Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2021/02/27
Update

映画『ミアとホワイトライオン』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。少女の友情をCGを使用せずに“南アフリカの社会問題”として描く

  • Writer :
  • 松平光冬

少女とホワイトライオンの友情をCG未使用で描く感動ドラマ。

映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』が、2021年2月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開されます。

少女ミアとホワイトライオンのチャーリーが育む友情、そして家族の再生を通して、南アフリカの社会問題を映し出す本作を、ネタバレ有でレビューします。

映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』の作品情報

(C)2018 Galatee Films – Outside Films – Film Afrika D – Pandora Film – Studiocanal – M6 Films

【日本公開】
2021年(フランス映画)

【原題】
Mia et le lion blanc(英題:Mia and the White Lion)

【監督】
ジル・ド・メストル

【脚本】
ウィリアム・デイヴィス

【製作総指揮】
ニコラ・エルゴージ、ジル・ド・メストル

【撮影】
ブレンダン・バーンズ

【キャスト】
ダニア・デ・ビラーズ、メラニー・ロラン、ラングレー・カークウッド、ライアン・マック・レナン

【作品概要】

アラン・デュカス 宮廷のレストラン』(2018)などのドキュメンタリー作品を手掛けてきたジル・ド・メストルが、南アフリカの社会問題となっているトロフィー・ハンティングをテーマに描いたヒューマンドラマ。

主人公の少女ミア役には、300人以上が参加したオーディションの中から選ばれたダニア・デ・ヴィラーズ。ミアの母アリスを、『イングロリアス・バスターズ』(2009)のメラニー・ロランがそれぞれ演じます。

動物研究家で保護活動家のケヴィン・リチャードソンと共に、実際に3年を超える年月を掛け、リアルな少女とライオンの友情をCGを使わず撮影し、世界57ヵ国でヒットを記録しました。

映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』のあらすじとネタバレ


(C)2018 Galatee Films – Outside Films – Film Afrika D – Pandora Film – Studiocanal – M6 Films

ライオンファームの経営のため、家族と共にロンドンから南アフリカへ引っ越してきた11歳のミアですが、友だちができずに学校で孤立しており、家でも父ジョン、母アリス、そしてパニック障がいを抱える兄ミックにその不満をぶつける日を過ごしていました。

ある夜、パニックを起こして寝付けなくなったミックに、アリスがアフリカに伝わる神話を話し始めます。

それは、真夜中にアフリカ全土で自然の大変動が起こり、住民たちが怯える中、なぜかモザンビークに住むシャンガーン人の祈祷師だけが笑っている。その理由を聞かれた彼は、「人間は常に母なる自然を壊してきたではないか」と答え、「でもいつかクリスマスに、白い毛のライオンが生まれる奇跡が起こる」と告げたという話でした。

それからしばらく経ったクリスマスに、ジョンが生まれたばかりのホワイトライオンを連れてきます。

出生率はわずか100万分の一というホワイトライオンの誕生に、ジョンはファームの目玉が出来たと喜び、ミックはチャーリーという名を付け、可愛がります。

それでもアリスは関心を示しませんでしたが、いつもまとわり付いてくるチャーリーの世話を、仕方なくするようになります。

そのうち、ファームの他のライオンに邪見にされるチャーリーに自身を重ねたミアは、徐々に心を開くように。

わずか数か月でどんどん成長していき、家の中でも家財道具を散らかすようになったチャーリーに、アリスとジョンは気が気でなくなりますが、ミアは一緒の布団にくるまって寝るほどに仲良くなります。

ファームの目玉となったチャーリーのおかげで観光客も増える一方で、従業員にケガをさせて客を怯えさせる事態も発生。それでもミアは、「じゃれ合いたいだけ」と言って必死にかばいます。

一方、古くからの知人らしき男ダークと久々に再会したジョンは、彼からある依頼をされるも拒否するのでした。

(C)2018 Galatee Films – Outside Films – Film Afrika D – Pandora Film – Studiocanal – M6 Films

