Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

新作映画ニュース

Entry 2020/03/18
Update

映画『在りし日の歌』公開日/上映館。ワン・シャオシュアイ監督が描く感動の人間ドラマとは?

  • Writer :
  • 大塚まき

ジャ・ジャンクー、ロウ・イエら名匠と並ぶ中国第六世代の旗手ワン・シャオシュアイとは?

第69回ベルリン国際映画祭にて最優秀男優賞と女優賞の2冠に輝いたワン・シャオシュアイ監督最新作『在りし日の歌』。

中国映画『在りし日の歌』は、2020年4月3日(金)より角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開されます。

本記事では、ジャ・ジャンクー、ロウ・イエら名匠と並ぶ中国第六世代の旗手ワン・シャオシュアイ監督についてご紹介します。

中国「第六世代」の映画監督とは

画像:撮影中のワン・シャオシュアイ監督


(C)Dongchun Films Production

中国映画産業界に多大な影響を及ぼした文化大革命が終焉した後、1980年代半ばより国際的に注目される作品を発表し始めた中国ニューウェーブの「第五世代」と呼ばれています。

代表的な監督は、チェン・カイコーやチャン・イーモウ文化大革命の爪痕と、荒涼とした貧しい中国の真実の姿を描き出しました。

そして、彼らに続く「第六世代」監督と呼ばれるのが、ジャ・ジャンクーやロウ・イエ、ワン・ビン、そして本作『在りし日の歌』でメガホンを取ったワン・シャオシュアイら。カンヌ、ベルリン、ヴェネチアと主要な国際映画祭で成功をおさめ、いまや世界的な名声を手にしています。

その多くは60年代に生まれ、90年代以降に台頭。「第五世代」に比べて個人主義的で、現代中国が抱える痛みや矛盾を鋭く映し出す作風が特徴です。

厳しい検閲を課す中国当局と表現者としてのせめぎ合いの中で、社会性とエンタメ性を高いレベルで両立させた作品を生み出し、才気を発揮し続けているのが「第六世代」の映画監督たちなのです。

第六世代の旗手ワン・シャオシュアイ監督について

画像:撮影中のワン・シャオシュアイ監督


(C)Dongchun Films Production

そんな第六世代の旗手ワン・シャオシュアイは、1966年、中国・上海生まれの映画監督です。

中国で唯一、映画関係の人材を養成するエリート大学北京電影学院監督学科を卒業後、1993年に『冬春的日子』でデビューし、BBCの「21世紀に残したい映画100本」に中国映画として唯一選出されました。

1998年『ルアンの歌』がカンヌ国際映画祭ある視点部門に出品されたのを皮切りに、同映画祭に4度の正式出品を果たし、『青紅』(2005)が審査員賞に輝きます。

さらにベルリン国際映画祭では、2001年『北京の自転車』で銀熊賞(審査員グランプリ)、2008年『我らが愛にゆれる時』で銀熊賞(最優秀脚本賞)、そして本作『在りし日の歌』で銀熊賞(最優秀男優賞&最優秀女優賞)と、3度の正式出品でいずれも銀熊賞を受賞する快挙を成しとげています。

2010年にはフランス文化省から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与。近年では、若手監督の育成に力を入れ、プロデューサー業も積極的に行っています。

映画『在りし日の歌』とは?


(C)Dongchun Films Production

本作は改革開放後、“一人っ子政策”が進む1980年代、めざましい経済成長をとげた1990年代、そして2010年代と、激動の現代中国と社会を背景にある夫婦が辿る、壮大な30年に及ぶ人間ドラマが描かれます。

また、ある二つの家族の姿を通して、約30年間の中国社会の縮図をも示しています。

現代中国の片隅で生きる人々に向けられたワン・シャオシュアイ監督の眼差しがスクリーンに映し出されることでしょう。

主演は、ヤオジュン役を『薄氷の殺人』(2015)のワン・ジンチュンヤオジュンの妻・リーユンを『黒衣の刺客』(2015)のヨン・メイが熱演します。

ワン・ジンチュンとヨン・メイは、本作で第69回ベルリン国際映画祭最優秀男優賞、女優賞受賞という快挙を成し遂げました。

映画『在りし日の歌』の作品情報


(C)Dongchun Films Production

【日本公開】
2020年(中国映画)

