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【ネタバレ】サブスタンス|あらすじ感想と考察評価。デミ・ムーアの怪演に息を飲む阿鼻叫喚のカタストロフへと疾走する衝撃ホラー

  • Writer :
  • 谷川裕美子

デミ・ムーアが美と若さに執着する女優を怪演

フランスの女性監督コラリー・ファルジャが、『ゴースト ニューヨークの幻』(1990)のデミ・ムーアを主演に迎えた異色のホラーエンタテインメント。

若さと美しさに執着した元人気女優が違法薬品に手を出した末の顛末を、容赦なくグロテスクに描き出します。

共演は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)のマーガレット・クアリー、『僕のワンダフルライフ』(2017)のデニス・クエイド。

若さと美を再び手にするために、悪魔との契約に手を出した女優が破滅していく姿を描く恐ろしい作品です。

映画『サブスタンス』の作品情報


(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS

【公開】
2025年(イギリス・フランス映画)

【監督・脚本】
コラリー・ファルジャ

【編集】
コラリー・ファルジャ、ジェローム・エルタベ、バランタン・フェロン

【キャスト】
デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド

【作品概要】
バイオレンス映画『REVENGE リベンジ』(2018)などを手がけてきたフランスのコラリー・ファルジャが監督・脚本を務め、『ゴースト ニューヨークの幻』(1990)などで1990年代にスター女優として活躍したデミ・ムーアを主演に迎えた異色ホラー。

容姿が衰えはじめた女優が、違法薬品を使って若返った末に、破滅していくさまをスリリングに描きます。

2024年・第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞。第75回アカデミー賞では作品賞のほか計5部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しました。

主人公・エリザベスをデミ・ムーアが怪演。美と若さへの執着を見せつけます。キャリア初となるゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)にノミネート&受賞を果たし、アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされました。

若さと美貌を振りかざしエリザベスと対峙するスーを、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)などの話題作で活躍するマーガレット・クアリーが演じます。

下品なプロデューサー役を演じる『僕のワンダフルライフ』(2017)のデニス・クエイドにも注目です。

映画『サブスタンス』のあらすじとネタバレ


(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS

元トップハリウッドスターだったエリザベスは、長年エアロビクス番組のレギュラーを務めていましたが、50歳の誕生日にプロデューサーのハーヴェイから突然降板を告げられます。

心乱して車を運転する中、エリザベスは自分の看板が撤去されるのに気をとられて交通事故を起こしてしまいました。

病院で軽傷と診断されたものの、エリザベスの心は深く沈んだままでした、そんな彼女に、若い男性看護師が「サブスタンス」と書かれたUSBメモリを渡します。

「サブスタンス」とはは若さと美、より完璧な自分を手にすることができる違法薬品でした。好奇心に勝てず、エリザベスはUSBに記載された番号に電話します。

電話の後、しばらくすると自宅に「503」と書かれたカードが郵送されてきました。エリザベスは指定された廃ビルに行き、「503」のロッカーからサブスタンスを受け取ります。

説明書に従い薬剤を注射すると、エリザベスの背が裂け、若く美しい女性・スーが現れました。若さと美貌、そしてエリザベスの経験や知識を備えた彼女は、エリザベスの上位互換的存在となります。

スーを気に入ったハーヴェイは、エアロビクス番組のエリザベスの後任に抜擢しました。

一つの精神をシェアするエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、一週毎に入れ替わらなければなりません。エリザベスの脊椎から抽出した安定液を注射し続けることによって、スーは体を維持していました。一週間置きに撮影したいというスーの願いを、ハーヴェイは快く受け入れます。

番組で人気を博したスーは、あっという間にスターダムへと駆け上がり、大晦日番組の司会にも抜擢されます。名声を得たスーが快楽的生活を追うようになった一方、エリザベスは自信を失って引きこもりがちになりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『サブスタンス』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『サブスタンス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS

ボーイフレンドと楽しんでいたスーは、エリザベスとの交換時間を少し遅らせます。すると、エリザベスの老化が進み、人差し指がしわだらけになって変色してしまいました。片方が長くとどまればもう片方にしわ寄せがくると、業者は電話でエリザベスに教えます。

