連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile167
2009年に公開された後、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)が公開されるまで興行収入歴代1位を記録し続けた映画『アバター』(2009)。
2021年からの再上映によって再び1位に返り咲いた本作は、21世紀を代表する映画として語られていくことが間違いないとされています。
今回は映像効果として当時の最先端の技術を駆使した映画『アバター』を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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映画『アバター』の作品情報
【公開】
2009年(アメリカ映画)
【原題】
Avatar
【監督】
ジェームズ・キャメロン
【脚本】
ジェームズ・キャメロン
【キャスト】
サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、スティーヴン・ラング、ミシェル・ロドリゲス、ジョヴァンニ・リビシ
【作品概要】
『ターミネーター』(1985)や『タイタニック』(1997)を手掛けたジェームズ・キャメロンが監督と脚本を務めた大ヒットSF映画。
『タイタンの戦い』(2010)や『ハクソー・リッジ』(2017)のサム・ワーシントンが主人公のジェイクを演じ、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズでガモーラを演じるゾーイ・サルダナがヒロインのネイティリ役を務めました。
映画『アバター』のあらすじとネタバレ
強盗に遭い死亡した科学者の兄トミーの代わりとして未開の星「パンドラ」に送られることになった負傷兵のジェイク。
パンドラには炭素繊維で骨格を強化された先住民族「ナヴィ」が住んでおり、地球のエネルギー問題を解決する希少な鉱石「アンオブタニウム」を狙う地球人とは敵対関係でした。
RDA社は地球人とナヴィのDNAを掛け合わせた人造の生命体「アバター」に操作員の意識をリンクさせる装置を作り出し、アバターをナヴィの中に送り込むことで彼らの懐柔を試みていましたが、成果は芳しくありませんでした。
トミー用に作り出されたアバターを無駄にしないためにRDA社は双子の弟ジェイクを呼び出しましたが、計画を指揮する研究者のグレースは研究経験のない素人が送り込まれたことに不満を抱いていました。
初のアバターへのリンク時、下半身付随のため車椅子生活を過ごしていたジェイクはアバターの身体で両脚が動くことに興奮を覚えます。
地球人の守護を目的とした傭兵部隊の隊長クオリッチに呼び出されたジェイクは、平和的なやりとりを考えるグレースと異なり、クオリッチがナヴィの武力制圧を考えていることを聞かされます。
クオリッチに協力することで地球への帰還後に脚を特注することを提案されたジェイクはその条件を飲むことになりました。
アバターにリンクしグレースたちと森林に調査に入ったジェイクは野生生物に襲われ滝に飛び込んだことで仲間たちと逸れてしまいます。
夜、森林の中をひとり彷徨うジェイクは野生生物に襲われているところをナヴィのネイティリに救われます。
ジェイクを救ったネイティリはグレースたちの計画の一環として教育を受けており英語での会話が可能でした。
しかし、ジェイクはネイティリの部族に捕まってしまい、部族のリーダーであるネイティリの母モアクとネイティリの父エイトゥカンの前に連れて行かれます。
ネイティリたちはアバターのことを知っており即座の処断を考えますが、ネイティリが「エイワ」のお告げを見たと話すとエイトゥカンは興味を惹かれました。
エイトゥカンはこれまでの人間と異なる初めての「戦士」であるジェイクに興味を持ち、しばらくの間ネイティリに付きナヴィについてを学ぶように言いました。
寝ることでアバターとのリンクが切れたジェイクはRDA社の責任者パーカーに上手く部族に潜入できたことを話すと、ジェイクの潜入した部族であるオマティカヤ族の村にはアンオブタニウムが大量に採掘可能な場所があり、3ヶ月後には武力的制圧も辞さないと宣言されます。
ネイティリからナヴィについて学ぶ傍ら、村の構造を把握しパーカーとクオリッチに報告するジェイク。
一方でグレースはパーカーの動きに勘づき、リンク設備と人員をクオリッチ管轄の基地内から崖の上の施設と移動させます。
表向きはグレースの部下であるジェイクは崖の上の施設に移動し、引き続きネイティリからナヴィ語や弓の使い方、野生生物との対話方法を学んでいきます。
ネイティリから学んだことを実践し、部族のハンターとしての試験を受けることを許可されたジェイクは、翼を持つ野生の「イクラン」を乗りこなすと言う試験を受けることになります。
一体のイクランを使役し乗りこなしたジェイクは部族にハンターとして認められることになり、ナヴィにとって最も神聖とされる「魂の木」を目撃。
ある日、危険な巨大生物「トルーク」に襲われたジェイクとネイティリは間一髪で逃げ延び、ナヴィの中でトルークを使役することは伝説となっていることを知ります。
村の構成を教えたジェイクはクオリッチから地球への帰還を促されますが、まだやることがあるとして部族で儀式を受けナヴィの一員として認められます。
潜入任務の中でネイティリと親交を深めていたジェイクはネイティリと恋に落ち、お互いの心を伝え合いました。
映画『アバター』の感想と評価
日本映画から多くの影響を受けたSF映画
開拓のための侵略行為が行われる中で、先住民族と触れ合い自らの価値観を変えていく物語が展開される映画『アバター』。
本作はアカデミー賞を受賞した映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1991)と物語の根幹にあるテーマ性が共有されていることがジェームズ・キャメロンによって語られていました。
さらに一連のインタビューによってく本作の世界観が多くの日本映画から影響を受けていることが監督によって認められています。
例えば、人造人間「アバター」に精神をリンクさせると言う本作の基盤となる設定は押井守による映像化が世界的に話題となった漫画「攻殻機動隊」から通じる部分があり、また「パンドラ」の生態系には宮崎駿による映画『もののけ姫』(1997)へのオマージュが含まれています。
物語や世界観の壮大さに驚くだけでなく、世界的な大ヒットを記録した映画がさまざまな映画作品を礎にしたことが分かる作品です。
最新技術を利用した大迫力の映像
3Dでの上映を前提として撮影された『アバター』は1台のカメラに複数のカメラをズラして連結させることによって、人間のふたつの眼による立体視のような奥行きのある映像を作り出すことに成功しています。
このように多くの最先端の技術を駆使した本作はアカデミー賞視覚効果賞を受賞しただけでなく、10年以上経過した2020年代に鑑賞しても全く問題がないどころかその迫力の映像に今もなお驚かされます。
日本では2週間限定2022年9月23日から2週間限定で上映された『アバター:ジェームズ・キャメロン 3Dリマスター』が公開週の興行収入ランキングのTOP10にランクインし、最新作への期待と共に「映像」における絶対的な評価が世界的に高い作品であることが再確認されました。
まとめ
本作における先住民族「ナヴィ」が話す原語は本作オリジナルのものであり、言語学者のポール・フロマーによって製作されました。
映像だけでなく劇中における文化までも徹底的に拘り抜かれて製作された本作は2022年以降に4作が公開され、計5部作のシリーズ映画となることが発表されています。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022)にはジェイクやネイティリ役のキャストが続投していることも分かっており、21世紀を代表する映画として更なる飛躍が期待されます。