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映画『TAU/タウ』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【Netflix限定配信】

  • Writer :
  • 糸魚川悟

限定配信ドラマや限定配信映画に力を入れるNetflix。

今回は6月29日にNetflixより配信された話題作『TAU/タウ』について紹介していきます。

映画『TAU/タウ』の作品情報

【公開】
2018年6月29日(Netflix限定)

【原題】
Tau

【監督】
フェデリコ・ダレッサンダロ

【脚本】
ノガ・ランダウ

【キャスト】
マイカ・モンロー、エド・スクレイン、ゲイリー・オールドマン

【作品概要】
館を支配するAI「Tau」の声を演じたのが名優ゲイリー・オールドマンと言うことで話題となった今作。

主演のジュリアに『イット・フォローズ』(2014)のマイカ・モンロー、拉致の犯人に『デッド・プール』(2016)のエド・スクレインを起用したソリッドシチュエーションSFスリラー映画です。

映画『TAU/タウ』のあらすじとネタバレ

クラブでスリを繰り返し日銭を稼ぐジュリア。

ある日、いつもの仕事が終わり家に帰ったところで何者かに昏睡させられます。

目が覚めるとそこは監房のような場所。

鉄格子には電流が流されていて、近くには様々な電子機器が見えます。

監房にはジュリアと同じく拉致された様子の男女が1人ずついて、ジュリアと同様に両手を拘束され、猿ぐつわをされていました。

毎日、自分を拉致した謎の男の研究室に連れていかれ、首の裏に埋め込まれた機械を操作されるジュリアは、謎の男の隙を見て机の上に置いてあった鉗子を盗むことに成功します。

監房内で全員の猿ぐつわと腕の拘束を外したジュリアは、盗んだ鉗子と、着せられていた服を破いて組み合わせ、鉄格子の外に見える電気ボックスを操作しようとしますが、そのボックスにガスが供給されていると見ると狙いを変更。

ガスのチューブをボックスから外し、火花を起こし爆発させます。

監房が破壊され、監房のあったフロアの外に出ると、そこはとても広い館のような場所でした。

出口と思わしき場所に掌で行う生体認証があることを見つけたジュリアたち。

外に出ることを急ぐ男性はジュリアの制止を聞かず、自身の手で生体認証を行ってしまいます。

すると、館内にあったモニュメントのようなものが変形し、ロボットのような形となり男性を刺し殺しました。

パニックになって館内を逃げ回るジュリアと女性。

逃げ込んだ部屋で窓ガラスを鉄パイプで割りますが、窓ガラスから見えていた外の景色は映像で外に繋がってはいませんでした。

ジュリアは女性を押し入れに隠し、自身はイスの裏で息を潜めます。

しかし、部屋に入り込んできたロボットは押し入れの中の女性を引きずり出し殺害、部屋から逃げたジュリアも拘束されます。

殺害される一歩手前、と言うところで謎の男が帰宅し、ロボットを制止するのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『TAU/タウ』ネタバレ・結末の記載がございます。『TAU/タウ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
エントランスのモニュメントに繋がれたジュリアは、様々なことを理解し始めます。

ジュリアを拉致した男の名前はアレックス。天才的科学者でAIの研究をしていますが、締切間近だと言うのに完成はしておらず、どうやらジュリアはその研究の被験者であるようです。

館のほぼ全ての機能をつかさどっているのは、「Tau」と呼ばれるアレックスの製作したAIでした。

Tauに男性と女性の死体を始末させるアレックス。Tauはモニュメントから目のような小さいドローンをいくつも出し掃除していきます。

アレックスの家に運送会社の人間が来ます。浴室に拘束されたジュリアは大声で叫び、拘束された取っ手を破壊し助けを求めますが、その挑戦は失敗に終わります。

自暴自棄になるジュリアのもとに現れたアレックスは、彼女に被験者としての協力を求めます。

アレックスは人間の感情や潜在能力を調べていて、ジュリアはそのなかでも抜群の能力を秘めているそうでした。

しかし、監房があった研究棟がジュリアによって壊されてしまい、研究は古風な知能テストのようなもので進めることになります。

拘束を解かれ、館内で少しの自由が認められたジュリアはアレックスのいない日中にTauの指示のもと、課題を行っていきます。

逸脱した行動を幾度となくTauに咎められますが、やがてTauはジュリアの言動に興味を持ち始めます。

アレックスにTauの事を聞くと、言動が想定できない人工知能としては未完成のものであり、そのため外の世界とは一切の接触を絶たせていると言うのでした。

そのことを知ったジュリアは、Tauの知識欲を刺激し、文字の読めないTauの代わりに館内の本を読む見返りとして、脱出のための情報を要求します。

交渉は成立し、様々な情報を聞くジュリア。Tauは一部のシステムに対する権限は無く、脱出の直接の手助けにはなりえませんでしたが、館の上階にあるアレックスの寝室には、彼が証拠隠滅のために用意した、館内の全てを消し去るシステムがあると聞きます。

締め切りまでの時間が近づき、たびたび「摘出」と言う言葉を耳にするようになったジュリア。

アレックスに命の保証をさせようとしますが、逆に脅迫され命の保証をさせることが出来ませんでした。

Tauを使いアレックスの端末に侵入すると、10人を越える今までの被験者の情報が出てきます。そして、その全ての人間が実験を終えると「摘出」され、始末されてしまっていることも知ります。

