心の声が〈ノイズ〉となって視えてしまう世界で繰り広げられるSFアクションアドベンチャー。
パトリック・ネスによるSF小説『心のナイフ』〈混沌(カオス)の叫び1〉を映画化。
監督は、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)『ボーン・アイデンティティー』(2003)のダグ・リーマン。
「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランドを主演に迎え、共演者には「スター・ウォーズ」シリーズのデイジー・リドリー、『アナザーラウンド』(2021)のマッツ・ミケルセンらが顔を揃えます。
西暦2257年。汚染された地球を捨て新たな星、〈ニューワールド〉に辿り着いた人類。しかし、その惑星では心の声や思考が〈ノイズ〉となって視える形で曝け出されてしまいます。
過去の争いにより、女性が死に絶えてしまった〈ニューワールド〉で生まれたトッド(トム・ホランド)は女性を一度も見たことがありません。
ある日、宇宙船が墜落し、唯一の生存者であるヴァイオラ(デイジー・リドリー)と出会ったトッド。初めて会う女性に戸惑いを隠せないトッドでしたが……。
映画『カオス・ウォーキング』の作品情報
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
Chaos Walking
【原作】
『心のナイフ』〈混沌(カオス)の叫び1〉パトリック・ネス著(東京創元社)
【監督】
ダグ・リーマン
【脚本】
パトリック・ネス、クリストファー・フォード
【キャスト】
トム・ホランド、デイジー・リドリー、マッツ・ミケルセン、デミアン・ビチル、シンシア・エリボ、ニック・ジョナス、デビッド・オイェロウォ
【作品概要】
ガーディアン賞、カーネギー賞など、数々の名立たる文学賞を制するパトリック・ネスの傑作SF小説『心のナイフ』〈混沌(カオス)の叫び1〉を映画化。
主演は『スパイダーマン ホームカミング』をはじめMCU版「スパイダーマン」シリーズで主人公ピーター・パーカーを演じるトム・ホランド。待機作に『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』、『アンチャーテッド』(共に2022年公開予定)があります。
共演者に「スター・ウォーズ」シリーズのデイジー・リドリー、『アナザーラウンド』(2021)のマッツ・ミケルセン、『ハリエット』(2020)のシンシア・エリボ、ジョナス・ブラザーズのメンバーとして活動するほか、俳優として『ミッドウェイ』(2020)などに出演するニック・ジョナスなど。
映画『カオス・ウォーキング』のあらすじとネタバレ
西暦2257年。汚染した地球を旅立った人類がたどり着いた新天地、〈ニュー・ワールド〉。
その星では男たちの頭の中の考えや心の中の思いが〈ノイズ〉となって曝け出されてしまいます。女たちには〈ノイズ〉はありませんが、エイリアンに殺され、村には男しかいません。
〈ニュー・ワールド〉で生まれ、村でも一番最年少のトッド(トム・ホランド)は首長のプレンティス(マッツ・ミケルセン)に憧れ、認めてもらいたいと思っています。
しかし、そんなトッドをプレンティスの息子であるデイヴィー・プレンティス・ジュニア(ニック・ジョナス)は馬鹿にし、トッドの育ての親であるベン(デミアン・ビチルン)は、プレンティスを信用してはいけないと言います。
ある日、ニューワールドに本船から偵察機がやってきますが、墜落してしまいます。唯一の生存者であるヴァイオラ(デイジー・リドリー)と出会ったトッド。女性と初めて出会ったトッドは戸惑い感情が〈ノイズ〉となって現れてしまいます。
一方〈ノイズ〉を知らないヴァイオラは怯え逃げ出してしまいますが、プレンティス率いる男らに取り囲まれ捕らえられてしまいます。
本船が近くにやってくることを知ったプレンティスは、ヴァイオラが本船に連絡するのを阻止しようと目論みますが、隙を見てヴァイオラは逃げ出します。
逃げ出したヴァイオラは、トッドの家の納屋に隠れていました。初めて見た女性であるヴァイオラに恋心を抱くトッドはヴァイオラを守ことを決意し、ベンから教えられた目的地に向かって愛犬のマンチーと共に旅立ちます。
目的にたどり着くとそこには村があり、そこには男性だけでなく女性も子供もいます。自分のいた村の他に村はないと思っていたトッドは戸惑います。更にやってきた村を告げると村人は顔色を変え、トッドを縛り首にしろと叫びます。
理由が分からず戸惑うトッドでしたが、ベンが旅立つ前に渡したトッドの母の日記を読み、今まで知らなかった驚くべき真実を知ってしまいます……。
映画『カオス・ウォーキング』の感想と評価
頭の中の考えや心の中の思いが〈ノイズ〉となってさらけ出されてしまうという斬新な設定は、心の声や思ったことを発信しやすいSNSが普及した現代にも通ずるものがあるかもしれません。
自分が相手に伝えようとしていなくても考えていること、感じたことが勝手に可視化してしまうとしたら……。本作で描かれているのはまさに混沌とした世界です。
混沌が疑心を呼び、〈ノイズ〉が現れない女性へ鬱憤や怒りの矛先が向かった結果、女性を虐殺してしまうという恐ろしい惨事が起きてしまった、そんな混沌の中で生まれたのが何も知らない少年トッドです。
本作はSFアクションアドベンチャーであるとともに一人の少年の成長譚でもあります。
トッドは親を知らず、親代わりのベンに対して反抗し、首長のプレンティスを父親のような存在として尊敬し憧れを抱いています。
そんな存在が自身の敵となる、乗り越えなくてはならない存在となる……。これはトッドにとって一種の大人になるための通過儀礼とも言えるのです。
外の世界を知らないトッドが信じていた世界は悉く覆されていく、現実を受け止め乗り越えることで、トッドは成長していくのです。
一方、ヴァイオラも本船で生まれ育ち、外の世界を知りません。また、ヴァイオラは祖父母の代から新天地を求め旅をしていました。
祖父母、両親が願うもたどり着けなかった新天地での生活を自身は成し遂げたいという強い思いが、ヴァイオラの中にはあります。
ヴァイオラは強い意志と戦う強さを兼ね備えたヒロインとして描かれ、無闇に自分の感情や情報を伝えようとしません。感情がうまくコントロール出来ず〈ノイズ〉に表れてしまうトッドと対照的な存在と言えます。
そんな対照的な2人が旅を通じて心を通わせ、閉ざしていたヴァイオラも自分の境遇や感情を伝えるようになります。
そして、ヴァイオラは自身が求めていた新天地としてこの星で生きていくことを決意し、トッドの手を握ります。
新天地を求めた親の世代の意思を受け継ぎ新天地で共に生きていこうとする2人の姿は、アダムとイヴをも想起させるような希望に満ち溢れています。
新感覚のSFアクションアドベンチャーでありながら、普遍的な少年の成長譚と共に生きていく新たな世代への希望を感じさせる映画になっています。
まとめ
「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランド、「スター・ウォーズ」シリーズのデイジー・リドリーなど、豪華キャストがおくる新感覚のSFアクションアドベンチャー映画『カオス・ウォーキング』。
頭の中の考えや心の中の思いが〈ノイズ〉となってさらけ出されてしまう斬新な設定をVFXを使って映像化し、登場人物それぞれに特徴のある〈ノイズ〉を作り出し、混沌とした世界を映し出します。
また、近未来でありながら、西部劇のような村の様子や特徴的な宇宙人の造型、巨大な宇宙船などSFならではの映像美にも大注目です。