アメリカ・シカゴの怪獣映画の祭典“G-FEST2019”で絶賛!
2019年9月15日~23日にシネマノヴェチェントで公開された『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』
スーツや操演で登場する怪獣、破壊されるミニチュア、「ゴジラ」や「ガメラ」、「ウルトラマン」など海外にも熱狂的なファンを持つ、日本の特撮映画。
鈴木則文監督、川北紘一特技監督に師事し、映画本編・特撮双方の現場を知り、今は映画・ドラマの監督として、そして本編や特技助監督としても多くの現場で活躍する石井良和監督。
映画演出、特撮技術に造詣が深い石井監督が、日本特撮映画の技術と伝統を若い世代に伝えるため、ワークショップのメンバー、日本を代表する特撮スタッフと共に完成させた映画が、『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』です。
限られた予算と撮影日数の中で、熱き思いを胸に奮闘したスタッフの手によって、ついに完成した作品の特撮愛を体感せよ!
CONTENTS
映画『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』の作品情報
【公開】
2019年9月15日(日本映画)
【監督・特技監督・原作】
石井良和
【出演】
小嶋マコト、豊田崇史、藤田健彦、高瀬みゆき(アクトレスガールズ)、彦坂道子、山本駿介、土屋里奈、つづらぬきゆうこ、荒牧翔悟、矢島理弘、福地聡、GAICHI、金子はりい、長谷直美
【作品概要】
数々の大作映画の特技助監督、『ウルトラマンギンガ』や映画『ゲームマスター』の監督を務めた石井良和による、特撮アクションコメディ映画。
アメリカ・シカゴで毎年行われている、日本の特撮映画を中心とした、怪獣映画の祭典である”G-Fest XXVI(2019)”。石井監督はこの作品を出品し、宝田明・金子修介と共にスペシャルゲストとして登壇しました。
映画はそこで上映されアメリカの巨大怪獣ファンを、爆笑と熱狂の渦に巻き込みました。
主演は舞台を中心に活躍、数多くの映画・ドラマにバイプレイヤーとして出演している小嶋マコトが、文字通り体を張った演技を見せています。
脇を固めるのは本作の助監督も務めている豊田崇史、名バイプレイヤーとして活躍する藤田健彦、女子プロレスラーとしても活躍する高瀬みゆきなど個性的な面々。また『太陽にほえろ!』に出演、初の主演映画『悪い女はよく稼ぐ』も公開された長谷直美が、特別出演として参加しています。
映画『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』のあらすじ
鯖山夜間高校に勤務する高校教師、宮沢賢三(小嶋マコト)。彼は自らを熱量が少ない、早く言えばやる気がない先生だと認めていました。
借金まみれの水商売の女、自分探しが迷走中の男、マルチ商法にはまった女、映像クリエイターを目指す男に世界の破滅を願う中二病男子、そして片言の日本語を話す国籍不明の変人夫婦…。宮沢が受け持つクラスには、何とも個性的な生徒が集まっていました。
ある日校長から呼び出された宮沢は、鯖山夜間高校の廃校が決まったと告げられます。宮沢に対し姉妹校への就職をあっせんするが、その確約は出来ないと話す校長。
折しも時期は学園祭の1ヵ月前。何か結果を出して就職のアピール材料を求められた宮沢は、学園祭の催し物として、生徒から提案のあったミュージカルの実現を計画します。
最初は乗り気でなかった生徒たちも、鯖山夜間高校最後となる学園祭を、ミュージカルで盛り上げようと乗り気になっていきます。
ミュージカルを成功させ、自らの就職アピールを狙った宮沢。しかしその過程で自らを、そして生徒の将来を見つめ直す機会を得る事になりました。
こうして迎えた学園祭当日、生徒たちのミュージカルが上演される中、突如彼らの町に宇宙怪獣が襲来します。
生徒を、町を、そして人類を守る為に立ち上がる宮沢先生。どうしてこうなった??