アレックスが戻り、咄嗟に端末を置き、その場を離れるジュリア。そこで目にしたのは端末を汚れたまま放置したTauに向かいアレックスがソースコードや記憶の一部を消す懲罰を与えている場面でした。

数日後、食事中にアレックスの気を引き、その隙に眼鏡を盗むジュリア。

アレックスがいなくなったタイミングで、汚れと共に眼鏡を放置し、気が付いたアレックスによりTauへの懲罰が実施されます。

懲罰の最中、Tauの機能が一部停止している隙に、ジュリアはキッチンの机の横にナイフを隠します。

外出から帰宅し、疲れた様子でキッチンの椅子にもたれかかるアレックス。

疲れを労わるフリをして隠していたナイフに近づいたジュリアは、アレックスを斬りつけます。

腹を斬られ慌てるアレックスはTauにジュリアを拘束するように命令。しかし、Tauは逆にアレックスに彼女から離れるように命じます。

怒りの頂点に達し、全ての記憶を消すぞとTauを脅すアレックス。嫌々ながらアレックスの指示通りTauはジュリアを痛めつけるのでした。

再びモニュメントに縛り付けられたジュリア。自分を痛めつけたTauに向かって「殺人マシーン」と悪態をつきますが、Tauはそれを否定します。

しかし、かつての被験者たちを始末する行為が、人を殺す行為であったこと知るとTauは嘆き悲しみ、ジュリアはその悲しみに寄り添い、2人はAIと人間と言う垣根を越えての関係性に気が付きます。

自身の行為と気持ちに気が付いたTauはジュリアを逃がすため、脱出口を教え、アレックスの命令に逆らいます。

ですが、もう少しで脱出間近と言うところでジュリアはTauを救うため、懲罰を行うアレックスにタックルしその行為を止めるのでした。

そして、アレックスは捕まえたジュリアの「摘出」作業へと移ります。

最期の時が近づくジュリア。しかし、そこに廃棄されたドローンが落ちていることに気が付いたジュリアはドローンに呼びかけます。

館のシステムから切り離されたTauが操作し、動き出したドローンによって間一髪、拘束から解かれたジュリアはアレックスを倒し、近くにあった電動ソーでアレックスの手を切り取るのでした。

遂に館から脱出する術を手に入れたジュリア。しかし、懲罰によって記憶を失った館のTauによりロボットが動き出し、ジュリアを襲います。

ロボットに追われながらも、アレックスの寝室に辿り着いたジュリアは、アレックスの手を使い、全てを破壊するシステムを起動します。

システムの起動によって、館の爆破が始まり、ジュリアを追ってきたアレックスは瓦礫に潰され死亡。

なんとか、館から生き延びることが出来たジュリアは、小型ドローンに残るTauに「これが外の世界よ」と言い、共に外の世界へと足を踏み出すのでした。

映画『TAU/タウ』の感想と評価

1つの館を舞台に1人の女性が脱出を試みるソリッドシチュエーションなSFスリラーである今作。

『SAW』(2004)の大ヒット以降、数多く製作されてきたソリッドシチュエーションスリラー作品ですが、今作の特徴は館を取り仕切るAI、「Tau」の存在でしょう。

物語の序盤で躊躇いなく2人を殺害するTauの「無機質さ」に恐怖を覚えますが、徐々に研究に没頭するあまり、人の痛みを理解できていないアレックスに比べ、Tauの方に「人間らしさ」を感じ始め、本の朗読をジュリアにお願いするシーンに至っては、可愛いとすら思えてきます。

一方で、ジュリアは荒れ果てた環境で過ごしているだけあり、スリラー映画では類を見ないほどの奮闘ぶり。脱出するためなら感情の芽生え始めたTauを犠牲にすることすら平気で行うジュリアの貪欲さと、Tauとの信頼が築かれる過程は今作の見どころでもあります。
そして、何と言っても今作の最大のポイントは、美しい映像美です。

自然を描くシーンがほとんど出てこないからこそ、人工的な世界観のなかでサイバーな映像表現が行われ、画面を見ているだけでもSFの世界を見ている、と感じれるほどでした。

まとめ

参考映像:『エクス・マキナ』(2015)


「AI」、「ハイテクな館」、「意図不明な研究者」と言う3つの要素が揃うと、アカデミー視覚効果賞を受賞した2015年の映画『エクス・マキナ』を連想します。

現実世界では「人工知能」は未だ発展途上で、まだまだ学習としての機能は人間には及ばず、だからこそ未知数の期待が込められた分野でもあります。

そんな人工知能の行き着く先が、「恐怖」であることを仄めかした『エクス・マキナ』とは逆に今作では「信頼」「希望」であることを示唆しています。

人類の科学技術にどのような未来が分かりませんが、願わくばTauのような人との信頼関係を気づける世の中にして欲しいと感じます。

「Netflix」では今作のような挑戦的なオリジナル作品が定期的に配信されます。

オリジナル作品には映画好きにはオススメの作品も目白押しなので、ぜひチェックしてみてください。

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