『SUPER HAPPY FOREVER』は2024年9月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
『息を殺して』(2014)『泳ぎすぎた夜』(2017)で国際的にも注目を集めている俊英・五十嵐耕平監督の最新作『SUPER HAPPY FOREVER』が、2024年9月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーとなります。
海辺の町を舞台に、5年前と現在という2つの時間の中で、「青春期の終わり」を迎えた人々の奇跡のようなひとときを、さりげなくも鮮やかに記録したひと夏の物語です。
佐野役を『TOCKA タスカー』(2022)の佐野弘樹、宮田役を濱口竜介監督の『悪は存在しない』(2023)にも出演した宮田佳典、凪役を今泉力哉監督の『猫は逃げた』(2021)に主演して注目された山本奈衣瑠がそれぞれ演じます。
『泳ぎすぎた夜』(2017)で共同監督を務めたダミアン・マニヴェルがプロデューサーとして参加し、日仏合作映画として製作されました。
大切な人を喪う悲しみと一緒に、”幸せの瞬間は永遠に存在し続ける”という真実をすくい取った作品です。
映画『SUPER HAPPY FOREVER』の作品情報
【公開】
2024年(日本・フランス合作映画)
【監督】
五十嵐耕平
【脚本】
五十嵐耕平、久保寺晃一
【編集】
大川景子、五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル
【キャスト】
佐野弘樹、宮田佳典、山本奈衣瑠、ホアン・ヌ・クイン、笠島智、海沼未羽、足立智充、影山祐子、矢嶋俊作
【作品概要】
第67回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペティション部門正式出品作『息を殺して』(2014)や、第74回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品されたダミアン・マニヴェルとの共同監督作『泳ぎすぎた夜』(2017)など、世界が注目する五十嵐耕平監督による待望の長編最新作です。
第71回サン・セバスチャン国際映画祭でプレミア上映された短編映画『水魚之交』(2023)を基に製作した本作には、ダミアン・マニヴェルも共同プロデューサーとして参加し、ポストプロダクションをフランスで行うなど、日仏合作での製作が進められました。第81回ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門のオープニング作品に選出。
短編に引き続き佐野役を『TOCKA [タスカー]』(2022)、『浜の朝日の嘘つきどもと』(2021)での好演も光った佐野弘樹が、宮田役を『サボテンと海底』(2022)や「TOKYO VICE Season2」(2023)、濱口竜介監督『悪は存在しない』(2023)で強烈な印象を残した宮田佳典が務めます。
そして、今泉力哉監督『猫は逃げた』(2021)で注目を集め、近年では『走れない人の走り方』(2024)など話題作への出演が続く山本奈衣瑠が凪役を演じています。
映画『SUPER HAPPY FOREVER』のあらすじ
2023年8月19日、幼なじみの佐野と宮田は伊豆にある海辺のリゾートホテルを訪れました。そのホテルはまもなく閉館することになっており、アンをはじめとしたベトナム人の従業員たちは、ひと足早く退職日を迎えようとしています。
佐野は、5年前にここで出会って恋に落ち、結婚した妻の凪を最近亡くしたばかりでした。妻との思い出に固執し、自暴自棄になる佐野の様子を見かねた宮田は、友人として助言をしますが、あるセミナーに傾倒している宮田の言葉は佐野の心には届きません。
2人は少ない言葉を交わしながら思い出のレストランや遊覧船を巡り、かつて凪が失くした赤い帽子を探し始めます。
翌朝、眠れないまま部屋に戻った佐野の耳に、懐かしいメロディが聴こえてきて…。
映画『SUPER HAPPY FOREVER』の感想と評価
喪失の悲しみと、永遠に残る幸せな瞬間を静かにみつめた、心に染み入る作品です。一つの名曲が現在と5年前の過去をつなぐ架け橋の役目を果たし、小さな奇跡がいくつも重なり合うさまが丁寧に描かれます。
主人公の佐野は、5年前に伊豆を旅行中に凪と出会い結婚しましたが、つい最近彼女は亡くなっていました。二人のなれそめから知る幼なじみの宮田は、再び伊豆を訪れることにした佐野に同行します。
佐野は妻が無くして見つけられずにいた思い出の赤いキャップを探して回ります。やがて、物語は現在から5年前に切り替わり、二人が初めて出会った時のことが映し出されます。
佐野弘樹は、妻を喪った後と、出会った頃の主人公・佐野を見事に演じ分けています。前半に見せる、気難しく全身逆立っているような表情と、妻と出会った頃の優しく穏やかな空気感はまるで別人かのようです。
また、ヒロイン・凪を演じる山本奈衣瑠は、透明感を持ちながらも独特の色気を放っており、佐野が心奪われたことに思わず納得させられます。
五十嵐監督自身が、高校時代からの友人の急逝にショックを受けた経験から、物語が生まれたそうです。突然大事な人を喪う悲しみが、通奏低音のように作品に流れています。
しかし、本作は喪失と共に、”確かに幸せな時間が存在していた”という事実が同じ重さで描かれます。人が誰かと出会うこと自体が大きな奇跡ですが、関係性が次第に緊密になっていくまでにいくつもの小さな奇跡の積み重ねがあることに気づかされることでしょう。
佐野とホテル従業員のベトナム人女性・アンに面識はありませんが、知らない内に大きな影響を与え合っています。人の世は、思いがけない縁でつながっていることを教えられます。
タイトルの『SUPER HAPPY FOREVER』という言葉は、作品内で思いがけない意味を持ちます。しかし、本作の大きなテーマになっていることは間違いありません。今ここに存在していなくとも、「永遠の素晴らしい幸せ」というのは確かにあるのだと信じさせてくれる作品です。
まとめ
愛する妻を喪った主人公が、5年前の妻との出会いの地を訪れて過去に向き合う物語『SUPER HAPPY FOREVER』。
悲しみの記憶を彷徨いながらも、彼は彼女と過ごした輝くほどに幸福だった時間を思い出していきます。美しくも激しい海の情景が、彼の心の内を表しているかのようです。
映画『SUPER HAPPY FOREVER』は2024年9月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーです。