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Entry 2019/08/17
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映画「怪談新耳袋Gメン」田野辺尚人×山口幸彦インタビュー| 若手監督の活躍はシリーズ前作の打倒からはじまる

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  • Cinemarche編集部

2019年8月23日(金)よりキネカ大森で開催される、毎年恒例となった「夏のホラー秘宝まつり2019」。

「夏のホラー秘宝まつり」を夏のイベントとして定着させ、様々なホラー映画を送り出し、日本のホラー映画界の最先端で活躍している、山口幸彦プロデューサー

そしてコアな映画ファンに熱烈に支持される雑誌「映画秘宝」編集長を長らく務め、今も「別冊映画秘宝」編集長として活躍、常に若き日本の映画クリエイターの動向に注目しているのが、田野辺尚人編集長


(C)Cinemarche山口幸彦プロデューサー(写真:左)田野辺尚人編集長(写真:右)

その2人が自ら“Gメン”のおじさんメンバーとして、自ら心霊スポットに体当たりの殴り込みをかける「新耳袋Gメン」シリーズ最新作が『怪談新耳袋Gメン 密林編』、そして「夏のホラー秘宝まつり2019」で上映される『怪談新耳袋Gメン 孤島編』です。

今回おふたりにインタビューを行い、シリーズの成り立ちから、新作映画の舞台裏について、その中で誕生する新たな才能など、熱く語って頂きました。

【連載コラム】「夏のホラー秘宝まつり:完全絶叫2019」記事一覧はこちら

「新耳袋殴り込み!」の原点は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』


(C)2019キングレコード

──「新耳袋殴り込み!」を始めたきっかけは何ですか?

田野辺尚人(以下、田野辺):僕が「映画秘宝」を初代編集長の町山智浩さんとはじめて、彼がアメリカに行った後に編集を任されました。新作映画をどう紹介しようかを試行錯誤していた時に、1999年に『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を試写会で観たとき、「俺はコレと同じ話を知ってるぞ」と思ったんです。

それは「新耳袋」(角川文庫)の第四夜に収められた「山の牧場」というエピソードです。「新耳袋」の著者の木原浩勝さんと中山市朗さんは大阪芸大出身で、卒業製作に映画を作るために山奥にロケに行く。そのロケハン中に、訳のわからない廃墟に辿り着く。その廃墟は2階があるのに階段が無いとか、その2階の裏の土手から入ると、壁一面にお札が貼ってあり、
隣の部屋に入ると襖に「たすけて」という殴り書きが残っていた。ここにいるとマズいという事で、ほうぼうの体で逃げ帰る。

そんな話なんですが、異様な場所に映画クルーが入るという「山の牧場」は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』につながるものがあると思ったんです。

それで「映画秘宝」で、「山の牧場」を探しに行こうという企画をやったんです。「あれは面白かったね」という反響もあった後、山口さんが1本5分の『怪談新耳袋』(TVドラマ、2003年〜)をスタートさせた。

そこで原作者のお二人に取材することができて、『怪談新耳袋 殴り込み!』のスタートにつながります。ですから原点は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』になると思います。

記事を読まれた木原さんと中山さんが「馬鹿な事するなぁ」と苦笑いされましたけど、著者側からすると映画雑誌がそんな事をしたのが衝撃だったようですね(笑)。

若手監督の活躍の場であるシリーズ


(C)Cinemarche

──そこから「怪談新耳袋Gメン」シリーズへと続いていく訳ですね。

山口幸彦(以下、山口):4年前に「怪談新耳袋殴り込み!」が一度解散になり、しばらく休んでいたんですが、「夏のホラー秘宝まつり」という映画祭をキングレコードさんで毎年やるようになり、「Gメン」「怪談新耳袋殴り込み!」シリーズを復活させる運びとなって、昔のメンバー全員に声をかけて集まったのが今のメンバーで、やったらやったで面白かったんです。

そうして復活してから「怪談新耳袋Gメン」は、毎年やっています。

田野辺:『怪談新耳袋殴り込み!』が始まるきっかけは、最初の4本を撮った豊島圭介監督が「新耳袋」の劇場版で、2006年『怪談新耳袋 ノブヒロさん』という作品の監督されたことでした。

そのDVDの特典映像で、我々が“ノブヒロさん”のモデルになった幽霊にストーキングを受けた体験をした人に、大阪でインタビューさせてもらったんです。その時に原作者の1人、中山市朗さんから、ある恐ろしい幽霊映像を見せてもらって、ここは凄いから行こうという事になり、豊島監督と山口さんを無理やりその心霊スポットに連れていった(笑)。

