Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ホラー映画

Entry 2022/09/01
Update

【ネタバレ】ノープNOPE|結末あらすじ感想考察と評価解説。タイトルの意味を含め“UFO映画”に留まることのないホラーとしての真価

  • Writer :
  • さくらきょうこ

『ゲット・アウト』『アス』のジョーダン・ピール監督映画『NOPE/ノープ』

ゲット・アウト』(2017)でアカデミー賞の脚本賞に輝いたジョーダン・ピール監督。

アス』(2019)に続く監督作品がこの『NOPE/ノープ』です。

テレビシリーズ「トワイライト・ゾーン」(2019~2020)で案内役を演じたピールは、脚本や製作総指揮にも名を連ねています。

本作はその「トワイライト・ゾーン」的なケレン味たっぷりの仕上がりとなっており、観客をワクワクさせてくれます。

映画『NOPE/ノープ』の作品情報

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

【日本公開】
2022年(アメリカ映画)

【監督・脚本】
ジョーダン・ピール

【キャスト】
ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、ブランドン・ペレア、マイケル・ウィンコット、スティーブン・ユァン、キース・デビッドほか

【作品概要】
「自分が観たいのに存在しない映画をつくりたい」と監督のジョーダン・ピールは言っています。今回はそれが、とびきり怖いUFO映画だったと。

カリフォルニアの山に囲まれた広大な牧場で起こるUAP(未確認空中現象)を、見たい、撮りたい、見せたい、そして有名になりたい…など様々な思惑で体験しようとする人々の顛末を描きます。

多くの過去の映画からインスパイアされた本作は、映画好きの心を踊らせ、思わず「あ、これは!?」とニンマリしてしまうような楽しいホラー映画です。

映画『NOPE/ノープ』のあらすじとネタバレ

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

かつてテレビで放送されていたホームコメディの撮影現場。そこでチンパンジーが起こした惨劇とは……?

カリフォルニアのとある馬牧場。そこはかつて西部劇などの撮影現場に調教した馬を貸し出して繁盛していたヘイウッド・ハリウッド牧場です。

久しぶりに舞い込んだ仕事に向けて白馬に乗っている父オーティスと、少し会話して家に戻ろうとする無口な息子OJ。

すると突然、鋭い音をさせて空から雨のように何かが降り注いできます。そのひとつがオーティスに当たり彼は落馬、OJは急いで病院に連れていきますが彼は死んでしまいました。

半年後。CM撮影のためラッキーという馬を連れて現場入りしているOJですが、父のように仕事はうまくいきません。

遅刻してきた妹のエメラルド(以後、エム)が自分の宣伝も兼ねて簡単な注意事項を説明しますが、ライトの光に驚いて馬が暴れてしまい、仕事はキャンセルされてしまいます。

牧場に隣接するテーマパーク「ジュピターズ・クレイム」に立ち寄ったOJは、そこのオーナーであるリッキー・“ジュープ”・パーク(以後ジュープ)にラッキーを売ります。

ついてきたエムに問い詰められ、牧場を存続させるために今まで10頭ほど売ったとOJは答えますが、いずれ買い戻したいとジュープにお願いしていました。

ジュープがかつての有名子役だと気づいたエムが興奮気味にその話をすると、ジュープは奥の小部屋に案内します。そこにはドラマ『ゴーディ、家に帰る』ゆかりの品が飾られており、その撮影現場で恐ろしい惨劇が起きたのだと言います。

家に戻り、ジュープがこの牧場を買おうとしていることを知ったエムは怒ります。その後酒を飲みながら、かつてここにいた“Gジャン”という馬の話をエムがし始めます。

9歳の誕生日にエムにプレゼントされるはずだったその馬は、「スコーピオン・キング」という映画のために調教され戻ってきませんでした。そのとき妹の気持ちを察していたOJのことをエムは覚えていました。

GHOST(ゴースト)

父が死んだときに乗っていた馬のゴーストが外に出ています。あのときと同じ場所で夜空を見ているゴーストを連れ戻そうとOJが近づきますが、エムのかけたレコードの大音量に驚いて走っていってしまいます。

