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映画『桜のような僕の恋人』あらすじ感想と評価解説。キャストの中島健人と松本穂香らが“異なる時間”の狭間で愛の本質を演じる

  • Writer :
  • ほりきみき

映画『桜のような僕の恋人』は 2022年3月24日(木)Netflixにて全世界独占配信。

Netflix映画『桜のような僕の恋人』はカメラマンを目指す朝倉晴人と、“人より早く年を取る”早老症という難病を発症した恋人、有明美咲の運命を描いています。

朝倉晴人を演じるのは中島健人。Sexy Zoneでのきらきらしたオーラを封印し、等身大の若者をリアルに体現しました。一方、有明美咲を演じた松本穂香は前半に明るく元気なヒロインを作り上げ、後半は早老症で苦しみながらも晴人を想い続ける健気さで涙を誘います。

作中での中島健人と松本穂香の魅力を解説するとともに、“愛すること”に対して本作が投げかける問いを探っていきます。

映画『桜のような僕の恋人』の作品情報

【配信】
2022年(日本映画)

【原作】
宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社文庫刊)

【監督】
深川栄洋

【脚本】
吉田智子

【主題歌】
Mr.Children「永遠」(TOY’S FACTORY)

【出演】
中島健人、松本穂香、永山絢斗、桜井ユキ、柳俊太郎(柳は旧漢字が正式表記)、若月佑美、要潤、眞島秀和、モロ師岡、及川光博

【作品概要】
原作は2017年に発行された宇山佳佑の小説「桜のような僕の恋人」。泣ける恋愛小説として話題となり、さらにTikTokで人気に火がつき発行部数70万部を突破したベストセラー小説です。

主人公の朝倉晴人を演じるのは原作ファンを公言しているSexy Zoneの中島健人。早老症に罹ってしまうヒロイン有明美咲はNHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)で主人公の同僚・澄子役を演じて一躍注目を浴びた松本穂香が演じました。

『神様のカルテ』(2011)などで知られる深川栄作が監督を務めています。

映画『桜のような僕の恋人』のあらすじ

美容師の有明美咲(松本穂香)に恋をした朝倉晴人役(中島健人)は彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指すことに。

そんな晴人に美咲も惹かれ、やがて2人は恋人同士になります。

しかし、幸せな時間は長くは続きませんでした。美咲は、人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまったのです。

老いていく姿を晴人にだけは見せたくない。残酷な現実を前に美咲はある決断をしました。

何も知らない晴人は美咲の変化に戸惑います。

映画『桜のような僕の恋人』の感想と評価

役からにじみ出る中島健人の「王子」の精神

冒頭の美容室の場面。はつらつと髪を切る美咲に話しかけられて、晴人のぼさぼさの前髪に隠れた瞳がせわしなく動く様は、彼の緊張している心情が伝わってきます。

さらに美咲の何気ない一言一言が、晴人に大きな影響を及ぼしていることがモノローグで語られ、“誰かを好きになるってこういうことだよね”と観ている者の共感を誘います。

晴人はカメラマンを目指していましたが、仕事の厳しさにすぐ逃げ出してしまった過去がありました。美咲から仕事を聞かれて、ついカッコつけて「写真を少し」と言ったところ、カメラマンと勘違いされてしまいます。

しかし、この本作では勘違いを訂正できずに嘘を重ねてしまうことはありません。初デートの際に美咲へ真実を伝え、「変わりたいんです。逃げ続けてきた自分から。ちゃんと自分を誇れるように。あなたに好きになってもらえるように」と言い、恋にも仕事にも実直に向き合っていくのです。

この真っすぐな行動こそが晴人の人物像をよく表しており、それは中島健人のイメージとも重なります

ジャニーズ屈指の王子様キャラながら、本作ではきらきらオーラを封印している中島健人。彼が演じた「等身大の若者」といえば、進学校に通いながらも挫折し、逃げるように農業高校に入学した主人公を演じた『銀の匙 Silver Spoon』(2014)、他人と本音で向き合うことができない高校生を演じた『心が叫びたがってるんだ。』(2017)などが浮かびます。

