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Entry 2020/03/06
Update

映画『もち』あらすじ/キャスト/公開日。岩手の祭畤⼤橋から着想を得た日本の伝統と“今”を生きる少女の葛藤

  • Writer :
  • 大塚まき

フィクションなのかノンフィクションなのか…
実在する⼈々が演じ、彼らの追体験がドラマになった奇跡の⼀作

岩⼿県⼀関市⾻寺村を舞台に、そこに⽣きる⼀⼈の少⼥を主⼈公に⼟地の伝統の⾷⽂化【もち】にまつわる⼈々の出逢い、別れ、そして成⻑を描く物語『もち』。


(C)TABITOFILMS・マガジンハウス

映画『もち』が2020年7月4日(土)より渋⾕・ユーロスペースにて公開されることが決定。

また、このたび併せてポスタービジュアルと予告編も解禁されましたのでご紹介します。

映画『もち』について


(C)TABITOFILMS・マガジンハウス

【もち】をモチーフにみずみずしい⻘春ストーリーを紡いだのは、500本以上の映像作品のほか、蒼井優主演の映画『たまたま』(2011)を監督するなど、幅広く活躍する映像ディレクターの⼩松真⼸。

岩⼿県⼀関を訪れた⼩松監督が、そこで出会った少⼥・ユナ(佐藤由奈)の中学⽣活最後の⼀年を追いながら⼀関の⾷⽂化や⼈々の想いを伝えるという、オリジナルのストーリーを構想しました。

ユナとの出会いについて⼩松監督は「神楽・鶏舞を復活させた本寺中学校が閉校してしまうと聞き、取材に⾏ったんです。その時校庭でひとり神楽を踊ってくれたのが由奈でした。その姿が本当に美しくカッコ良かった。彼⼥が放つ野性味に惹きつけられるものがありました」と語っています。

さらにもう⼀つ、⼩松監督を映画製作へと突き動かしたもの、それが本寺中学校の周辺を散策していた際に偶然⾒かけた祭畤⼤橋(落橋)でした。

2008年に起こった岩⼿・宮城内陸地震の際に真っ⼆つに折れた祭畤⼤橋を、災害の教訓を忘れないために折れたままの形で残したもの。

⼩松監督は祭畤⼤橋(落橋)を初めて⾒た当時の⼼境を振り返り、以下のように語ります。

「⼭深いところに折れた橋がそのままで残っている。それは本当に恐ろしい光景でした。何も知らずに“危なくないですか? なんでそのままにしているの?”と聞いたら、敢えて教訓として残しているんだと。聞いた瞬間に、⾃分が気軽に発した問いをとても後悔したとともに恥ずかしく思いました。なくなっていくものは確かに多い。でも、残していかないといけないものもあるんだと。これまではなんとか残ってきたが、今にも消えていきそうな⽇本の伝統や⽂化にもその裏に先⼈によって込められた意味があり、それを知ることがとても⼤切なんだ」

その想いから、この⼟地と⼈々によって⽣まれた⾔葉、伝統、そして感情をありのままに残すため、限りなくノンフィクションに近いフィクションという⼿法を選択

脚本は存在するものの、撮影時には脚本はないものとして、⼩松監督は演技経験のないキャストたちを導いてきました。

キャストの息遣いを⼤切に、その現場の空気や状況で内容も場所もその都度変化。

キャスト⾃⾝の実感のこもった⾔葉を活かした、エチュードを積み重ねていくようなスタイルで、⻘春のドラマでありながらドキュメンタリーさながらにリアルな肌触りを備えた、唯⼀無⼆のハイブリッドな映画が完成しました。

映画『もち』の予告編

このたび解禁された予告編では、「ずっと聞きたっかったんだけどね、なんでおばあちゃんのお葬式のときにあんなにもちつきたいって言ったの?」というユキの問いかけから、雪景色の中で臼でもちをつく様子から始まります。

