Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

【ネタバレ】スマホを落としただけなのに3|2024年版の感想考察。ラスト衝撃の連続殺人鬼浦野の剥製が持つ意味⁉︎

  • Writer :
  • 星野しげみ

「スマホを落としただけなのに」シリーズがついにファイナルを迎えました!

『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』は、志駕晃による同名ミステリー小説を、中田秀夫監督が映画化した「スマホを落としただけなのに」のシリーズ第3弾。

本作では、日本と韓国を舞台に、スマホを持つ全ての者をターゲットにしたハッキング事件の行方を描いています。

本作の恐怖の始まりは、ある男がひそかに憧れている女子社員のスマホをハッキングしたことです。男は彼女に恋人がいることがわかり、彼女をナイフで刺します。逮捕された男の話から、SNSにスマホ犯罪を得意とする神とあがめる悪魔がいるとわかりました。

スマホを落として以来、身に覚えのない請求書がきたりなどの異変が日常的に起る恐怖を描いた前2作に続き、連続殺人鬼・浦野を成田凌、刑事・加賀谷を千葉雄大が演じています。第1弾、第2弾と、シリーズに出演してきた多くのキャストが本作でも顔を揃えました。

3作目の本作で、スマホのハッキングがどんな恐怖を招き、怖ろしい事件に繋がっていくのでしょうか。映画の内容を深堀り解説いたします。

映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』の作品情報


(C)2024「スマホを落としただけなのに最終章」製作委員会

【公開】
2024年(日本映画)

【監督】
中田秀夫

【脚本】
大石哲也

【キャスト】
成田凌、クォン・ウンビ、千葉雄大、井浦新、田中圭、白石麻衣、原田泰造、大谷亮平、佐野史郎、真飛聖、猪塚健太、髙石あかり

【作品概要】
志駕晃による同名ミステリー小説を、『リング』(1998)などのホラーで知られる中田秀夫監督が映画化した「スマホを落としただけなのに」のシリーズ第3弾。

第3弾にして最終章となる本作では、日本と韓国を舞台に、スマホを持つ全ての者をターゲットにしたハッキング事件の行方を描きます。

カツベン!』(2019)や『くれなずめ』(2021)で主演を務めた成田凌が連続殺人鬼・浦野善治を、刑事・加賀谷は千葉雄大が続投しました。

井浦新、田中圭、白石麻衣、原田泰造ら前2作のキャストも集結。さらに、元「IZ*ONE」メンバーのK-POPアーティスト、クォン・ウンビがヒロイン役を務め、大谷亮平、佐野史郎らが新たに参加しています。

映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』のあらすじ


(C)2024「スマホを落としただけなのに最終章」製作委員会

長い黒髪の女性ばかりを狙った連続殺人事件。被害者は落としたスマホから個人情報を奪われ、家族や恋人のみならず命まで奪われてしまいました。

人の心を操る天才的ブラックハッカーである連続殺人鬼・浦野善治は、刑事の加賀谷学によって一度は逮捕されたものの、刑務所内からサイバー攻撃を企て、警察内の混乱に乗じて姿を消しました。

そして、今。内閣サイバーセキュリティ室に出向となった刑事の加賀谷は神奈川県警を訪れていました。浦野善治の情報を集めるためでした。

好意を持った女性のスマホをハッキングしてその情報を盗み、ストーカー行為で捕まった男の手口から、加賀谷は浦野の影を感じます。加賀谷はまだ浦野逮捕への執念を持ち続けていたのです。

その頃、韓国に身を潜める浦野は韓国の反政府組織に身柄を捕らわれ、幹部のキムから日韓首脳会談の阻止と韓国大統領の殺害を依頼されます。

マンションの一室に軟禁状態でサイバーテロの準備を進める浦野に、キムは秘書のスミンを監視役としてつけました。

そんなある日、日本政府に突如として大規模なサイバーテロ攻撃が仕掛けられます。発信元は韓国のソウルで、浦野による犯行だと疑われますが……。

映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』を深堀り解説


(C)2024「スマホを落としただけなのに最終章」製作委員会

シリーズが教示するスマホの恐怖

昨今の30年あまりで携帯電話は普及し、今や人々の生活において最も身近なツールになっています。電話だけにとどまらず、パソコンに近い機能を兼ね備えたスマホが情報社会の主役となりつつあります。

SNSを利用するためのアプリからゲームアプリまで、幅広くたくさんの種類のアプリを自由自在に使え、写真撮影やチャットなども簡単に操作できるスマホ。ネット利用はもちろん、銀行取引などにも利用されている方も多いでしょう。

ですが、これだけ個人情報満載の便利で頼もしいおしゃれツールを落としてしまったら……。本シリーズは、こんな現実的な怖い話を映像化しています。

スマホを落としたことによる脅威は、SNSの個人情報取得から始まり、ストーカー行為、カードを使った詐欺被害など個人を標的にした第1と第2を経て、第3となる最終章では、国家を標的にしたサイバーテロにまで発展

