落ちぶれたアカデミー賞脚本家が人生をやり直すヒューマンドラマ。
マーク・ローレンスが脚本・監督を務めた、2014年製作のアメリカのヒューマンドラマ映画『Re:LIFE/リライフ』。
かつてアカデミー賞脚本賞に輝き、ハリウッドのトップ脚本家となったものの落ちぶれてしまった脚本家が、片田舎で大学講師になって人生をやり直そうとする姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
どん底生活を送る脚本家の心が、生徒たちの映画への熱い思いを受けて少しずつ変わり始めていく、アメリカのヒューマンドラマ映画『Re:LIFE/リライフ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『Re:LIFE/リライフ』の作品情報
(C)2014 PROFESSOR PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
【公開】
2015年(アメリカ映画)
【脚本・監督】
マーク・ローレンス
【キャスト】
ヒュー・グラント、マリサ・トメイ、ベラ・ヒースコート、J・K・シモンズ、クリス・エリオット、アリソン・ジャネイ、アニー・Q、アヤ・ナオミ・キング、エミリー・モーデン、スティーヴン・カプラン、ダマリス・ルイス、マギー・ゲハ、ニコール・パトリック、ローレン・マックリン、アンドリュー・キーナン=ボルジャー、オリヴィア・ルッカルディ、キャロライン・アーロン、ジェイソン・アントゥーン、マーク・ネルソン、フランク・ハーツ
【作品概要】
「デンジャラス・ビューティー」シリーズや『ラブソングができるまで』(2007)のマーク・ローレンスが、脚本・監督を務めたアメリカのヒューマンドラマ作品です。
『ラブソングができるまで』(2007)や『噂のモーガン夫妻』(2009)、『フレイザー家の秘密』(2020)などに出演している、ラブコメ俳優ヒューグラントが主演を務めています。
共演は、「スパイダーマン」シリーズのマリサ・トメイや、『セッション』(2014)や「スパイダーマン」シリーズのJ・K・シモンズら豪華俳優陣です。
映画『Re:LIFE/リライフ』のあらすじとネタバレ
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アメリカ・ロサンゼルスに暮らす脚本家キース・マイケルズは、『間違いの楽園』という作品で若くしてアカデミー賞最優秀脚本賞を受賞し、ハリウッドのトップ脚本家となりました。
しかしここ15年間、ヒット作に恵まれず、いつしかキースは、ハリウッドにも見捨てられてしまっていました。
そんなキースに彼の妻ティナは愛想を尽かし、息子アレックスを連れて家を出て行ってしまい、息子と会えなくなってしまいました。おまけに家の電気も止められてしまいました。
そんなキースに唯一残された道は、エージェントのエレンが紹介してくれた、彼女の義理の弟が教授をしている、片田舎の公立大学「ビンガムトン大学」の文学部脚本クラスの客室講師になることでした。
ニューヨーク州ビンガムトン。キースは渋々この仕事を引き受けたからか、着任早々生徒のカレン・ギャブニーを手を出したり、受講希望者が書いた脚本を見ずに選り好みで決めたり、1ヶ月の休講を言い渡してクラスを解散させたりなど好き勝手な振る舞いばかりで全くやる気を出そうとしません。
70人いた受講希望者の中から、キースが選んだ脚本家志望の生徒は、フロー・ベイとアンドレア、カレンとレイチェル・アンズロー。ビリー・フレイジャーとクレム・ロンソン、サラとローザとマヤ、ジェシカの10人ですが、そのほとんどが美人ばかりです。
そんなキースに喝を入れたのは、規律を重んじる元海兵隊出身の学科長ハロルド・ラーナー。懇親会で比較文学を教えているメアリー・ウェルドン教授を侮辱し、怒らせてしまったキースは、このままではクビになるかもしれないからです。
クビは避けたいキースは、メアリーが好きなイギリスの小説家ジェーン・オースティン原作映画の全DVDと、自分が好きな映画『クルーレス』のDVDなどを贈り、彼女の怒りを鎮めようとします。そのおかげか、キースは何とか首の皮一枚繋がりました。
そして、メアリーの助言で受講希望者の脚本をちゃんと読んだ結果、新たに心理学専攻の生徒ホリー・カーペンターが、11人目の生徒として加わることになりました。
ただ、キースには生徒たちに何を教えるべきか、まだ何も考えていませんでした。ホリーが加わってから真面目にした最初の授業は、生徒の自己紹介と、キースが今もトップ脚本家として活躍しているという嘘で何とか持たせました。
講義の後、キースはカレンと懇意にしているところを、隣人であり同僚のジム・ハーパー教授に知られてしまいました。
キースはジムに、「生徒と親しくしていることは大学の規則に違反することになるかな?」と尋ねると、「バレたらクビになること間違いなしだ」と言われ、愕然とします。
次の授業では、キースは自身の講義を受講希望した際、生徒たちが書いた30ページの脚本を最後まで書かせ、その脚本の発表と批評会をすることにしました。