それから3年後。

チャーリーは以前にも増して家中を動き回り、ミア以外には懐かなくなるほどに成長。

それでもチャーリーとじゃれ合うミアを危惧したアリスは、あまり近づかないよう告げるも、彼女は頑として聞き入れません。

また、学校行事で旅行に行ったにもかかわらず、チャーリーを心配するあまり勝手に帰宅してしまったり、ミアがファームの鍵をかけ忘れたことで、夜中に外に抜け出たチャーリーを総出で探しに出るといった事態に。

ついには、ミアの勧めでチャーリーと触れ合おうとしたミックが足を滑らせて頭を強打する事故が発生したことに激怒したジョンは、チャーリーを売り払うことを決断するのでした。

ジョンから、チャーリーをサーカスに売ると聞かされたミアは、場所がどこかを探るため、ファームにいた別のライオンを運ぶトラックに忍び込みます。

しかし、トラックが到着した場所にはダークがいました。

実はダークは、トロフィー(獲物の角などから作られる狩猟記念品)や娯楽の獲得を目的とした、観光客向けの狩猟「トロフィー・ハンティング」の一種である、人工繁殖させた動物を囲いの中に放って狩猟する通称「缶詰狩り」(キャンドハンティング)の運営者でした。

ファーム経営の資金繰りのため、やむなくジョンは育てたライオンを缶詰狩りの獲物として売却していたのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』のネタバレ・結末の記載がございます。本作をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 Galatee Films – Outside Films – Film Afrika D – Pandora Film – Studiocanal – M6 Films

ミアはチャーリーを、動物を狩ることを禁じられている自然保護区ティムババツィに送り届けることを決意。

ミックや家政婦のジョディらの助けを借り、トラックを運転してチャーリーを連れ出したミアですが、ティムババツィまでの道のりは遠く、途中で車を乗り捨てて徒歩で向かいます。

チャーリーが脱走したことはすぐさまニュースとなり、射殺目的で警察が出動することに。

ジョンもミアの行方を捜し、さらにはダークも観光客のハンターを連れて動き出します。

ついにダークに発見され、ミアは必死に抵抗するも突き飛ばされてしまい。あわや万事休すというところで、チャーリーがダークに襲いかかり、脱出に成功。

続いて追ってきたジョンに、ファームで育てたライオンをトロフィー・ハンティングにしていたことを責めるミア。

「おじいちゃんがファームを運営していた頃から行っていた。それが南アフリカ経済につながっていた」と釈明したジョンを、ミアは奪った麻酔銃を眠らせて、さらに逃走します。

途中、チャーリーを連れたままショッピングセンター内を通り抜けるといった困難に遭うも、ついにティムババツィにつながる橋まで到達。

しかし、そこに銃を構えた警察が現れます。

今にもチャーリーが射殺されそうになるその時、警察に連れられていたジョンが身を挺して、橋を渡ろうとするチャーリーをガード。

「行って!橋の向こうは自由よ」と叫ぶミアの言葉を受けながら、チャーリーは地区内に暮らす老人に導かれるようにティムババツィに入っていきます。

それから数日後、ティムババツィで優雅に暮らすチャーリーを、ミアたち一家は微笑ましく見守るのでした――。

映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』の感想と評価

(C)2018 Galatee Films – Outside Films – Film Afrika D – Pandora Film – Studiocanal – M6 Films

本作『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』は、南アフリカの社会問題となっている「缶詰狩り」をテーマにしています。

表向きは、ライオンファームで飼育したライオンを動物園やサファリパークの人気者としてもらったり、自然に還して種族繫栄させるためと見せかけ、その裏ではライオンたちをトロフィー・ハンティングの一種である缶詰狩りの獲物にしていたという事実。

そもそも、娯楽のために動物を撃つトロフィー・ハンティング自体が、南アでは合法となっているということに驚きを隠せません。

そうした行為が南ア経済を支えているという現状に警鐘を鳴らす狙いで、監督のジル・ド・メストルは、元々得意とするドキュメンタリーではない、フィクションドラマとして製作されました。

