう)の小説を原作とした映画『十二人の死にたい子どもたち』が2019年1月25日に公開されます。 メガホンをとるのは、『イニシエーション・ラブ …

サスペンス映画

映画『十二人の死にたい子どもたち』6番メイコ役は黒島結菜。演技力とプロフィール紹介

『天地明察』で知られるベストセラー作家の冲方丁(うぶかた・とう)の小説を原作とした映画『十二人の死にたい子どもたち』が2019年1月25日に公開されます。 メガホンをとるのは、『イニシエーション・ラブ …

サスペンス映画

『さよならドビュッシー』ネタバレあらすじ感想と評価解説。《本格ミステリーおすすめ映画》橋本愛が美しいピアノの音色によって再生する少女を演じる

少女の心と本格ピアノ演奏が溶け合う極上ミステリー 「このミステリーがすごい!」第8回大賞を受賞した中山七里の同名小説を、『桐島、部活やめるってよ』(2012)の橋本愛主演で映画化。 自身も俳優として活 …

サスペンス映画

映画『情婦』ネタバレあらすじ結末と感想評価。二転三転の大どんでん返しに驚く魔術師ビリー・ワイルダーが撮ったマレーネ・ディートリッヒの情念こもる名演

大どんでん返しに魅せられる名作 アガサ・クリスティの短編『検察側の証人』を、『サンセット大通り』(1951)『アパートの鍵貸します』(1960)の巨匠ビリー・ワイルダーが映画化したサスペンス。 未亡人 …

サスペンス映画

映画『ファイトクラブ』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【タイラーからオリジナル警告文“WARNING”】

今回取り上げるのは、1999年の公開から約20年以上経った今も熱狂的人気を誇る作品、『ファイト・クラブ』です。 生涯ベストの映画にあげる方も多いであろう本作を、あらすじ、トリビア、解釈とたっぷりお伝え …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学