その際、「脚本を書くという作業は海に飛び込むようなもの。“衝動”という救命艇がないと死んでしまうように、その物語を書きたいという“衝動”が必要だ」と説いたキース。
彼は生徒たちから「“間違いの楽園”を書いた理由は?」と尋ねられ、こう答えました。「息子に聞かせていた物語だ」
「今スタンフォード大学に通っている息子と別れた妻と一緒に暮らしていた時、僕の父が死んだ」
「すると当時5歳の息子が、暗闇や死を恐れ始めた。僕はそんな息子を慰めるために、天国の話を作ったんだ」
「でも息子は信じてくれなくて、毎晩鋭い質問を受けて修正した結果、生まれたのが2人のドジな天使の物語。少女の魂を救うために、地獄へ行く話“間違いの楽園”だ」
「“間違いの楽園”は元々、5歳の息子を寝かせるために作ったおとぎ話だったんだ」
そう話すキースは、最後に『間違いの楽園』の続編を作るとしたら、どんな構想が良いと思うかというたらればの話をしました。
生徒たちからのアイデアに刺激を受けたキースは、講義後、カレンから食事に誘われます。
キースは規則違反になるから、教師と生徒以上の関係にならないようにと注意しますが、結局カレンに上手く丸め込まれてしまいました。
しかし、2人がディナーに行ったレストランで、従業員として働いていたホリーに身分証の偽造を追及されたことと、それを庇ってくれなかったキースにカレンは激怒。怒って帰ってしまいました。
1人取り残されたキースは、1人で食事を済ませ、帰路につこうとします。するとそこへ、仕事終わりのホリーが声を掛けてきました。
飲酒運転は危ないからと、自宅まで車で送ると言ってくれたホリー。元ダンサーであり、今は2人の娘を育てるシングルマザーでもある彼女は、キースにビンガムトンの名所であるメリーゴーランドへ案内してくれました。
その時、キースはホリーから、「カレンが書く主人公は父親の愛に飢えている。つまりあなたは、彼女の欲求の単なる捌け口だっただけ」と教えられます。
翌日。ホリーに送ってもらったおかげで、無事家に帰れたキースは授業開始早々、これまでの態度を豹変させたカレンから、厳しい指摘を受けました。
「“間違いの楽園”以外は批評も興行成績も悪いのに、それでも先生の助言を聞くべき?」
痛いところを突かれてしまったキースは、「聞くべきじゃない、何故なら脚本にルールはないからね。自分の声で誠実に語れたらそれでいい」と言って切り抜けました。
その日以降、キースは真面目に生徒たちと、生徒たちが手掛けた脚本と向き合うようになっていきました。
映画『Re:LIFE/リライフ』の感想と評価
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どんな著名人であろうと、アカデミー賞に輝いたトップ脚本家であろうと、いつか否応なしにその業界から消え去らなければならない時があります。
一度栄光を掴んだ者にとってそれは、とても残酷な運命です。映画業界が求める作品を書かないと意固地になったばっかりに、キースは脚本家として求められることはなくなってしまいました。
落ちぶれた脚本家であるキースの姿、言わなくても表情だけで彼の心情が伝わってくるような沈痛な表情を見ているだけで、胸が苦しくなります。
絶望のあまり、自暴自棄になってしまったキースを変えたのは、彼が渋々受け持った脚本家クラスの生徒たちでした。
短い期間であったものの、生徒たちの脚本に対する熱い思いに真摯に向き合ってきたからこそ、キースは失くしてしまっていた脚本に対する情熱を取り戻すことが出来ました。
業種は違ったとしても、夢を目指す者、夢を叶えた者に必ずしも訪れる挫折・苦悩・希望が描かれており、キースと生徒どちらにも感情移入できて感動します。
特にホリーとの出会いは、キースの今までの価値観を変えるものでした。新たな関係を築いていくキースとホリーの姿は、とても微笑ましいです。
落ちぶれた脚本家が人生をやり直そうとする姿は、「人生のシナリオは、いつだって書き直せる」というキャッチコピーを体現したものであり、彼の物語は特に大人が感動させられます。
まとめ
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一度栄光を掴んだトップ脚本家が、ヒット作が出ないばかりに落ちぶれてしまい、大学の講師として生徒に教える道を選んだという、アメリカのヒューマンドラマ作品でした。
本作の見どころは、落ちぶれた脚本家と脚本家志望の生徒の出会いと、キースが人生をやり直していく姿を描いた場面です。
エンドクレジットでは、再び隣人となったジムが新しい恋人、保険外交員のジョーンをキースに紹介している映像。
カレンとサラが完成した脚本を発表しているところ。冷遇されていたラーナーの家庭環境が変わり始め、ラーナーの膝の上に座った娘が本読みを頼んできたことを、ラーナーがキースとジムと昼食に出かけた際に話しているところ。
『ダーティ・ダンシング』を馬鹿にしていたサラが、皆に内緒でこっそり図書室で鑑賞し、それをキースに見られたところが描かれていました。
落ちぶれた脚本家と脚本家志望の生徒が、同じ夢を熱く語り合い、人生をやり直していくヒューマンドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。