これは、とどめを刺された感があるほどの大きな犯罪です。

また、本作に登場したSNSを駆使した小さな犯罪も、浦野がネットで高額バイトを募集して自分の身代わりをさせたり、新作ゲームのテストと称して、敵を倒すドローンゲームの参加者を募ります。このドローンゲームこそ、現実世界では日韓首脳会談の現場を襲撃する怖ろしい突撃部隊になるものでした。

ネットに秀でた才能を持つ浦野だからこそできた、SNS犯罪の数々に驚くばかり。これこそ、浦野が連続殺人鬼と呼ばれて恐れられている理由なのです。

浦野神話は崩れない


(C)2024「スマホを落としただけなのに最終章」製作委員会

そんな浦野には忘れられない女性がいます。本作でどんなにスミンに慕われても、心にあるのは第1話で一目ぼれした麻美だけでした。

浦野は麻美を剥製にして自分の手元に置いておこうと計画をたてます。‟愛する人をそばに置きたい。いつも一緒にいたい”そんな願望を、浦野は本当に実行しようとしていたのです

しかし、麻美を襲うことは出来ず、浦野は命を落とします。計画は終わりかと思われたのですが、浦野を愛するスミンによって、浦野自身が剥製となってスミンとともに暮らすことになりました。

浦野の崇拝者たちに「浦野が帰って来たから、そのうち会いに来てね」と連絡するスミン。椅子に腰かけた状態でいる物言わぬ浦野の剥製は、笑っているように見えます。

こうして、浦野の歪んだ女性への愛と秀逸なSNSの知識はそのまま剥製にされました。これを見た浦野の崇拝者たちは、この剥製を神の像と崇めるのに違いありません。

浦野自身はいなくなっても、剥製を崇める崇拝者たちから、第2、第3の浦野が誕生するのではないでしょうか

スマホを落としただけなのに……、災いは次から次へとやって来ました

このように、例え1人の殺人鬼が消えたとしても、スマホを悪用する知識を持つ者はまた現れて、人々を恐怖のどん底へ落とし込むのでは、と心配になります。

エンドレスに続くこんな悪循環をどこかで断ち切るべく、スマホを扱う上で、より高い情報リテラシーの知識を持つことが大切と実感しました。

まとめ


(C)2024「スマホを落としただけなのに最終章」製作委員会

「スマホを落としただけなのに」シリーズ最終章を、深堀り解説しました。

落としたスマホの情報をハッキングされ、ストーカーに纏われるという恐怖。それだけでも怖いのに、本作では国家を揺るがす大事件を招きました。この悪の連鎖はどこまで続くのでしょう。

連続殺人鬼・浦野の寂しい本心もチラリとのぞく本作のラストは、一見平和的ですが、これまた怖ろしいものを孕んでいます

限りなく続く人間の欲望と文明の発展のように、第2の浦野登場もあるかもしれないと予感させるみごとなラストシーンでした




関連記事

サスペンス映画

映画『ミスミソウ』あらすじとキャスト。山田杏奈の完成披露試写会レポート

映画『ミスミソウ』は、4月7日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー! 人気コミック『ハイスコアガール』や『でろでろ』などで知られる漫画家の押切蓮介の代表作を実写映画化した『ミスミソウ』。 3月8 …

サスペンス映画

【ネタバレ】地下室のメロディー|あらすじ結末と感想評価。アラン・ドロン×ジャン・ギャバン共演で魅せるフィルムノワールの傑作

2大スターが10億フラン強奪犯役に挑む フランス映画界の2大スター、アラン・ドロンとジャン・ギャバンが共演を果たした、フランス映画史上に名を刻むクライムサスペンスの名作。 カジノ襲撃計画の顛末をスタイ …

サスペンス映画

【映画ネタバレ】キューブCUBE日本版|感想考察と結末評価。菅田将暉“継続”と黒幕は元ネタ洋画と違うラストが告げる

死の罠が張り巡らされる立方体の迷宮から脱出できるのか!? さまざまな映像技術を駆使したことで、低予算ながらも爆発的ヒットを記録したヴィンチェンゾ・ナタリ監督制作のカナダ映画『CUBE』(1997)。 …

サスペンス映画

『オーシャンズ11』あらすじネタバレ感想とラスト結末の評価解説。ジョージ・クルーニー×ブラッド・ピット×マット・デイモン代表作!

ジョージ・クルーニー主演、後にシリーズ化された大人気クライムサスペンスの映画『オーシャンズ11』。 脇を固める俳優はブラッド・ピットやマット・デイモン等人気俳優たち。シリーズ1作目の今作を紹介していき …

サスペンス映画

映画『哀愁しんでれら』あらすじ感想と内容評価。キャストの演技力が怖すぎる不穏なおとぎ話

映画『哀愁しんでれら』は2021年2月5日(金)より全国ロードショー。 「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得した企画をもとに、『かしこい狗は、吠 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学