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Entry 2025/10/25
Update

【ネタバレ】映画フェムFEMME|あらすじ感想と考察評価。おすすめ心理サスペンスはドラァグパフォーマーが復讐のために危険な駆け引きに挑む

  • Writer :
  • 谷川裕美子

駆け引きの末に選ぶのは復讐か赦しか

ネイサン・スチュワート=ジャレットと、『1917命をかけた伝令』(2019)のジョージ・マッケイのダブル主演で贈る、心揺さぶるラブ・サスペンス。

ヘイトクライムの標的にされたドラァグクイーンが、自分を襲撃した男を相手に危うい駆け引きにのみ込まれていきます。

支配と服従が交錯しながら、二人の愛はもつれ、絡み合います。予想できない展開に息を飲む極上サスペンスの魅力をご紹介します。

映画『FEMMEフェム』の作品情報


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

【公開】
2025年(イギリス映画)

【原作・監督・脚本】
サム・H・フリーマン、ン・チュンピン

【編集】
セリーナ・マッカーサー

【キャスト】
ネイサン・スチュワート=ジャレット、ジョージ・マッケイ、アーロン・ヘファーナン、ジョン・マクリー、アシャ・リード

【作品概要】
2021年に英国アカデミー賞にノミネートされた同名の短編を基に、サム・H・フリーマンとン・チュンピンが長編映画として大胆に昇華させたラブ・サスペンス。ベルリン国際映画祭で初披露され、観客に衝撃を与えるとともに同時に大きな称賛を集めました。

差別的な動機による暴力で心身に深い傷を負ったドラァグパフォーマーが、自らを襲撃した男と危うい駆け引きの渦に引き込まれていく様を描きます。

ネイサン・スチュワート=ジャレット、『1917命をかけた伝令』(2019)のジョージ・マッケイがダブル主演を務めます。

映画『FEMMEフェム』のあらすじとネタバレ


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

ジュールズはナイトクラブのステージで観客を魅了するドラァグクイーンでした。ある夜、ステージを終えた彼は、タトゥーだらけの男プレストンと出会います。

しかし、その出会いは突然、憎悪に満ちた暴力へと変わり、ジュールズの心と体には深い傷が刻まれます。

それから3ヵ月後。ジュールズは舞台を降りて引きこもり、孤独な日々を送りながら痛みと向き合い続けていました。

偶然立ち寄ったゲイサウナでジュールズはプレストンと再会します。プレストンは、ドラァグ姿ではなかったためジュールズであることに気づかぬまま誘いました。

かつて憎悪に駆られジュールズを襲った男が、実は自身のセクシュアリティを隠していたことを知ったジュールズ。プレストンの部屋についていきますが、すぐに彼の仲間が戻ってきてしまったため、ゲイだと知られたくないプレストンは慌てふためいて服を着て仲間のもとへ向かいます。

部屋に隠れているように言われたジュールズでしたが、プレストンのパーカーを羽織り、プレストンの友人のフリをして部屋を出ました。

プレストンはジュールズと電話番号を交換し、連絡を待つように言って帰します。ジュールズはプレストンの矛盾を暴いて復讐を果たすため、密会の様子を記録することを目論みます。

ところが、密会を重ねるたび、プレストンの暴力的な仮面の奥にある脆さと葛藤が浮かび上がります。プレストンの本質に触れるたび、ジュールズの心にもまた説明のつかない感情が芽生え始めました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『FEMMEフェム』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『FEMMEフェム』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

ジュールズはいつしかドラァグクイーンのアフロディテだった自分を懐かしむようになっていました。

そんなある日、ジュールズはプレストンの家のエレベーターで、プレストンの売人仲間と鉢合わせてしまいます。逃げることも叶わず、ジュールズは彼らと同席することとなりました。ヤクを受け取りに来たと嘘をつくジュールズを彼らは怪しみます。

しかし、ジュールズは彼らがやっていたゲームにすかさず話題を変え、秀でたゲームの腕前を披露して彼らの心をつかみました。

彼らに誘われて一緒に飲みに行ったジュールズはわざとプレストンを挑発します。そして、プレストンの優位に立って、自宅へと彼を誘い込みました。

これまでと力関係が逆転したジュールズは、プレストンにスマホのカメラを向けたまま服を脱ぐよう言い渡します。自分の奴隷だと忘れさせないためだと言うジュールズの言葉を信じ、プレストンは服従して言われるがままになりました。