やがて、エリザベスとスーは互いを別々の人間と見るようになり、互いを軽蔑し始めます。すっかり自信を無くして過食に走るようになったエリザベスとの身体交換を、スーは拒むようになりました。

スーが交換を遅らせるたびに、エリザベスの身体は急速に老いていきました。しかし、エリザベスは自らが醜くなるほどに、若く美しいスーの身体に執着するようになります。

部屋中食べ散らかすエリザベスに激怒したスーは、エリザベスから安定液を過剰に抽出し、長期間身体を交換しませんでした。

それから3ヵ月後。大晦日の前日に、枯れ果てたエリザベスから安定液がとれなくなりました。焦ったスーはサブスタンスの業者に電話しますが、安定液を補充するためには、エリザベスと身体を交換するしかないと教えられます。

追い詰められたスーは、久しぶりにエリザベスと身体交換しました。すると、エリザベスは髪が抜け落ち、腰の曲がった老婆の姿になっていました。

驚愕したエリザベスは業者に電話をかけてサブスタンスの中止を希望し、いつもの廃ビルで最後のキットを受け取りました。

エリザベスはスーを死滅させるための血清を彼女の心臓に注射しました。しかし、その直後に激しい後悔に襲われたエリザベスは、自分とスーを身体交換のチューブでつないでスーを目覚めさせます。

中止キットを目にしたスーは、自分を消し去ろうとしたエリザベスに激怒し、襲いかかって何度も殴りつけて殺してしまいます。

エリザベス亡き後、スーの身体は衰弱していきました。大晦日本番のスタジオに入ったものの、スーの歯は抜け落ち、耳はもげてしまいます。必死でスーは自宅に駆け戻り、残っていたサブスタンス安定液を注入しました。

すると、スーは肉体に無数の臓器やエリザベスの顔が張り付いた怪物「モンストロ・エリサスー」となってしまいます。錯乱したエリサスーは、エリザベスのポスターから顔を切り取って頭部に貼り付け、スタジオに舞い戻りました。

ステージに出てライトを浴びたエリサスーを見た観客は、そのおぞましさに絶叫します。阿鼻叫喚の中、スタッフの一人がエリサスーの頭部を切り落とし、吹き出した血しぶきがスタジオ中を真っ赤に染めました。しかし、それでもエリサスーは息絶えることなく、変異を続けました。

スタジオを出てもエリサスーの変異は終わらず、ついに肉体が耐えきれずに破裂しました。崩れ落ちた肉片にエリザベスの顔が浮かんでいます。

その肉片はハリウッド・ウォーク・オブ・フェームの自分の名が刻まれた星の上に這い上がり、観衆からの称賛を受ける幻に微笑みながら血痕に化していきました。

そして翌日。彼女の血痕はあっけなく床洗浄機で洗い流されました。

映画『サブスタンス』の感想と評価


(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS

想像を超える展開に圧倒される衝撃のホラー

最初から最後までハラハラドキドキが止まらない、極上エンターテイメントホラーです。デミ・ムーアとマーガレット・クアリーという超人気女優が、すべてを脱ぎ捨てて圧巻の演技を見せつけます

50才を越え、容姿の衰えと仕事の減少に悩まされる主人公のエリザベス。美と若さへの執着を捨てきれない彼女は、違法薬品「サブスタンス」に手を出してしまいます。人目を避けるべき場所でもド派手な真っ黄色のコートを羽織る姿に、女優のプライドがにじみ出ます。

背中が割れて美しいスーが出てくるという設定の凄さに唖然とすることでしょう。超現象が起こりながらも背中はひとりでに閉じることなく、スーが針と糸で縫い合わせます。肉を通す針の生々しいシーンに長い時間が費やされ、非現実に混じるリアリティが際立ちます

果たして若さと美を求めるのは罪なのでしょうか?そもそも人がそれらを求めるのはなぜなのでしょう?エリザベスの場合は理由がはっきりしていました。美醜がそのまま人生に直結する世界に生きていたからです。