車で探しにでたOJは立入禁止の看板が立つジュープの敷地に入りこみ、遠くに見える照明で明るく照らされた競技場から聞こえてくる声を聞きます。

「……別人となってここを離れるのです……」

すると悲鳴のような音とともに竜巻のような風が起こって視界が遮られ、OJは雲の合間にUFOのような物体を目撃します。

急いで家に戻り監視カメラの映像を確認しますが、停電のため映っていませんでした。UFOに興味津々のエムにOJは、父の死の原因についても納得していないと告げます。

2人は町の家電量販店フライズ・エレクトロニクスに赴き、UFOの映像を撮影してひと儲けしようというエムの発案で監視カメラを買い込みます。

次の日、従業員のエンジェルが設置にやってくると、カメラの向きからUFOを狙っているのだと理解します。彼はOJに「いまはUFOをじゃない。UAP(未確認空中現象)っていう」と言い出します。

国が名前を変えるのは何かを隠したがってるからだと言うエンジェル。そこへエムが旗のガーランドがついたままの等身大の馬の像を持って帰ってきました。

どうやらジュープのパークから盗んできたようです。案の定、後ろから車でジュープが追ってきましたが、自分のものだと証明できないので戻っていきました。

2台のカメラを設置し終わると、自分も仲間に加えてほしいエンジェルがそれとなく手伝いを申し出ますがふたりは即答で拒否し、エンジェルは悪態をつきながら帰っていきます。

CLOVER(クローバー)

ある晩、厩舎の灯りが急についたのでOJが様子を見に行きます。スイッチを切り戻ろうとすると再び灯りがつきます。(何かいる)とスイッチの方を見ると、黒い小さな影がゆっくりとこちらに向ってきます。

ポケットから携帯電話を取り出し怯えながら後ずさるOJ。携帯のカメラ画面に宇宙人のグレイのような顔が映し出され、驚くOJのすぐ横にも同じ格好のそれがぶら下がっていてパニックになります。

しかし逃げて行くそれらは宇宙人の扮装をしたジュープの子どもたちでした。

こんどはクローバーという名の馬が外に出てしまい、エムが監視カメラをチェックしていると1台に突然何かの顔が大写しになります。カマキリです。

すると、勝手に監視カメラの映像を遠隔チェックしていたエンジェルから電話がかかってきて、もう1台のカメラが止まっているといいます。

外で何かが起こっているようです。OJは再び竜巻のような風に遭遇し、あの馬の像が吸い上げられるのを目撃します。空からは、像についていた旗だけがヒラヒラと落ちてきました。

カマキリによって状況を確認することができなかったエンジェルとエム。OJは山すれすれで飛び去っていくUFOを見ていました。怯えるエムはすぐにでも逃げようとすすめますが、OJは馬の世話があるから残るといいます。

翌日エムは、CM撮影で知ったカメラマンのホルストに電話をかけてUFOの撮影を持ちかけますが相手にしてもらえません。

代わりにやってきたのはエンジェルです。違法に監視していたことをエムにとがめられますが、映像を見ていて動かない雲があることに気づいたとエンジェルは教えてくれました。

「あの中に船がいるのか」と雲を見つめるエンジェルにOJは「船じゃない」とつぶやきます。

GORDY(ゴーディ)

約25年前に放送されていたドラマ『ゴーディ、家に帰る』の撮影現場。この日はチンパンジー、ゴーディの誕生日。メアリーという子役の少女が大きなプレゼントの箱を持っていました。

それを開けるとカラフルな風船がたくさん飛び出し、大きな音とともに割れたことから恐ろしい6分13秒の惨劇が始まります。

ゴーディはメアリーに襲いかかり執拗に殴ったり噛みついたりしています。テーブルの下に隠れたジュープはどうすることもできません。

大人の俳優も攻撃したゴーディは、まだ動いていたメアリーに再び襲いかかり彼女は動かなくなります。その後ジュープは血まみれのゴーディと目が合ってしまい、じりじりと距離を詰められてしまいます。

しかしゴーディは、まるでグータッチするように拳を出してきました。ジュープも同じように拳を出したその瞬間、ゴーディは射殺され、ジュープは返り血を浴びてしまうのでした。

その悪夢から現実に戻った現在のジュープ。心配そうに寄り添う妻と、今夜の仕事、“星との遭遇体験”に向けて気合を入れ直します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『NOPE/ノープ』ネタバレ・結末の記載がございます。『NOPE/ノープ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

LUCKY(ラッキー)

雨に備えて、エンジェルはカメラにビニールをかけています。

そのころジュピターズ・クレイムの競技場では、イベントが始まろうとしていました。数十人の観客とスタッフに、特別ゲストとして顔を隠したメアリーが初恋の人として紹介されます。