しかし、上記2作と『桜のような僕の恋人』が大きく違うのが、本作は恋愛作品であるという点です。

何気なく挟み込まれる、いくつものデートの場面。晴人と美咲は本当に楽しそう。晴人は“何をしたら美咲が喜ぶか”をいつも考えているのがわかります。そして「好き」という意思をはっきりと示す。それらは実は、恋人としてすごくポイントが高い。恋する女の子がいちばん気にするところですから。

美咲が早老症に罹ったことを知ってからも、姿を見られることを恐れる美咲の気持ちを慮りつつ寄り添います。その献身ぶりは一見すると微笑ましささえ感じさせますが、それがなぜかリアルに見えてしまう。

まさしく中島健人が内包している、“王子様”の精神がなせる業。その結果、観る者は中島健人よりも年齢が上であっても自分を美咲に投影して、この恋を堪能してしまう。

オーラそのものは消していますが、行動的には“王子様”がにじみ出て、それを幅広い世代が自分に向けられたものとして感じることができるのです。

松本穂香の演技の「深み」が見えるヒロイン像

松本穂香が演じる美咲はちょっと早とちりで、思ったことをはっきりと口にしてしまうところがあるものの、明るく気さくな性格。美容師として初めてのお客さんとなった晴人に対して、一生懸命接します。カメラマンの夢から逃げ出して、自分に自信を失っていた晴人に美咲が輝いて見えたのもうなずけます。

注目してほしいのが、熱を出してデートをキャンセルした美咲を晴人が見舞いに来て、美咲がしていたマスクを外した場面。「すっぴんだから恥ずかしい」と照れるものの、「きれいです」と言われてうれしそうにする姿は本当に可愛らしいです。

一方で作中後半では、早老症を発症したことで身体が急激に老化するのに合わせて、特殊メイクが施されます。しかし外見的なことだけでなく、動作、声のトーンやテンポも少しずつ変えていきました人よりも早く老いていく恐怖から内向的になっていく美咲の精神的変化、特に晴人の愛を失うことへの不安が痛烈に伝わってきます。

愛されているのは外見ではなく、内面だと思いつつも、老人のようになった自分の姿を愛する人が受け入れてくれるとは思えない。美咲はそうした切ない気持ちを思わず、兄の婚約者にぶつけました。

おいしい家族』(2019)以降、出演する映画の多くが主演、もしくはヒロインですが、恋愛映画での主演は初めて。しかし、様々なタイプを演じてきた経験が松本穂香の演技に深みを持たせていています。

まとめ

美咲の発病は本人だけでなく、彼女を大切に思う人々にも様々な葛藤を生じさせます。「何としても妹を助けたい」。早くに両親を亡くし、親代わりとして妹を育ててきた兄は美咲に民間療法を受けさせました。

しかし、その民間療法はどう見ても怪しい。兄の婚約者は冷静になるよう伝えますが、兄は「身内でないからそんなことがいえる」と聞く耳を持ちません。兄と婚約者の関係にぎこちなさが生じます。晴人と美咲だけでなく、兄と婚約者の関係性の変化にも触れ、恋愛映画として厚みが生まれました

年齢を重ねても愛し合っている人たちはたくさんいます。老いること自体は、愛し合う上で障害にはならない。しかし、これはあくまでも2人が一緒に老いていった場合。

愛するというのは、相手のどの部分に対して感じることなのか。1人だけが急激に老いていくことも愛があれば乗り越えられるのか。この作品は恋愛映画として、そんな問いを観る者に投げかけます。

奇跡は起こらないのかもしれません。ですが愛ゆえの葛藤を経験した先には、人として一回りも二回りも大きくなれるのかもしれないという希望を本作は感じさせます。

またエンドロールでは、運命が晴人と美咲を早くから近づけていたことが明かされます。本編が終わっても、最後まで二人の愛の物語を楽しめるはずです。



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