井筒和幸監督、8年ぶり待望の新作
あぶれ者たちの群像劇を通して逆照射される、もう一つの昭和史として描き出された映画『無頼』。
『パッチギ!』『黄金を抱いて翔べ』など、数々の話題作を世に送り出してきた鬼才・井筒和幸監督の8年ぶりとなる新作『無頼』が、2020年5月16日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開することが決定しました。
この度、井筒和幸監督のコメントが届きましたので、本作の見どころと併せてご紹介します。
映画『無頼』について
本作の舞台は、誰もが“欲望の資本主義”を追いかけた戦後日本。
敗戦直後の動乱期から所得倍増、奇跡の高度経済成長、政治の季節とオイルショック、さらにはバブルの狂騒と崩壊までを描き出します。
激しく変転を続けた昭和という時代が、世間という“良識の監獄”の外側で生き抜いたヤクザ者たちの群像劇を通して逆照射されます。
監督を務めたのは、1975年のデビュー作以来、社会のあぶれ者、はみ出し者を冷徹かつ共感に満ちた視線で描き続けてきた井筒和幸監督。
本作は、井筒和幸監督の真骨頂にして集大成とも言える、もう一つの戦後史を映し出します。
極貧ゆえに社会から頭を抑えつけられ、飢えや冷たい眼差しに晒されながらも、何にも頼らず、ただ己の内なる掟に従って真っ直ぐ生きた主人公。
やがて彼は一家を構え、同じような境遇のはみ出し者たちを束ね、命懸けの裏社会を駆け上がっていきます。
観る者の皮膚をヒリつかせる無頼漢たちの群像模様は、さながら井筒和幸版の『ゴッドファーザー』のようにフィクションでありながら社会の本質を抉り、昭和という時代を突き動かしてきた大衆の欲望を可視化させます。
映画『無頼』のキャスト紹介
参考:主演松本利夫が組長の劇団EXILE 松組ツイッター
「MATSUぼっち05レコード」
上演中です‼️
是非劇場に遊びに来て下さい(^^) #松組 #MATSUぼっち05レコード pic.twitter.com/bfFpjMjAt3— 劇団EXILE 松組 (@matsugumi_ldh) February 7, 2018
背景にさまざまな事件や社会風俗が盛り込まれた物語の主役のアウトサイダーを演じるのは、EXILEのパフォーマーとして活躍し、現在は俳優としてテレビ・舞台で活躍する松本利夫。
抜群の気っぷの良さで彼の人生を支えた妻・佳奈役には、『純平、考え直せ』(2018)のヒロインに抜擢されるなど女優としての活躍も目覚ましい柳ゆり菜。
他にも木下ほうか、ラサール石井、升毅、小木茂光、隆大介、外波山文明、フォークシンガー三上寛、日本屈指のドラマーとして名高い中村達也などの実力派が脇を固め、さらにはオーディションで選ばれた総勢300人もの俳優陣が練達の井筒演出のもと全身全霊の芝居で見せ場を競っています。
井筒和幸のプロフィール
参考動画:『黄金を抱いて翔べ』(2012)
井筒和幸は、日本を代表する映画監督です。奈良県出身の1952年12月13日生まれ。
県立奈良高校に在学中から映画制作を始めます。1975年、高校時代の仲間と作ったピンク映画『行く行くマイトガイ 性春の悶々』で製作・監督デビューを果たします。
『ガキ帝国』(1981)で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞、『岸和田少年愚連隊』(1996)で第39回ブルーリボン最優秀作品賞を受賞。
日本人の少年と在日朝鮮人の少女の恋を描いた『パッチギ!』(2004)が大ヒット、日本アカデミー賞優秀監督賞、優秀脚本賞(羽原大介と共同)のほか多数の映画賞を受賞しました。
2007年には続編『パッチギ! LOVE&PEACE』を監督。その他の作品に『二代目はクリスチャン』(1985)、『ゲロッパ!』(2003)、『黄金を抱いて翔べ』(2012)などを手がけています。
また、TVやラジオでコメンテーターとしても活躍しています。
井筒和幸監督のコメント
本作の公開決定にあたり、井筒和幸監督は映画『無頼』に込めた想いを以下のように語っています。
改めて振り返ってみると、社会のあぶれ者、はみ出し者ばかり描いてきました。デビュー作の『ガキ帝国』では1968年、大阪ミナミを闊歩する少年院上がりの不良少年たちを。『犬死にせしもの』では終戦直後、陸軍の復員兵上がりの無法者たちを。『岸和田少年愚連隊』では1976年、大阪の田舎町にくすぶる格差教育の落ちこぼれの不良少年どもを。『パッチギ!』では1968年、京都ゼロ番地に生きる在日朝鮮人の高校生たちを。『ヒーローショー』では2010年、都市部を彷徨うまさに平成の「失われた世代」のはぐれ者たちを。そして『黄金を抱いて翔べ』では金塊強奪の夢に命を賭けた虚無的な流れ者たちを──。
時代や設定こそ違えど、登場人物たちは誰もが社会から無用とされ、貧困と差別、汚辱に暴力で抗ってきた「寄る辺なき者たち」だと言えます。
今回の『無頼』でもやはりスクリーンを彩るのは、欲望の昭和を徒手空拳で生き抜いた、文字どおり無頼の徒たちです。
時代は昭和から平成、令和へと移っても、貧困や差別、孤立は何も変わっていません。本作ではアウトロー社会という、世間の良識から排除されたネガ画像をあえて描くことで、僕なりの昭和史を逆照射してみたいという思いもありました。ことの是非を語るのではなく、ただ、こんなふうに無頼な生き方を通した男たちがいたということを、現代の若者に見せたいと思ったんです。そして、自分を抑えつけるあらゆる抑圧に対して一歩も引かなかった彼らの人生を通じて、“くじけるな、寄る辺なきこの世界を生き抜け”と励ましてあげたい。それがこのシャシンに込めた、映画作家としての僕の願いです。
井筒和幸監督のコメントから、一貫して描き出してきた“社会のあぶれ者、はみ出し者”たちの魂が集結したかのように本作へとつながっていることが伺えます。
“くじけるな、寄る辺なきこの世界を生き抜け”という井筒和幸監督からのエールを胸にぜひ劇場でご覧ください。
映画『無頼』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本映画)
【監督】
井筒和幸
【キャスト】
松本利夫(EXILE)、柳ゆり菜、中村達也、ラサール石井、小木茂光、木下ほうか、升毅
映画『無頼』のあらすじ
太平洋戦争に敗れ、貧困と無秩序の中に放り出された日本。
焼け跡から立ち上がった大衆は、高度経済成長のもとで所得倍増を追い、バブル崩壊まで欲望のままに生きて、昭和が去ると共に勢いを止めました。
理想の時代から、夢の時代、そして虚構の時代へ。
誰もが豊かさを欲する社会の片隅で、何にも怯むことなく、たった一人で飢えや汚辱と闘い、世間のまなざしに抗い続けた“無頼の徒”がいました。
やがて男は一家を構え、はみだし者たちを束ねて、命懸けの裏社会を生き抜いていきていきます…。
過ぎ去った無頼の日々が今、蘇える。正義を語るな、無頼を生きろ!
まとめ
2度目の東京オリンピックに向けて官民挙げて「夢よ再び!」と湧き上がる2020年、井筒和幸監督が放つ魂の146分。
偽りのノスタルジーに彩られた昭和回顧ブームを凌駕する、本格ハード・エンターテイメントが誕生しました。
井筒和幸監督、8年ぶり待望の新作映画『無頼』は、2020年5月16日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次ロードショーです。