そしてお決まりのセリフ「1時間後には別人になっていることでしょう」と言ってこれから起こる奇跡を盛り上げます。

そのジュープの横にはケースに入れられた馬のラッキーがいました。これからしばし子どもたちの余興で場をつなぐ段取りでしたが、この日はいつもより早く“奇跡”が近づいてきたようです。

うろたえながらもラッキーを走らせようとするジュープ。しかし賢いラッキーは動きません。

すると競技場は停電し激しい風が巻き起こります。その風の渦に人々は巻き上げられ、食道のような狭い空間に捕らわれてしまいます。辺りに響き渡る悲鳴……。

競技場にやってきたOJはラッキーを見つけますが、物陰から出てしまうとUFOに吸い込まれてしまいます。帽子のような形のUFOは、開口部をこちらに向けて近づきますが観客席の下にいるOJは無事です。

雨が降り始めました。エンジェルは帰るため車に乗り込みますが、すぐに動かなくなってしまいます。家でビデオを見ようとしていたエムは異変を知らせるOJからの電話を受け、走って戻ってきたエンジェルはエムに声をかけると、テーブルの下に隠れます。

どうやらUFOはこの家の真上に来ているようです。鍵やコインなどが次々降ってきた後、窓には血が流れてきました。ヘイウッド家には血の雨が降り注ぎ、エムとエンジェルは恐怖に震えるしかありません。

ラッキーを車に乗せて戻ってきたOJは、血だらけの我が家に近づくことができません。しばらくして車のドアを細く開けて頭上を確認すると、UFOはそこにいました。そっとドアを閉めロックするOJ。

朝になり、もう雨は止んでいました。エンジンをかけて家に近づこうとすると、突然フロントガラスを突き破って血まみれの何かが落ちてきました。

あの木馬の頭の部分です。仕方なくOJは近くに止まっていたエンジェルの車に乗り換え、家の入口で躊躇しているふたりに車に乗るよう促します。OJは上を見ないように気をつけながらふたりを乗せると、UFOから逃げることに成功しました。

ひと晩のうちに姿を消したジュピターズ・クレイムの人々の話題がニュースで報じられています。

エンジェルの家に身を寄せているOJとエム。夕食のためにやってきたチェーン店コッパーポット・コープをあとにすると、OJは馬の世話があるから戻ると言い、「目を見なきゃ食われない」と断言します。

そのとき、悩んでいたエムのスマホにホルストから電話がかかってきました。ニュースで事件を知ったホルストは、エムの話が信じて協力すると手動のIMAXカメラまで持ってやってきました。

これならUFOの影響は受けません。4人は早速作戦を考えます。OJはUFOを“Gジャン”と名付け、自分がオトリになると言います。

ホルストとエンジェルは遠くから撮影し、エムは監視カメラ係です。彼らはGジャンの接近を知るためにたくさんの、空気で立ち上がる人形“スカイダンサー”を手に入れ、それを起動させるためのバッテリーも駐車場に停められた車から盗み出します。

罪悪感に苛まれるエンジェルは、「地球を救ってる」と自分を奮い立たせます。

それぞれトランシーバーを持った4人。OJはオレンジ色の「スコーピオン・キング」のパーカーを着ています。

JEAN JACKET(Gジャン)

少し離れた山の斜面に陣取ったホルストとエンジェル。ホルストは薬を飲み、エンジェルはエムのかけた大音量のレコードを合図にスカイダンサーたちを起動させます。

50体もの色とりどりのスカイダンサーが踊る中、OJはラッキーに乗って走っていきます。

やがて1台のバイクが近づいてきました。エムがあわてて家から出ると、鏡のようなフルフェイスのヘルメットをかぶったそのライダーはカメラを向けていろいろ質問してきます。

ゴシップサイトの記者だとわかり何も答えないエムに、「無名のままでいろ!」と捨て台詞を吐いてバイクは走っていきます。

そのころにはスカイダンサーたちは倒れ、一帯は無電力になっていました。そこに差しかかったバイクは電子制御の異常で急に動きを止め、記者は投げ出されてしまいます。

このままではGジャンの餌食になってしまう、と意を決してOJが助けに向かいます。頭上に近づいているUFOに気づいた記者がカメラにおさめようと動きますが、それが自分を狙っていることに気づきパニックになります。

