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Entry 2022/08/12
Update

『ザリガニの鳴くところ』映画原作小説ネタバレあらすじと結末の感想評価。真犯人は誰?‟湿地の少女”の人生と事件の顛末はいかに⁈

  • Writer :
  • 星野しげみ

「本屋大賞」翻訳小説部門1位の小説『ザリガニの鳴くところ』が映画に!

小説家でもあり動物学者のディーリア・オーエンズの処女小説『ザリガニの鳴くところ』。2018年に発売されるなり、世界中でベストセラーになりました。

日本の2021年「本屋大賞」翻訳小説部門の1位に選ばれた本作が、映画『Where the Crawdads Sing』として、アメリカで2022年7月15日(金)公開!。日本では2022年11月18日(金)全国公開されます。

1950~70年代のノースカロライナを舞台に、たった1人で湿地で強く生き抜く少女の成長とある男の死をめぐるミステリーを絡ませた作品です。

映画のより早い日本での公開を願い、小説『ザリガニの鳴くところ』をネタバレ有りでご紹介します。

小説『ザリガニの鳴くところ』の主な登場人物

【カイア】
主人公。家族から見捨てられ7歳の時から1人で湿地にある小屋で暮らしています。

【テイト】
子供の頃にカイアと知り合い、以来カイアの良き理解者となります。カイアの初恋の人。

【ジョディ】
カイアの兄。カイアをとても可愛がっています。

【チェイス】
裕福な遊び人の町の青年。ある朝、死体となって発見されました。

小説『ザリガニの鳴くところ』のあらすじとネタバレ


ディーリア・オーエンズ:『ザリガニの鳴くところ』(早川書房、2020)

1969年10月30日の朝、ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見されました。

それは裕福な人気者の村の青年、チェイス・アンドルーズの変わり果てた姿でした。

事故か殺人事件かと捜査が始まり、人々は「湿地の少女」と呼ばれる1人の女性に疑いの目を向けます。

「湿地の少女」とは湿地の小屋に住むカイアという女性のことでした。それはどんな女性なのか。話は10年以上前にさかのぼります。

※※※※※

1952年8月、湿地の小屋で7人家族で暮らしている一家がいました。両親と2人の兄と2人の姉、5人兄姉の末っ子のカイアは6歳。退役軍人の父は酒乱であり、家族はその暴力に脅えて暮らしています。

家族の収入源は父親に毎週与えられる障害者手当だけの貧しい生活で、賢い母は健気に子どもたちを育てていました。

ある日の朝、父の暴力に耐えかねてか、母は1人で家を出て行き、何日たっても帰って来ませんでした。

「母さんはどこへ行った?」。父の子どもたちへの八つ当たりは日増しに酷くなります。

母親が家を出て行って数週間が経った頃には、長男と長女・次女もひとり、またひとりと家を出て行き、次男ですぐ上の兄ジョディとカイアと父親だけが家に残りました。

そしてある日、ジョディもついにカイアに別れを告げて家を出て行きました。

1人残されたカイア。なぜ兄たちが自分も一緒に連れて行ってくれないのかと不思議に思いながらも、どうすることも出来ず、父から逃げるようにしながら食事を作り、毎日ただ母の帰りを待ちわびます。

父親と交わらないような生活をしながらも、カイアは父からお金を預かり、買い物に行って食事の支度をするようになりました。

秋になるとカイアは誕生日がきて7歳になりました。学校へ行く年齢ですが、どうしたら行けるのかわかりません。

父から隠れるように食事の支度などをして毎日過ごしているうちに、学校関係者が通学しないカイアの家を探し当て、学校へ連れて行きました。

給食につられて初めて登校したカイアですが、そこでの子どもたちのカイアへの対応はさんざんでした。「湿地の薄汚れた子」とさげすまれ、午後から学校を抜け出したカイアはそのまま住まいの小屋に逃げ帰りました。

以来、カイアは学校へ行こうとせず、カイアを登校させようとした学校関係者もやがて諦めました。

そんなある日のこと。「2、3日帰らない」と言って家を出た父を送り出し、カイアは自分もどこか遠くへ行きたくなります。

父がいつもどこかへ行く時は沼地からボートで行っていたのを思い出し、ボートの最低限の操縦の仕方は、兄のジョディから昔教わっていたので、父の留守にちょっと乗ってみることしました。