【原題】
地久天長

【英題】
SO LONG, MY SON

【監督】
ワン・シャオシュアイ 

【脚本】
ワン・シャオシュアイ、アー・メイ

【キャスト】
ワン・ジンチュン ヨン・メイ チー・シー ワン・ユエン ドゥー・ジャン アイ・リーヤー

映画『在りし日の歌』のあらすじ


(C)Dongchun Films Production
国有企業の工場で働くヤオジュンとリーユン夫婦は、中国の地方都市で幸せに暮らしていました。

大切な一人息子のシンシンが川辺で溺れて亡くなるまでは…。

悲しみに暮れるふたりは、住み慣れた故郷を捨て、心許せる仲間とも距離を置き、誰も自分たちのことを知らない町へと移り住みます。

そして、歳月は流れ…。

まとめ


(C)Dongchun Films Production
ワン・シャオシュアイ監督は、本作の制作にあたり以下のように語っています。

「1949年以来、中国の成長と発展は国家の政策や社会制度と密接に関係し、激しく揺れ動いていました。『在りし日の歌』は時代の証であり、社会、家族、自分たちのアイデンティティの強烈な変化のなかで普通の中国の人々がどう感じていたかを表しています」

喜びと悲しみ、出会いと別れを繰り返し、それでも共に手をたずさえて生きていく夫婦の姿を、激動の中国を背景に映し出した本作。

大きく変貌し続ける社会の片隅で懸命に生きる人びとを優しい眼差しで描き出した、壮大な叙事詩と呼ぶべき傑作と言えることでしょう。

映画『在りし日の歌』は、2020年4月3日(金)より角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショーです。



関連記事

新作映画ニュース

映画『劇場版BEM』公開日/予告動画。妖怪人間ベム最終章の主題歌はりぶとTK(凛として時雨)が担当!

「妖怪人間ベム」宿命にして最大の願いが叶えられる最終章。 ベムがついに人間に…!? 原作の持つ設定やメッセージ性を残しつつも、全く新しい解釈を施し舞台設定やキャラクターを大胆に変更した完全 …

新作映画ニュース

映画『前科者』監督は岸善幸!新作からおすすめ代表作まで評価とプロフィール紹介

映画『前科者』は2022年劇場公開、2021年秋に放送・配信予定 原作・香川まさひと、作画・月島冬二による人気マンガ『前科者』を実写映像化した、有村架純主演による社会派ヒューマンドラマ『前科者』。 罪 …

新作映画ニュース

大阪アジアン映画祭2020受賞結果発表!間瀬英正が最優秀男優賞・グランプリは『ハッピー・オールド・イヤー』

第15回大阪アジアン映画祭閉幕。 第15回大阪アジアン映画祭は、3月6日から15日までの10日間、全58作品の上映を終え、閉幕となりました。 本年は映画祭をできるかぎり縮小しようと試み、あわせて、人々 …

新作映画ニュース

SF映画『JOURNEY』“Jホラーの父”鶴田法男監督ら応援コメント到着!芦澤明子(カメラマン)も“圧倒的な映像”と称賛

映画『JOURNEY』は2023年10月21日(土)より池袋シネマ・ロサにて限定劇場公開! 弱冠21歳(制作当時)にして「SKIPシティアワード賞2022」、2023年には欧州最大の日本映画祭であるド …

新作映画ニュース

映画『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』あらすじ/キャスト/日本公開日/上映館。社会派感動作にセバスチャン・スタンが初主演!

ベトナム戦争で自らの命を犠牲にして仲間を救った英雄。 名誉勲章は30年も却下され続けたのか。 1966年4月、ベトナム戦争で多くの兵士たちの命を救うために命を捧げた空軍兵がいました。 彼の名は、ウィリ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学