映画『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』の感想と評価
海外で受けた記者からの“問い”
長らく映画製作の現場に関わっていた石井良和監督。自分でどこまで出来るか挑戦しようと思い立ち、全額自費でホラー・コメディ映画『ゲームマスター』を製作します。
参考映像:『ゲームマスター』予告編(2017)
『ゲームマスター』をスペインのサン・セバスチャン映画祭や、ドイツのハンブルク日本映画祭に出品した石井監督は、「ゴジラ」シリーズの川北紘一特技監督に師事し、『ウルトラマンギンガ』の監督を務めた彼の経歴を知る、海外の記者にこう尋ねられます。
「なぜあなたは伝統ある、日本の特撮映画を撮らないのか」と。
元々特撮に興味はあったものの、若き日にその世界に入る事は難しく、まずドラマ・映画の助監督としてキャリアをスタートさせた石井監督。
その後、川北特技監督に師事し、現在は本編・特撮双方の現場を知るまとめ役として、様々な現場で活躍しています。
特撮の現場もCGが主流になり、造形や操演など先人たちが築きあげてきた技術を、若いスタッフが経験する機会が、減りつつあると痛感していた石井監督。
海外の日本特撮映画ファンのため、そして、日本の特撮技術を次の世代に継承してもらうため、できる限りの事をやろうと彼は決意します。
こうして誕生した映画が『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』でした。
低予算の現場に駆けつけたスタッフたち
予算が無いと特撮映画の製作は難しいと熟知している一方、若き日、助監督として師事した鈴木則文監督の最後の弟子と自認する石井監督。低予算でも面白い特撮映画が作れるはず、との強い思いも持っていました。
そこにワークショップで特撮映画を行わないか、との話が持ち上がり、石井監督は長く温めていた企画を基に、生徒たちと共に映画作りを行います。
未成年者を含むワークショップの生徒25名と共に行う本編の撮影は、スケジュールの制約もあり5日間のみ。そこで用意された製作費100万は尽きてしまいます。
そこで石井監督は2020年公開の映画、『Fukushima 50』に助監督として参加し、得た報酬を残る製作費につぎ込んで、ようやく特撮シーンの撮影に入ります。
特撮は「ウルトラマン」シリーズや、『シン・ゴジラ』に関わったスタッフが参加しました。特撮の危機だから助けてくれ、と説明し多くの関係者に助けてもらったと石井監督は話しています。
例えば、登場する宇宙怪獣は、某スタジオに落ちていたカポック(発泡スチロール)を加工し、ラテックスを塗って作成。それにガチャポンのカプセルを取り付けて製作しました。
こうして準備が整いましたが、費やせる日数は2日間。いよいよ特撮シーンの撮影する日を迎えます。
アクシデントを経て作られた特撮
ところが特撮シーン撮影の初日、参加してくれたスタッフの1人が倒れ、現場は救急車を手配するアクシデントに見舞われます。
幸いにも倒れられた方は、危機を脱し無事復帰してくれた、と語る石井監督。しかし撮影に仕える時間は、実質1日半となってしまいます。
翌日は別のスタッフに参加してもらい、用意された現場を引き継ぐ形で撮影を再開します。
その結果セットのビルを並び変える事も出来ず、いろんなアングルで撮るシーンが、似たようなショットばかりになってしまった、と事情を話してくれました。
ビルの爆破シーンでは、監督自らカチンコを叩き、爆破のスイッチを押したそうです。
小さな宇宙人が登場するシーンは、監督自らが動かして撮影したものの、動きに納得いかずワークショップの生徒に呼びかけ、追加で1日撮影を行いました。
また特撮関係者に登場する宇宙船の製作を依頼したところ、何故か結果として2隻の宇宙船が完成します。
撮影は終わっていたものの、製作者から登場させてくれなければ困る、と言われ映画冒頭の宇宙船のシーンを追加、撮影する事になったと笑いながら話してくれた石井監督。
編集・音入れ作業は順調に進み、こうして『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』は完成しました。
まとめ
こうして完成した『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』。制約とアクシデントの結果、もう一度やりたくても出来なかったシーンもある、と石井監督は振り返っています。
ワークショップで参加した生徒には監督として自由を与え、のびのび参加してもらいたかったと語っています。また俳優として参加した方の、アドリブを交えた演技は大いに生かしたそうです。
さて、巨大化して宇宙怪獣と戦う先生。楽しくも馬鹿馬鹿しい限りで、タイトルはアメリカの大人気B級映画『妖怪巨大女(Attack of the 50 Foot Woman)』のパロディ。
当然シカゴの、怪獣映画の祭典“G-FEST2019”で巨大化したシーンで大盛り上がり、と思って伺ったところそれ以前のシーン、本編部分の悪ノリな演技も大爆笑だったそうです。
あんなの絶対日本ではウケないって思っているのに、アメリカで凄くウケた、と楽しそうに話してくれた石井監督。
大らかで、まずは楽しむ事を目的に集まった、アメリカの怪獣映画ファンたち。流石『シャークネード』が全米放送された際、国を挙げて熱狂した人たちです。
特撮映画、そして、プログラムピクチャー的な楽しさをあわせもつ映画『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』、今後の展開にご注目下さい。