カイアは勇敢にも一人でボートに乗り、川へ繰り出します。帰り道も覚えていたはずでしたが、同じような景色が続くせいか、道に迷ってしまいました。

途方に暮れたカイアを救ったのは、カイアがボートで走っているのを見ていた少年でした。彼が適切に誘導してくれたおかげで、カイアは無事に出発点に戻ることができました。

彼は兄ジョディの友人で、テイトと名乗ります。

その後カイアは父にこわごわお願いをし、ボートで釣りに連れて行ってもらえるようになりました。

ボートで釣りに出て行く日々で父と少しずつですが、カイアは心が触れ合うようになり、父の実家が昔豊かな家だったけれども、大恐慌で莫大な借金を抱えたことも聞きました。

ところが、父との少しだけまったりとした関係は、失踪した母から届いた手紙で終わりを告げます。

学校へ行っていないため文字の読めないカイアは、母からの手紙らしいと思ったのですが、そのまま父の眼につくようなところに置きました。

その後、手紙は父が燃やしてしまったようで、その日から父はあまり家に帰って来なくなりました。

カイアが10歳になった頃、父はもうほとんど家に帰って来ませんでした。父の退職軍人手当が途絶えた今、カイアの収入源はありません。

カイアはふと思いつき、沼地でムール貝を麻袋いっぱいに取りました。ボートに乗って、いつもガソリンを仕入れる黒人男性のジャンピンが経営する店に行きました。

ガソリンを買うのでなく、貝を買ってくれないかと、カイアはジャンピンに頼みました。ジャンピンは快く承知します。

こうして10歳のカイアは初めて自分の働いたお金を手に入れました。

しばらくはなんとかこの方法でお金を稼げましたが、やがて貝販売の競争相手が現れたので、魚の燻製も作るようになりました。

カイアのことを心配したジャンピンは妻のメイビルと相談し、カイアの売るものとカイアに必要と思われるものや服を交換するようにしました。

こうして生活のために奔走するカイアですが、その合間に美しい鳥の羽や貝殻を集めていました。

カイアが14歳になった頃、木の株に美しい羽がまるでカイアへのプレゼントのように置かれているのに気がつき、1人の少年がそれを置いているのを発見しました。

そしてやっとその少年と話すチャンスがきて、彼があの時のテイトだとわかります。テイトはカイアが学校へも行かず、読み書きができないことを知ると、「僕が教えてあげる」と言いました。

文字が読めるようになって、家に残された聖書の書き込みや日記から、初めてカイアは兄姉の正式名を知ることになり、改めて家族がいたことを思い出しました。

テイトはカイアに優しく接してくれ、次第にカイアは彼に恋心を抱くようになります。

しかし、彼は大学進学のために故郷を離れることになり、カイアはまたしても大切に思う人から置いて行かれることになりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ザリガニの鳴くところ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ザリガニの鳴くところ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

テイトがカイアの元を去ってから、カイアは村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、静かに暮らしています。

彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせ、湿地帯に生きる貝や鳥たち愛し見守っていました。

しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づいてきました。テイトのいない寂しさを埋めるように、カイアの心に次第にチェイスが入り込んできました。

カイアはチェイスに大切にしていた貝のネックレスをプレゼントします。

2人が付き合うようになってしばらくした頃、ジャンピンの店に買い物に行ったカイアは偶然にも仲間たちといるチェイスを見かけ、チェイスの側に親し気に肩を組む女子を見かけました。

そしてその後見つけた新聞には、チェイスとその女子の写真が掲載されていました。見出しには、チェイスとその子が婚約したとあります。

チェイスの手痛い裏切りにあったカイアは二度とチェイスに会わないと決心します。

1968年。カイアは22歳になりました。ある日、カイアのもとに新刊の見本版の『東海岸の貝殻』という本が届きました。

それは、カイアが何年もかかってスケッチした貝や標本、それに貝の生態について述べた文章もそっくりそのまま載った、著者カイアによる初めての本でした。

最初にテイトが出版社に連絡を取ってくれ、貝の絵を何枚か提出したあと、その出版社と契約書を結んでいたのです。

カイアにとってそれらの貝の記録は、家族の思い出に通じるものでした。

カイアの本は土産物産屋や書店のショーウィンドーにおかれ、印税が半年ごとに送られて来るようになりました。

カイアはジャンピンから聞いた沼地全体を買い取る一大プロジェクトを思い出し、自分の住む湿地一帯が私有地かどうか、調べることにします。

郡庁舎で調べてもらうと、カイアが暮らす湿地の一帯はカイアの祖父が昔買ったものだと分かりました。所有権はカイアにありますが、現在までの間税金を納めていませんでした。

