映画『片袖の魚』は2021年7月10日(土)より新宿 K’s cinemaで公開予定!
日本で初めてとなるトランスジェンダー女性の俳優オーディションを開催し、主役に選ばれたのはファッションモデルとして活躍しているイシヅカユウ。
自身を不完全だと思い込み、自信がもてないトランスジェンダーの女性が新たな一歩を踏み出そうとする、ささやかながらも確かな一歩を描く映画。
本作は、2021年のホノルル・レインボーフィルム・フェスティバルとアウトサウス・クィアフィルム・フェスティバルに正式招待されました。
映画『片袖の魚』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原案】
文月悠光「片袖の魚」 (『わたしたちの猫』/ナナロク社刊)
【監督・脚本】
東海林毅
【キャスト】
イシヅカユウ、広畑りか、黒住尚生、猪狩ともか、田村泰二郎、原日出子
【作品概要】
監督を務めた東海林毅監督は、「劇場版 喧嘩番長」シリーズや『お姉チャンバラ Vortex』(2009)『はぐれアイドル地獄変』(2020)などの商業映画も手がける一方で、自主映画製作も手がけています。
自主映画として製作した、ゲイでマゾヒストの老人の姿を描いた短編『老ナルキソス』(2019)や『ミソジニー(女性嫌悪)と男性社会の持つホモソーシャリティというテーマを取り扱った短編『ホモソーシャルダンス』は国内外のLGBTQ+の映画祭で高い評価を得ています。
日本で初めてとなるトランスジェンダー女性の俳優オーディションを開催し、主役を勝ち取ったイシヅカユウは、体が男性として生まれながら女性のアイデンティティを持っているトランスジェンダーモデルとして様々な分野で活躍するファッションモデル。本作が映画初出演となります。
映画『片袖の魚』のあらすじ
トランスジェンダーの女性である新谷ひかり(イシヅカユウ)は、時折人々の配慮のない言動に言いようのない壁を感じていました。
しかし、友人で同じくトランスジェンダーの女性・千秋(広畑りか)や上司の中山(原日出子)、同僚の辻(猪狩ともか)ら理解者に恵まれ、魚の水槽の設置や管理をする仕事に就いていました。
ある日、出張で故郷の街を訪れることになったひかり。ふと過去の記憶がよぎり、高校の同級生であった久田敬(黒住尚生)に、今の自分を見てもらおうと連絡をしますが…
映画『片袖の魚』の感想と評価
印象的な“水槽”
本作『片袖の魚』では“水槽”が印象的に使われています。
冒頭、ひかりの独白で原案となった文月悠光の詩「片袖の魚」の一部が朗読され、最後の一編に「彼らの暮らす水槽は、あまりに澄んでいたから。」という言葉があります。
ひかりは自分が不完全な存在であると思い、自信が持てずにいます。その詩はあまりに澄んだ水槽に、不完全な自分は暮らせないと思うひかりの心情のあらわれかのようです。
海水魚“クマノミ”に寄せたものとは
また、ひかりにとって思い出深い魚がクマノミです。クマノミは雄性先熟という、群れのメスがいなくなったりした場合、生殖の問題が起きると雄が雌になるという性質があります。
ひかりはクマノミのそのような性質に自分自身と近いものを感じているのかもしれません。
社会を水槽になぞらえ、ひかりが感じている息苦しさや他者との壁を水音を用いて印象的に表現しています。
更に本作は新型コロナウイルス対策として少人数で撮影が行われ、全編スマートフォン1台で撮影が行われました。ひかりに寄り添うように丁寧に撮影された映像が彼女の新たな一歩を清々しく描き出します。
日本で初めてトランスジェンダーのオーディションを経て、イシヅカユウがトランスジェンダーの女性を演じた本作は、LGBTQ+映画であると共に、一人の人間として自分らしく生きようとする全ての人に届く映画になっています。
まとめ
トランスジェンダーモデル・イシヅカユウがトランスジェンダーの女性が新たな一歩を踏み出す姿を描いた映画『片袖の魚』。
水槽の中で生きる魚たちに自分自身や社会を投影し、息苦しさや言いようのない壁を演出し、その中でも自分らしく生きていこうとするひかりの姿に希望を感じられます。
原案の文月悠光が映画のために書き下ろした主題歌「RED FISH」にも注目です。
映画『片袖の魚』は2021年7月10日(土)より新宿 K’s cinemaでロードショー。