OJはそれを見ないよう声を掛けながら助け起こそうとしますが、鏡のようなヘルメットに映りこむGジャンを見ないようにするため、救出をあきらめてその場を離れます。

記者は吸い上げられますが、その瞬間ホルストのカメラはフィルム交換のタイミングになってしまいきちんと撮影できたか微妙です。

次のチャンスを作るため、OJはパーカーをかぶり一本道を馬に乗って走り出します。旗のガーランドを吸わせその撮影にも成功しますが、ホルストはもっとすごい映像を撮るため、カメラを持ったまま自らGジャンに吸い込まれていきます。

次に狙われたエンジェルは、斜面を転がり落ちたときにたまたま巻き付いてしまった防水シートと有刺鉄線、それにつながる牧場の柵のおかげで吐き出されました。

予期せぬものを吸い込んだためか、Gジャンは形を変えていきます。風をはらんだ幌のように広がってヒラヒラと動き、中心には正方形の口のような部位が幾重にも重なっています。

あまりの恐怖にエムはそこから逃げ出そうとし、OJはバイクに乗るよう指示してGジャンを自分の方に引きつけようとします。

兄と妹はお互いを思いハンドサインを送りあいますが、Gジャンの攻撃でOJとラッキーの姿は消えてしまいます。エムはバイクを駆ってその場から走り出し、無人のジュピターズ・クレイムへとGジャンを誘い込みます。

エムは複数の旗のガーランドで固定された巨大なジュープ君風船を解き放ち、Gジャンにそれを食わせるつもりです。

まんまとGジャンはジュープ君風船を追い始め、エムはパークの井戸から上空を撮影するカメラを使って捕食シーンを撮影しようと試みます。何度か失敗したものの、ついにエムは決定的瞬間を写真に残すことに成功しました。

Gジャンに飲み込まれたジュープ君風船は、その体内で圧迫され、ついに爆発します。それによってGジャンも破裂、エムは勝ったのです。井戸の縁にエムが倒れ込むと、パークの外にはマスコミやら野次馬が押し寄せていました。

勝ちはしましたが、失われた兄はもう戻りません。園内をさまよい、立ち止まって泣くエム。目を閉じて、そして開くと目の前に……ラッキーに乗ったOJの姿がありました。

映画『NOPE/ノープ』の感想と評価

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

とにかく様々な面白い要素が詰め込まれ、それでいてそう感じさせない自然な流れに仕上がっていることが驚きです。

SF、ホラー、アクション、西部劇……それぞれに何らかの作品を思い浮かべられるような絵面でありながら、決して借り物のようにはならず、一貫性のあるひとつの作品として完結しているのは、ピール監督の人種差別への思いが根本にしっかりと貫かれているからでしょう。

この作品では、初の映画として紹介される黒人騎手の乗った馬の連続写真がその象徴として何度も登場します。主人公のOJとエメラルドはその騎手の子孫という設定であり、ハリウッド黎明期に生きたであろうその無名の演者にスポットを当てています。

2人の兄弟に加え、キーパーソンとなるジュープ役もアジア系の俳優です。マイノリティである彼らやピール監督自身が経験してきたことを踏まえてこの脚本は練られ、ラストのカタルシスへと到達するのです。

「見ること」と「見られること」

この作品の面白さのひとつに、わかりやすい対比構造があります。

内向的な兄と承認欲求の強い妹。常に隠れたがるUFOとそれを追い求める人間。子役として注目を浴びていた過去とそれが風化しつつある現在。善悪ではない、しかし正反対のものを置くことで、メリハリが効いているのです。

主人公のOJは人に見られることが得意ではなくありませんが、幼い頃から馬の調教に携わっているので動物の気持ちはわかります。

UFOの正体を捕食する生物だと理解し、目を見ない、見つけられないように行動していた彼が、それと対峙し倒すために火力を使わず視線を武器に挑むところに新しさを感じます。

撮ることを生業としている人間はそれを優先させてしまうがゆえに、「見る」者が「見られ」て命を落とします

異なる2種のパターン(記者とホルスト)、特にホルストは細かいバックボーンが映像や持ち物からうかがい知ることができ、かなり面白いキャラクターでした。

エンタメ作品へのリスペクト

監督自らがインタビューで語っているとおり、前半のSF映画風の部分は『未知との遭遇』(1977)を意識していることがわかります。

OJが遠くからジュープの声を聞く、夜の競技場の場面。これは『未知との遭遇』でこれから始まる宇宙人との接触を、山陰から見ている場面を彷彿とさせます。

また・OJがUFOに襲われそうな我が家に近づけず、少し車のドアを開けて確認する場面も、『未知との遭遇』の踏切で車が止まってしまった場面とシチュエーション内容が似ています。