⻑い間変わらぬ美しい⾵景、通っていた学校の閉校、友達との別れを描き出しながら、「忘れないためにはどうしたらいい」「努力しないとなくっなちゃうものなんて、なんだか本物じゃないみたい」というユキの葛藤も切り取られ。

悠久の時間の中育まれてきた伝統と、“今”を⽣きる少⼥の葛藤との対⽐が奥深いものを感じさせる映像になっています。

映画『もち』のポスタービジュアル


(C)TABITOFILMS・マガジンハウス

このたび解禁されたポスタービジュアルは、祖⺟の亡き後祖⽗とともにもちをつくユナの透明感溢れる表情をとらえた⼀枚の写真で構成。

忘れたくない 思い出せない そのあいだに わたしたちはいる”というコピーが象徴的なビジュアルとなっています。

映画『もち』の作品情報


(C)TABITOFILMS・マガジンハウス

【日本公開】
2020年(日本映画)

【監督・脚本】
⼩松真⼸

【エグゼクティブプロデューサー】
及川卓也

【撮影】
広川泰⼠

【キャスト】
佐藤由奈、蓬⽥稔、佐藤詩萌、佐々⽊俊、畠⼭育王

映画『もち』のあらすじ


(C)TABITOFILMS・マガジンハウス

岩⼿県⼀関市本寺地区。⼭々に囲まれ、冬には雪深くなる地で、古くから根付いているのは、【もち】の⽂化。

“⼀つの⾅(うす)でもちをついて、みんなで⾷べる”それは当たり前のように、ずっと続いて来た習慣でした。

おばあちゃんの葬式で、⾅と杵でつく昔ながらの⽅法でどうしても餅をつきたいと⾔い張るおじいちゃん。

家族は、そんな⾯倒なことをしなくても、餅つき機で同じように美味しいものができると⾔ったが、頑なに餅をつくと言い張ります。

ユナはそんなおじいさんの⼼の機微を感じてそっと寄り添いました。

⽣徒の減少から中学校の閉校が決まり、最後の⼀年を終えると学校もなくなります。

ユナの世界も刻々と変化をしていき、友⼈、憧れの⼈が離れていくことへの不安を覚えていく…。

そして彼⼥は問います、「努⼒しないと忘れてしまうものなんて、なんだか本物じゃないみたいー」。

映画に刻まれた少⼥のかけがえのない瞬間が⼼に突き刺さるのは、「忘れたくない」思いと「思い出せない」現実の狭間です。

私たちはいつも、その間にいるから…。

まとめ


(C)TABITOFILMS・マガジンハウス

本作は、800年前の景観とほぼ近い姿で守られてきた岩⼿県⼀関市本寺地区に実際に住む少⼥、ユナを通して描かれます。

⼤切なのに、いつか思い出せなくなる⽇が来るのだろうか”と14歳の少⼥の葛藤から生まれる問いが私たちに向けられます。

本作のエグゼクティブプロデューサーを務めた及川卓也からは、本作の公開に伴い以下のようなコメントが届きました。

「コロカルというメディアを始め、故郷である岩⼿・⼀関との関わりが再開した。
⽥舎にいる時には東京しか⾒えていなかったが、いま逆に、地域に惹かれる。
⽣まれてから⽼いるまで⼤切なものを持ち続けるひと。そして、そのあり様が伝わらない危機。
⼩松真⼸は『もち』を作る過程で⼀関に深く⼊り、奇跡のように「地域のいま」を掬い上げてくれた。
これは⼀関だけの映画ではなく、⽇本のすべての⼈々の感覚を呼び起こす物語。現代に⽣まれた神楽のような神話なのかもしれない。

⼩松真⼸監督も「今にも消えていきそうな⽇本の伝統や⽂化にもその裏に先⼈によって込められた意味があり、それを知ることがとても⼤切なんだ」と語っているとおり、まさしく本作が“地域のいま”をスクリーンに映し出されたことに期待が膨らみます。

映画『もち』は、渋⾕・ユーロスペースにて2020年7月4日(土)よりロードショーです。

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