(C)2018 Galatee Films – Outside Films – Film Afrika D – Pandora Film – Studiocanal – M6 Films

そして何といっても特筆すべきは、人間とライオンの友情を、CGを一切使わずに3年もの期間をかけて撮影したという点でしょう。

主人公の少女ミア役のダニア・デ・ヴィラーズとホワイトライオンのチャーリーの間には、演技ではなく本当の友情が必要だとして、3年間、週3回、1回2~3時間の刷り込み(インプリンティング)のセッションを行っています。

またダニア同様に、ミアの兄ミック役のライアン・マック・レナンもライオンとのコミュニケーションを築いていきましたが、これは、もし途中でダニアがライオンが怖くなって降板してしまう事態となった際に、脚本を変更してライアンを主役に据えるという案も想定していたとの事。

内容こそフィクションドラマですが、撮影しながら子役たちとライオンが共に成長していく様子は、まさにドキュメンタリーそのもの。

ホワイトライオンはもちろんのこと、子役たちも3年の歳月を経て大人びていく過程が、リアルにうかがえます。

まとめ


(C)2018 Galatee Films – Outside Films – Film Afrika D – Pandora Film – Studiocanal – M6 Films

本作のエンドクレジットの前に、「100年前には25万頭いたライオンの数は9割減少し、昨年確認されたのは2万頭未満。絶滅の危機にあるライオンは、このままでは20年後には姿を消してしまうとされる」という現状が伝えられます。

日本では馴染みがないトロフィー・ハンティングですが、知らないよりは知っておくべき問題なのは確か。

人間のエゴが絡んだ、動物の生態系の崩壊を真正面から捉えた本作から、あなたは何を感じますか。

映画『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』は、2021年2月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開

関連記事

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】ボイリング・ポイント 沸騰|あらすじ感想と結末の解説評価。全編90分ワンショットで撮影した“厨房とシェフのスリリングな一夜”

戦場のようなレストランの裏側を、ワンショットで撮影した人間ドラマ 1年で最も忙しい、クリスマスの夜を迎えたロンドンの高級レストランを舞台に、それぞれの限界点が爆発する人間ドラマを描いた、映画『ボイリン …

ヒューマンドラマ映画

実写映画『思い、思われ、ふり、ふられ』ネタバレ感想と考察評価。キャストに浜辺美波×北村匠海×福本莉子×赤楚衛二が勢揃い!

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』は人気青春恋愛コミックの実写! 映画『思い、思われ、ふり、ふられ』は、同題の咲坂伊緒によるベストセラーコミックを映画化したものです。 監督は『アオハライド』『フォルト …

ヒューマンドラマ映画

『ハッピー・バースデー家族のいる時間』感想と考察解説。“映画の母ドヌーヴの元に集まった監督たち”のフィクション家族ドラマ

『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』は2021年1月8日(金)、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー。 フランスを代表する大女優、カトリーヌ・ドヌーヴ。今回彼女が演じる …

ヒューマンドラマ映画

映画『止められるか、俺たちを』感想解説とあらすじ。恩師 若松孝二の下で修業した白石和彌監督自ら企画した秀作

映画『止められるか、俺たちを』は、10月13日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー! 日本映画界を牽引する鬼才白石和彌が、師匠若松孝二の若き日と彼が駆け抜けた時代を描き出します。 若松監督の助監 …

ヒューマンドラマ映画

サイレント映画『サタンジャワ』上映日時と開催場所。「響きあうアジア2019」にて生演奏付きで魅惑に浸る

モノクロ世界に漂うジャワ島のサタンが、立体音響のなかで浮かび上がる 国際交流基金アジアセンター主催、公益財団法人ユニジャパン共催「『サタンジャワ』サイレント映画+立体音響コンサート」につきまして、詳細 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学