ジュールズの同居人トビーは、プレストンにジュールズが暴行されて心に傷を負っていることを話します。そして、ジュールズの誕生パーティーにサプライズで招待しました。

ジュールズはそのパーティーで、久しぶりにアフロディテとして登場します。何も知らずにお祝いにやってきたプレストンは、ステージに上がったジュールズを見て愕然とします。

プレストンからもらった黄色いパーカーをリメイクし、衣装として着たジュールズは、プレストンを揶揄したジョークをステージで披露しました。

舞台裏に戻ったジュールズを待ち構えていたプレストンは、割れたビール瓶を手にジュールズを押さえ付けます。

もみ合いになった二人は、血だらけになりながら表に転がり出ます。激高したプレストンはジュールズの首を絞めましたが、途中で泣き崩れて手を離しました。

ジュールズは立ち上がり、プレストンを置き去りにしたまま自宅に戻りました。ベッドの上にはプレストンからのプレゼントの包みが置かれていました。

中身は黄色いパーカーで、「これは本物だ」と書かれたメモがついていました。

映画『FEMMEフェム』の感想と評価


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

スリリングに色を変えていく復讐劇

二人の男性が抗えない運命に導かれるかのように出会い、互いの心の奥底をのぞき込む壮絶な心理サスペンスです。

ドラァグクイーン姿のジュールズはゲイを差別視する一団に遭遇し、その中の一人で最初から鋭い目で彼を見ていた男・プレストンに執拗に叩きのめされます。

心と体にひどい傷を負ったジュールズは、その後プレストンとなんとゲイサウナで再会し、誘われることとなりました。プレストンは周囲には自身がゲイであることをひた隠しにしていたのです。

ジュールズはプレストンに復讐するために、隠し撮りをして彼がゲイであると世にさらすことを計画します。

ゲイであることをオープンに出来ない状況が、今も世界中で続いていることに悲しみを覚えます。プレストンが同性愛者であることをさらすのが罰とするなら、ジュールズ自身の存在は何なのでしょう。彼もまた恥ずべき存在だということになってしまわないでしょうか。

ゲイへの偏見や差別がなければ、ジュールズとプレストンはまったく異なる関係を結べたに違いありません。

プレストンの持つ温かな心や脆くて繊細な部分に触れたジュールズは、本当に復讐すべきかどうかと迷い始めます。最初は、ジュールズがどのような鉄槌をプレストンに下すのかにストーリーの焦点が当たっていたのが、徐々に心理的な葛藤の描写に物語が移っていくのです。ゲイであるためだけに弱者に追いやられている二人の悲しみが浮き彫りになっていきます。

人の心の奥をのぞき込むような展開に、どんどん引き込まれていく一作です。

入れ替わる支配と服従


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

プレストンはカッとなりやすい暴力的な男ですが、その目はいつも怯えているように見えます。過剰な先制攻撃を仕掛ける人が大抵そうであるように、プレストンはとても臆病な性質だったのでしょう。

ゲイであることを仲間の前では隠さねばならないという不安を、彼はいつも抱いていました。彼はドラァグクイーン姿のジュールズを叩きのめしますが、そうせねばならない状況に自分で自分を追い込んでいました。

その後暴力を振るった相手と気づかないままにジュールズを誘ったプレストンは、ジュールズを支配することに快楽を覚えます。しかし、あることをきっかけに、ジュールズとの力関係が入れ替わり、服従する側となりました。

カメラを向けられ、怯えながらジュールズの指示に従うプレストンの目は恍惚とした光を帯びています。支配されることが、彼の本当の欲望だったのでしょうか。

彼らの力関係は何度も入れ替わり、もつれ合います。互いに本当の恋心を抱いていたからこそかもしれません。

命がけで血まみれで殴り合った末、やっとの思いで家に這い戻ったジュールズが自身のベッドの上に見つけたのは、プレストンからの誕生祝いでした。

大切に包まれていたのは、フェイクではない「本物の」上等なパーカーでした。まるでプレストンの本心を映し出すかのような贈り物を手にした、ジュールズの複雑な思いが伝わってくるラストシーンです。

まとめ


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

人間の複雑な心の動きを繊細に追ったサスペンス『FEMMEフェム』。差別と暴力の向こうにある、愛と悲しみを描ききっています。

憎しみの先で出会ってしまったジュールズとプレストン。関係が深くになるにつれ、普通に出会って普通に愛し合いたいたかったと思わずにはいられなかったのではないでしょうか。

ゲイであるために受ける偏見、そしてその中で生きる人達の辛い思いが伝わってきて、苦い後味が残る作品です。




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