カイアは税金の未納金を聞くと、本の印税で十分賄える金額でしたので即未納分を納め、カイアの住む土地と周辺の湿地は、めでたくカイアのものと認められました。

その頃、大学を卒業して故郷に戻ってきたテイトはカイアが本を出版したことを知り、カイアに祝福を言いに来ました。

そして同じ頃、やはりカイアの本を手掛かりに、失踪したカイアの兄・ジョディもカイアの住む家を訪れるようになりました。

ジョディは家を出てからしばらくして軍に入隊したと言います。今ではりっぱに生計をたてていました。

これまでのことを話すうちに、カイアはジョディから実母の死を知らされます。

家を飛び出し、実家へ戻ってしばらくふさぎ込んでいた母。

やがて、子どもたちを引き取りたいと父に手紙を出したけれども、子どもたちに近づいたら彼らを酷い目に合わせると、父から脅しの手紙が届いたと言います。

残虐な父の元に子どもたちを残してきた母は、いつも子どもたちのことを思って悲しみ、ついに病死したのだそうです。

母の姉妹が母の遺児を捜すのに奔走し、やっと見つけたジョディにその死を知らせてくれました。

カイアは愛すべき子どもたちを残して家をでなければならなかった母のことを思い、深い悲しみにくれます。

ジョディと再会を果たしたカイアには、それから人並みに落ち着いた暮らしが戻って来ました。

ですが、それからしばらくした1969年、カイアはチェイス・アンドルーズ殺人の容疑者として逮捕されてしまったのです。

※※※※※

収容されて2ヵ月がたった1970年。カイアの初公判が行われました。カイアの弁護人・トムは、自分の殻に閉じこもるカイアを元気づけています。

チェイス・アンドルーズの死は、10月29日から30日の深夜に湿地帯の火の見櫓の開いた格子から19m下の地面に転落し、その際に脳と脊髄に重傷を負って命が絶たれたというものでした。

10月29日以前に、チェイスとボートの上で大げんかをしているのを通りかかった若者に見られたカイアですが、それから何日かは旅行に出ています。

カイアが突き落としたのではないかという疑惑は証明されません。優秀なトム弁護人の手腕もあり、カイアは裁判で無罪となりました。

晴れて自由になったカイア。ジョディがカイアの力となる一方で、カイアは初恋の人・テイトともよりを戻し、結婚しました。

やどかりのようにテイトはカイアの小屋に引っ越し、2人ののんびりとした暮らしが始まりました。

何年も2人は、子どもを望んだけれどもそれには恵まれませんでした。けれども、美しい沼地の大自然が2人の子どもの様でした。

それから何十年もして、カイアは64歳で、1人でボートに乗っていた時に心臓発作で亡くなりました。

カイアの葬儀のあと、テイトはキッチンの床下から、カイアがよく読んでいた無名の詩人アマンダの原稿を見つけます。詩人アマンダ・ハミルトンはカイアだったのです。

そこに書かれていた「ホタル」というアマンダの詩は、まるでチェイス殺害を詩にしたようなものでした。

また、隠すように置かれていた小箱には、死ぬ間際までチェイスが身につけていたという貝殻のペンダントが入っていました。

テイトは、こんな形でチェイス事件の真相を知ることになったのです。

テイトは古い薪ストーブで火を起こすと、「ホタル」の詩と貝殻のペンダントの皮ひもを燃やしました。そして、夕方に海へ行き、ペンダントの貝を海岸の砂の上へ放ちました。

テイトの足元まできた波が、無数の貝殻をさらって海に戻って行きます。

カイアはずっとこの海や大地のものでした。彼らはカイアの秘密も抱え込んで彼女を迎えにきたのです。

テイトは1人で小屋へ戻りますが途中で立ち止まって、何百というホタルが暗闇の先に広がる湿地をながめます。

ホタルの大群は、はるか遠くの「ザリガニの鳴くところ」へと、彼を誘い出すように飛び交っていました。

小説『ザリガニの鳴くところ』の感想と評価

孤独に育った少女の成長物語とも、死体となった男との関係を追うミステリーともとれる小説『ザリガニの鳴くところ』

本作でまず驚くのは、広大な湿地に佇む小さな小屋で7歳からたった1人で生きているカイアという少女の存在です。

実父の暴力によって家庭は破戒され、実母を始め兄姉たちはそれぞれに家を出て行きました。父と2人で残されたカイアは、父の暴力に怖れながら押し付けられた家事をやりこなす日々。