それがきっかけになったのか、最初はDVDスルー作品の形で「怪談新耳袋 殴り込み!」シリーズを、豊島監督が4本作られました。

その後、村上賢司監督、青木勝紀監督と続いて、今ではデザイナー、ライターとして活躍する市川力夫監督が「地獄編」「魔界編」(13年)を手がけます。彼は「映画秘宝」でアルバイトをしていた当時から『新耳袋殴り込み!』に参加していて、シリーズの今後を大きく変えたかもしれない試みに挑戦しました。

そこで一度シリーズが終わり、新たに『新耳袋Gメン』がスタートした時には、映画の作り手も世代交代があり、「学生残酷映画祭」や「MOOSIC LAB」から出てきた、若手監督たちが現場を担うことになったわけです。

撮影現場に応援で来てくれた人たちも、『太陽を掴め』で高評価を得ている中村祐太郎監督、今回の「夏のホラー秘宝まつり2019」で『星に願いを』が上映される佐々木勝巳監督といった面々がいて、実はタイトルロールに、これから伸びる若い監督たちの名前が入っているのが「怪談新耳袋Gメン」の隠れた面白さだったりします。

隣にある「冒険」

山口幸彦(「新怪談耳袋Gメン」シリーズのプロデューサー)


(C)Cinemarche

──シリーズの中で拘りは何かありますか?

山口:男の夢って、UMAを探しに行こうとか、UFOを探しに行こうとか色々あると思うんです。

その中で心霊スポットに行く、幽霊を見ようというのは、一番お手軽で、行こうと思えば、夜の墓場に行けばいい。すぐ隣にある冒険なんです。そんな感覚を守りたというのはあります。

──あえて女人禁制で男だけで怪しい場所に行くのも、何か意図があるのでしょうか。

山口:単純に、女の子がいると皆が意識してカッコつけるからです(笑)。

カッコつけて怖がらなくなると、素の反応が出なくなるので女子は入れない。それだけです。別に女の人が嫌いな訳ではなく、好きが故に、入れない(笑)。

豊島圭介監督による大きな功績

田野辺尚人(「別冊映画秘宝」編集長)


(C)Cinemarche

田野辺:念押しになりますが、どこの誰とも知らない無名のおじさんたちが、心霊スポットに行くだけで緊張感と面白さが同居する作品の骨組みを作ったのはやはり豊島圭介監督です。

彼自身も元々自主映画からスタートして、渡米して映画の勉強をしたキャリアを持っているけれど、この企画では役者さんも芸人も呼べない、出るのは素人だけという過酷な条件だった。

それで心霊スポットドキュメントを作ってくれという、この山口プロデューサーの無茶振りに対して豊島監督は、相当の試行錯誤をしているんです。

最初はまず現場ありきで「新耳袋」の本の中に出てくる現場に行ってみる。そこで素人の出演者たちがどんなリアクションをするか、面白いキャラクターを見つけてそのテイストを引き出したり、様々な挑戦をした。

作品によっては、彼の友人の作曲家スキャット後藤さんに、その現場の雰囲気に合わせたオリジナルの音楽の作成依頼をしたりもしています。

シリーズのアイコンになっている取材現場にいる人間が横並びになって歩く、ビジュアルをはじめ、豊島監督が最初の4本で形にしていった、後に鉄板となるフォーマットがあるんです。

その点で、ほぼ同時期に出て来た投稿系の「怪しい映像が撮れた現場に行ってきました」という作品群と「新耳袋殴り込み!」はまるで違うものになりました。

豊島監督が厳しい条件の中、試行錯誤しながら作った、どこの誰とも知らない人たちが、心霊スポットに行ってなにか体験する様子を、面白可笑しく、怖くするところは怖くする作風が、結果としてシリーズを愛されるものにしたのだと思います。そういった意味で彼の功績は大きいです。

前作を打破し変化を模索する監督たち


(C)Cinemarche

──新作の2作品は以前の作品と比べ、会話部分が短く、POV映像の部分が強調されるなど、最近の海外ホラー映画的な演出が感じられます。これは狙い、あるいは監督への注文があったのですか?