女は若さと美が一番だと言ってはばからない下品なプロデューサー。オーディションでも性的な目でしか選別しない男達。そして、エリザベス自身が抱く若く美しい者への引け目。作中ではこれでもかというほど、若さと美を搾取する側の姿が描かれます

違法薬品に手を染め、必死で安定剤を打ち続ける姿は、整形がやめられない現代社会の女達にも重なります。それは一重に、容姿で周囲の人々の態度が変わることを、いやというほど経験しているが故です。

スーの美貌に嫉妬し、自分の存在意義がわからなくなり自分を見失っていくエリザベス。追い詰められるほどに、スーの美しさに固執していってしまう彼女の姿はあまりにも哀れです。

一方のスーも、いつどうなるかわからない状況下で、精神はいつも不安定なままです。そのいらだちすべてをぶつけるかのように、怒りの矛先はエリザベスに向かいます。

エリザベスを忌み、交換を拒み続けるスー。しかし、自分勝手なスーもまた、エリザベスという人間そのものでした。サブスタンスの箱に入れられたメッセージ「あなたは一人であることを忘れるな」は重い言葉です。スーの暴走は、エリザベス自身の性質によるものにほかなりません。

無茶をしたあげく、エリザベスとスーは残酷なカタストロフを迎えます。ここまで強烈な描写だと、逆に爽快感さえ感じるほどです。どこから吹き出ているのかと呆然とするほどの大量の血しぶきを見て、ブラックなユーモアを感じることでしょう。

観客、スタッフ、出演者すべてがカタストロフに飲み込まれていきます。勝手なことを言う男たちへの痛烈な批判と、美を過剰に求め続ける女たちの傲慢さへの皮肉がこめられた最強のバッドエンドです。

デミ・ムーアの女優魂に脱帽


(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS

すごいぞデミ・ムーア!と叫びたくなるような、見事な怪演です。ここまで自身をさらけ出す、デミの女優魂に圧倒されることでしょう

変わらぬオーラを放ち続ける、今も尚美しい女優デミ・ムーア。しかし、全裸になれば、そこには年齢を重ねたるんだ肢体が映し出されます。これだけすべてをさらけ出せるからこそ、デミ・ムーアはスターたりえることを逆に思い知らされるのです。

その後の展開にも、ただただ唖然とするばかり。スーが長く身体交換せずにいると、その分エリザベスは恐ろしい勢いで老いていきます。髪が抜け落ち、腰が曲がったエリザベスが、大量の料理を作りながらテレビに悪態をつく様は、まるで毒薬を調合するディズニーの魔女のようです。

恐ろしくグロテスクなのに、どこかブラックユーモアを感じさせる巧さに感激します。殴り殺されたあげくに、血痕となって消えていくエリザベスというとんでもない役を、デミは心底から愛おしみ、楽しんで演じているように見えるのです。

デミ・ムーアの強烈な演技に、若いマーガレット・クアリーも文字通り裸でぶつかっています。彼女が恐怖に叫ぶ表情は、もしかしたらデミという大きな存在への畏怖の表現だったのかもしれません。

僕のワンダフルライフ』(2017)で爽やかな主人公を演じたデニス・クエイドがうって変わってとても低俗で嫌みなプロデューサー役を好演しています。下品な役を思い切り楽しんでいるクエイドの演技にも、ぜひ注目してご覧下さい。

まとめ


(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS

美醜に固執することの愚かさを思い切り皮肉った強烈ホラー『サブスタンス』。とんでもない展開に目を丸くしながらも、若さと美に執着せずにいられない女の哀しさに胸を突かれる一作です。

もう一度若返りたいと熱望するエリザベスのもがき、そして、若く美しい体でありながら、それらがいつ失われてもおかしくない状況下にあるスーが常に抱いている恐怖。

美へのあくなき執着心は、男達の視線や言葉によるものだけでは決してなく、人類のほぼすべてにすり込まれた「美はすべてに勝る」という観念によるものなのでしょう。

若さと美は決して永遠ではあり得ない。白雪姫の魔女からその真実を学んでいるはずなのに、いつの時代も変わらず、誰もが美しさを求めてもがかずにはいられないことを改めて突きつけられる作品です。





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