学校へも行っていないカイアですが、幼少の頃から家の手伝いをしていたことや、優しい兄がボートの操縦や湿地にいる生物の生態を教えてくれていたことが功を成し、自身でも生きていく最低限の術を身に付けていきます。

父が家を出て行った後は、話し相手もいない孤独に耐え、町の人々の蔑みの視線から逃れるように、カイアは1人で生きていました。

少女から女性へと成長するカイア。幼少期から話し相手もおらず、愛してもらえない孤独を抱えたまま大人になったのですが、自分の分身ともいえる湿地がカイアを支えています

やがてカイアは初恋をしその終わりに失意を抱き、そして次の恋にも手痛く裏切られ、挙句の果てには殺人容疑がかけられました。

物語はカイアの半生を紐解きながら、同時進行で事件の捜査網が彼女に迫ってくる様子も描かれ、果たして本当にカイアが殺したのかと、ラストまで疑惑が付き纏います。

そして結末はというと……。やはり真実は「ザリガニの鳴くところ」に葬り去るのがベストだったのでしょう

コミュニティや絆といったものとは縁遠いカイアですが、常に湿地を愛しながら前向きに生きる彼女の強い精神力に胸打たれます

映画『Where the Crawdads Sing(ザリガニの鳴くところ)』の見どころ

映画『Where the Crawdads Sing(ザリガニの鳴くところ)』の原作は、米作家ディーリア・オーエンズの全米500万部突破のベストセラーとなった同名小説。

1950年代に起こった米ノースカロライナでの事件をきっかけに、湿地でたった1人で生きてきたカイアという少女に、疑惑の目が向けられるという物語です。

この小説に惚れ込んだ女優のリース・ウィザースプーンが製作会社ハロー・サンシャインを通じて映像化権を獲得。オリヴィア・ニューマンが監督を務めました。

主役のカイアは、英ドラマ『ふつうの人々(原題: Normal People)』(2020)でブレイクしたデイジー・エドガー=ジョーンズが演じます。

原作者ディーリア・オーエンズは作家ですが、動物学者でもあります。原作から読み取れるのは、湿地に生きる生物たちへのあふれるばかりの愛でした。

原作者同様、湿地の生物を愛する野生児のようなカイアの本当の意味の美しさは、どう表現されているのでしょう。

大自然に抱かれて生きる、カイアの逞しさと純粋さを演じるデイジー・エドガー=ジョーンズに注目です。

映画『Where the Crawdads Sing(ザリガニの鳴くところ)』の作品情報


(C)2022 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

【日本公開】
2022年(アメリカ映画)

【原作】
ディーリア・オーエンズ:『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)

【監督】
オリヴィア・ニューマン(Olivia Newman)

【脚本】
ルーシー・アリバー(Lucy Alibar)

【キャスト】
デイジー・エドガー=ジョーンズ、デイヴィッド・ストラザーン、テイラー・ジョン・スミス

まとめ

アメリカで7月に公開された映画の原作で、「本屋大賞」翻訳小説部門1位の小説『ザリガニの鳴くところ』をご紹介しました。

死んだ男の殺害容疑をかけられた「湿地の少女」と呼ばれるカイアの物語です。

父が暴力を振るうせいで家族は次々と家を出て行き、カイアは7歳の頃から湿地の小屋で1人で暮らしていました。

翻訳された小説からは、美しい湿地の風景描写や細やかな登場人物の心情が窺われ、カイアが湿地の生活をとても愛していたことがよくわかります。

自然を愛する少女の成長物語と乙女チックな恋模様がさりげなく描かれた上に、さらに事件性の高い男の死体の謎解きをするミステリーも加わっていました。

ですから、映画では複雑なカイアの心理を詳細に表したミステリー作品として描かれているのかどうかというところが気になります。

映画『Where the Crawdads Sing(ザリガニの鳴くところ)』は、日本では2022年11月18日(金)より全国公開されます。




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