山口:注文はしていないです。ただ監督は『復活編』『冒険編 前・後編』の佐藤周監督もそうですし、「怪談新耳袋 殴り込み!」という名でやってきたものが、「怪談新耳袋Gメン」と名前を変えた時点で、何らかの変化は必要だと感じているようでした。

例えばオープニングの歌を無くしたり、今まで各話毎にタイトルがあったのを外したり、もっと一つの大きな物語みたいなものがあって、それで全部がつながっている様にしようとか、いろいろ試行錯誤して、豊島監督が作ったものを、打破しようというものがあることは確かです。

そういう中でPOVを増やそうっていう意識はあまりないですが、もしかしたら監督の意思がそれ以外の場面を、少なくさせているのかもしれないです。


(C)Cinemarche

田野辺:「怪談新耳袋殴り込み!」が「怪談新耳袋Gメン」シリーズとして新たに仕切り直す時に、2人の若手監督、佐藤周監督と谷口恒平監督が、今まで作られて来たフォーマットを如何に変えたのか?ここがポイントだと思います。

学生残酷映画祭出身の佐藤監督の現場は非常に“暴力的”でした。彼は一番最初のシリーズ監督だった事もあって、豊島監督の作った骨組みに対して意識せざるを得ないところがあったと思います。

2019年の『密林編・孤島編』で監督が谷口恒平に変わりました。彼は『おっさんのケーフェイ』や『あの娘はサブカルチャーが好き』など、観客の映画の見方を揺らがせるメタな仕掛けの入った映画を作る人なので、その現場は見たいと思いました。

『冒険編 前編』で崖から落ちた後遺症もあって現場には『密林編』の1回だけの参加でしたが、撮影現場はどんどん変化していると思います。佐藤監督も谷口監督も自分の色をどう出せばいいのか、試行錯誤しています。かつて市川監督が豊島監督の作った鉄板の構造に挑戦した、その延長戦上に彼らはいます。

進化し続ける「Gメン」シリーズ


(C)2019キングレコード

田野辺:その意味で「新耳袋Gメン」シリーズは、従来の「新耳袋殴り込み!」シリーズと違う体験をする機会が観客サイドに出されたと思います。

今までのシリーズのファンにも、「これまでと違う、何か変わって来た」という発見があると嬉しいです。そこは強調しておきたいです。

山口:『怪談新耳袋Gメン 孤島編』“O島”に行きます(笑)。“O島”はファミリーで行くような島ではありますが、島だけあって本州で暮らしてるのとは、やっぱり違うルールとか、色んなものがあるんです。

島の真ん中に火山があって、三十年前に噴火して、それが定期的にその前にもあって、そういう中で、そこに住む人たちの土壌の中で生まれた怪談や伝説、そういうものは、ちょっと異質なものがあって、それは凄い面白い世界でした。

『密林編』や、それまでの『Gメン』の作品とは、明らかに違う空気感が漂っているので、それを楽しんで頂けたら嬉しいです。

インタビュー/ 増田健
構成/ 大窪晶
写真/ 出町光識

山口幸彦(やまぐちゆきひこ)プロフィール

1968年生まれ。新潟県出身。

1991年キングレコード入社後、プロデューサーとして活躍。代表作のTVドラマ『怪談新耳袋』は映画化され、スピンオフ作品「怪談新耳袋 殴り込み!」「怪談新耳袋Gメン」シリーズを生み出します。

数多くのインディーズホラー映画の製作を手がけ、積極的に海外に作品を紹介している、日本のホラー映画製作の第一人者。

田野辺尚人(たのべなおひと)プロフィール

神奈川県出身。

1995年、洋泉社で町山智浩と共に「映画秘宝」創刊にかかわる。その後「映画秘宝」の2代目編集長を務め、現在は別冊映画秘宝編集長。

日本映画界の新しい才能に注目し、発掘を積極的に発信中。

映画『怪談新耳袋Gメン 孤島編』の作品情報

【日本公開】
2019年8月23日(金)(日本映画)

【監督】
谷口恒平

【出演】
田野辺尚人、後藤剛、今宮健太、谷口恒平、山口幸彦

【作品概要】
“怪談新耳袋Gメン”と呼ばれるおじさんたちが、心霊スポットに体当たりの殴り込みをかける、昨年の「夏のホラー秘宝まつり2018」で“ホラー総選挙”堂々1位の、人気シリーズ最新作。今年は『怪談新耳袋Gメン 密林編』に続いて製作、劇場公開される期待の作品です。

今回は絶海の孤島にある、逃げ場なしの心霊スポットに突撃、“Gメン”のメンバーを精神的にも肉体的にも追い込みます。まさに存続の危機に直面する“Gメン”たちは、何を目撃・体験するのか。

キネカ大森、名古屋シネマスコーレ、大阪シアターセブンで開催の「夏のホラー秘宝まつり2019」上映作品。

『怪談新耳袋Gメン 孤島編』は2019年8月23日(金)よりキネカ大森で、「夏のホラー秘宝まつり2019」上映作品として公開

【連載コラム】「夏のホラー秘宝まつり:完全絶叫2019」記事一覧はこちら

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