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映画『キャッツ』がゴールデンラズベリー賞6冠!最低主演男優賞から名誉挽回賞まで【第40回ラジー賞2020】

  • Writer :
  • 松平光冬

2020年に発表された、第40回ゴールデン・ラズベリー賞!

その年に公開された映画の中から最低作品を選ぶ、ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)。

例年ですと、アカデミー賞授賞式の前夜に発表されるのですが、節目となる第40回となった今年は、少々イレギュラーな展開となりました。

最低映画を決める「ラジー賞」とは?

「ラジー賞」の通称で呼ばれるゴールデン・ラズベリー(Golden Raspberry)賞は、映画製作者から宣伝に転身したジョン・ウィルソンが、1981年に創設しました。

「Raspberry」は、「野次る、からかう」という意味の動詞「Razz(ラズ)」の名詞形で、果実の「木イチゴ」の意味もあります。

選考は、「ゴールデン・ラズベリー賞財団」に加入するおよそ1000人の会員の投票で決まりますが、会費の40ドル(約4,200円)を払えば誰でも参加可能。

授賞式は基本的にアカデミー賞授賞式の前日に行われ、受賞者には、木イチゴと8mmフィルム缶のオブジェを金色に塗ったトロフィーが贈られます。

しかし、第40回となる2020年は、本家(?)のアカデミー賞の日程が、例年より2週間前倒しになったことで延期に。

さらに新型コロナウイルス流行の影響で授賞式も中止となり、受賞結果はビデオ配信で発表されました。

ちなみに、昨年(第39回)の最低作品賞は『俺たちホームズ&ワトソン』(2019)最低主演男優賞は『華氏119』(2018)のドナルド・トランプ米大統領、そして最低主演女優賞は『パペット大騒査線 追憶の紫影(パープル・シャドー)』(2019)のメリッサ・マッカーシーが、それぞれ受賞しています。

最低作品賞ほか6部門受賞『キャッツ』

参考映像:『キャッツ』(2019)

第40回の最低作品賞となったのは、トム・フーパー監督のミュージカル映画『キャッツ』

英国の詩人、T.S.エリオット原作の人気ミュージカルを、『英国王のスピーチ』(2011)のフーパー監督が実写化した同作ですが、ティーザートレーラーが昨年7月に公開されるやいなや、猫に扮したキャストたちのビジュアルに非難轟々

ラジー賞の公式ツイッターも、「ラジー賞受賞は確実!」と本命視していたほどだったので、ある意味順当な結果といえるかも。

さらには最低助演男優賞(ジェームズ・コーデン)、最低助演女優賞(レベル・ウィルソン)、最低スクリーン・コンボ賞(2匹の猫と2つの半人間の毛玉なら誰でも)、最低監督賞、最低脚本賞も含めた、最多6部門の受賞となってしまいました。

最低主演男優賞はジョン・トラボルタ

参考:『The Fanatic(原題)』(2019)

最低主演男優賞は、すっかりラジー賞常連となってしまったジョン・トラボルタが、『The Fanatic(原題)』と『ワイルド・レース』で受賞

『The Fanatic』は、ジョン・トラボルタ扮する映画マニアが、デヴォン・サワ扮するアクション俳優をストーキングしていくスリラー。

しかし、トラヴォルタの奇妙なビジュアルと陰惨なストーリーのギャップが悪い意味で目立ちすぎ、批評的に失敗したことが受賞の決め手になったようです。

カーレースに懸ける親子の絆を描く『ワイルド・レース』は、ラジー賞の巻き添え事故に遭ったという感じでしょうか。

最低主演女優賞はヒラリー・ダフ

参考映像:『ハリウッド1969 シャロン・テートの亡霊』(2019)

最低主演女優賞は、ヒラリー・ダフが、『ハリウッド1969 シャロン・テートの亡霊』(2019)で受賞。

クエンティン・タランティーノ監督の『ワンスアポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)でも扱われた、1969年のシャロン・テート殺害事件を題材にしたサスペンスで、テートをダフが演じました。

アメリカでは、発生から半世紀経ったということで、事件の検証を狙いとした映画やテレビ番組がいくつか制作されましたが、本作はその中でもホラーテイストを前面に押し出しています。

そのアプローチが災いしたのか、あらゆる批評サイトで酷評されてしまいました。

そもそも、ラジー賞はゴシップ面で世間を騒がせたスターに目を付ける傾向があります。

そのため、プライベートでいろいろ話題を振りまいてきたダフがターゲットにされたのも予想の範疇ではあったものの、近年は復調の兆しも見えていただけに、少々気の毒ではあります。

最低リメイク、パクリ、続編賞ほか受賞『ランボー ラスト・ブラッド』

参考映像:『ランボー ラスト・ブラッド』(2019)

評価が低いリメイクや続編、または人気映画を“パクった”、とみなされる作品に贈られる最低リメイク、パクリ、続編賞は、シルヴェスター・スタローンが5度目のランボーを演じた『ランボー ラスト・ブラッド』(2020)が受賞。

前作『ランボー/最後の戦場』(2008)でシリーズ有終の美を飾った…と思われていたのに、まさかの最終作が登場。

スタローンは、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)で名誉挽回賞を得たのに、今回で最低主演男優賞でもノミネートされてしまい、再びラジー賞常連に返り咲いた状態に……。

なお今回のラジー賞から、「人命と公共物破壊がひどすぎる映画賞」が新設

『ヘルボーイ』(2019)、『ジョーカー』(2019)といった並み居る競合作を押しのけ、この部門でも受賞となりました。

『ランボー ラスト・ブラッド』は、日本では2020年6月12日(金)公開予定ですが、ラジー賞を取ったことで、公開中止→DVDスルーといった事態にならないことを、切に祈ります。

名誉挽回賞はエディ・マーフィ

参考映像:『ルディ・レイ・ムーア』(2019)

長らくの人気・キャリア低迷から見事にカムバックした、とみなされるスターに与えられる名誉挽回賞は、Netflix作品『ルディ・レイ・ムーア』のエディ・マーフィに。

1970年代に活躍したコメディアンのルディ・レイ・ムーアが、人気回復のために映画作りに執念を燃やす様を描いた本作は、彼を演じたエディの実人生と重なるとして、高い評価を得ました。

エディは現在、『ビバリーヒルズ・コップ』(1984)の4作目と『星の王子 ニューヨークへ行く』(1988)の続編に着手しており、期待が高まります。

まとめ

参考映像:ラジー賞授賞式でのハル・ベリーのスピーチ

以上、今年の主なラジー賞の結果を挙げましたが、昨年に続いて強調しておきたいのは、ラジー賞には何の権威も名誉もないということです。

『キャットウーマン』(2004)で自身の最低女優賞を含むラジー賞4部門を受賞したにもかかわらず、授賞式に登壇してスピーチを行ったハル・ベリーは、こう語っています。

アカデミー賞を受賞したからといって、それが優れた作品とは限らないし、逆にラジー賞を受賞したからといって、必ずしもそれが悪い作品とは限らないわ。

『キャッツ』を観て感動した人は、ラジー賞を獲ったからといって気落ちしたり、怒ったりする必要は全くないのです。

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