オープニングと途中に登場するチンパンジー・ゴーディのくだりも、スティーヴン・キングの作品や『トワイライト・ゾーン』の物語のようですし、宇宙人の扮装をした子どもたちに驚かされるシーンもどこかで見た覚えがあるはずです。

ただそのとき、OJがポケットから取り出すのは「銃」ではなく「ガラケー」というところが、またOJらしくて笑ってしまいました。

その後、自宅を襲う血の雨は『悪魔の棲む家』(1974)を思い出させるなど、1970年代終わりから1980年代にかけて流行ったホラー映画のテイストには思わず懐かしくなってしまいます。

後半は一気にアクション映画の様相になりますが、ジュピターズ・クレイムでの馬に乗ったOJのラストショットは、西部劇の主人公そのもの。陰キャなお兄ちゃんが孤高のヒーローとなった瞬間でした。

日本のあの作品へのオマージュも!

なお映画後半部にて、UFO“Gジャン”が変形した姿はまるでエヴァンゲリオンの使徒のようでした。

監督自身も「エヴァのフォルムや動きを参考にした」と答えています。あの口のような部分の形や動き、空中を漂いながら変わっていく様子にはリスペクトを感じました。

しかしそれよりもテンションが上がったのは、エムがバイクに乗ってジュピターズ・クレイムに到着したときの止まり方です。

思わず「『AKIRA』だ!」と声に出しそうになりました。もはや古典といってもいいスライドブレーキが、エムのカッコよさをグッと引き上げています。

まとめ

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

こんなにいろいろな作品のことを思い出しながら映画を観たのは、初めてのような気がします。けれども、全然「モノマネ」じゃない。しっかりオリジナリティを持った作品であり、しっかりリスペクトも感じさせてくれます

様々な作品に似ているのにトータルすると唯一無二の作品になっている。ジョーダン・ピールとは何者なのでしょう?

主要な登場人物たちは欠点の多い人たちですが、皆とても愛おしくチャーミングです。

あまり触れられませんでしたが、エンジニアのエンジェルのUFO番組マニアぶりも面白かったですし、久しぶりにヒストリーチャンネルの「古代の宇宙人」が見たくなりました。

ごった煮のような他ジャンルまぜこぜ映画なのに筋が通っている。ピール監督の映画愛に満ちた“最高の奇跡”、それがこの『NOPE/ノープ』なのです。



関連記事

ホラー映画

映画『空海 美しき王妃の謎』黒猫の真相と中国の化け猫は喋りすぎか?

『さらば、わが愛/覇王別姫』『北京ヴァイオリン』などで知られる中国の名匠チェン・カイコー監督の映画『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』。 作品タイトルから歴史ドラマを期待する向きもありますが、実は …

ホラー映画

【黄龍の村 考察】どんでん返し映画としてホラージャンルを覆す。あらすじ展開の“伏線”を見逃すな!

ジャンルごと物語が変わる驚異のジェットコースタームービー 物語の半ばで大きく様相が変わり、視聴者の予想を裏切る展開のことを「どんでん返し」と呼びます。 ミステリを始めサスペンスや果てには恋愛映画まで、 …

ホラー映画

映画『事故物件』解説評価。Jホラー歴史と特徴をテレビ心霊特集や都市伝説、稲川淳二の怪談から世にも奇妙な物語まで深掘り!

映画『事故物件 怖い間取り』は2020年8月28日(金)より、全国ロードショー 中田秀夫監督待望の作品、『事故物件 怖い間取り』がついに公開されました。 日本の映画・テレビ界は、以前のようなオカルト・ …

ホラー映画

映画『ポラロイド』あらすじネタバレと感想。アナログな恐怖の秘密はカラヴァッジョの陰影とスピルバーグファンとしての遊び心

『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』のロイ・リーがプロデューサーを務めた、ポラロイドカメラが巻き起こす怪奇ホラー! 『ポラロイド』は、ノルウェー出身のラース・クレヴバーグが製作・監督・脚本を …

ホラー映画

ホラー映画『スクールズ・アウト』あらすじと考察。優等生の“怖い悪意”から破壊されていく日常と対立

「シッチェス映画祭」で上映された、選りすぐりの作品を日本で上映する「シッチェス映画祭」公認の映画祭「シッチェス映画祭ファンタステック・セレクション」が、東京と名古屋、大阪で開催されます。 今回は「シッ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学